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第9章 魔王国編2

第241話 紅蓮の龍人

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婚約披露宴も無事に終わり・・・終わったのだ・・・だが、その後関係者から問い詰められる事となったエルヴィーノ。

「あれは何だ!」
「他にも女が居たのか!」
「物凄い力の波動を感じたぞ!」
「一体何者なのだ!」
「今答えるなら愛人が出て来ても対処しようではないか」
(どいつもこいつも好き勝手な事を言ってくれる)

「チョット待ってくれ。この件はシーラに直接説明するから、皆は黙ってて欲しい」
「浮気を認める訳だな」
「余計な茶々を入れるな!」
義理の三兄弟がうるさいのでシーラとだけ話す事にした。
「シーラ、ゆっくりと話したいから場所を移そう」
「はい」

シーラの手を掴み転移した2人。
目的地はダークエルフ国の建国予定地だ。
人口建築物が無いので真っ暗だが、夜空の星々が思った以上に明るくて、目が慣れて来ると割と見えるようになった。

「ここは?」
「ジャンドール王がダークエルフの国として考えている島だよ」
「そうなの? 初めて聞いたわ」
「そんな事より、これから話す事を良く聞いてくれシーラ」
今までにない真面目な表情のエルヴイーノに重大な話だと感づいたシーラだ。

「シーラは選ばれたんだよ。龍人に」
「えっ龍人?」
兄達の冗談を真に受けていたが、出て来た言葉に驚くシーラ。
「さっき会っただろ? インスティントに」
「あの人が龍人なの?」
「あぁそうだよ。そして渡されたのが龍人の腕輪だ」

大事そうに腕輪を撫でるシーラ。
「シーラ、良く聞いてくれ。龍人がこの腕輪を渡すのは、その運命をになっているからだよ。そして、遠い血族なのさ」
「私が龍人の子孫なの?」
相槌を打って答えた。
「俺の妻達では2人持っているからシーラで3人目だ」
「他にも持っている人が居るのぉ!」
眉間にシワを寄せて睨まれた。
「シーラ、大事なのはこれからだ」
両肩を持って真剣な顔になるとシーラも真面目な顔になる。

「この腕輪には特殊な効果が有るんだ。1つは腕輪をくれた龍人と念話が出来る。もう1つは・・・龍の召喚魔法が使える事が出来る」
パウリナと違い魔素量もロリよりも多いので問題無く召喚出来ると思ったエルヴィーノだ。
すると「すっごぉぉい! 召喚して見る」
魔法名も教えていないのに、何やら踏ん張っているようだ。
「あのぉシーラさん。ちゃんと召喚魔法を唱えないとダメだよ」
すると真っ赤な顔で抱き付いて来た。
恥ずかしかったのだろう。

「シーラ、召喚魔法はとても危険な魔法だから、使い道を間違えると大変な事になるんだぞ」
「どうなるの?」
「どうなるかは使い方さ。だけど威力は、そうだなぁ城が魔法1つで粉々になるぞ」
「すごおぉい!」
目を輝かせて喜んでいる。
危険だ。
シーラに魔法を教えるのは止めよう。

「ところでシーラ、念話して見たらどうだ?」
「どうすれば良いの?」
「魔導具を使う要領で腕輪に魔素を送って、インスティントさんって呼びかければ良いのさ」
「やってみる」

目を瞑り、腕輪に手を当てて集中するシーラ。
(インスティントさん、インスティントさん聞こえますか?)
(・・・)
(インスティントさん、インスティントさん聞こえますか?)
(・・・)
「答えてくれなぁい」
「俺も最初は難しかったよ。練習練習」
そのまま放置して様子を見る事にした。

(インスティントさぁん、聞こえてるでしょぉ、出てくださいよぉ)
(インスティントさぁぁぁん)
すると
(ン? 何だ。もう念話が使えるようになったのか?)
(インスティントさんですか? シーラです)
(ああ、ちょっと雑音が聞こえてな、今はハッキリと聞こえるぞ)
(良かったぁ、ずっと呼びかけていたのに返事が無いから、やり方が間違っている間かと思っちゃった)
(・・念話では何だ、その場所へ行こう)
(ハイお待ちしています)
「あなた、インスティントさんが来るって」
「何いぃぃ!」


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


シーラがインスティントに念話している時。
(コラソン、聞こえますか?)
(聞こえますよ、モンドリアンさん)
(それで、どうして急にインスティントが出て来たの?)
(それはノタルム国が彼女の管轄でタイミングを見ていたのでしょうね)
何のタイミングか解らないが疑問を投げかけた。

(彼女、ラソンと仲が悪いの?)
(悪いと言うか良く無いみたいですねぇ)
(何で?)
(私からはちょっと)
(本人から聞けと?)
(そうでは無いですが、余り深入りしない方が良いと思いますよ)
(分かった、コラソンの助言は肝に銘じるよ)
(流石はモンドリアンさん。長生きしますよ)
(そりゃ長命種だからね)
(・・・)
何か言いたかったコラソンだ。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


それは月明かりが照らす暗闇の中に突然現れた太陽の様だった。
真っ赤な衣装がまるで炎が燃えているように揺らめいている。
とても美しい真紅の長い髪に宝石のような赤い瞳。
透き通る白い肌とのコントラストが目にまぶしい程の美女だが、披露宴の時の様に暴風魔素は無かった。

「どこぉここは?」
シーラの持つ腕輪を頼りに転移してきたインスティントだ。

場所の説明をしてエルヴィーノが問う。
「それで今回はどうして俺達の前に?」
「言ったでしょ。それにコラソン様にも聞いたでしょ」
ちゃっかり盗み聞きしていたインスティントだ。

「それでシーラには教えたの?」
「召喚魔法はまだ危険だから教えないでおこうと思う」
「なんでぇ! どうしてよぉ」
目と鼻の先程に近づいて説明を要求するシーラだ。
「だってほら、シーラはまだ成人していないよな」
「それが何ぃ」
「召喚魔法は成人後、龍人様に認められてから使えるように成るんだよ」

「嘘っ、本当ですかインスティント様ぁ」
シーラが振り返ってインスティントを見た隙に、両手を合わせて拝むエルヴィーノだ。
「んっ、まぁ、そうだな。シーラは私の召喚よりも、もっと良い物を授けよう」
シーラの手を掴むとピリッとした直後、脳裏に有る魔法。
「これは!?」
「さぁ、唱えるが良い」

「はい、インスティント様。リャーマ・デ・ラ・エ爆炎魔闘鎧クスプロシオン・アルマドゥラ」
巨大な炎の柱が立ち上った後に現れた紅蓮に燃える全身鎧を纏ったシーラだ。
「す、すっげぇ! シーラ! だけど熱く無いのか?」
「全然熱く無いよ」
「当然だ。鎧が装着者を燃やしてどうする。シーラには炎による攻撃は一切無効になる。当然だが水系氷系もだ」
「凄いよシーラ」
「あと注意する事が有るぞ。迂闊に触ると爆発するからな。衝撃は触ったり攻撃を仕掛けた者に対して発動しシーラには無効だ」

「なぁ、もしかして走るだけで敵に触れると爆発するのか? それって無敵状態?」
「そうとも言えるかもな。しかし、シーラに重要なのは防御だ。エスパーダ・リャーマ炎の剣は使えるな?」
「ハイ」
エスクード・リャーマ炎の盾を使うなら剣を二本持った方が良いかも知れないな」
シーラとインスティントが楽しそうに話しているが
「シーラが燃え盛っていたら暑くて近づけないし触れもしないぜ」
「それは大丈夫だ。お互いの龍人の腕輪を同調させれば良い」

「腕輪の同調だってぇ?」
「そうだ。知らなかったのか?」
「誰も教えてくれなかったぞ」
ニッコリと微笑んで語りかけるインスティント。
「では私が教えてあげよう」

シーラの腕輪とエルヴィーノの腕輪を合わせて
「この状態で念話するように魔素を送ってみろ」
言われた通りにすると2人の腕輪が光出した。
「これでお互いの鎧が持つ付与効果は相手に効かなくなる」
「凄い! インスティント、ありがとう」

この時エルヴィーノはピンと来た。
(もしかして、これでシーラと念話出来るようになるのかな? ロリとパウリナが突然念話出来るようになったのも、じゃれ合っていてタマタマ発動した可能性もあるな。となると、マズイ。非常に不味い。念話を出来なくしないと。”1人”だけでも念話されて対応するのが面倒なのに妻達が三人も念話対象となれば俺の自由が無くなるかも・・・イカン。何としてでも無かった事にしないと)

「ところで俺とインスティントは念話出来ないのかな?」
遠回しに訊ねて聞こうと思ったエルヴィーノだ。
「お前の持つ龍人の腕輪では不可能だ」
(やっぱりな)
「だが、コラソン様の腕輪なら可能だ」
「えっ、嘘。マジで? 本当に!?」
「なんだ聞いていなかったのか?」
「それって全ての龍人と念話出来るの?」
「当然だ」

エルヴィーノは声を殺し、飛び跳ねて喜んだ。
その光景を見て不思議に思った2人。
シーラは何度も鎧を顕現させてご満悦の様だ。
(インスティント、教えてくれてありがとう)
(ふっ早速念話で挨拶か?)
(ああ、早速だがさっきのでシーラと念話が出来るようになっただろ?)
(良く解かったな)
(やっぱり。その念話の機能だけを取る事は出来るか?)
(可能だ)
(お願いしますインスティント様ぁ)
(ふん、まあ良い)
再度腕輪を付けて魔素を流すがインスティントの手がかざされた。
(これでお前の希望通りになったぞ)
(ありがとうインスティント様ぁ)
(では、我が願いも叶えてもらおうか)
「はぁ?」







シーラが”あなた”と言うのは既に新妻としての意識からで、言わせている訳では無い。
インスティントの願いとは?
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