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第8章 魔王国編
第226話 帰国
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シオンを連れて街を案内すると初めて見る種族の獣人達に興味深々の”魔族”だ。
第二城壁に近づくと門番数人が近づいて来た。
ペロ族の者達だ。
「「「黒龍王様!」」」
「ご無事でしたか!」
「ああ、ペロ族の者よ。いつもお前達には感謝しているぞ」
「勿体ないお言葉です」
「改めて連絡するが、このクエルノ族のシオンは俺の従者となったから、”匂い”を覚える様に」
「「「ははっ」」」
そう言ってペロ族数人が初めて聞く種族であるシオンの手や衣服から匂いを嗅ぎまわっている。
「黒龍王陛下。これは?」
「ペロ族と言って鼻が利く一族だ。どんなに変装したり、隠れても直ぐに見つけ出すぞ」
「それは凄い。彼らが門番であれば様々な使い道が有りますな」
流石は元将軍だけあって軍事的な活用を瞬時に思い描く。
ゆっくりとブロエ・マルシベーゴォを進め、獣王国と概要を説明してやった。
「なるほどノタルム国の王になる為の制約と似ておりますなぁ」
片や獣神変化で片やオスクロ・アルマドォラだ。
力を崇める種族だから似てしまったのだろう。
「では陛下も獣神変化が出来るのですか?」
そう思うのが自然だ。
「俺は出来ない。城の裏に巨大な石像が有っただろう? アレの本物を呼びたせるからさ」
「何ですと! アレはまさしく龍種ですぞ。しかもあの巨大さは、かなりの年を経た存在。いや、まさか本当にあの大きさでは無いでしょう」
流石にフィドキアの事を褒めるのは納得いかないが事実を教えておこう。
「実物はアレの倍はあるな」
「まさかっ、はははっ冗談が御上手ですなぁ陛下は」
信じようとしないのはある意味仕方の無い事だ。
「まぁ、街の者でも、城の者でも聞くが良いさ」
大通りには様々な店に色んな種族の獣人達が生活していて活気に溢れていた。
街の一端を見ただけでどれほど栄えているかが容易に理解したシオンだった。
「まさかこれほどのモノだとは、流石は陛下です。感服致しました」
「まぁ、街も城もゆっくりと説明するから、シオンは宿で待って居てくれ。俺は一旦城に戻るから。あっそうだ、これを渡して置く」
そう言ってエマスコを手渡した。
「陛下、これは?」
「それはエマスコと言って通信魔道具だ。伝えたい内容を紙に書いて中に入れ、登録された対象者の名前を呼ぶと送られる。お前に渡したのは俺に送れる物だ。後で試して見るが良い」
「ははっ有り難き幸せです。陛下より下賜された魔導具、一生大切に致します」
(なんか、凄く堅苦しいなぁ)
2人が到着したのは超高級旅館エスピナだ。
「ここは?」
「宿だ。ここもノチェ・デル・インペリオの物だ」
ノタルム国には無い巨大な石造りの宿に驚きを隠せないシオンを放置してスタスタと受付に歩いて行くエルヴィーノ。
ゆっくり見たいが主の後を追いかけるシオンだった。
「女将は居るか?」
「ハイっ只今お呼びします」
旅館の従業員もエルヴィーノの顔を知っているし何者なのかも知っている。
「女将さぁん、黒龍王様が呼ばれていますよぉ」
その呼びかけに驚いたのはアミスターだ。
最近のチャルタランは王家からの仕事で新しく発見された部族の教育係として別の仕事をしている事は知っているし、数日おきに旅館の仕事に戻っているので、全く”不信感”は無かった。
(え、何! あの人が来てるの?)
慌てて身だしなみを整えて受付に顔を出すと愛しい男が待っていた。
「黒龍王様、今日は一体どの様な御用件でしょうか?」
ほんのりと頬を染め丁寧に伺うアミスターに告げる。
「奥へ行こう。紹介したいヤツが居る」
後ろには大男が控えていた。
「ではどうぞ」
案内され奥の事務室にあるソファに座る。
「紹介しよう。新しく俺の従者になったクエルノ族のレボル・シオンだ。シオンと呼べばいい」
「我は常闇の帝王エル・モンド陛下に忠誠を誓ったレボル・シオンと申す。以後お見知り置きを」
巨漢で威厳の有る顔つき(悪く言うと単に怖いだけ)で丁寧に挨拶された。
「ご丁寧な御挨拶、痛み入ります。私はこの旅館エスピナの女将を命ぜられているアミスターと申します」
丁寧に腰を折って挨拶するアミスターに好感を持ったシオンだ。
「2人共ノチェ・デル・インペリオに属しているがシオンは、さっきこの国に来たばかりで誰も知らない状態だ。だから宿に泊まる事と誰かを付けて街を案内させて欲しい」
(とりあえず城に戻り母さんと話してパウリナと打ち合わせしたいし)
「陛下、我もお供を」
今連れて行くとややこしいので順番に説明しないと口を挟むヤツが多いからとは言えないエルヴィーノだ。
「今は女将から帝國の事を簡単に聞いて、この旅館を体感してくれ。街に出てノタルム国との違いを満喫して欲しい」
主の事情を推し量ると致し方ないとあきらめるシオンだ。
「アミスター、街の案内は部屋付きの者でも、お前でも構わない。シオンはお金を持っていないから、おこずかいも頼む。ああ、全て帝國の経費に回してくれ」
「畏まりました」
「明日の昼には顔を出すが、エマスコも有るから大丈夫だろ? 一度試して見るか」
そう言って使わせてみる。
「中々便利な物ですな、陛下」
「多分ノタルム国でも送れると思うが遠いからなぁ、一度送ってみないと解らん」
新しい魔導具を大事そうにするシオンと恨めしそうに見ているアミスターだ。
「じゃアミスター頼む。シオン、まずは長年の疲れを取ってくれ」
そう言って転移したエルヴィーノだった。
「では参りましょうかシオン様」
「うむ、宜しく頼む」
高級旅館だが女将は高級とは言わない。
その辺は弁えているのだ。
どう感じるかはお客様しだいで、旅館は最高の御持て成しをするだけ。と旅館の師匠から教わった事である。
館内の案内はアミスターが行い、露天風呂や大浴場に食事処も有り、各階には専用の転移魔法陣から移動する事にも驚いたシオンだった。
「では、こちらがシオン様のお部屋になります」
案内されたのは角部屋で、比較的に大きな部屋だ。
「うぅぅむ」
唸るシオン。
落ち着いた雰囲気の部屋は例え種族が異なっても高級感が伝わったのだ。
調度品や壁に飾られている”訳の分からない絵”も高級そうに見えたのだ。すると
「ようこそ、いらっしゃいませご主人様」
比較的大柄の獣人女が丁寧なお辞儀をして挨拶した。
「この者は部屋付の召使いですので、何なりとご命令してくださいませ」
アミスターから教えられ「うむ」と答えるシオン。
召使いに街を案内する事を言い付けて部屋を後にする女将だ。
とりあえず面倒なので召使に任せることにした女将。
街に出る際に声を掛ければ”おこずかい”も渡すと召使いに言うと喜んで引き受けたと言う。
「では、まずは露天風呂と大浴場に浸かってみるか」
シオンの要望に応える召使い。
初めて来た異国の高級旅館で露天風呂なる物に入るとは予想もしていなかったシオン。
「外で入る風呂も格別だのぉ」
平日の朝方に入る露天風呂は確かに別格だろう。
シオン1人で独占する露天風呂には小鳥のさえずりが心を和ませていた。
そして、大浴場へとハシゴ風呂だ。
「はあぁぁぁぁぁっ、こっちの風呂は広くて良いのぉ。露天も良いが大浴場も堪らんのぉ」
30人は余裕で入れる風呂も1人で独占して使う贅沢な朝のひと時を満喫していたシオンだった。
牢暮らしの垢も落とし綺麗サッパリとなったシオンは部屋に戻ると出迎えてくれる者が居た。
「お帰りなさいませ、ご主人様。お風呂の方は如何でしたか?」
「うむ、露天も大浴場も満足だ。久しぶりに解放された気分を味わったぞ」
「それは良かったです。所でご主人様。この後は街に出られますか? 丁度お昼なのでお食事はどうされますか? 因みに宿の食事店はお昼もやっておりますし、街のお店や屋台も有りますよ」
一方的に説明されたが、笑顔で答えたシオンだ。
「お前の行きたい所と、食べたい店に案内してくれ」
満面の笑みを浮かべて答えた。
「はい、喜んで!」
召使いは迷った。
旅館の食事は美味しい。
だが、折角”おこずかい”も貰えて外出出来るのだから、外で食べる方が自分も”おこぼれ”に有り付けると考えたからだ。
「ご主人様、それでは観光がてら外でお食事しましょう。宿の食事も別格ですが夕食に取っておきましょうね」
いろいろと考えてくれる召使いに感心しながら外出の準備を手伝った貰うシオンだ。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
一方のエルヴィーノはカスティリオ・エスピナの住居部分で一族の応接室にやって来た。
「ただいま」
「あら、早かったのねぇ」
特に驚く様子の無いリーゼロッテとオリビアだ。
「デイビットはどこ? 大事な話が有るから呼んでほしいけど」
ほどなくオリビアに呼ばれて現れたデイビットだ。
アロンソは学校に行っていた。
「三人とも聞いて欲しい。俺はノタルム国に召喚されて行ったけど、そこで見つけたんだ。ダークエルフを」
「なにぃ本当かエルヴィーノ」
一番驚いたのはデイビットだ。
「俺は代表の1人に会ったけど20人ほど居るらしい」
「そうか。生き残りが居たんだな」
「私達だけでは無かったのね」
そしてアルコンの事を説明し聞いて見た。
「母さんは知ってる?」
「知らないわ。私が産まれる前の事でしょ」
「我らも聞いた事の無い名前だなぁ」
当たり前の事だ。爺さんが王位に就く前の時代だから誰も生まれていないのだ。
「でもオスクロ・マヒアを使えるし波動も感じるから嘘では無いと思うよ。それに新たに分かったけどオスクロ・マヒアを使えるのは世界中で二つの種族しか居ないんだ」
「へぇそうなのか」
デイビットは余り関心が無さそうだ。
「もう1つの種族はクエルノ族と言って、別の大陸に国を持っているんだ」
「魔族ね」
驚いた、リーゼロッテが知っていたのだ。
「知ってたの?」
「マルソさんが教えてくれたわ。向こうは大変な事になっているそうよ」
「えっ何が?」
「あなたが魔族を支配して、魔族の嫁を娶ると知っているからよ」
(ゲッ! 何でもう知っているんだ?)
たじろぐエルヴィーノ。
(アルモニアの間諜がノタルム国に入っているのか? しかし、昨日の話しだぞ。何かおかしくないか?)
しかし嘘を付く必要も無いので補正した。
「確かに魔族とは友好な関係になりつつあるし、嫁を貰う可能性が高いけど、まだ口約束だよ」
シーラの事は確定したがまだ決まって無いと言いつつ、こちらの現状を聞きだす。
「それでマルソ殿は何と?」
「ロザリーさんとロリさんには内緒で、教祖一族とエルフ王にアンドレアさんには説明したそうよ」
一番気がかりだった2人を抑えてくれたので一安心のエルヴィーノだ。
(また、マルソ殿に借りを作っちゃったなぁ)
☆
マルソ殿に貸1つ。
第二城壁に近づくと門番数人が近づいて来た。
ペロ族の者達だ。
「「「黒龍王様!」」」
「ご無事でしたか!」
「ああ、ペロ族の者よ。いつもお前達には感謝しているぞ」
「勿体ないお言葉です」
「改めて連絡するが、このクエルノ族のシオンは俺の従者となったから、”匂い”を覚える様に」
「「「ははっ」」」
そう言ってペロ族数人が初めて聞く種族であるシオンの手や衣服から匂いを嗅ぎまわっている。
「黒龍王陛下。これは?」
「ペロ族と言って鼻が利く一族だ。どんなに変装したり、隠れても直ぐに見つけ出すぞ」
「それは凄い。彼らが門番であれば様々な使い道が有りますな」
流石は元将軍だけあって軍事的な活用を瞬時に思い描く。
ゆっくりとブロエ・マルシベーゴォを進め、獣王国と概要を説明してやった。
「なるほどノタルム国の王になる為の制約と似ておりますなぁ」
片や獣神変化で片やオスクロ・アルマドォラだ。
力を崇める種族だから似てしまったのだろう。
「では陛下も獣神変化が出来るのですか?」
そう思うのが自然だ。
「俺は出来ない。城の裏に巨大な石像が有っただろう? アレの本物を呼びたせるからさ」
「何ですと! アレはまさしく龍種ですぞ。しかもあの巨大さは、かなりの年を経た存在。いや、まさか本当にあの大きさでは無いでしょう」
流石にフィドキアの事を褒めるのは納得いかないが事実を教えておこう。
「実物はアレの倍はあるな」
「まさかっ、はははっ冗談が御上手ですなぁ陛下は」
信じようとしないのはある意味仕方の無い事だ。
「まぁ、街の者でも、城の者でも聞くが良いさ」
大通りには様々な店に色んな種族の獣人達が生活していて活気に溢れていた。
街の一端を見ただけでどれほど栄えているかが容易に理解したシオンだった。
「まさかこれほどのモノだとは、流石は陛下です。感服致しました」
「まぁ、街も城もゆっくりと説明するから、シオンは宿で待って居てくれ。俺は一旦城に戻るから。あっそうだ、これを渡して置く」
そう言ってエマスコを手渡した。
「陛下、これは?」
「それはエマスコと言って通信魔道具だ。伝えたい内容を紙に書いて中に入れ、登録された対象者の名前を呼ぶと送られる。お前に渡したのは俺に送れる物だ。後で試して見るが良い」
「ははっ有り難き幸せです。陛下より下賜された魔導具、一生大切に致します」
(なんか、凄く堅苦しいなぁ)
2人が到着したのは超高級旅館エスピナだ。
「ここは?」
「宿だ。ここもノチェ・デル・インペリオの物だ」
ノタルム国には無い巨大な石造りの宿に驚きを隠せないシオンを放置してスタスタと受付に歩いて行くエルヴィーノ。
ゆっくり見たいが主の後を追いかけるシオンだった。
「女将は居るか?」
「ハイっ只今お呼びします」
旅館の従業員もエルヴィーノの顔を知っているし何者なのかも知っている。
「女将さぁん、黒龍王様が呼ばれていますよぉ」
その呼びかけに驚いたのはアミスターだ。
最近のチャルタランは王家からの仕事で新しく発見された部族の教育係として別の仕事をしている事は知っているし、数日おきに旅館の仕事に戻っているので、全く”不信感”は無かった。
(え、何! あの人が来てるの?)
慌てて身だしなみを整えて受付に顔を出すと愛しい男が待っていた。
「黒龍王様、今日は一体どの様な御用件でしょうか?」
ほんのりと頬を染め丁寧に伺うアミスターに告げる。
「奥へ行こう。紹介したいヤツが居る」
後ろには大男が控えていた。
「ではどうぞ」
案内され奥の事務室にあるソファに座る。
「紹介しよう。新しく俺の従者になったクエルノ族のレボル・シオンだ。シオンと呼べばいい」
「我は常闇の帝王エル・モンド陛下に忠誠を誓ったレボル・シオンと申す。以後お見知り置きを」
巨漢で威厳の有る顔つき(悪く言うと単に怖いだけ)で丁寧に挨拶された。
「ご丁寧な御挨拶、痛み入ります。私はこの旅館エスピナの女将を命ぜられているアミスターと申します」
丁寧に腰を折って挨拶するアミスターに好感を持ったシオンだ。
「2人共ノチェ・デル・インペリオに属しているがシオンは、さっきこの国に来たばかりで誰も知らない状態だ。だから宿に泊まる事と誰かを付けて街を案内させて欲しい」
(とりあえず城に戻り母さんと話してパウリナと打ち合わせしたいし)
「陛下、我もお供を」
今連れて行くとややこしいので順番に説明しないと口を挟むヤツが多いからとは言えないエルヴィーノだ。
「今は女将から帝國の事を簡単に聞いて、この旅館を体感してくれ。街に出てノタルム国との違いを満喫して欲しい」
主の事情を推し量ると致し方ないとあきらめるシオンだ。
「アミスター、街の案内は部屋付きの者でも、お前でも構わない。シオンはお金を持っていないから、おこずかいも頼む。ああ、全て帝國の経費に回してくれ」
「畏まりました」
「明日の昼には顔を出すが、エマスコも有るから大丈夫だろ? 一度試して見るか」
そう言って使わせてみる。
「中々便利な物ですな、陛下」
「多分ノタルム国でも送れると思うが遠いからなぁ、一度送ってみないと解らん」
新しい魔導具を大事そうにするシオンと恨めしそうに見ているアミスターだ。
「じゃアミスター頼む。シオン、まずは長年の疲れを取ってくれ」
そう言って転移したエルヴィーノだった。
「では参りましょうかシオン様」
「うむ、宜しく頼む」
高級旅館だが女将は高級とは言わない。
その辺は弁えているのだ。
どう感じるかはお客様しだいで、旅館は最高の御持て成しをするだけ。と旅館の師匠から教わった事である。
館内の案内はアミスターが行い、露天風呂や大浴場に食事処も有り、各階には専用の転移魔法陣から移動する事にも驚いたシオンだった。
「では、こちらがシオン様のお部屋になります」
案内されたのは角部屋で、比較的に大きな部屋だ。
「うぅぅむ」
唸るシオン。
落ち着いた雰囲気の部屋は例え種族が異なっても高級感が伝わったのだ。
調度品や壁に飾られている”訳の分からない絵”も高級そうに見えたのだ。すると
「ようこそ、いらっしゃいませご主人様」
比較的大柄の獣人女が丁寧なお辞儀をして挨拶した。
「この者は部屋付の召使いですので、何なりとご命令してくださいませ」
アミスターから教えられ「うむ」と答えるシオン。
召使いに街を案内する事を言い付けて部屋を後にする女将だ。
とりあえず面倒なので召使に任せることにした女将。
街に出る際に声を掛ければ”おこずかい”も渡すと召使いに言うと喜んで引き受けたと言う。
「では、まずは露天風呂と大浴場に浸かってみるか」
シオンの要望に応える召使い。
初めて来た異国の高級旅館で露天風呂なる物に入るとは予想もしていなかったシオン。
「外で入る風呂も格別だのぉ」
平日の朝方に入る露天風呂は確かに別格だろう。
シオン1人で独占する露天風呂には小鳥のさえずりが心を和ませていた。
そして、大浴場へとハシゴ風呂だ。
「はあぁぁぁぁぁっ、こっちの風呂は広くて良いのぉ。露天も良いが大浴場も堪らんのぉ」
30人は余裕で入れる風呂も1人で独占して使う贅沢な朝のひと時を満喫していたシオンだった。
牢暮らしの垢も落とし綺麗サッパリとなったシオンは部屋に戻ると出迎えてくれる者が居た。
「お帰りなさいませ、ご主人様。お風呂の方は如何でしたか?」
「うむ、露天も大浴場も満足だ。久しぶりに解放された気分を味わったぞ」
「それは良かったです。所でご主人様。この後は街に出られますか? 丁度お昼なのでお食事はどうされますか? 因みに宿の食事店はお昼もやっておりますし、街のお店や屋台も有りますよ」
一方的に説明されたが、笑顔で答えたシオンだ。
「お前の行きたい所と、食べたい店に案内してくれ」
満面の笑みを浮かべて答えた。
「はい、喜んで!」
召使いは迷った。
旅館の食事は美味しい。
だが、折角”おこずかい”も貰えて外出出来るのだから、外で食べる方が自分も”おこぼれ”に有り付けると考えたからだ。
「ご主人様、それでは観光がてら外でお食事しましょう。宿の食事も別格ですが夕食に取っておきましょうね」
いろいろと考えてくれる召使いに感心しながら外出の準備を手伝った貰うシオンだ。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
一方のエルヴィーノはカスティリオ・エスピナの住居部分で一族の応接室にやって来た。
「ただいま」
「あら、早かったのねぇ」
特に驚く様子の無いリーゼロッテとオリビアだ。
「デイビットはどこ? 大事な話が有るから呼んでほしいけど」
ほどなくオリビアに呼ばれて現れたデイビットだ。
アロンソは学校に行っていた。
「三人とも聞いて欲しい。俺はノタルム国に召喚されて行ったけど、そこで見つけたんだ。ダークエルフを」
「なにぃ本当かエルヴィーノ」
一番驚いたのはデイビットだ。
「俺は代表の1人に会ったけど20人ほど居るらしい」
「そうか。生き残りが居たんだな」
「私達だけでは無かったのね」
そしてアルコンの事を説明し聞いて見た。
「母さんは知ってる?」
「知らないわ。私が産まれる前の事でしょ」
「我らも聞いた事の無い名前だなぁ」
当たり前の事だ。爺さんが王位に就く前の時代だから誰も生まれていないのだ。
「でもオスクロ・マヒアを使えるし波動も感じるから嘘では無いと思うよ。それに新たに分かったけどオスクロ・マヒアを使えるのは世界中で二つの種族しか居ないんだ」
「へぇそうなのか」
デイビットは余り関心が無さそうだ。
「もう1つの種族はクエルノ族と言って、別の大陸に国を持っているんだ」
「魔族ね」
驚いた、リーゼロッテが知っていたのだ。
「知ってたの?」
「マルソさんが教えてくれたわ。向こうは大変な事になっているそうよ」
「えっ何が?」
「あなたが魔族を支配して、魔族の嫁を娶ると知っているからよ」
(ゲッ! 何でもう知っているんだ?)
たじろぐエルヴィーノ。
(アルモニアの間諜がノタルム国に入っているのか? しかし、昨日の話しだぞ。何かおかしくないか?)
しかし嘘を付く必要も無いので補正した。
「確かに魔族とは友好な関係になりつつあるし、嫁を貰う可能性が高いけど、まだ口約束だよ」
シーラの事は確定したがまだ決まって無いと言いつつ、こちらの現状を聞きだす。
「それでマルソ殿は何と?」
「ロザリーさんとロリさんには内緒で、教祖一族とエルフ王にアンドレアさんには説明したそうよ」
一番気がかりだった2人を抑えてくれたので一安心のエルヴィーノだ。
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