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第8章 魔王国編

第208話 お祝いと召喚

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リカルドとフォーレが結婚すると言う。
2人の事は分かってはいたが現実の物となると感慨深い物が有る。
フォーレは所謂いわゆる”出来ちゃった婚”だ。
堅物のリカルドは、まず婚儀が先だろう。
成る様になった感じだが、四人とも幸せならば自分が口出す事は無い。

そう思っていたエルヴィーノだが他の連中はそうでは無いらしい。
”リカルドの故郷はクラベルだから、イヤ、リリオの故郷は城下街アルバだから向こうで式を挙げろ”だとか、”親衛隊長なのだから当然イグレシアで挙げるべき”などだ。

一方のフォーレもイグレシアで挙げる予定だったが、グラナダが仲良くなった獣王国の者から、”なぜこちらで式を挙げないのか”と言われたり、”故郷には行かないのか?”と無責任な事を言う者も現われている。
しばらくは、そんな事を言われっぱなしで疲れていた四人だった
見るに見かねて一言口から出てしまった。

「四人はこの街で出会ったから式は大聖堂で挙げて、リカルドとリリオはクラベルとアルバで別々のお祝いをする。フォーレとグラナダは、フォーレの親族を呼んでイグレシアかペンタガラマでお祝いをすればいいだろう。折角フォーレの親族が遥々来るのなら観光も兼ねて二か所でお祝いするのも良いかもな?」

「はっ下知のままに」
お堅いリカルドでした。
リリオもそれに習っている。
「ふーぅ」
フォーレは深い溜息を付いている。
(どこまで呼べばいいのやら。費用がかさむが仕方あるまい)
「分かりました。親族を呼び寄せ、一緒にペンタガラマで祝います」
グラナダが満面の笑みだ。

細かい事は四人に任せて妻達とお祝いの品を考える事にした。
ここでのエルヴィーノはお伺いを立てながら妻達の情報お祝い候補を互いに教えて、贈り物が重ならない様にする事だ。
自分の贈り物など無い。
何故なら夫婦としての贈り物が選ばれるからだ。
完全に裏方に徹して”お祝い品の相談係り”になっていた。

そうこうしている内に、親衛隊長の結婚式が聖女達の耳に入りリリオの同族も口を出してくる。
所変われば、とある義母が「いろいろと頑張っている”あの子”が幸せになるのだから”私からもお祝いします”」などと言われました。
この言葉の裏は、他者が渡さない物を用意したいから教えなさいと言う意味だ。
アンドレアはドラゴ族の一件でグラナダの事は良く知っているからだ。

まずは妻達から始まり義母たち、義祖父へと情報を流し祝い品の準備をしてもらう。
同時進行でガンソを呼び出しノチェ・デル・インペ夜の帝國リオとして4人のお祝いをしたいと告げ準備させた。
場所はラ・ノチェ・デル・カ夜の帝國城スティリオ・インペリオだ。
これはゲレミオの内輪での祝いにする。

実はフォーレの親父さんとは、内密で会っている。
カランバノ王国襲来の後だ。
どうしてもお礼をしたいと言われたが、国が動くと大規模な戦争になる可能性が有るので、あえて隠していた事が無意味になる事を理解してもらい、”友として協力してもらったので父として礼をするのは当然だ”と1人で王都イグレシアに来られたのだ。

実際はフォーレが連れて来たが。
その時エルヴィーノとリアム殿にマルソ殿が会って交流を深めたのだ。非公式なので謁見では無い。
場所もティールームカラコルだった。
そして徐々に交流を始めたが正式な国交は保留にしてあった。

そんな訳で絶好のチャンス到来が息子の結婚式だ。”獣王国の事"は遠く離れたカランバノ王国にも噂話が流れてきている。
式を王都の大聖堂で挙げるとなれば正式に呼び寄せなければならない。
国として国交を結ぶ機会に繋がるので反対する者はカランバノには居なかった。
なぜなら国王以外は現実的に聖魔法王国アルモニアの庇護に収まりたいと一族は考えていたのだ。
一方のリカルドは、両親にリリオを紹介した時はとても驚いていたと言う。

「そりゃそうさ、誰だって驚くぜ。以前は何も無い田舎町の小さな教会で司祭をしていた兄ちゃんが、今では王都イグレシアで国王の親衛隊長様だぜぇ、あの嫁さん見たかぁ? スッゴイ綺麗だよなぁ。まさかエルフと結婚するなんてよぉ。あいつは・・・あいつは・・・」

幼馴染の宿屋の亭主が誇らしげに自慢しながら泣いている。
そんな古巣のクラベルからも古い知り合いを呼んで参列してもらう予定だ。

そして花嫁たち。
リリオの場合はゲレミオの一員でもあるので、アルバに出来たゲレミオの食事店で小ぢんまりと祝いの席を作りたいとポルトンに要請すると「全てこのポルトンに任せなさい」と自信満々に言われて不安だったらしい。

所が当初ゲレミオの食事店のはずが、何故かエルフ倶楽部アリウス・ムンディで行なうらしい。
(・・・誰かの意図的な作意を感じる)
実は、エルフの倶楽部はクラベルまで噂が流れていた。
ブロエ・マルシベーゴォのレースで観光客が利用した話しが人づてに流れて行ったのが真相で、人族から見ればエルフの女性はとても美しく、遠くから見るだけでもドキドキするらしい。

当たり前だが、エルフの女性は国外に余り居ない。
例外を除けば見るだけでも奇跡に近いのに、会って話をするなど”トンデモナイ”事だ。
しかし、町の者リカルドが絶好のチャンスをもたらした。
誰も”嫁さんの友達を紹介して欲しい”などとは言えない。
人生をやり直したプルガル、インディセ、メディオも”あやかりたい”と思っているし、市長に出世した 元町長も年甲斐も無く鼻息が荒い。

そして自称大親友で宿屋の主人ミゲルも口には出さないが羨ましく思っている。
邪まな考えを持つ男達が集まった結果、プルガルから教会の伝令係りのパブロを使い、教会経由でカスティリオ・エスピナに居るリーゼロッテへ手紙が送られた。
国王に直訴するのは建前上良くないと判断したからだ。
手紙の内容は”街の誇りでもあるリカルドをクラベル同様にアルバでも持て成したいので国王と相談したい”と言う内容だ。
実際には遠回しな直訴だが、良い訳がましい内容だった。

リーゼロッテから話しを聞いて、突然プルガルに会いに行った。
「これは国王様!」
「ああ、それで、どうした?」
「はっ実は・・・」
一応話を聞くが、プルガルの目を見ると泳いでいたので直ぐに理解した。
「もう良い」
話しを強引に区切り慌てるプルガルに問いただす。
「要するにお前達もエルフの女と合う出会う機会が欲しい訳だな」
的を得た質問にたじろぐプルガル。
「なっ、・・・はい。その通りです」
全て見透かされたと思い自白したプルガルだ。
「分かった。では向こうの責任者でポルトンに場所の変更を伝えるぞ」
「あっ有り難うございます」
「場所はエルフ倶楽部アリウス・ムンディだ。ただし、人族は会費を取るからな。それでもいいなら予約制にする」
「はっうけたまわりました」
そのままアルバのゲレミオに顔を出しポルトンに説明する。
「はっ畏まりました。万事、恙無つつがなく準備致します」
花嫁の要望よりゲレミオの利益を優先させるエルヴィーノとポルトンだった。
無論一部のクラベル市民は大喜びだった。

グラナダの場合。
ペロ族の縁者を大陸の最南端から呼び寄せる事になる。
これも特別に龍騎士隊に運んでもらい親類を喜ばせたと言う。
披露宴会場はそれぞれの街で異なり、イグレシアは特設会場を作って二組合同で祝う事にしたのだ。

クラベルでは幼馴染の豪華な旅館で行ない、アルバでは何故か"人族は会費制"で入るアリウス・ムンディだ。
ペンタガラマでは超高級旅館エスピナでとり行う予定だ。
そして、全てゲレミオ経由の食材や料理人を使うので費用はゲレミオ持ちとした。
その分特別料理を作り内外に宣伝を含めて豪華さと美味しさを広めてもらう為だ。

準備が進む中で肝心な事を忘れていた。
儀式の司祭を誰に行なってもらうかだ。
当然だがエルヴィーノは出来ない。
「んっん。んっっんっんっ!」
一族専用の応接室でロリと密談していると誰かがワザとらしい咳払いをしている。
実は聞こえる様に話していたのだが食いついた。

「曾御爺様、喉の具合が悪いのですか?」
意地悪なロリだ。
「いや、何でも無いぞ」
そして又話し出す。
「お父様は司祭の経験が少ないから任せられないし、御爺様は多忙過ぎて頼み辛いわ。あぁ、どこかに経験豊富で頼りがいがある司祭はいないかしらぁ?」
「んっっんっんっんっっんっ」

明らかに意識した咳払いだ。
これ以上はお互いに場が悪くなると思い助言する。
「ロリ、俺凄い人知ってるけどさぁ、とても権威の有る方だから頼まれてくれるか不安なんだよ」
「ええっ誰それ」
「ほらっ」
「あっ、でも無理よ。教会の一番上よ。教祖様の下だけど、実質は教会の支配者よ。一般人の結婚式で仲介人に”高名な大司教様”が取り入ってくれるかなぁ?」
「でも一般人だから良いのかもな」
「どうして?」
「分け隔てなく接するお姿を見て尊敬の眼差しで下々の者が見るからさ」
「なるほどぉ。じゃ一緒に聞いて見ようか」

小声でも聞かれて咳払いしていたのに、最後は普通に話していたエルヴィーノとロリだった。
「「大司教様」」
「うむ。みなまで言うな。解かっておる」
快諾をもらって((ヨシッ!)) ギュッと手を握った2人だった。
この事は当日まで秘密にして、結婚式で仲介人は国王がするみたい、と嘘の情報を流した。
フォーレはともかくリカルドは驚くだろう。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


全ては計画通りに進み、大聖堂では大司教の参入でリカルドの男泣きが見られて楽しかった。
各地の披露宴にも顔を出し祝いの言葉を述べ、カランバノ王国とも国交を開く事となり明るい未来が約束されていたフォーレ。
花嫁のグラナダを嬉しそうに迎え入れた家族を見て微笑ましかった。
リリオの美しさに驚愕するリカルドの知人達は何度も見ていた。
そして料理だ。

今回は国王の号令の元、ゲレミオ傘下の料理店が趣向を凝らした見た目にも楽しい料理の数々が並んでいた。
それを見て驚き、食べて驚き、飲み物でも驚き、鮮烈な都会の印象を体感したカランバノ王国の人達。
当然その後は想像が付く。
自国でも・・・だ。それはフェーレに任せよう。
いずれゲレミオの参入が有るのならば国交が開くと同時に始めた方が良いだろうし、最後の宴で決めれば良いだろう。

そして最後はゲレミオでの宴だ。
ラ・ノチェ・デル・カ夜の帝國城スティリオ・インペリオでは、決して披露宴では使わない高級食材を使った料理が目の前で作られるのだ。
これ以上の旨さは無いだろう。
ゲレミオの幹部達が四人を祝ってくれている。
そんな中でカランバノ王国との国交やゲレミオの参入も話題になり担当を選考して行った。
それぞれの王国の考えも有り、ゲレミオと共同会議を進める事となった。

翌日、エルヴィーノは王都イグレシアに有るゲレミオの事務所で打ち合わせをしていた。
連日の披露宴で酔いが抜け切っていない連中が目の前に並んでいる。
普段通りのやり取りを済ませ今後のカランバノ王国の予定や担当を決めている最中の出来事だった。
それは何の前触れも無く、エルヴィーノの頭上に現れて徐々に降りてきた。

金色に輝く魔法陣だ。
咄嗟に気づき回避しようとしたが足と頭が固定されているようだった。
懐に入っていた紙とペンで”誰かに召喚されている心配するな、直ぐ戻るロリとパウリナに聞け”走り書き終えると、そこにエルヴィーノはおらず衣服だけがバサリと崩れ落ちた。

「おいっこれを見ろ」
フォーレが走り書きされたメモを見るが読めなかった。
「これはエルフ語ですね」

リカルドがリリオを呼び出す。
表面上ゲレミオ幹部は冷静だった。
消えた理由と問題解決策を書き残してあったからだ。
それと不安にならない様に直ぐに戻るとも書いてあるのだから。
しかし一部では敵対意識の強い者もいた。

「これは我らに対しての宣戦布告と受け取った。直ぐに陛下救出部隊を編成し捜索を始めるぞ!」
鼻息の荒いガンソだ。
「俺もガンソの意見に賛成だが、まずはメモに書いてあるように御妃様方の意見を聞く方が先だな」
「直ぐに神聖女様の元に参ります」
フォーレの意見を聞いてリカルドがリリオとメモを持って向かった。






誰かに召喚されました。
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