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第7章 レース編
第201話 本番
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医療班が闘技会場で横たわる2人の男に駆けつける。
確認した後、解説者に向けて案内板の様な板を見せた。
”意識不明だが生存している”
まるで用意してあったかのような内容の板と2人を普通に担架で運ぶ者達だ。
「皆様、2人は意識を失っただけの様です。あの龍王杯闘技大会で頂点に立った2人が、成す統べも無く意識を刈り取られ戦闘不能にさせた群青の聖戦士様の魔法の威力と、その魔法が観衆に及ばない様、完璧な防御魔法で防いで頂いたサンクタ・フェミナ様に感謝致しましょう!」
会場からは惜しみない拍手と、二派に別れて”聖戦士と神聖女”の連呼が轟いている。
大体この様な場合は民衆の感情は際限が無い。
そこで、司会者が割って入る。
「それでは、最強のお二人には暫らく休んで頂いて、こちらの方からご説明があります」
大活躍の2人が奥に入っても肩書きの連呼は続いている。
司会進行兼解説者の近くから闘技場内に入った者を知る者は多い。
しかし、これから語られる事を知る者は皆無だった。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
少し時間はさかのぼり、アレグリアのとある場所は異様な雰囲気だった。
どんな時代でもその世界の決まりが有り、それを無視する者が存在する。
そして規則に従わない者は捕まり処罰される。
ほとんどの者が処刑されるのが三ヵ国の決まりだ。
そしてその処刑者が集められた。
重犯罪者、軽犯罪者問わず、今後国家に必要とされない者は例外無く処刑される。
ただし、秘密の計画が有った為に処理されず一か所に集められたのだった。
因みに犯罪者が捕まってから処刑されるまでの費用の全ては一族に請求される。
これは一族からも徹底して犯罪を出さない様にする為、敷いては国家の治安を良くする為の方法で、当初は反発も有ったが種族部族での揉め事も少なくなっているので族長達も喜んでいた。
100人は越える獣人や人族に説明した。
「お前達に喜んでもらえる話が有る」
「「「・・・」」」
「まぁ、そんなに警戒するな。これから話す事は全て本当の事だ」
犯罪者たちは無視していた。
「お前達にはそれぞれの武器や防具を返す」
「「「・・・」」」
「そして有る場所で魔物と戦って欲しい。勿論魔法も使ってだ」
「「「ザワザワ」」」
「そして、魔物を全て倒したら、お前ら全員釈放だ」
「「「おおおおっ」」」
喜ぶ者と無視する者が半々だった。
「オイ、その魔物はどんなヤツだ」
「実は俺も聞かされてない。しかし、この約束は我らが王の名において約束するものだ。嘘では無い」
「戦いに参加する者は勝って釈放の自由が有るが、拒否するなら即処刑だ」
囚人達に選択の余地は無い。直ぐ死ぬか、恐怖の中で苦しんで死ぬかだ。勿論全員が闘うそうだ。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
「それではアベス族の中でも、特に勇猛果敢なアギラ族の長老に語って頂きましょう」
多少拍手が聞こえている。
「これから儂が話すのは我がアギラ族に伝わる古い口伝じゃ。アベスの者でも知る者は少ないだろうが真実なので聞いて欲しい」
静けさを取り戻した闘技場だ。
「むかしむかし、まだこの獣王国と言う国が無かった頃、いくつもの種族の国が有ったそうだ。それらの時代よりも更に昔の時代に、この大陸が魔物に食いつぶされたと伝承が残っておる。その魔物は生き物の全て、草木に水も何もかも食いつくし、物凄い繁殖力で大陸を飲みこんだそうだ」
ざわつく観客。
「皆、疑問に思うだろう。何故、儂らアギラ族に伝わるのかと。簡単じゃ。儂らの祖先は逃げたのじゃ」
ざわつく観客。
「儂らにはこの翼が有るから、別の大陸に逃げたのじゃ」
ざわつきが大きくなる。
「この大陸はその魔物に蹂躙され獣人達は滅んだと言う。その後その魔物が何故居なくなったか知らぬが、獣人の先祖がこの大地を取り戻し今に至るのだが、年寄りの話しは、たまぁに本当の事があると思ってくれカッカッカッカッ!」
笑いながら奥に消えて行った。
「会場の皆様アギラ族の族長のお話如何でしたでしょうか? 私は信じられませんねぇ、我らの御先祖が蹂躙されたなどとは。おおっと、ここで連絡が有りました。本日の最重要決戦の準備が整ったようです。会場の隅から戦いに向う戦士たちが入場致します」
どう見ても戦士とは程遠い姿の者達が大勢競技場の中心へ集まって行く。
バラバラの装備に如何わしい人相の者ばかりだった。
“戦士達”が会場に出そろった所で司会者が説明する。
「皆様お気づきになりましたでしょうか? 先程からの広域防御壁が無くなっていません」
気になっていた観衆が騒ぎ出す。
「その魔法壁と会場には150人の屈強な戦士たちが待機しております。そしてぇぇぇ、長老の御言葉」
ざわめきが凄い。
「この場に居る皆様。覚悟は宜しいでしょうかぁぁぁぁ? 太古の魔物ラナ・デプレタドルを召喚して頂きます。黒龍王様ぁぁぁお願いしまぁぁぁぁす!」
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
医務室に運ばれた2人の義父にトドス・マキシモ・クラールを使い無理やり起こした。
目が覚めた2人の前には最愛の妻子が腕を組んで見ていた。
「「あなた」」
「「ハイ」」
しょぼくれた返事だった。
全て理解したのだろう。
目の前で免罪符が燃やされる一部始終を見ていた2人は泣きそうだった。
冷酷な母娘が告げた。
「では、今後あなた達の行動は全て日報で出す様に」
頷いた2人を可哀想に思ったが切り捨てよう。
「じゃ私達は娘達の晴れ姿を見ますが、あなた達はどうしますか?」
何も聞いていない2人は付いて行くらしい。
タイミング良く族長の説明が終わり、司会者が黒龍王を呼んだところだった。
召喚にあたり、事前に食事ヌキにして腹を空かせた魔物を準備してもらった。
手を空に掲げ魔法陣を唱えると大きな魔法陣が闘技場の大地に描かれた。
発光した魔法陣からいくつもの巨大な魔物が現れた。
キヤァァァァ! と奇声があちらこちらから発せられる。
見るのは初めてだろうに。
遺伝子が覚えているのか、それとも単に気持ち悪いからなのか。
特に女性が全否定している。
現われたのは体長4~5mで体格の良い獣人の倍は有る。
その体型は人型で、太い足に腕、分厚い胸板。
がに股で歩き、両手はぶらぶらさせている。
そして大きな口。
人型だが首が無い。
肩から延びた頭は、まるで爬虫類の様だけど鱗は無い様に見える。
肩まである大きな口の上に大きな目が二つ。
ギョロッとしていた。
全体に濃い緑っぽい皮膚だが腹は白い。
そして、注文通り腹を空かせて涎が凄い。
そして何の前触れも無く始まった捕食と言う殺戮。
デプレタドルにとっては単に食事なのだ。
しかし、人族と獣人族にとっては虐殺でしかなかった。
犯罪者も一応腕に覚えの有る者が多い。
しかし、服のまま。鎧のまま手足を引きちぎられ、飲み込まれて行く。
観客はその光景を黙って見せられていた。
一部の犯罪者は剣で、魔法で反撃していた。
しかし、魔物には一切通用しない。
簡単に切れそうな皮膚は一切傷が無かった。
次々と食べられていく同朋に慈悲を与えて欲しいと懇願する観客達。
大勢いた犯罪者があと数人に成った時司会者が空に向けて指を指し叫んだ。
「皆さん! あそこを御覧ください。大空から勢い良く飛んで来る、いや駆けています。我らの守護神、聖戦士様と神聖女様だぁぁぁぁぁ!」
会場が本日最大の歓声を撒き上げた。
「魔物達が奇声を発しています。無傷の戦士はおりません。はたして生存者はいるのでしょうか?」
聖戦士様と神聖女様は血塗られた闘技場と魔物を眼下にして空中で佇んでいた。
まるで、生存者を探しているように見えたのだろう。
「聖戦士様と神聖女様が神罰を下されると伺っておりますので皆さんも、今一度括目してくださいぃぃ!」
(ねぇキモイから早く終わらせようよ)
(えぇ、じゃ始めようかしら)
(せぇのぉでぇ)
((イラ・デ・ディオス))
先程とは比べ物にならない程の光と音が闘技会場を埋め尽くした。
ほんの一瞬だが目を閉じた観客は次の瞬間に理解した。
魔物の姿は無く。
大量の肉片が”何か”を物語っていた。
そして次第に声がした。
「「「聖戦士様ぁ」」」と「「「神聖女様ぁ」」」だ。
声は次第に大きくなる。
熱狂。
そう言わざるを得ない。
先ほどまで繰り広げられた魔物による殺戮を一瞬で無に帰したのだから。
肢体を引きちぎられ生きたまま飲みこまれて行く同朋を見た後の神罰と言える圧倒的な力で魔物を滅ぼしたのだから観客の意識は・・・狂るっているかのようだった。
一応、不測の事態を考慮して扇動する為に、今日の内容を知るベルデボラが2人を褒めちぎるように闘技会場のあちらこちらで話している。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
催し物は夕方には終わったが、アレグリアの街は熱気に満ちていた。
神聖女であるサンクタ・フェミナの圧倒的な魔法防御壁を長時間発動させる力。
魔力の少ない獣人がイヤでも理解できる程だ。
勿論聖女達教会関係者はベタ褒めです。
そして聖戦士と呼ばれていたパウリナは、当然ながら獣人達の話題の中心となり、もはや神扱いだった。
それは、あの父親も同じで娘の前で泣きじゃくっていた。
勿論意識を飛ばされた事では無く、伝説の神獣降臨を目の前で変化してくれたからだ。
何よりも力にこだわり、辿り付けなかった高みに娘が到達した喜びが、目から溢れているのだろう。
カスティリオ・エスピナに戻って”用意してあった”娘達のお祝いの宴に顔を出す父親達。
当然夫として同行する。
義父たちはエルヴィーノに文句は言わない。
彼らは勝手に理解したのだ。
((婿は母娘の操り人形だ))と。
当っては居ないが、外れてもいない。
(家庭円満の為には誰かが犠牲にならなければ・・・)
自らが献身的に犠牲になり大人しくしている義父たちを見て少しだけ手を貸そうと思った自分を押し殺したエルヴィーノだった。
宴では召使い達も楽しそうだ。
全ての女性達は楽しく食事をしている。
族長達もだ。
一応作り笑いをしている2人が居た。
今回は獣王国バリエンテと聖魔法王国アルモニアの”問題”たったので、ロサリー達は来ていない。
楽しい一時に着信の知らせがあった。
内容を確認した2人はお互いを見て頷いた。
(女同士で話しが有るから来て。ロザリー)
☆
魔物達の奇声=ゲロゲロリもしくはケロゲーロ
確認した後、解説者に向けて案内板の様な板を見せた。
”意識不明だが生存している”
まるで用意してあったかのような内容の板と2人を普通に担架で運ぶ者達だ。
「皆様、2人は意識を失っただけの様です。あの龍王杯闘技大会で頂点に立った2人が、成す統べも無く意識を刈り取られ戦闘不能にさせた群青の聖戦士様の魔法の威力と、その魔法が観衆に及ばない様、完璧な防御魔法で防いで頂いたサンクタ・フェミナ様に感謝致しましょう!」
会場からは惜しみない拍手と、二派に別れて”聖戦士と神聖女”の連呼が轟いている。
大体この様な場合は民衆の感情は際限が無い。
そこで、司会者が割って入る。
「それでは、最強のお二人には暫らく休んで頂いて、こちらの方からご説明があります」
大活躍の2人が奥に入っても肩書きの連呼は続いている。
司会進行兼解説者の近くから闘技場内に入った者を知る者は多い。
しかし、これから語られる事を知る者は皆無だった。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
少し時間はさかのぼり、アレグリアのとある場所は異様な雰囲気だった。
どんな時代でもその世界の決まりが有り、それを無視する者が存在する。
そして規則に従わない者は捕まり処罰される。
ほとんどの者が処刑されるのが三ヵ国の決まりだ。
そしてその処刑者が集められた。
重犯罪者、軽犯罪者問わず、今後国家に必要とされない者は例外無く処刑される。
ただし、秘密の計画が有った為に処理されず一か所に集められたのだった。
因みに犯罪者が捕まってから処刑されるまでの費用の全ては一族に請求される。
これは一族からも徹底して犯罪を出さない様にする為、敷いては国家の治安を良くする為の方法で、当初は反発も有ったが種族部族での揉め事も少なくなっているので族長達も喜んでいた。
100人は越える獣人や人族に説明した。
「お前達に喜んでもらえる話が有る」
「「「・・・」」」
「まぁ、そんなに警戒するな。これから話す事は全て本当の事だ」
犯罪者たちは無視していた。
「お前達にはそれぞれの武器や防具を返す」
「「「・・・」」」
「そして有る場所で魔物と戦って欲しい。勿論魔法も使ってだ」
「「「ザワザワ」」」
「そして、魔物を全て倒したら、お前ら全員釈放だ」
「「「おおおおっ」」」
喜ぶ者と無視する者が半々だった。
「オイ、その魔物はどんなヤツだ」
「実は俺も聞かされてない。しかし、この約束は我らが王の名において約束するものだ。嘘では無い」
「戦いに参加する者は勝って釈放の自由が有るが、拒否するなら即処刑だ」
囚人達に選択の余地は無い。直ぐ死ぬか、恐怖の中で苦しんで死ぬかだ。勿論全員が闘うそうだ。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
「それではアベス族の中でも、特に勇猛果敢なアギラ族の長老に語って頂きましょう」
多少拍手が聞こえている。
「これから儂が話すのは我がアギラ族に伝わる古い口伝じゃ。アベスの者でも知る者は少ないだろうが真実なので聞いて欲しい」
静けさを取り戻した闘技場だ。
「むかしむかし、まだこの獣王国と言う国が無かった頃、いくつもの種族の国が有ったそうだ。それらの時代よりも更に昔の時代に、この大陸が魔物に食いつぶされたと伝承が残っておる。その魔物は生き物の全て、草木に水も何もかも食いつくし、物凄い繁殖力で大陸を飲みこんだそうだ」
ざわつく観客。
「皆、疑問に思うだろう。何故、儂らアギラ族に伝わるのかと。簡単じゃ。儂らの祖先は逃げたのじゃ」
ざわつく観客。
「儂らにはこの翼が有るから、別の大陸に逃げたのじゃ」
ざわつきが大きくなる。
「この大陸はその魔物に蹂躙され獣人達は滅んだと言う。その後その魔物が何故居なくなったか知らぬが、獣人の先祖がこの大地を取り戻し今に至るのだが、年寄りの話しは、たまぁに本当の事があると思ってくれカッカッカッカッ!」
笑いながら奥に消えて行った。
「会場の皆様アギラ族の族長のお話如何でしたでしょうか? 私は信じられませんねぇ、我らの御先祖が蹂躙されたなどとは。おおっと、ここで連絡が有りました。本日の最重要決戦の準備が整ったようです。会場の隅から戦いに向う戦士たちが入場致します」
どう見ても戦士とは程遠い姿の者達が大勢競技場の中心へ集まって行く。
バラバラの装備に如何わしい人相の者ばかりだった。
“戦士達”が会場に出そろった所で司会者が説明する。
「皆様お気づきになりましたでしょうか? 先程からの広域防御壁が無くなっていません」
気になっていた観衆が騒ぎ出す。
「その魔法壁と会場には150人の屈強な戦士たちが待機しております。そしてぇぇぇ、長老の御言葉」
ざわめきが凄い。
「この場に居る皆様。覚悟は宜しいでしょうかぁぁぁぁ? 太古の魔物ラナ・デプレタドルを召喚して頂きます。黒龍王様ぁぁぁお願いしまぁぁぁぁす!」
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
医務室に運ばれた2人の義父にトドス・マキシモ・クラールを使い無理やり起こした。
目が覚めた2人の前には最愛の妻子が腕を組んで見ていた。
「「あなた」」
「「ハイ」」
しょぼくれた返事だった。
全て理解したのだろう。
目の前で免罪符が燃やされる一部始終を見ていた2人は泣きそうだった。
冷酷な母娘が告げた。
「では、今後あなた達の行動は全て日報で出す様に」
頷いた2人を可哀想に思ったが切り捨てよう。
「じゃ私達は娘達の晴れ姿を見ますが、あなた達はどうしますか?」
何も聞いていない2人は付いて行くらしい。
タイミング良く族長の説明が終わり、司会者が黒龍王を呼んだところだった。
召喚にあたり、事前に食事ヌキにして腹を空かせた魔物を準備してもらった。
手を空に掲げ魔法陣を唱えると大きな魔法陣が闘技場の大地に描かれた。
発光した魔法陣からいくつもの巨大な魔物が現れた。
キヤァァァァ! と奇声があちらこちらから発せられる。
見るのは初めてだろうに。
遺伝子が覚えているのか、それとも単に気持ち悪いからなのか。
特に女性が全否定している。
現われたのは体長4~5mで体格の良い獣人の倍は有る。
その体型は人型で、太い足に腕、分厚い胸板。
がに股で歩き、両手はぶらぶらさせている。
そして大きな口。
人型だが首が無い。
肩から延びた頭は、まるで爬虫類の様だけど鱗は無い様に見える。
肩まである大きな口の上に大きな目が二つ。
ギョロッとしていた。
全体に濃い緑っぽい皮膚だが腹は白い。
そして、注文通り腹を空かせて涎が凄い。
そして何の前触れも無く始まった捕食と言う殺戮。
デプレタドルにとっては単に食事なのだ。
しかし、人族と獣人族にとっては虐殺でしかなかった。
犯罪者も一応腕に覚えの有る者が多い。
しかし、服のまま。鎧のまま手足を引きちぎられ、飲み込まれて行く。
観客はその光景を黙って見せられていた。
一部の犯罪者は剣で、魔法で反撃していた。
しかし、魔物には一切通用しない。
簡単に切れそうな皮膚は一切傷が無かった。
次々と食べられていく同朋に慈悲を与えて欲しいと懇願する観客達。
大勢いた犯罪者があと数人に成った時司会者が空に向けて指を指し叫んだ。
「皆さん! あそこを御覧ください。大空から勢い良く飛んで来る、いや駆けています。我らの守護神、聖戦士様と神聖女様だぁぁぁぁぁ!」
会場が本日最大の歓声を撒き上げた。
「魔物達が奇声を発しています。無傷の戦士はおりません。はたして生存者はいるのでしょうか?」
聖戦士様と神聖女様は血塗られた闘技場と魔物を眼下にして空中で佇んでいた。
まるで、生存者を探しているように見えたのだろう。
「聖戦士様と神聖女様が神罰を下されると伺っておりますので皆さんも、今一度括目してくださいぃぃ!」
(ねぇキモイから早く終わらせようよ)
(えぇ、じゃ始めようかしら)
(せぇのぉでぇ)
((イラ・デ・ディオス))
先程とは比べ物にならない程の光と音が闘技会場を埋め尽くした。
ほんの一瞬だが目を閉じた観客は次の瞬間に理解した。
魔物の姿は無く。
大量の肉片が”何か”を物語っていた。
そして次第に声がした。
「「「聖戦士様ぁ」」」と「「「神聖女様ぁ」」」だ。
声は次第に大きくなる。
熱狂。
そう言わざるを得ない。
先ほどまで繰り広げられた魔物による殺戮を一瞬で無に帰したのだから。
肢体を引きちぎられ生きたまま飲みこまれて行く同朋を見た後の神罰と言える圧倒的な力で魔物を滅ぼしたのだから観客の意識は・・・狂るっているかのようだった。
一応、不測の事態を考慮して扇動する為に、今日の内容を知るベルデボラが2人を褒めちぎるように闘技会場のあちらこちらで話している。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
催し物は夕方には終わったが、アレグリアの街は熱気に満ちていた。
神聖女であるサンクタ・フェミナの圧倒的な魔法防御壁を長時間発動させる力。
魔力の少ない獣人がイヤでも理解できる程だ。
勿論聖女達教会関係者はベタ褒めです。
そして聖戦士と呼ばれていたパウリナは、当然ながら獣人達の話題の中心となり、もはや神扱いだった。
それは、あの父親も同じで娘の前で泣きじゃくっていた。
勿論意識を飛ばされた事では無く、伝説の神獣降臨を目の前で変化してくれたからだ。
何よりも力にこだわり、辿り付けなかった高みに娘が到達した喜びが、目から溢れているのだろう。
カスティリオ・エスピナに戻って”用意してあった”娘達のお祝いの宴に顔を出す父親達。
当然夫として同行する。
義父たちはエルヴィーノに文句は言わない。
彼らは勝手に理解したのだ。
((婿は母娘の操り人形だ))と。
当っては居ないが、外れてもいない。
(家庭円満の為には誰かが犠牲にならなければ・・・)
自らが献身的に犠牲になり大人しくしている義父たちを見て少しだけ手を貸そうと思った自分を押し殺したエルヴィーノだった。
宴では召使い達も楽しそうだ。
全ての女性達は楽しく食事をしている。
族長達もだ。
一応作り笑いをしている2人が居た。
今回は獣王国バリエンテと聖魔法王国アルモニアの”問題”たったので、ロサリー達は来ていない。
楽しい一時に着信の知らせがあった。
内容を確認した2人はお互いを見て頷いた。
(女同士で話しが有るから来て。ロザリー)
☆
魔物達の奇声=ゲロゲロリもしくはケロゲーロ
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