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第7章 レース編
第179話 アルバからクラベル
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「よおぉぉぉい。スタートオオオォォォォ!」
ドッゴオオォォォン!!
バオス・ホステで音量を最大にした合図と、大きなフエゴ・グロボが空に放たれて、全機が一斉に飛び出した。
レース会場からは凄い声援が飛び交っている。
第一回の記念すべき合図はマルソ殿にお願いしたのだ。
国別に並んだ選手が一斉に飛び出して行く。
川沿いを下り河口に着くのはアッと言う間だった。
それから海沿いを第一検問地のパルデルカ町へ向かうのだが、ここで各国に動きが有った。
それは各機の編成だ。
奇しくも各国が先頭から【小】【中】【大】と同じ隊列を組んだのだった。
因みにエルフ国はロザリーが作戦参謀。
聖魔法王国はプリマベラで、獣王国はアンドレアが担当していた。
この隊列は後方からの魔法攻撃を”盾”として受け、先頭の機体を先に行かせてから、敵が抜き際に後方の機体が魔法を放つ作戦だ。
海沿いのコースは特に障害物や入り組んだ順路では無いので単調だが油断している敵の機体に当てやすいし速度低下魔法を狙い撃ちされるだろう。
しかも、始まったばかりのレースで乱戦になっても面白くないので様子を見る為の布陣を各国の参謀が考えていた。
これには選手達全員が驚いていた。
特に問題も無く海沿いを過ぎて、街中に入って行く。
第一検問地パルデルカ町だ。
機体は所定の場所で待機させて、50m離れた検問場所まで行って所定の紙にスタンプを押してもらうと次の検問所へ向えるのだ。
すると、こんな所で差が出てしまった。
50mを全員が走る訳だが、遅い者が居るのだ。
戦闘訓練経験者は問題無いのだが、女性2人と司祭が遅い。
と言っても直ぐに女性達は追いつくのだがブオが特に遅い。
鍛えこんだ肉体は鋼の様な筋肉で、抜群の耐久力を持っているのだが走るのが遅かった。
パルデルカ町を出発した順位は(8,カニーチェ)、(3,フリオ・カデラ)、(5,バスティアン)、(4,リアム)、(7,ネル)、(9,ビエルナス)、(2,カミラ)、(1,ローガン)、(6,ブオ)の順だ。
ここでネル殿は走る際にカパシダ・フィジィカ・メホラを使ったのだが、機体に対してでは無く、攻撃魔法でも無いし、規約に取り決めて無かったので不問になった。
特筆すべきはカニーチェとフリオだろう。
三人同時のダッシュだが、兎に角カニーチェは足が早かった。
フリオもバスティアンを抑えて二番目にスタンプを貰っているのだ。
これがエマスコで送られて喜んだのは伯爵家だった。
勿論メイド長が一番喜んでいたのだが、表面には出さず普段通りの振る舞いをしていた。
レースは一部街中を進み郊外へと向かうのだった。
第二検問地のカルビィ町は内陸を城下街アルバに向う街道沿いをひたすら進むコースだ。
ここで若干だが先頭グループと第二グループに最後尾と別れた。
しかし、距離の差は余り無い。
先頭と最後尾は多少距離があるものの目視出来る距離だ。
そしてここでも魔法攻撃は誰も行なわない。
先頭グループはほぼ横一列で、第二グループは団子になっている。
唯一速度低下魔法を使って効果が有るのは最後尾のブオだが、今はまだその時では無いと誰もが思っていたし、各国の参謀たちもその様に指示していた。
順位は変わらずにカルビィ町に到着し、パルデルカ町と同様の手順で進むと順位に動きが有った。
(8,カニーチェ)、(3,フリオ・カデラ)、(5,バスティアン)、(4,リアム)、(7,ネル)、 (9,ビエルナス)、(1,ローガン)、(2,カミラ)、(6,ブオ)の順だ。
ローガンが1つ順位を上げたのだ。
そして向かうは第三検問地のナコル町。
一度河口に出てバレンディ川を上流に遡る様に進むと堤防沿いに観衆が叫んでおり、スタート地点では大勢の観衆が叫んでいた。
そして難所となる森林地帯だ。
入口が有り出口が有る。
どのように進んでも構わない、高度な操縦技術が必要とされる難易度の高い森林を抜けるコースだ。
先頭の三人は勢い良く入ると三方向に別れた。
これも参謀による対策の1つだ。
耐久性の低い【小】は出来る限り体当たりや衝撃を避け、最短で進むのが望ましいと。
だから先頭は”魔法攻撃”を使用せず自らの腕で森を抜けるのが望ましいと。
そして後方のグループは(4,リアム)、(7,ネル)、(9,ビエルナス)、(1,ローガン)、(2,カミラ)そして最後尾の(6,ブオ)だ。
森に入りネルはリアムの後ろを取っている。
そして仕掛ける事無く付いて来るとリアムに簡単にバレてしまうのだった。
(こいつ、森を出る直前に速度低下魔法を使う気だな。そうであれば・・・)
リアムは後ろを気にする事無く森の中を駆け巡って行った。
カミラとローガンは横二列で森の中を進んでおり、前方のビエルナスをターゲットにしていた。
1人でも複数でも着弾と同時に散開して敵の魔法に当たらない様にしなければならない。
しかも入り組んだ森の中を進みながらだ。
そして同じ大きさの機体に乗るカミラが仕掛ける。
森の中間あたりでカミラが魔法を放つチャンスが来た。
「リント!」
特に大きな声で無くても発動するのだが叫ぶように発したカミラは直ぐに気づいた。
大きな声だと気づかれると。
しかし、前方10mを飛ぶビエルナスには聞こえていなかったらしい。
急に速度が落ちた感じがしたビエルナス。
(しまったぁ、やられたぁ!)
そして左右から抜き去る機体を確認した。
「くそぉっ」
そうこうしている内に最後尾のブオに抜かれて森を抜けたビエルナスだった。
ビエルナスが悔しがる少し前、リアムの後ろをピッタリと続くネルだ。
そしてネルも気が付く。
(さては、細い隙間を探しているな)
リアムの考えはその通りで2人の機体の幅を生かせる狭い木々の隙間を探していたのだ。
【中】は通れても【大】は通れない木の並びをひたすら探すリアム。
そしてあとわずかで出口の手前に巨木が並んでいる。
遠目だが、その隙間を発見しジグザグに木々を交わしながら、その場所へ誘導する。
(ちっ、どうした。急に細かく動いて。出口が近いからか?)
勝手な思い込みで魔法を使いそうになるネル。
何時でも魔法を放てる余裕からか、あっという間にその場所に着く。
気づいた時は巨木が目の前に有り、慌てて「リント」と叫んで回避するが、側面から巨木に体当たりしてしまうネル殿だった。
一方リアム殿も着弾し速度が遅くなるが、巨木を抜けてもネルを確認出来なかった。
するとゆっくりと現われたネルに言い放つ。
「どうした。まさか木にぶつかって投げ出されたのか?」
「ガハハハッ。我がそのような失態を犯す訳が無かろう」
とは言っても機体の側面には鮮明にぶつかった後が残っていた。
「では先を行くぞ。ガハハハハッ」
もらった物は後で返せば良いと思っていたリアムを一瞬で追い越す三人がいた。
カミラとローガンにブオだ。
「リアム様御先に向います」と言い残して追い越して行ったブオ。
そして魔法が切れると横にはビエルナスが並んでいた。
先頭の三人は互いに牽制し順序に差は無かった。
もともと初日で決まる訳では無いので体力と魔法を温存していたのだ。
ほぼ同時に森を抜けた三人は第三検問地のナコル町を目指す。
ナコル町は町中の広場に検問場所が有り、街に入って出るまでは入り組んだ細い道がコースとなる。
初日の二番目の難所だ。
街に入り直角の曲がり角を三連続と、検問を過ぎてからのUカーブが二か所と直角が二か所を、間隔を変えて街角を利用してあるのだ。
勿論街には石壁を増やし防御力を高めて魔法も付与してある。
そして問題の直角の曲がり角の三連続に差し掛かる。
そして三機とも急減速だ。
一ヶ月の練習と、その場の一瞬の差で順位が決まった。
三連続の直角カーブを難なく越えて現れたのは先頭がフリオ。
二番手がカニーチェ。
三番手が今日コースを知ったバスティアンだ。
町の広場で機体を降り、必死で駆けてくるフリオの後ろにはカニーチェがピッタリと付いて来ており、スタンプをもらうと、あっさりとカニーチェが抜き返して行った。
とは言っても機体に乗り魔法を発動させると順位に余り変わりは無かった。
しかし、あくまでもスタンプを押した順で報告される為、(3,フリオ・カデラ)、(8,カニーチェ)、(5,バスティアン)、(7,ネル)、(2,カミラ)、(1,ローガン) (6,ブオ)、(4,リアム)、(9,ビエルナス)の順だ。
最後尾2人は直角三連続で順位が変わったのだった。
この報告を受けた公爵家では、もう大騒ぎだった。
ナタリーは涙ぐんでいるしグンデリックや他の兵士達は弟の様に可愛がっていたフリオが一位で現在も進んでいるからだ。
だが、そこは冷静なロザリー。
「皆さん、まだ始まったばかりですよ。この後順序がどう変わるかは分かりません」
静かになる一同に宣言する。
「ですが、どのような結果でも彼を称えて迎え入れましょう」
またまた大騒ぎになる。
そしてロザリーから国民にも同じ様に通達する事が出来ないのかと連絡が有った。
確かに途中で解れは面白さも倍増するだろう。
そこでエマスコを作り直し販売店に特製エマスコを置くようにした。
ガンソに説明し明日でも構わないからと言ったのだが、初日のレースが終わる前に全販売店に届きレース結果が知れ渡るようになった。
検問所を過ぎて次の難所のUカーブが二か所と直角が二か所だ。
順位が変わった。
カニーチェが足で稼いだ分をフリオ・カデラが度胸で詰め寄る。
バスティアンは様子を見ている感じで続いている。
そしてネル殿が相変わらず壁に激突しながら進むため、あっさりとカミラに抜かれてしまう。
ローガンとブオもネル殿に近づくが同じ旋回能力の為追い越す事は出来なかった。
そこにリアムとビエルナスが続いて最後尾グループとなる。
そして町を出る最終カーブから飛び出してきたのは二機並んでいた。
ベルデボラの特派員からの連絡では(3,フリオ・カデラ)、(8,カニーチェ)は同時並行、(5,バスティアン)、(2,カミラ)、(7,ネル)、(1,ローガン)、(6,ブオ)、(4,リアム)、(9,ビエルナス)だ。
コレを聞いた公爵家のエルフ達は一喜一憂していた。
二番手に追いつかれたと思い、ガックリしたがカミラが追い上げているので喜んでいるメイド達。
しかし、レース後ナコル町での顛末を聞いたメイド長は涙ぐんでいた。
グンデリックは「あのやろう帰ったら走り込みだぁ」と言って騒いでいたと言う。
☆
ベルデボラの特派員=順位が変わりそうな場所に配置してある。
速度低下魔法=リント
ドッゴオオォォォン!!
バオス・ホステで音量を最大にした合図と、大きなフエゴ・グロボが空に放たれて、全機が一斉に飛び出した。
レース会場からは凄い声援が飛び交っている。
第一回の記念すべき合図はマルソ殿にお願いしたのだ。
国別に並んだ選手が一斉に飛び出して行く。
川沿いを下り河口に着くのはアッと言う間だった。
それから海沿いを第一検問地のパルデルカ町へ向かうのだが、ここで各国に動きが有った。
それは各機の編成だ。
奇しくも各国が先頭から【小】【中】【大】と同じ隊列を組んだのだった。
因みにエルフ国はロザリーが作戦参謀。
聖魔法王国はプリマベラで、獣王国はアンドレアが担当していた。
この隊列は後方からの魔法攻撃を”盾”として受け、先頭の機体を先に行かせてから、敵が抜き際に後方の機体が魔法を放つ作戦だ。
海沿いのコースは特に障害物や入り組んだ順路では無いので単調だが油断している敵の機体に当てやすいし速度低下魔法を狙い撃ちされるだろう。
しかも、始まったばかりのレースで乱戦になっても面白くないので様子を見る為の布陣を各国の参謀が考えていた。
これには選手達全員が驚いていた。
特に問題も無く海沿いを過ぎて、街中に入って行く。
第一検問地パルデルカ町だ。
機体は所定の場所で待機させて、50m離れた検問場所まで行って所定の紙にスタンプを押してもらうと次の検問所へ向えるのだ。
すると、こんな所で差が出てしまった。
50mを全員が走る訳だが、遅い者が居るのだ。
戦闘訓練経験者は問題無いのだが、女性2人と司祭が遅い。
と言っても直ぐに女性達は追いつくのだがブオが特に遅い。
鍛えこんだ肉体は鋼の様な筋肉で、抜群の耐久力を持っているのだが走るのが遅かった。
パルデルカ町を出発した順位は(8,カニーチェ)、(3,フリオ・カデラ)、(5,バスティアン)、(4,リアム)、(7,ネル)、(9,ビエルナス)、(2,カミラ)、(1,ローガン)、(6,ブオ)の順だ。
ここでネル殿は走る際にカパシダ・フィジィカ・メホラを使ったのだが、機体に対してでは無く、攻撃魔法でも無いし、規約に取り決めて無かったので不問になった。
特筆すべきはカニーチェとフリオだろう。
三人同時のダッシュだが、兎に角カニーチェは足が早かった。
フリオもバスティアンを抑えて二番目にスタンプを貰っているのだ。
これがエマスコで送られて喜んだのは伯爵家だった。
勿論メイド長が一番喜んでいたのだが、表面には出さず普段通りの振る舞いをしていた。
レースは一部街中を進み郊外へと向かうのだった。
第二検問地のカルビィ町は内陸を城下街アルバに向う街道沿いをひたすら進むコースだ。
ここで若干だが先頭グループと第二グループに最後尾と別れた。
しかし、距離の差は余り無い。
先頭と最後尾は多少距離があるものの目視出来る距離だ。
そしてここでも魔法攻撃は誰も行なわない。
先頭グループはほぼ横一列で、第二グループは団子になっている。
唯一速度低下魔法を使って効果が有るのは最後尾のブオだが、今はまだその時では無いと誰もが思っていたし、各国の参謀たちもその様に指示していた。
順位は変わらずにカルビィ町に到着し、パルデルカ町と同様の手順で進むと順位に動きが有った。
(8,カニーチェ)、(3,フリオ・カデラ)、(5,バスティアン)、(4,リアム)、(7,ネル)、 (9,ビエルナス)、(1,ローガン)、(2,カミラ)、(6,ブオ)の順だ。
ローガンが1つ順位を上げたのだ。
そして向かうは第三検問地のナコル町。
一度河口に出てバレンディ川を上流に遡る様に進むと堤防沿いに観衆が叫んでおり、スタート地点では大勢の観衆が叫んでいた。
そして難所となる森林地帯だ。
入口が有り出口が有る。
どのように進んでも構わない、高度な操縦技術が必要とされる難易度の高い森林を抜けるコースだ。
先頭の三人は勢い良く入ると三方向に別れた。
これも参謀による対策の1つだ。
耐久性の低い【小】は出来る限り体当たりや衝撃を避け、最短で進むのが望ましいと。
だから先頭は”魔法攻撃”を使用せず自らの腕で森を抜けるのが望ましいと。
そして後方のグループは(4,リアム)、(7,ネル)、(9,ビエルナス)、(1,ローガン)、(2,カミラ)そして最後尾の(6,ブオ)だ。
森に入りネルはリアムの後ろを取っている。
そして仕掛ける事無く付いて来るとリアムに簡単にバレてしまうのだった。
(こいつ、森を出る直前に速度低下魔法を使う気だな。そうであれば・・・)
リアムは後ろを気にする事無く森の中を駆け巡って行った。
カミラとローガンは横二列で森の中を進んでおり、前方のビエルナスをターゲットにしていた。
1人でも複数でも着弾と同時に散開して敵の魔法に当たらない様にしなければならない。
しかも入り組んだ森の中を進みながらだ。
そして同じ大きさの機体に乗るカミラが仕掛ける。
森の中間あたりでカミラが魔法を放つチャンスが来た。
「リント!」
特に大きな声で無くても発動するのだが叫ぶように発したカミラは直ぐに気づいた。
大きな声だと気づかれると。
しかし、前方10mを飛ぶビエルナスには聞こえていなかったらしい。
急に速度が落ちた感じがしたビエルナス。
(しまったぁ、やられたぁ!)
そして左右から抜き去る機体を確認した。
「くそぉっ」
そうこうしている内に最後尾のブオに抜かれて森を抜けたビエルナスだった。
ビエルナスが悔しがる少し前、リアムの後ろをピッタリと続くネルだ。
そしてネルも気が付く。
(さては、細い隙間を探しているな)
リアムの考えはその通りで2人の機体の幅を生かせる狭い木々の隙間を探していたのだ。
【中】は通れても【大】は通れない木の並びをひたすら探すリアム。
そしてあとわずかで出口の手前に巨木が並んでいる。
遠目だが、その隙間を発見しジグザグに木々を交わしながら、その場所へ誘導する。
(ちっ、どうした。急に細かく動いて。出口が近いからか?)
勝手な思い込みで魔法を使いそうになるネル。
何時でも魔法を放てる余裕からか、あっという間にその場所に着く。
気づいた時は巨木が目の前に有り、慌てて「リント」と叫んで回避するが、側面から巨木に体当たりしてしまうネル殿だった。
一方リアム殿も着弾し速度が遅くなるが、巨木を抜けてもネルを確認出来なかった。
するとゆっくりと現われたネルに言い放つ。
「どうした。まさか木にぶつかって投げ出されたのか?」
「ガハハハッ。我がそのような失態を犯す訳が無かろう」
とは言っても機体の側面には鮮明にぶつかった後が残っていた。
「では先を行くぞ。ガハハハハッ」
もらった物は後で返せば良いと思っていたリアムを一瞬で追い越す三人がいた。
カミラとローガンにブオだ。
「リアム様御先に向います」と言い残して追い越して行ったブオ。
そして魔法が切れると横にはビエルナスが並んでいた。
先頭の三人は互いに牽制し順序に差は無かった。
もともと初日で決まる訳では無いので体力と魔法を温存していたのだ。
ほぼ同時に森を抜けた三人は第三検問地のナコル町を目指す。
ナコル町は町中の広場に検問場所が有り、街に入って出るまでは入り組んだ細い道がコースとなる。
初日の二番目の難所だ。
街に入り直角の曲がり角を三連続と、検問を過ぎてからのUカーブが二か所と直角が二か所を、間隔を変えて街角を利用してあるのだ。
勿論街には石壁を増やし防御力を高めて魔法も付与してある。
そして問題の直角の曲がり角の三連続に差し掛かる。
そして三機とも急減速だ。
一ヶ月の練習と、その場の一瞬の差で順位が決まった。
三連続の直角カーブを難なく越えて現れたのは先頭がフリオ。
二番手がカニーチェ。
三番手が今日コースを知ったバスティアンだ。
町の広場で機体を降り、必死で駆けてくるフリオの後ろにはカニーチェがピッタリと付いて来ており、スタンプをもらうと、あっさりとカニーチェが抜き返して行った。
とは言っても機体に乗り魔法を発動させると順位に余り変わりは無かった。
しかし、あくまでもスタンプを押した順で報告される為、(3,フリオ・カデラ)、(8,カニーチェ)、(5,バスティアン)、(7,ネル)、(2,カミラ)、(1,ローガン) (6,ブオ)、(4,リアム)、(9,ビエルナス)の順だ。
最後尾2人は直角三連続で順位が変わったのだった。
この報告を受けた公爵家では、もう大騒ぎだった。
ナタリーは涙ぐんでいるしグンデリックや他の兵士達は弟の様に可愛がっていたフリオが一位で現在も進んでいるからだ。
だが、そこは冷静なロザリー。
「皆さん、まだ始まったばかりですよ。この後順序がどう変わるかは分かりません」
静かになる一同に宣言する。
「ですが、どのような結果でも彼を称えて迎え入れましょう」
またまた大騒ぎになる。
そしてロザリーから国民にも同じ様に通達する事が出来ないのかと連絡が有った。
確かに途中で解れは面白さも倍増するだろう。
そこでエマスコを作り直し販売店に特製エマスコを置くようにした。
ガンソに説明し明日でも構わないからと言ったのだが、初日のレースが終わる前に全販売店に届きレース結果が知れ渡るようになった。
検問所を過ぎて次の難所のUカーブが二か所と直角が二か所だ。
順位が変わった。
カニーチェが足で稼いだ分をフリオ・カデラが度胸で詰め寄る。
バスティアンは様子を見ている感じで続いている。
そしてネル殿が相変わらず壁に激突しながら進むため、あっさりとカミラに抜かれてしまう。
ローガンとブオもネル殿に近づくが同じ旋回能力の為追い越す事は出来なかった。
そこにリアムとビエルナスが続いて最後尾グループとなる。
そして町を出る最終カーブから飛び出してきたのは二機並んでいた。
ベルデボラの特派員からの連絡では(3,フリオ・カデラ)、(8,カニーチェ)は同時並行、(5,バスティアン)、(2,カミラ)、(7,ネル)、(1,ローガン)、(6,ブオ)、(4,リアム)、(9,ビエルナス)だ。
コレを聞いた公爵家のエルフ達は一喜一憂していた。
二番手に追いつかれたと思い、ガックリしたがカミラが追い上げているので喜んでいるメイド達。
しかし、レース後ナコル町での顛末を聞いたメイド長は涙ぐんでいた。
グンデリックは「あのやろう帰ったら走り込みだぁ」と言って騒いでいたと言う。
☆
ベルデボラの特派員=順位が変わりそうな場所に配置してある。
速度低下魔法=リント
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