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第6章 棘城編2

第166話 言い訳

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巨大な龍が一万の敵を焼き滅ぼした事を遠いとは言え目の前で見ていたから国中の者が喜んでいたが、浮かれてばかりも居られないのでアポストルに指示を出し戦場の確認をさせた。

戦意の無い者は手厚く看護し国に送らせる様にするのだ。
助かりそうも無い者には慈悲の死を与え全て集めて弔ってやる。
戦後の処理を任せた。

案の定、引き返してきた逃げ出し組は重臣からのお達しで二拓を迫られていた。
地位と財産の没収か他国に行くかだ。
全員が没収を選んだので地位は剥奪。
一般国民として許され財産は五分の一にされ家も一般人の住む家に変えられた。
それでも普通の暮らしが出来るだけマシだと仲間だった重臣から慰められる。
敗戦国に行けば、どんな目に合うか解らないからだ。
”あの時”の選択が間違っていたと後悔するが時既に遅し。


宴会は遅くまで盛り上がっている。
途中フロルと抜け出して約束の物をもらう為に宝物庫へ向かった。

(コレです)
(じゃ貰うよ)
何の変哲も無い黒い石だ。

(じゃ)
(待って、あのぉ、もう一度だけ子種をください)
 可愛い女の子にそんな事を言わせて帰る訳にもいかなかった。

(じゃ夜中に帰るからね)
頷いたフロルに数回、お望みの物を与えて深夜に転移して戻った。
2人の妻が息子のエアハルトと娘のクララ四人で仲良く寝ているのだ。
そこに割り込むのは気が引けたのでソファに横になる。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



翌朝、気持ち良く寝ていたフロルが起きた。
誰も居ない部屋。
昨日までの事が夢だったのかも知れないと起きて顔洗いに行こうとしたら机の上にキラキラ輝く物が目に入った。
それは短剣で、周りに宝石が散りばめられていて龍の紋章も入っている。
エルヴイーノはこの短剣に細工をした。
それはオスクロ・マヒア暗黒魔法が使える者でしか鞘から抜けなくしたのだ。

もしも、万が一自分の子が出来て、魔法が使えるなら鞘から抜いた時にオスクロ・マヒアの扱い方が分かるように魔法を付与したのだ。
その短剣を抱きしめてすすり泣くフロル。
そこにリサが新しい時代の幕開けを伝えに来た。

「女王様ぁ朝ですよぉ起きてくださぁーい」

その後、正式に女王へと戴冠しフロル・イスラと名乗る。
フロルには黒髪黒目の男の子が生まれボノス・M・イスラと名付けた。
その地域に存在しない魔法を使える子として国を統合し沢山の子孫を残す。
フロルは生涯独身を通し子孫にはMを名前に付けた。
(Mはモンドリアンの血族を表す)



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



一方のエルヴイーノは

「お父様、こんな所で寝てたら風邪ひくよ」
「パブ!」

エアハルトとクララにバシッバシッと頬を叩かれている。

「あなた、いい加減に起きてください」
眠い目を擦りながら朝食の待つ場所へ移動する。

「おはよう、あなた。それともお帰りなさいかしら?」
思いっきり嫌味を放ってくる第一夫人だ。

エルヴイーノは無言で食べようとすると第二夫人からの質問が来た。
「それで、昨日はいつ戻って来たの?」
「遅かったから覚えて無いよ。みんな寝てたから邪魔しない様にしたのさ」
子供たちが来ているとは知らなかったし、赤ん坊のクララには専用の寝床が有るからだ。

「それで、研究の方はどうなの?」
なんとか疑いを抜け出せたようだ。

「うん、大分、法則が分かったから今日仕上げをしようと思ってね。完成したら皆に渡すよ」
内心ホッとして食事を終わらせたら第二夫人が食後の文句を言ってきた。

「どんな理由が有るにせよ二日も私達と離れていた訳だから、その分は今夜キッチリと償ってもらいますからね」
当然の様にニコニコと微笑んでいる第一夫人だ。

「はい、分かりました」
力無く答えるエルヴイーノだが、バレて無くて安心した。



必要な材料が手に入ったのでコラソンに連絡する。
(コラソン、聞こえる?)
(ああ、モンドリアンさん)
何故か元気が無い返事だ。

(どうかしたの? 材料が手に入ったよ)
(知っています。知っていますが・・・モンドリアンさんの浮気がバレてしまいました)
(えっ誰に?)
(ヴィオレタ・ルルディにです。今日は来ないでください、危険ですから)
(わっ分かった。じゃ明日?)
(そうですね。その方が良いと思います)
(あの、コラソン)
(はい、何でしょう)
(ありがとう。それと苦労かけてゴメン)
(良いのですよ、では明日お待ちしています)

んーんーと縛られているヴィオレタが唸っている。
「しょうがないでしょう。まずは正妻達が鬱憤を晴らした後で貴女の番ですよ、ルルディ。本当にあなた達ときたら、モンドリアンさんは1人しか居ないのですからね。順番、順番」

エルヴイーノはあのヴィオレタがコラソンの手を焼くほど怒っている姿が想像出来なかった。
しかし、コラソンが言うのだから言われた通りにしようと思った。
目的地をペンタガラマの街中に変更して転移した。
数件ある馴染みの串焼き屋に顔を出して注文する。

「今回は500本だから20件位回るか」
約束の串を用意して昼前には監視室に転移した。

「おーい、来たぞぉ」
声を掛けて歩いて行くと三人居た。
そして黒い人が機嫌悪そうだ。

「やぁカマラダ、久しぶり」
「お久しぶりですね、モンドリアンさん」
「今日はどうしたの?」
「私の管轄で知り合いが暴れていたものですから、どうしたのか理由を聞きに来たのですよ」
「だから何度も説明しただろう」
フィドキアが珍しく説明したと言う。

「私はモンドリアンさんから直接聞きたいのですよ」
ピンと来たエルヴイーノは、昨日居た地域はカマラダ管轄でフィドキアが成龍状態でブレス攻撃をした土着民族が問題だったのだと思った。

「ゴメン、カマラダ。あの地域の事件に巻き込まれてさぁ」
「知っていますよ」
「えっ」
「何度も丁寧に、普段は決して説明などしないのにねぇ」

クククッと笑っているラソン。

「じゃ何?」
「それはそうと、何か飲み物が欲しいですねぇラソン」
カマラダが飲み物を催促した。

「あら、ごめんなさい」
そそくさと用意するラソン。

「あの国は今後どうなるかな?」
「大丈夫ですよ、モンドリアンさんの子供がしっかりとやるでしょう」
「なんか適当だなぁ」
「産まれて来るのは、きっと人族です。魔力は他の者よりも多いですが、短命です」
フィドキアは黙ったままだ。

「モンドリアンさんも含めて我らの中では直ぐに死んでしまう小さな命ですからねぇ、気が付くと曾孫の代になっていますよ」
「さぁ、入れたての紅茶を召し上がれ」

ラソンが美味しい紅茶を持って来てくれた。
そうなればアレだ。
持って来た物も出さなければなるまい。

「ラソン、大皿を」
「馬鹿! それを言うな」
フィドキアが叫んだ。

「なんで大皿を持って来てはいけないのですか?」
カマラダが追及する。
なるほど。
エルヴイーノは理解した。

(カマラダは自分の管轄にフィドキアが来て驚いたのだろう。ここへは遊びに来たのかな? そして今日俺が来る事を知っているのはフィドキアとラソンだ。ラソンは余計な事は言わないだろう。そして、フィドキアの恐れている事は自分の串が減る事だ。カマラダが居ると確実に減るだろう。ラソンとなら半分でも250本。三人だと中途半端な数だ。確かにフィドキアならば腹の足しにもならないだろう) 

エルヴイーノは念話で
(分かったよ。明日又持ってくるから、今日は少なくなるけど三人で仲良く食べたら?)
(むむっ)
黙り込むフィドキアだ。
それって良いって事だと解釈してラソンの持って来た大皿に500本の串を出した。

「おおっ久しぶりの串ですねぇ。私の管轄にも似たような物が有りますが、味付けはこちらの方が好きですよ私は」
大喜びのカマラダだ。
どこで感づいたのか解らないが、エルヴイーノが来た事でバレたのかも知れない。
フィドキアとカマラダは美味しそうに食べている。
ラソンは相変わらず上品な食べ方だ。

「所で、そろそろ生まれるのではないか?」
フィドキアがパウリナを心配してくれたとは珍しい事も有る物だと思い

「そうだな、”今まで”よりお腹が大きくなってるから心配だよ。獣人って子供は大きいのかな?」
ロザリーやロリの時よりも明らかに大きいのだ。
周りの者は育ちすぎじゃないかと心配しているようだった。

「違う。お前の子では無い」
「はぁ? じゃ誰の子だよ?」
「プテオサウラに決まっているだろう」
「はぁ? 何も聞いていないぞ! 何で教えてくれないんだ」
「アレでも出産は恥ずかしいのだろう」

立ち上がり現場(プテオサウラ達の住家兼隊員の施設が有る城の五階)に向おうとしたが気づいた事が有った。

「フィドキア、彼らは一度に何匹産むんだ?」
そう人族とは違いプテオサウラは卵だろうと勝手に思っていた。

「うむ、個体にもよるが大体三個だろう。最低でも二個。多い者では五個産む者も中には居るからな」
「子育てに必要な物は有るか?」
「特には要らんがヤツラに聞いた方が早いだろう」
「分かった、ありがとうフィドキア」





あとがき
緊急事態発生。
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