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第6章 棘城編2

第162話 材料探し

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(モンドリアンさん、聞こえますか?)
(ああ、聞こえるよ)
(失敗した原因が解りましたよ)
(本当に。直ぐ行くから待ってて)

念話で話し終え、直ぐに転移してトレ・デ・エスピナスに向かった。
居間に居たコラソンとヴィオレタは何やら口論しているようだ。

「危険だからダメです」
「大丈夫だよ、ルルディ」
ヴィオレタの横に座り「どうしたの?」と問いかけた。

「原因が解ったのですがね、替わりの材料を取りに行きたいと言ったらルルディに反対されてねぇ」
コラソンの答えを聞いてヴィオレタを見るとちょっと怒っていた。

「当たり前です。あの様な場所に行かれるなどもっての外です。ここはわたくしが取ってきます」
「馬鹿。何でお前が行くのさ。危険なんだろ? 元々、俺が行く予定だった訳だから俺が行く。お前は留守番」
「で、でも」
「まぁまぁ」
コラソンもヴィオレタをなだめるので問いただした。

「ところで何が原因だったの?」
「ははははっ、実はね。私の勘違いだったのですよ」
「えっ」
(実は石化の魔法は防げないのか?!)

ボルカン・ピエデラ火山石と、ラヴァ・ピエデラ溶岩石を間違えてました」
頭を掻きながら照れて話すコラソンだった。

「なんだ。だったら話は早い。何処に有るのか知らないけど取って来るよ」
エルヴィーノが答えるとヴィオレタが顔を寄せて言ってきた。

「かなり危険な場所なのです」
(凄く顔が近いぞ)と思いながら
「聞かなきゃ解らないよ」
渋々答えるヴィオレタ。

「ここから、遥か東の地域に火山が多くある場所が有ります。ラヴァ・ピエデラ溶岩石とは大地の中にある灼熱の塊を冷ました物なのです」
「で? 何で危険なの?」
「あまりの熱さで触っただけで燃えてしまうのです。と、言うより熱くて近づけないのです」

「まぁ、何とかなるよ。じゃ行って来る」
「待ってください。凄く遠いのよ! 場所も解らないのに無謀だわ」
「大丈夫、大丈夫」
強引に押し切り出かけようとしたらコラソンから注意事項を言われた。

「灼熱の塊にグラキエース・マヒア氷の魔法アグア・マヒア水の魔法は使わない事。もしも使ったら大爆発になるかもよ」
何と無く解る。要は温度差だ。

「分かったよ」
「冷めた塊を少しだけで良いから持って来てください」
「じゃ行って来る」
そう言ってその場で黒い毛布を出し窓から飛び出して行った。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



エルヴィーノは久しぶりに旅がしたくてたまらなかった。
以前はクラベルの町以降必ず誰かが随行していたから。
悪くは無かったが港町ゴルフィーニョの時の様に1人で気ままに旅がしたかったのだ。
城から遥か東に向かって真っすぐだと聞いたので、速度の制限を解除して思いっきり飛ばした。
夕方までには帰る安易な考えでいたので、大分飛んだが火山は一向に見えてこなかった。
下を見下ろすと見知らぬ山や海が見えて、今度ゆっくりと見て回ろうと思っていたら、遠くの方に煙が上がっているのが見えた。

「あれか!」
その場所に一直線に向かった。

確かに火山が有り火口が見える。
周りの山も煙を出している所があった。
火山の周りを旋回していたら街らしき物も見えてきた。
そのままゆっくりと旋回していると、何か走っているのが見えた。
馬と馬車だ。

「旅の商人か。ん? 何かおかしいな」
普通、旅の馬車は一列になって進む物だ。
しかし、眼下に見下ろす馬車は先頭の後、間隔を開けて横二列だ。
しかも馬に乗っているのか? 数頭居る。
しかも、結構な速さだ。
何か変だと思い様子を見ていた。

馬に乗った者が先頭の馬車に近づきチョッカイを出しているようだ。
そして、エルヴィーノには結末が見えた。
馬車の進む前方に岩場が有るのだ。
しかも、馬を制御する御者は見えない。

「あーあ、大破するな」
案の定、岩に車輪が乗り上げて横転した馬車だ。
後続の馬車二台も追いつき、大勢の男達が降りてきた。
馬に乗っている者も含めると20人は居る。
すると何人かが横転した馬車から女性らしき人を2人引きずり出した。

(何処からか逃げ出したか、強盗に有ったか)
ちょっと興味が有ったので近くで聞いてみようと思い、集まっている者と横転した馬車を挟んで反対側に転移した。


「さぁ、もう逃げ場は有りませんよ、フロル王女。ここが貴女の終焉の地です。貴女の両親も地獄で待っていますよ」

小さな男が下卑た言葉で目の前の少女を殺そうとしていた。

「トライシオン! 裏切り者め。お前を信じて大臣にまで起用したお父様を貶めるなんて許さないわ!」
「ははははっ、恨み言は死んでからにしてくださいね。貴女が死ねば、一族は滅び誰も私に歯向かう者は居なくなります」
「王女様逃げてください。ここは私が引き止めますから!」
侍女のリサが健気にも犠牲になろうとしていた。

「2人共、死になさい!」


※エルヴィーノ目線※
倒れた馬車の裏で聞こうと思ったが、やはり言葉が違った。

(まぁ翻訳魔導具があるから大丈夫だけどね)
すると聞こえて来るやり取り。

(なるほど部下の謀反か。たまに小説にも出て来るよな。こうして近くで聞いていると、ここで歴史が替わって行くのかと感慨深い物が有るなぁ)
(んっ、何! 一族が亡ぶだと!)

自分の境遇と似たような者が直ぐ横に居る事に、血液が一気に沸騰しているのが自分でも分かった。
エルヴィーノは馬車に上に転移して見ると。

「2人共、死になさい!」
剣を突き立てようとする男達が見えた。

(ヤバい)
すかさずオスクロ・エスクード暗黒盾で彼女達を覆った。
慌てる男達。

「何だ、これは。どうなっているのだ!」

喚き散らす小男を無視して周りの男達を左右の人差し指から出したモルテ・メリソス暗黒念糸で一斉に絡めて切り刻んでやった。

「何だ! 何が起こった!」
1人になった小男の前に飛び降りたエルヴィーノだ。
殺すのは簡単だが裏切りの代償を払わせようと思い、モルテ・メリソスで身動きできない様にした。
振り返ると抱き合って震えている少女が2人いた。
漆黒のオスクロ・エスクードを解いて身振り手振りで教える。
ペルフメにした時と同じだ。

複製した翻訳魔導具を耳に付けさせる為だ。
手の平に乗せた魔導具をなかなか耳に付けてくれない。
付けてやろうと思い耳を触ろうとしたら「キャー!」と言って払われてしまった。
仕方が無いので声を大にして「動くな!」と叫びモルテ・メリソスで雁字搦がんじがらめにした。
優しく2人の耳に魔導具を付けて、モルテ・メリソスを解いてやる。

(2人共聞こえるか?)
「「えっ!」」
(俺だ。目の前にいる俺が念話で直接話しかけているのだ。耳に付けたのはお前達にも念話出来る様にする為だ)

驚いた2人が見つめ合っていた。

(こっ殺さないでください)
(おいおい、俺はお前達を助けたんだぜ)
(まっ魔族が何故私達を助けたのでしょうか?)
(はぁ? 魔族ぅ、誰が?)
(貴男様です)
(ちょっと待ってくれ、今まで魔族に間違えられた事なんて一度も無いぞ)
(でっ、でもさっき男達がバラバラになったのは魔法ですよね? その髪とその耳は魔族の証しでは?)
(初めて聞いたよそんなの。俺はダークエルフと言う種族だ。決して魔族とは違う)

ここまでは多分王女の方だと思う少女が相手をしてくれていた。
長い茶髪と褐色の肌でとても可愛い少女が真っ白な服を着ていた。

(何故私達を助けてくれたのですか?)
今度はもう1人の少女だ。

(君たちの話しは馬車の後ろで聞かせてもらったよ。あのチビが裏切って君の一族を皆殺しにしたのだろ? 俺も似たようなものでさ、一族の国を再興したいと思っているのさ)

どうやら魔族では無いと信じてくれたようだ。

(じゃ、あのチビを殺せ)
((ええっ!))
(当然だろう。お前の一族を殺されたんだぞ。お前が仇を打たないと両親が可哀想だ)

エルヴィーノの説得が効いたのか立ち上がった少女達。

(チビは動けなくしてあるから、そこに落ちている剣を突き刺せ。とどめは俺がしてやる)
落ちていた剣を拾い、2人が相槌を打って走り出した。

「お父様とお母様の仇ぃ!」
「王様と王妃様の仇ぃ!」
「待て、話し合おう。助けてくれぇ~」

左右の腹に剣を突き立てられたチビ大臣。
すかさずオスクロ・エスパーダ暗黒剣)で首を刎ねてやった。

(もういい。終わったよ)
2人を剣から引きはがすとヘナヘナと座り込んでしまった。

返り血の付いた2人をリンピエサ洗浄魔法で綺麗にしたら驚いた様だ。
肘に擦り傷が有ったから馬車が倒れた時だろうと思い聞いて見た。

(他に怪我は無いか?)
(肘にお尻に、頭をぶつけてしまいました) 

トドス・クラール全体に小回復してやる。
 ((あれっ痛く無くなった))
笑顔になった彼女達がお礼を言ってきた。

(本当にありがとうございました)
(別に良いよ。最初は知らんぷりしようと思ったけど似たような境遇だったから手を貸しただけさ。ホント偶然だよ)
しかし髪の長い少女の目が輝いていた。







あとがき
当初の目的は何処に行った?
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