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第6章 棘城編2

第152話 ネル殿の隊員発掘の旅2

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アギラ族の族長にネル殿が要望を告げた。

「候補者のリストを作って欲しい。最後のポエロは必ず入れて置くように」

いい気分のネル殿に更なるお願いを族長全員で頼み込んだ。

「モンドラゴン様。我らアベス族一同の立っての願いを聞いて頂けますか!?」
「改まってどうした? 我は既に一線を退いた身だからな。大した力は無いが助言位は出来るが期待はするなよ」

ネル殿は大よその検討はついていた。

「はい、実は黒龍王様の側室の件でお願いが有ります」

やっぱりと思ったが、それも獣人族としては致し方の無い事だ。
パンパンと手を叩くと裏に居た着飾ったアベス族の女達がゾロゾロと歩いて来た。
いろんな種族の女達が10人並んでいる。
アギラ族の族長に問いかけるネル殿。

「何度か側室へ送るべく王城に来ていたな」
「はい、その度に先代王妃のアンドレア様から追い返されました」

その事は知っているし、黒龍王の指示だと言う事も知っている。
パウリナの父として嬉しい限りだが、国の仕来しきたりや古い風習も残っている。
事実自分も何人かアンドレアに内緒の子が存在するのだ。
主にガトー族だが。

確認したい事が有ってアギラ族の族長に小声で聞いてみた。

「ちょっと聞きたいが、アベス族と人族の間に子は成すのか?」
「過去には有りませんが大丈夫でしょう」

前例が無いと言う事は出来そうに無いと思ったネル殿だった。

「我からの口添えはするが、期待はしないでくれ。全ては黒龍王の意思だからな」

無駄だと分かったのでエルヴィーノのせいにするネル殿だった。
そして遅くまで宴会は続き、翌日はアベス族の半分以上が二日酔いだった。
朝早くから次の街に向けて出発の準備をしていた龍騎士隊だ。

「朝早くから準備とはお元気ですな」
アギラ族の族長が声を掛けて来た。

「族長よ、昨夜の件は何人来るのだ?」
昨夜の件とは、龍騎士隊に随行する者を選定して教育させる為に翌日から一緒に回る事だった。

「一族の名に恥じない優秀な者を2人随行させます」

試験的に、これから一緒に国内を回る者が2人選ばれた。
1人はアギラ族の族長の息子でアベントゥラ。
もう1人はパロマ族のリデルと言う若者だ。
パロマ族は体力が有り長距離飛行が可能だと言うので決まったのだ。
アベントゥラとリデルも自分の荷物は胸と腰のカバンに入れて準備をしていた。

「目的地はバリアンテ最南端のペロ族の街ルヒドだ」
「何だってぇ!」

アベントゥラが驚いた。
首都カスティリオ・エスピナは西よりでアベス族の街は東よりだ。
そして向かうのは最南端で東西の距離よりも長いのだ。
因みに最北端は横に長い。港町リベルタも北端の一部だ。
南はペロ族が多い地域で黒龍王の要望も入っている。
それはアルモニアとメディテッラネウスに門番として派遣したいからだ。

「心配するな。休み休み行くから数日後の夜に着けば良い方だろう」

「俺は大丈夫だ」
「私も大丈夫出す」
威勢を張るアベス族の若者達がネル殿に言い聞かされる。

「良く聴け、アベス族の若者よ。我らの目的は何だ?」
「それはっ!」
答えられないのでネル殿が話す。

「お前達のような将来有望な若者を探す旅だ。決して競争では無く、意地の張り合いでは無い。それだけは忘れるな」

「・・・ハイ」
恥ずかしさで照れながらも返事をするアベントゥラだった。

「族長世話になったな」
「ろくな御持て成しも出来ずに申し訳ありませんでしたモンドラゴン様」
「良い。では皆の者出発だ!」
バサバサと翼を広げ大空へと舞い上がって行く一同を見送る長老達だった。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



最南端までの空の旅は一日中飛んでいても丸二日以上は掛る距離だ。
飛びなれない者を連れて行くなら三日を想定した方が良いと考えたネル殿だった。
基本的に軽装の為食料も最低限しか持たないので、途中狩りもしながら食べられる時に食べるのが長距離移動の食事方法だ。
勿論途中に街が有ればそれに越した事はないが初日の昼は全員で狩りとなる。

ここで役に立つのが狩りの得意なアベントゥラだ。
何処にどんな種類の魔物や動物が居て、見分けてフィド達に教えてくれる。
肉食の一同以外に穀物で事足りるリデルは、植物の実や種が主食なので持ち運びが軽くて楽だし腐りにくいのが長所だ。
カバンの中は、ほぼリデル専用の食料だ。

中継地点の町に泊まりながら南下していく一行は三日目の昼過ぎに目的地に着いた。
ここはペロ族の街ルヒドで、全てのペロ族が住んでいてバリアンテの最南端に位置する。
街の上を旋回し、街の者が気付いたら町外れに着地する一行だ。
上空を旋回する異様な生物とアベス族達を警戒するが興味津々のペロ族達。
ネル殿は1人で門の所まで来て大声で叫んだ。

「ライオネル・モンドラゴンが来たと長老に伝えよ!」
その名前は馴染みが有り慌てる兵士達だ。
暫くしてやぐらの上から確認したのか、門が開いた。

「これはこれはモンドラゴン様、ようこそおいで下さいました」
出迎えたのはペロ族の族長のムスロでパウリナ専属の教育係だったロディジャの父親だ。

「おおっムスロ、出迎えご苦労」
「連絡は聞いておりましたが、こんなに早くとは思っても居ませんでした」
「いやぁ、スマンスマン。なにぶん龍騎士隊として初めての遠征だったのでな、時間の感覚がはっきりしなかったが予定よりも少し早くなっただけだ。ガァッハハハッ」

先日のアベス族の街での事を踏まえて事前に説明するネル殿。

「龍騎士隊のプテオサウラ達は”心を通わせた”我らと会話が出来る対等の、いやそれ以上の存在だから最上級の持て成しを頼むぞ」
「こっ、言葉が解るのですか!」
「勿論だ。小さくても”あの黒龍”の血族だぞ。ただし、向こうが信頼してくれた者とだけ話すがな」
「モンドラゴン様は?」
「話せるに決まっているだろう! ガァッハハハハッ」
「そっそれでは、お泊りや食事などは如何いたしましょう?」

アベス族での事を思い出し説明して準備させる。
「おお、今回は急だからそれで良いが今後の為にも専用の建物を作ってくれ。本人達の要望も有ろうから通訳を付けておく」

族長のムスロはエルヴィーノとパウリナの結婚式に来ていたので、フィドキアの成龍形態を見ているのだ。
思いっきり自慢したネル殿はご機嫌で龍騎士隊一行と門をくぐり街の中に入って行った。

丁度昼過ぎに着いたので空腹を満たすために食事を済ませネル殿は族長達と会議。
残りはペロ族に取り囲まれてプテオサウラやカスティリオ・エスピナにペンタガラマの事で質問攻めになっていた。
同種族に取り囲まれてチヤホヤされる龍騎士隊副隊長カニーチェと2人の隊員達。

「凄ぉい! 噂に聞いていた勇者様みたいだったよぉ」
可愛い女の子から言われて有頂天になるカニーチェ達を羨ましそうに見ているアベントゥラとリデルだった。

一方のネル殿は困っていた。
結婚式に来ていたのは族長のムスロだけでは無く、数十人の種族長もフィドキアの成龍形態を見ているので、カスティリオ・エスピナとペンタガラマの街を土産話にして、ほぼ街の全ての者に言いふらしていたのだ。
そして自らが目的を伝える前にアベス族と同じ要求が出たのだ。

「モンドラゴン様、どうか我らの一族にも黒龍王の力を分けて貰えるようにお願いできませんか?」
「お前達、知っておろう。黒龍王は人族だぞ」
「はい、全く問題は有りません」
「・・・」

(困った。こやつらも何度か王宮に若い女を連れて来ているのは知っていたが皆の目が座っとる)

「一応伝えておこう」
「「「お願いします」」」

ペロ族がここまでへりくだるとは、自分が獣王の時でも無かった事で娘婿の時代は安泰だと確信したネル殿だ。
そして自らの案を説明した。

「・・・と言う訳で、現在龍騎士隊副隊長のカニーチェを始めとしてペロ族の者が占めていが、今後王国から優秀な者を集めたいと考えている」
「おぉそれであれば、このままペロ族の者をお使いください」
「そう困らせるな。異種族にはそれぞれ優秀な者が居るからな、今後の事を踏まえての話しだ」
「今後とは?」
「王国の四隅の街に駐留する事も計画の中に有る。となると騎乗する勇者も今の倍は必要だろう」
「「「おおおっ」」」
「慌てるな。龍の繁殖後成長してからの話しだ」

ざわつく長老達。

「だが候補者も直ぐに騎乗出来る訳では無い。厳しい特訓と龍達の生態を熟知せねばならん。長い年月を耐え抜く勇者が現れる事を期待しておる」
「「「ははぁ」」」

とりあえず自分の考えを先に話して満足なネル殿だ。

「時に族長達よ、黒龍王から伝言が有る」
「黒龍王様から!」

一斉に尻尾を振りだした族長達を見て呆れるネル殿。
(ゲンキンな奴らめ。そんなにアレが好きなのか?)
渡された手紙を読むネル殿。

「カスティリオ・エスピナとペンタガラマでの門番として派遣されてきたペロ族の能力には本当に驚かされる。そして非常に優秀だ。二度と過去の過ちが起こらない様にペロ族には期待をしている」
「「「おおおおっ」」」

「そして、ペロ族の力を聖魔法王国アルモニアとエルフ国メディテッラネウスにも使う考えでいるので、その時は力を貸して欲しい。因みにアルモニアはバリエンテと同様の警備人数が予測される。以上」
「「「ははぁ」」」

(いや、我は読んだだけだが)と長老たちが片膝をついて敬意を示している姿を見て思っていたネル殿だ。









あとがき
ペロ族はワンワン。
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