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第3章 獣王国編

第92話 それぞれの行動

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フォーレは燃えていた。

まるで燻っていた何かに激しい炎が燃え移った様に。

「ねぇ何処に行くの?」
「クラブだよ」
「こんな時間に?」
「一応関係者に確認したいし、リリオが知っているかも聞いた方が良いだろ?」
「そうねぇでも流石に知ってるんじゃない?」
「いや、俺達が出かける時の雰囲気は知らない感じだったぞ」
「そうだったわね」

クラブ・エストレイヤでは結成して間もない夜のゲレミオ(組合)で新たに仲間になった店のオーナー達を集めていた。
その夜のゲレミオはフェーレが仕切っていた。

「皆こんな時間に集まってもらって悪いが確認したい事が有る。新しい国王の事は知っているか?」
「「「「ハイ」」」」
「「「イイエ」」」

ばらばら返事をするので挙手させる事にした。
「知らない者は手を上げてくれ」

顔ぶれを見ると飲食系の仲間は全員知っていたが飲み系は誰も知らなかった。
当然リリオもだ。

「分かった私から話そう。我らゲレミオの影の所有者であり闇の帝國の支配者でもある御方が、晴れて表の舞台に出ていらっしゃった。そして今日、私は新国王様にグラナダと謁見し宣言してきた。昼も夜も支配する真の大王になるまで覇道を共に進もうと!」

「「おおおぉ」」
パチパチパチ。
半分は分かっていない様だったので簡単に言い直した。

「ようするにモンドリアンが新国王なったんだよ」
「「「「「ええええぇぇぇ!」」」」」
残りの者達が驚いた。

「嘘でしょ!」
「本当よリリオ、謁見した私達はもっと驚いたわよ」
「リカルドは何処行ったの?」
「それがさぁ、王様の親衛隊長だって!」
「ええぇっ本当に?」
頷くグラナダ。

仲間も飲食系のオーナーは昼から街に出ていたので、その事を知って驚いたが夜の飲み系のオーナーは誰が王様でも興味無かったので昼は寝ている者がほとんどだった。

結果的に全員に通達して夜のゲレミオとして”昼の王”に迷惑を掛けない様に”夜の王”に従い秘密を守る事で共通の意識を持つようになった。



一方、獣王一行は獣王以外の女性全員で王都イグレシアを観光で見て回り、獣王ライオネル・モンドラゴンは街中に大量導入された警備用のブエロ・マシルベーゴォ (飛行魔導具)をたいそう気に入って獣王国の導入を決めた。
導入したのは警備用と大量物資運搬移動用、王族用が数台に伝令用が数台だった。
マルソは早速注文が入り一族には自慢できるし獣王国とは幸先の良い外交の取引になってクラベルの工房を大きくする計画を立てつつ、獣王国や自国でも市販する為の統一価格を決めたりと大忙しだった。
獣王はまず自分専用の設計に取り掛かりたいと、同じ思惑のリアムと一緒に設計技師と数人で箱詰めになっていた。

ロリは、母や祖母と産まれて来る”女の子”の為のいろいろと用意する物を考えたりと幸せな一時を過していた。
一方ロザリーはエルヴィーノの別荘を設計するにあたってリーゼロットとロリにブリンクス王にエアハルトの意見も入れて修正をしていた。
ロリの出産前後を完成予定とすれば設計図と仕様はそろそろ完成しなければならないので飛び回っていたのだ。
親父のブリンクス王も誰の目も気にせず”家族”と会える場所が出来る事を心待ちにしていた。

ロリの一族(もはや俺もその一員だが)は新たな上位聖女としてサンクタ・フェミナ(神聖女)のロリを国民に知らしめるべく様々な政策を練っていた。
ただし、神秘性を持たせる為に王都から出ないようにする事で意見が一致した。

エルヴィーノの一族は、新しいクラベルの町に徐々に受け入れられているようだった。
だが、如何せん長年閉鎖された”家族”だけの世界に居たせいかリーゼロッテとオリビアはそうでもないが、デイビットとアロンソが人見知りするようになっていた。
アロンソはともかく”いい大人”のデイビットは女2人に成って無いと怒られ、揚句には”もう1人作る様に”リーゼロッテから命令された。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



獣王国から遥か南西の海域の島にある妖精の国。

「棘王が消滅したのは本当か! 誰が倒してその後どうなっているのか至急調べよ!」

300年周期で転生し代々棘王を見守る役目をになっていたにも関わらず、知らないうちに倒され解放されたようだからだ。
華王の沽券に係わる事なので最優先で調べさせていた聖妖輪廻華王ヴィオレタ・ルルディ。

「ルルディ様、分かりました!」
「おぉ説明せよ」
「ハイ、先日人族の勇者一行が棘の森に入り囚われていた王国の姫を救い出す事に成功し、後日更に棘王を倒したと獣王国では皆この話しで持ち切りです」
「しかし一体どの様にして倒したのだ?」

「ハイ、それが獣人の噂では神龍を降臨させし者、黒龍の支配者、龍の召還魔法師と言われているように龍を召喚したとの事です」
「何ぃ! 龍を召喚だと!」
「ハイ、そして物凄い魔法を発動させて滅ぼしたとか」
「馬鹿な! 例え成龍の”あの魔法”だとしても、棘王が倒されるはずが無い」
「しかしルルディ様・・・」
「ええい、その人族の勇者はどうした?」
「ハイ、それが棘王と相討ちになったとかで消息が有りません」
「棘王が居た場所は?」
「何も無い広大な荒地になっています」

何もかも後手に回っている自分にイラつきながら命令した。

「引き続き獣王国を調べさせよ。何か分かり次第連絡させるのだ」
「ハハッ」


エルヴィーノはいくつかの悩み事と計画を考えていた。

まずは悩み事で自分の名前だ。
モンドリアンと言う名前は”一部のエルフ”と限られた魔導研究者には特別な名前として知れ渡っていて、親父に相談したら”同姓の人族”で統一しろとの沙汰が有ったので聖魔法王国と獣王国に連絡した。

一応、母さんにも連絡してある。
因みに獣王には聖魔法王国の技術としてエマスコ(通信魔道具)を渡してあり、リアムとライオネルとの交互通信だけ可能にしてある。

続いて同じく名前だ。
だが今度の名前は聖魔法王国国王としての名前と夜のゲレミオ(組合)としての名前が同じだと、とても都合が悪いからだ。
そこでいくつか候補を考えリカルドとフォーレに意見を聞いてみた。

「・・・と言う訳で夜の名前を変えようと思うが?」
「その方が宜しいと思います」
「そうだねぇ、いいんじゃない」
「でさぁ、いくつか考えて最終的にどちらにしようか迷ってしまってさぁ意見が欲しい」
「私共の意見で宜しければ」
頷くフォーレ。

「二つあるけど、どっちが良いかな? フリーリ・シュバイかエル・モンドだけど」
そう言った途端2人が口を揃えて言った。

「「エル・モンド」」
「おぉハモったねぇ。じゃ今日から夜の俺の名前はエル・モンドだ」
「「ハハッ、モンド様」」
「夜の連中には伝えてくれ、フォーレ。今後決して昼の名前は使うなと」
「ハッ」


(さてと今後の計画だ。これは、夜のゲレミオを上手に昼に活用する為に新しい店を作る事。その店は食事のする場所と、お酒を飲む店だが今までとは違い、凄く高い店にして一般国民が入れないようにする”特別”な店だ。場所はフォーレが持ち主になり、金を掛けて建物や内装を豪華にする。当然食べる物もだ。宿屋でアルディリアが高級旅館ならば、夜のゲレミオを駆使して食べ物屋は最高の料理と雰囲気を出すのだ。それとは別に世界中の美女を集めた超高級なお酒を飲む店として”大人の社交場”を目指す。これはフォーレが飛び付いて来ると思うから丸投げしよう。それと、昼間でも俺とリカルドが夜のゲレミオとの関わりを怪しまれずに集まれる場所を作り出す事。後はえっちぃ~店だな。これはグラナダとリリオの建前上あの2人には管理をさせられないからなぁ。誰か適任を探す必要が有る。あっあの夫婦がいた!)


(あとは国籍を問わず忠誠を誓う優秀な者を採用しよう)
何故ならば聖魔法王国での夜ゲレミオは実験であり、ルール作りでもあり、各国の夜に侵入する為の準備施設だからだ。


(あっ、この国にベルデボラがある様に諸外国にも似たようなモノが有るなら対応する部隊が必要だなぁ・・・ふぅむ。まずはベルデボラを潰してからか)



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



「ねぇリリオ、あなた達どこまでいってるの?」
「えっ? どこまでって・・・」

グラナダとリリオの会話だ。

「まさか、まだって事は無いでしょ?」
グラナダの問いかけに顔が真っ赤になるリリオ。

「もしかしたら、その”まさか”かも知れないよ」
「本当にぃ?」
「彼は元司祭だからねぇ男女の関係に関しては”上司”と違って硬いのではないかな?」
真っ赤になったまま俯くリリオ。

「あんたさぁもっと強引に行っちゃえばぁ?」
「でもぉ」
「無理無理、彼の性格からしてキッチリとケジメを付けないとリリオには手を出さないと思うよ」

他人事のように答えるフォーレだが、その通りだった。
リリオは何もしてこないリカルドにイラついていたが一向に手を出してこないリカルドだった。

「ハァ、今度”上司”に相談してみるよ」
「そうしてあげて」

一応最初の秘密結社の4人だから心配なグラナダだった。













あとがき
夜の名前はエル・モンドになりました。単純かな?
リカルドに迫りくる女の罠?
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