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第3章 獣王国編
第82話 決戦 !
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前日にエルヴィーノは棘の城に転移した。
「コラソ~ン! 居るか~。ちょっと話が有るんだけど~! 」
小さな緑髪の子供が出てきた。
「モンドリアンさん! どうされましたか?」
「明日決戦だろ? 何時から始めようかと思ってさ」
「別にいつでも構いませんよ」
「でも棘王が何処に居るか知らないし」
「あぁでは起こしておきますよ」
「ええっ? 」
「攻撃対象が解らないからですよね?」
「まぁそうだけど」
「では遠くからでも解るようにします。それで何時から始めるのですか?」
「そうだなぁ10時はどうだ?」
「良いですよ、それまでに起こして用意しておきます」
「あぁ頼む」
コラソンに確認した後に転移で戻った。
その夜、エルヴィーノ、パウリナ、フォーレ、リカルド、ビエルナスは王都に出来た親父さんの新しい宿屋で夕食を食べながら明日の事を話していた。
「とにかく明日は10時に攻撃を仕掛けるから皆避難するように。フォーレとリカルドは俺と朝一で港街リベルタに転移だからな」
頷く2人。
「親父さんはここで待機」
頷く親父さん。
「ビエルナス」
「ハイ、何でしょう? 」
「城で遠くまで見通せる場所ってあるか?」
「ハイ、物見の塔でしたら7階程の高さなのでかなり遠くまで見通せます」
エルヴィーノは迷った。
カッコイイ所を見せたいが爆風で吹き飛ばされたり塔が崩れたりしないかだ。
「その塔は何処に有る?」
「城の北東です」
「よし棘の森からは城を挟んで反対側だな。塔の素材は何で出来ているの?」
「石です」
だよね~
一応聞いて良かった。
「パウリナ」
「ハイ」
「当日の朝、物見の塔に一緒に行こう」
「ハイ」
「俺はそこから魔法を使う」
「はぁ~? ここから棘の森までどの位離れているか知ってるだろ?」
エルヴィーノは微笑んでフォーレに答えた。
「グラナダに合わずに死にたいなら居ても良いけどね」
"ここでそんな事を言うな"みたいな顔をしたフォーレ。
「俺が殲滅魔法使えるの言ったよな?」
「あぁ」
「本当に広範囲の生命が死滅する魔法なんだ。だから、頼む避難してくれ」
避難の本当の理由を知ったフォーレは納得したようだ。
「解ったよ。でも流石にリベルタまでは大丈夫だろ?」
エルヴィーノは頷いた。
その後酔ったオッサン三人に”いろいろ”絡まれたがビエルナスが”良い仕事”をしてくれて、エルヴィーノとパウリナを逃がしてくれた。
そして計画では最後の夜伽を迎えるがパウリナにとってエルヴィーノの猛攻は失神するほどだった。
向えた翌朝、夜半から棘がもぞもぞと動き出し少しずつ移動して行ったが、その動きは早く徐々に中心に集まって行くようだった。
棘が有った場所は何も無く土が見える状態になり棘は更に縮小していった。
前日から各国の間諜達は誰も居ない森の村に泊まり、朝になって棘の異変に気づき散らばって行った。
そして獣民が仕事を始める頃には集まった棘が盛り上がり上空に伸びて行った。
決戦前9時半ごろ完成体に近づいた棘王は咆哮をあげる。
「グロロロロロロォォォォォォォ」
間諜達は驚いた。
まるで蹲っている体勢の様に見えていたが、その塊が”立った”のだった。
それはまるで人型を模すようにトレントを大きくした感じだが大きさがけた外れだ。
実際には3000mは有ろうその背丈は雲を突き抜け王都アレグリアを向いていた。
「「「「「退避――! 退避だ――!」」」」」
周りに居た間諜達は一斉に王都アレグリアの反対方向へ向かった。
元棘の森から上を向いていた別の間諜達が我に返り叫ぶ。
「冗談じゃない。あんな山のような高さの魔物と、どうやって戦うと言うのだ」
間諜全員が獣王国バリエンテの滅亡を確信しながら全力で逃げた。
棘王の姿は遠い王都アレグリアでも、かなり小さくだが確認できた。
流石に港街リベルタからは見えない。
エルヴィーノはパウリナとビエルナスを連れて北西の塔に来ていた。
すると向こうに見える北西の塔に獣王ライオネル・モンドラゴンとアンドレア妃が立っていた。
ヤレヤレと思いながらエルヴィーノは用意してあった手紙をパウリナに渡して説明した。
「これから殲滅魔法を使うけど、その後に棘王の本体を始末しに棘の森の中心へ転移するから」
頷くパウリナとビエルナス。
「くれぐれも爆風で飛ばされないようにね。後、手紙は俺が転移した後に読む様に」
再度頷くパウリナとビエルナス。
エルヴィーノはパウリナを抱き寄せて唇を重ねた。
勿論舌も。
それを見ていたビエルナスは恥ずかしそうだった。
「よーし、やるぞー」
「頑張ってアナタ」
エルヴィーノは左手の腕輪に魔素を送り、天に向けて手を突き上げてから叫んだ。
「デスセンディエンテ・インボカシオン・オスクロドラゴン!」
(龍人のフィドキアが成龍状態での召喚魔法陣)
王都アレグリアの前方上空に超巨大な魔法陣が出現し、その光は王都に居る全ての獣人に見られていた。
勿論親父さんにも。
そして更なる出来事が起こる。
始まりは頭部から徐々に現れた体長は100mを越し、翼を広げると300mは優に有りそうな漆黒で巨大なドラゴンの降臨だった。
王都に居る者は口を開けて、その雄姿を呆然と見ていた。
大きく羽ばたく漆黒のドラゴンは咆哮を放ちながら城の周りを飛び回っている。
そしてエルヴィーノが叫ぶ。
「棘王にダムネイション(天罰)!」
漆黒のドラゴンは城の前方上空に停止飛行し咆哮をあげる。
幾重にも重なった魔法陣がドラゴンの前方に現れて一瞬光った。
すると遠い棘の森の上空に雲が集まり真っ黒になるとピカピカピカッと激しく光り、煙が巨大なキノコの様に立ちあがる。
カッ、ドガガガガガガガガガァァァァァァァァァッと閃光の後から轟音が轟く。
「風が強いから隠れて、俺は行くよ」
そう告げエルヴィーノはフィドキアの肩に転移した。
そして辺り一面の空気が物凄い勢いで爆発地に向って吸い込まれた。
城壁の中でも獣人達は必死にモノにしがみ付いていたが、次の瞬間風が逆に吹き荒れた。
城の上空を木々や岩が飛び超えて街にも多少被害は有るだろうが城壁があるので問題ないだろう。
嵐が吹き荒れる中、念話で話しかけた。
(どう?)
(棘は無くなったから後は核を切ってくれ)
(解った)
エルヴィーノはフィドキアの召喚滞在時間が切れるまで肩から眺めてから棘城が有った場所に転移した。
転移後時間切れで消えて行く巨大な黒龍。
エルヴィーノは念のためにオスクロ・アルマドゥラ(暗黒魔闘鎧)を纏いエスパーダ・イリス(虹色の魔法剣)を顕現させた。
あたりを見ながら歩いていると、燃えカスの中心から禍々しい気配が分かり、そこへ行こうにも燃えカスが多いのでビエント・マヒア(風の魔法)で風を操作してカスを吹き飛ばした。
そして現れたのが真っ黒で5mは有ろう楕円形の卵? 核? なんか模様が如何にもって感じで物凄い邪悪な魔素を発散している。
「これを切れば良い訳だな」
エルヴィーノは両手でエスパーダ・イリスを上段から切り下した。
シャパッ! っと音を立てた斬撃は真っ二つに割れたった。
(意外とあっさり切れちゃった)
「良くやった、後は我が見よう」
「はぁ?」
後ろから突然現れたフィドキア。
何をするのか近くで見ていたら、割れた核の中に自らの血を垂らしていた。
「何してんの?」
「再生するのに少し力を分けている所だ」
「ふ~ん、俺も分けようか?」
その一言に驚いた表情のフィドキアだったが「頼む」と答えたのでエルヴィーノは指先を少し切って血を垂らした。
「もう大丈夫だ」
そう言ってフィドキアはティエラ・マヒア(土の魔法)の操作をして二つに割れた核を地下深くに埋めた。
「では帰るか。一緒に来い」
何でと思いながらもエルヴィーノは肩を掴まれ監視室に転移した。
一方パウリナは
「ビエルナス、周りはどう? 」
「ハイ、強風も収まっています」
パウリナは言われた通りエルヴィーノの手紙を開いて読んだ。
(大好きなパウリナへ。広域殲滅魔法はダムネイションと言って俺と”契約している”龍が放つ無属性の極大魔法なのさ。その魔法で棘王の棘の鎧は無くなるけど肝心の核を倒さない限り、本当に倒したとは言えない。だから直接核を倒しに行くが大きい外観以上に核は手強いので最悪の場合は相討ちも覚悟して欲しい。もしも戻らない時は俺の事は忘れて幸せになって欲しい。愛してるよパウリナ。エルヴィーノより)
パウリナは塔を駆け降りた。
やるべき事は1つだから。
獣王ライオネル・モンドラゴン目線。
「あなた、何か動きが有りますわ」
「ウム」
エルヴィーノが手を上げて魔法陣が顕現する。
「うおぉっっ何と言う巨大な魔法陣だ!」
すると頭部から出てくる巨大なドラゴンが現れる。
「バッ馬鹿なドラゴンだと! しかも何と言う巨大さだ! アノ者が召喚したと言うのか!」
「そうとしか見えないし考えられないわ」
ワナワナと震える獣王。
「し、信じられん。まさかドラゴンを降臨させるとは!」
「あっ何か叫んだわ」
棘の森が激しく光り、その後に来る耳を劈く爆音に、その方向に吸い込まれそうになると、今度はそれ以上の激風が襲ってきた。
2人は座り込んで風を凌いだが空は木々が勢いよく飛ばされていた。
「これほどの威力だとは・・・」
感心する獣王に、その腕にしがみ付くアンドレア妃。
「決めたぞ! あのモンドリアンとパウリナを結婚させる! 何を言ってますのアナタは! アレは人族ですよ!」
アンドレア妃の前では布をおでこに当てて耳の先を隠すようにする”いつもの”恰好でいた為、人族だと思われていた。
「お前は以前教えた事を忘れたのか? 我がモンドラゴン家の名前の由来を」
モンドラゴン。
それは遥か昔、ある部族の方言とドラゴンを足した事で名前としたモノだった。
その方言とは一族はドラゴンの末裔で真の勇者はドラゴンを呼び出すことが出来る。
その真の勇者の”真”が方言として”モン”と言ったのだ。
正式には”真の勇者はドラゴンと共に”がモンドラゴンの由来だ。
「まさしくヤツが獣王を継ぐに相応しい」
熱血で語る獣王を冷ややかに見るのはアンドレア妃だ。
(まさかこんな展開になるなんて思わなかったわ。仕方ないわね)
「モンドリアンを探せ! 捜索隊を出せー!」
獣王の怒鳴り声が城に木霊する。
一方で親父さん目線。
「そろそろ時間だよな」
ガヤガヤ・・・店の外がやたら騒がしい。
何か有ったのかと思い外に出ると城の前方上空に光り輝く巨大な魔法陣が現れていた。
その光景を周りの獣人達は皆見ていた。
すると、頭部から出てきたのは真っ黒のとても大きなドラゴンだった。
ドラゴンは大きな咆哮をあげ城の周りを旋回しだした。
すると急に止まり棘の森方面を見ていた。
城壁の中なので光ったのは解らなかったが、耳を劈く爆音が轟き、そのあと空気が吸い込まれそうに流れると、今度はそれ以上の激風が城壁を越えて襲ってきた。
上空には城壁を越えて大量の木々が飛んでいるのが見られる。
「みんな危ないから家の中に避難しろー!」
と叫ぶ親父さんだった。
あの2人の目線。
「さぁて、もう始まるのかな?」
「ここに居ても何も解らないし早目に転移しますか」
町をぶらついていた2人は獣人達が城の方角を指さしていた。
2人がそっちを見ると彼方の上空が光り輝いていた。
そこから出てくる黒い物体が城周りを回っていた。
「あれって・・・ドラゴン?」
「そうみたいですね・・・」
2人は黙って見ていると、かなり大きな音が響き渡る。
ドゴゴゴコゴゴゴコォンっと。
そして空気が流れた後にかなり強い風が吹き荒れた。
そして大量の砂や木々が飛んできた。
「まずいぞ! 転移しよう」
「急ぎましょう!」
慌てて走り出す2人は一目散で教会の地下室へ駆け込み聖魔法王国に転移した。
「いやーそれにしても驚いたな!」
「ハイ」
「まさか港街リベルタにまで影響が出るなんて一体どんな魔法だよ」
慌てて走って来たので息を切らすフォーレ。
「まったくですね、聞きしに勝る威力でした」
驚きながらも褒めるリカルド。
「ところでフォーレさんはこれからどうされますか?」
「一旦宿を取って暫くは休むさ」
「解りました、何かあればマエスコしてください」
「了解!」
そう言って別れた2人だった。
あとがき
これって戦ったって言えるのか?
あら、貴男だから出来た事よ。
疑問視するエルヴィーノを何故か龍人ラソンが褒める。
「コラソ~ン! 居るか~。ちょっと話が有るんだけど~! 」
小さな緑髪の子供が出てきた。
「モンドリアンさん! どうされましたか?」
「明日決戦だろ? 何時から始めようかと思ってさ」
「別にいつでも構いませんよ」
「でも棘王が何処に居るか知らないし」
「あぁでは起こしておきますよ」
「ええっ? 」
「攻撃対象が解らないからですよね?」
「まぁそうだけど」
「では遠くからでも解るようにします。それで何時から始めるのですか?」
「そうだなぁ10時はどうだ?」
「良いですよ、それまでに起こして用意しておきます」
「あぁ頼む」
コラソンに確認した後に転移で戻った。
その夜、エルヴィーノ、パウリナ、フォーレ、リカルド、ビエルナスは王都に出来た親父さんの新しい宿屋で夕食を食べながら明日の事を話していた。
「とにかく明日は10時に攻撃を仕掛けるから皆避難するように。フォーレとリカルドは俺と朝一で港街リベルタに転移だからな」
頷く2人。
「親父さんはここで待機」
頷く親父さん。
「ビエルナス」
「ハイ、何でしょう? 」
「城で遠くまで見通せる場所ってあるか?」
「ハイ、物見の塔でしたら7階程の高さなのでかなり遠くまで見通せます」
エルヴィーノは迷った。
カッコイイ所を見せたいが爆風で吹き飛ばされたり塔が崩れたりしないかだ。
「その塔は何処に有る?」
「城の北東です」
「よし棘の森からは城を挟んで反対側だな。塔の素材は何で出来ているの?」
「石です」
だよね~
一応聞いて良かった。
「パウリナ」
「ハイ」
「当日の朝、物見の塔に一緒に行こう」
「ハイ」
「俺はそこから魔法を使う」
「はぁ~? ここから棘の森までどの位離れているか知ってるだろ?」
エルヴィーノは微笑んでフォーレに答えた。
「グラナダに合わずに死にたいなら居ても良いけどね」
"ここでそんな事を言うな"みたいな顔をしたフォーレ。
「俺が殲滅魔法使えるの言ったよな?」
「あぁ」
「本当に広範囲の生命が死滅する魔法なんだ。だから、頼む避難してくれ」
避難の本当の理由を知ったフォーレは納得したようだ。
「解ったよ。でも流石にリベルタまでは大丈夫だろ?」
エルヴィーノは頷いた。
その後酔ったオッサン三人に”いろいろ”絡まれたがビエルナスが”良い仕事”をしてくれて、エルヴィーノとパウリナを逃がしてくれた。
そして計画では最後の夜伽を迎えるがパウリナにとってエルヴィーノの猛攻は失神するほどだった。
向えた翌朝、夜半から棘がもぞもぞと動き出し少しずつ移動して行ったが、その動きは早く徐々に中心に集まって行くようだった。
棘が有った場所は何も無く土が見える状態になり棘は更に縮小していった。
前日から各国の間諜達は誰も居ない森の村に泊まり、朝になって棘の異変に気づき散らばって行った。
そして獣民が仕事を始める頃には集まった棘が盛り上がり上空に伸びて行った。
決戦前9時半ごろ完成体に近づいた棘王は咆哮をあげる。
「グロロロロロロォォォォォォォ」
間諜達は驚いた。
まるで蹲っている体勢の様に見えていたが、その塊が”立った”のだった。
それはまるで人型を模すようにトレントを大きくした感じだが大きさがけた外れだ。
実際には3000mは有ろうその背丈は雲を突き抜け王都アレグリアを向いていた。
「「「「「退避――! 退避だ――!」」」」」
周りに居た間諜達は一斉に王都アレグリアの反対方向へ向かった。
元棘の森から上を向いていた別の間諜達が我に返り叫ぶ。
「冗談じゃない。あんな山のような高さの魔物と、どうやって戦うと言うのだ」
間諜全員が獣王国バリエンテの滅亡を確信しながら全力で逃げた。
棘王の姿は遠い王都アレグリアでも、かなり小さくだが確認できた。
流石に港街リベルタからは見えない。
エルヴィーノはパウリナとビエルナスを連れて北西の塔に来ていた。
すると向こうに見える北西の塔に獣王ライオネル・モンドラゴンとアンドレア妃が立っていた。
ヤレヤレと思いながらエルヴィーノは用意してあった手紙をパウリナに渡して説明した。
「これから殲滅魔法を使うけど、その後に棘王の本体を始末しに棘の森の中心へ転移するから」
頷くパウリナとビエルナス。
「くれぐれも爆風で飛ばされないようにね。後、手紙は俺が転移した後に読む様に」
再度頷くパウリナとビエルナス。
エルヴィーノはパウリナを抱き寄せて唇を重ねた。
勿論舌も。
それを見ていたビエルナスは恥ずかしそうだった。
「よーし、やるぞー」
「頑張ってアナタ」
エルヴィーノは左手の腕輪に魔素を送り、天に向けて手を突き上げてから叫んだ。
「デスセンディエンテ・インボカシオン・オスクロドラゴン!」
(龍人のフィドキアが成龍状態での召喚魔法陣)
王都アレグリアの前方上空に超巨大な魔法陣が出現し、その光は王都に居る全ての獣人に見られていた。
勿論親父さんにも。
そして更なる出来事が起こる。
始まりは頭部から徐々に現れた体長は100mを越し、翼を広げると300mは優に有りそうな漆黒で巨大なドラゴンの降臨だった。
王都に居る者は口を開けて、その雄姿を呆然と見ていた。
大きく羽ばたく漆黒のドラゴンは咆哮を放ちながら城の周りを飛び回っている。
そしてエルヴィーノが叫ぶ。
「棘王にダムネイション(天罰)!」
漆黒のドラゴンは城の前方上空に停止飛行し咆哮をあげる。
幾重にも重なった魔法陣がドラゴンの前方に現れて一瞬光った。
すると遠い棘の森の上空に雲が集まり真っ黒になるとピカピカピカッと激しく光り、煙が巨大なキノコの様に立ちあがる。
カッ、ドガガガガガガガガガァァァァァァァァァッと閃光の後から轟音が轟く。
「風が強いから隠れて、俺は行くよ」
そう告げエルヴィーノはフィドキアの肩に転移した。
そして辺り一面の空気が物凄い勢いで爆発地に向って吸い込まれた。
城壁の中でも獣人達は必死にモノにしがみ付いていたが、次の瞬間風が逆に吹き荒れた。
城の上空を木々や岩が飛び超えて街にも多少被害は有るだろうが城壁があるので問題ないだろう。
嵐が吹き荒れる中、念話で話しかけた。
(どう?)
(棘は無くなったから後は核を切ってくれ)
(解った)
エルヴィーノはフィドキアの召喚滞在時間が切れるまで肩から眺めてから棘城が有った場所に転移した。
転移後時間切れで消えて行く巨大な黒龍。
エルヴィーノは念のためにオスクロ・アルマドゥラ(暗黒魔闘鎧)を纏いエスパーダ・イリス(虹色の魔法剣)を顕現させた。
あたりを見ながら歩いていると、燃えカスの中心から禍々しい気配が分かり、そこへ行こうにも燃えカスが多いのでビエント・マヒア(風の魔法)で風を操作してカスを吹き飛ばした。
そして現れたのが真っ黒で5mは有ろう楕円形の卵? 核? なんか模様が如何にもって感じで物凄い邪悪な魔素を発散している。
「これを切れば良い訳だな」
エルヴィーノは両手でエスパーダ・イリスを上段から切り下した。
シャパッ! っと音を立てた斬撃は真っ二つに割れたった。
(意外とあっさり切れちゃった)
「良くやった、後は我が見よう」
「はぁ?」
後ろから突然現れたフィドキア。
何をするのか近くで見ていたら、割れた核の中に自らの血を垂らしていた。
「何してんの?」
「再生するのに少し力を分けている所だ」
「ふ~ん、俺も分けようか?」
その一言に驚いた表情のフィドキアだったが「頼む」と答えたのでエルヴィーノは指先を少し切って血を垂らした。
「もう大丈夫だ」
そう言ってフィドキアはティエラ・マヒア(土の魔法)の操作をして二つに割れた核を地下深くに埋めた。
「では帰るか。一緒に来い」
何でと思いながらもエルヴィーノは肩を掴まれ監視室に転移した。
一方パウリナは
「ビエルナス、周りはどう? 」
「ハイ、強風も収まっています」
パウリナは言われた通りエルヴィーノの手紙を開いて読んだ。
(大好きなパウリナへ。広域殲滅魔法はダムネイションと言って俺と”契約している”龍が放つ無属性の極大魔法なのさ。その魔法で棘王の棘の鎧は無くなるけど肝心の核を倒さない限り、本当に倒したとは言えない。だから直接核を倒しに行くが大きい外観以上に核は手強いので最悪の場合は相討ちも覚悟して欲しい。もしも戻らない時は俺の事は忘れて幸せになって欲しい。愛してるよパウリナ。エルヴィーノより)
パウリナは塔を駆け降りた。
やるべき事は1つだから。
獣王ライオネル・モンドラゴン目線。
「あなた、何か動きが有りますわ」
「ウム」
エルヴィーノが手を上げて魔法陣が顕現する。
「うおぉっっ何と言う巨大な魔法陣だ!」
すると頭部から出てくる巨大なドラゴンが現れる。
「バッ馬鹿なドラゴンだと! しかも何と言う巨大さだ! アノ者が召喚したと言うのか!」
「そうとしか見えないし考えられないわ」
ワナワナと震える獣王。
「し、信じられん。まさかドラゴンを降臨させるとは!」
「あっ何か叫んだわ」
棘の森が激しく光り、その後に来る耳を劈く爆音に、その方向に吸い込まれそうになると、今度はそれ以上の激風が襲ってきた。
2人は座り込んで風を凌いだが空は木々が勢いよく飛ばされていた。
「これほどの威力だとは・・・」
感心する獣王に、その腕にしがみ付くアンドレア妃。
「決めたぞ! あのモンドリアンとパウリナを結婚させる! 何を言ってますのアナタは! アレは人族ですよ!」
アンドレア妃の前では布をおでこに当てて耳の先を隠すようにする”いつもの”恰好でいた為、人族だと思われていた。
「お前は以前教えた事を忘れたのか? 我がモンドラゴン家の名前の由来を」
モンドラゴン。
それは遥か昔、ある部族の方言とドラゴンを足した事で名前としたモノだった。
その方言とは一族はドラゴンの末裔で真の勇者はドラゴンを呼び出すことが出来る。
その真の勇者の”真”が方言として”モン”と言ったのだ。
正式には”真の勇者はドラゴンと共に”がモンドラゴンの由来だ。
「まさしくヤツが獣王を継ぐに相応しい」
熱血で語る獣王を冷ややかに見るのはアンドレア妃だ。
(まさかこんな展開になるなんて思わなかったわ。仕方ないわね)
「モンドリアンを探せ! 捜索隊を出せー!」
獣王の怒鳴り声が城に木霊する。
一方で親父さん目線。
「そろそろ時間だよな」
ガヤガヤ・・・店の外がやたら騒がしい。
何か有ったのかと思い外に出ると城の前方上空に光り輝く巨大な魔法陣が現れていた。
その光景を周りの獣人達は皆見ていた。
すると、頭部から出てきたのは真っ黒のとても大きなドラゴンだった。
ドラゴンは大きな咆哮をあげ城の周りを旋回しだした。
すると急に止まり棘の森方面を見ていた。
城壁の中なので光ったのは解らなかったが、耳を劈く爆音が轟き、そのあと空気が吸い込まれそうに流れると、今度はそれ以上の激風が城壁を越えて襲ってきた。
上空には城壁を越えて大量の木々が飛んでいるのが見られる。
「みんな危ないから家の中に避難しろー!」
と叫ぶ親父さんだった。
あの2人の目線。
「さぁて、もう始まるのかな?」
「ここに居ても何も解らないし早目に転移しますか」
町をぶらついていた2人は獣人達が城の方角を指さしていた。
2人がそっちを見ると彼方の上空が光り輝いていた。
そこから出てくる黒い物体が城周りを回っていた。
「あれって・・・ドラゴン?」
「そうみたいですね・・・」
2人は黙って見ていると、かなり大きな音が響き渡る。
ドゴゴゴコゴゴゴコォンっと。
そして空気が流れた後にかなり強い風が吹き荒れた。
そして大量の砂や木々が飛んできた。
「まずいぞ! 転移しよう」
「急ぎましょう!」
慌てて走り出す2人は一目散で教会の地下室へ駆け込み聖魔法王国に転移した。
「いやーそれにしても驚いたな!」
「ハイ」
「まさか港街リベルタにまで影響が出るなんて一体どんな魔法だよ」
慌てて走って来たので息を切らすフォーレ。
「まったくですね、聞きしに勝る威力でした」
驚きながらも褒めるリカルド。
「ところでフォーレさんはこれからどうされますか?」
「一旦宿を取って暫くは休むさ」
「解りました、何かあればマエスコしてください」
「了解!」
そう言って別れた2人だった。
あとがき
これって戦ったって言えるのか?
あら、貴男だから出来た事よ。
疑問視するエルヴィーノを何故か龍人ラソンが褒める。
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それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
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