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第3章 獣王国編

第72話 棘の森@

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(魔法の毛布の思い出)

エルフ王との謁見の間にある絨毯は、謁見に来た者を何らかの理由で捉える場合の魔法拘束具である。
絨毯には内側からの攻撃に対する防御魔法が付与されていて、対魔法攻撃、対切り裂きや突き刺し等を防ぐ。
エルヴィーノはそれを参考に薄めの毛布で2.5メートル四方の毛布を用意し様々な魔法を付与させていく。


飛翔、推進制御、重量制御、硬質制御、認識阻害、保温、保冷、対(燃、汚、水、摩擦、劣化)、対魔法(火、水、氷、土、黒、白、聖)、対攻撃の幕を幾重に重ねる。
特徴は絨毯では無く毛布なのだ。
何故ならば畳んで嵩張かさばらないしからさ。
だが沢山の魔法付与は、なかなか面倒クサイ。
まぁこんな魔法の毛布を作る理由はただ1つでエルヴィーノは馬や、馬車に乗るのが嫌だからだ。
まず、長時間の移動に向いてない(お尻が痛くなる)。
馬は世話が必要(食べ物や、下の処理)。
移動中ならともかく休憩や寝る時に、あれの排泄物は迷惑だ!!

「さぁ、魔法の毛布が完成したぞ!!」
バッと広げると目の前に1メートル位の高さで漂っている。
もう少し下げて地面から50cm位に設定する。
そして乗る。
薄い布にもかかわらず、ふわふわの感覚は、まるで高級絨毯を歩くが如く感覚だ。
これは硬質制御のお陰だろう。
座ってゆっくり飛翔と念じる。
ゆっくりと上空に移動し「止まれ、前に飛べ」とあらゆる動作確認を行う。
エルフの森を自由に飛翔する毛布は誰にも見られず空を飛んでいた。
座り心地は悪くない。
お尻の部分だけ沈んでいる。

「クッションがあった方がいいいかな?」
因みに横に寝そべっても飛べる。

「こりゃ楽だ、枕が要るな」
ハッとして飛び起きる!!
エルヴィーノはその時良からぬ事を考えたのだ。
あの時、自分の脳内が妄想の世界へ突入していった記憶が有る。



☆(10) 



何処まで高く飛べるかの挑戦では、大地が球状で有ることが分かり感動するも、上昇すると少し寒くなって息苦しく感じたが、保温とエアラス・グロボ(酸素の玉)を発動させて快適な空間と温度を保つが、余りの高さなのでかなり恐怖し直ぐ降下する。

次に速度の挑戦では、改めて考慮し直し毛布の端四方から1.5メートルの高さで盾を自動的に発動するように設定する。
これは転落防止と風避けに防御縦の役割として調整する。
そして、飛び立つ!!
どんどん加速すると、アッと言う間に森を抜けてしまう!
最速はまだだが、それなりに魔力を消費しそうだ。
飛んでいる時に魔力が枯渇したらと思い身震いして元いた場所に戻り魔力消費制御を施す。
操縦士の魔力総量が5分の1になると自動的下降して止まる設定。
これで地面に叩きつけられる事はないだろう。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



まさか一番最初に作った移動手段がこんなに役立つなんて夢にも思わなかった。
昼から王都アレグリアを出て暫らく歩き、人の気配が無い事を確認し黒い毛布を出す。

「フォーレ、ちょっと動かしてみる?」
「えっ! いいの?」

嬉しそうな顔でエルヴィーノを見るフォーレの向こうに、まるで自分には言ってくれないんだと寂しそうな表情のリカルド。

しかたないので約束しておこう。
「リカルドは後でな」
「畏まりました」
笑顔が戻ったリカルド。
現金なヤツだ。


往復で二ヶ月かかる所をアッと言う間に行けるのだから多少2人にサービスしても良いだろうと思い扱い方を教えた。
フォーレが操縦して暫くすると感想を述べて来た。

「モンドリアン! やっぱり君は天才だ!」
「何言ってんの?」
「タダの毛布にこれだけの魔法を施すなんて! 信じられないよ!」

などと話しているフォーレは上空・・・かなりの高さまで来ている。
地平線が丸い。

「暑くも寒くも無いし、しかも魔素を使っている感覚がほとんど無い」
「そりゃそう言う風に作ったもん」
「だから天才だと言っているのです」

遥か上空で、さっきまで大地に立っていた大地を見おろしフォーレが高揚している。
解らないでも無いが、もう1人居るので落ち着かせて下降させる。

「そろそろ降りた方が良く無い? リカルドも待っているし」
「・・・そうですね」
未練たっぷりの表情だが、一度戻りリカルドと交代する。

「凄い! あの時の箱も驚きましたが、これは浮遊感と言いますか飛んでいる感じが実感します」
「リカルド」
「ハイ」
「お前には、いつかこれの簡易版を作ってやるから、非常事態に備えて操作を体で覚えるようにな」
「ははっ、ありがとうございます」

リカルドには細かな操作を教えた。
それは敏捷びんしょうに動かす”コツ”だ。

「まぁ今は体験だな。王都イグレシアに戻ったら作ってやるよ」
「ありがとうございますモンドリアン様」

リカルドが滅多に見ない満面の笑みをエルヴィーノに見せてフォーレの所に戻る。
もちろん、フォーレやロリにも内緒だと念を押す。
理由は自分とロリにもしもの事が有った場合の、奥の手の逃げ道だと教えると感心した様子のリカルドは、その指示に従ってくれた。

そうこうしながらいばらの森へ着いてしまった。
すると森の手前に村が有り冒険者の最終安全地帯のような感じで村の中には最小限の設備と宿屋が有った。
その村を拠点と考えてエルヴィーノ達は宿に部屋を取り情報収取をするべく個別に別れて聞きまわった。
その結果、棘の森の魔物は余り多くないが棘のつるが厄介らしい。
沢山の蔓が無尽蔵に湧いて出て冒険者に巻き付きどこかへ連れ去るらしいのだ。
その蔓の強さときたら並みの剣士や普通の魔法など歯が立たないらしい。

3人で得た情報を元に作戦を立てる。
「とりあえず当初の配置で様子を見たらどうかな? ただし、魔法と剣技は初めから最大戦力で」
「良いでしょう、まずは私の魔法剣でどこまで通用するか試して見ましょう。もしもの場合はリカルドの神撃の魔法で補助してください」
「畏まりました」
「俺は?」
「モンドリアンは力を温存するのが望ましいですが、もしも撤退する場合はお願いしますね」
「了解」

一応ダメな場合も想定して確認する。
「とりあえず試したいのは私の魔法剣とリカルドの神撃魔法にモンドリアンはどの魔法ですか?」
「やはり得意な魔法が通じるか試して見たいな」


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


エルヴィーノ達は考えていた。
ただの棘では無いはずだ。
自分達の魔法が通用するのか? 
多少の不安はあるものの夕暮れから森に入るのは止めて明日の朝から行動を開始する為、今日は早目の就寝となる。エルヴィーノ達は”同じ過ちを犯さない”と酒は飲まず3人とも無語で部屋に入った。

エルヴィーノは久しぶりに1人になったので、この前買ったフォーレの本を読んでいた。
しかし、読み始めた時は思わなかった最悪の事態に展開していったのだった。
フォーレの本は5冊あって連載中の物だ。
エルヴィーノは1ページを大切にゆっくりと噛み締める様に読んで行った。

どの位時間が経っただろう・・・本が面白くて止められない状態だった。
あくびが出て(もう寝よう)と思いページの角を折り一旦は寝る。
しかし続きが読みたくなって起きてしまう。


「フォーレの本は面白い。いや、エロい。違う、変態だ。まったく認めるしかないな、奴は天才だ。既に3巻まで読んでしまったぞ。ふぁ~。あくびが止まらない、寝よ」


翌朝、リカルドがエルヴィーノを起こそうとしても起きないのでフォーレに叩き起こされた。
「お前のせいでこんなに眠たいのにもっと優しくしろよ」
「私が何をしたと言うのだ」
「それは・・・お前は天才だ!」

あきれた顔のフォーレ。
「寝言は寝て言ってください。朝ごはんを食べて行きますよ」
「ハーイ」











あとがき
黒い毛布の想い出でした。
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