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第2章 聖魔法王国編

第45話 ロリの初めての迷宮 その3

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エルヴィーノ達にとっていろんな意味で初めての迷宮だ。
知り合って数日の他人と初めての仲間として共同作業を組む。
お互い魔物と戦った経験が少ない。
だが使える魔法は強力。
そして、1階はスライムだけ。

一応万能翻訳機は切っておいた。
魔物と会話なんてしたくないし・・・スライムがあんなに柄が悪く、絡んでくるとは思ってもみなかった。
他の魔物なんてもっと凄い事を言われそうだと思ったからだ。


地下2階はスライムと、いろんな骸骨だ。
面倒だからオスクロ・リァーマ暗黒炎で階層ごと焼き尽くす。
スライムは一瞬で蒸発。
骸骨は・・・跡形も無い。


地下3階はオークとオーガの混成で楽々だった。
階層をバシーオ真空で満たせばバタバタと倒れる魔物達。


地下4階はオーガの大群だ。
あくびが出る。3階と同じで、こんなのが何万匹居ても意味は無いと思えた。


地下5階に降りると何か初めて見る魔物が居た。
蝙蝠が大きくなって人型っぽいのと、トカゲの大きいの。
「キモイ」ってロリが言うからバシーオで早々に動かなくなってもらいました。


地下6階は巨大な虫が沢山居て「キャ―ッ」とロリが後ろで震えている。
仕方なくオスクロ・リァーマでフロアごと焼き尽くす。
隅から隅まで・・・


地下7階は広い。
今までと違い、ただ広い部屋だった。
大分歩いて奥の降りる階段の前にいるのがデカい爬虫類のような魔物で、その大きな体躯は5体確認できた。
どんな魔物か分からないので5体の顔めがけてバシーオすると、全部倒れた・・・恐る恐る歩いて近づくまで5分はかかったが、なんだか、まだピクピク痙攣している。
エルヴィーノはロリの手を取って階段を下りた。


地下8階は又面倒なのが居た。ゴーレムだ。
すると「ここは私に任せてください」とロリが前に出た。
「えっ、かなりの個体が居るぞ!」
「大丈夫です」

そう言えば学校でゴーレムを相手に魔法を練習していたと聞いたのを思い出した。
「って待てよ、学校のは木のゴーレムだろ? こいつは石だぞ! 木のゴーレムも居るけどさ」
「大丈夫ですよ。ディオス・マヒア神撃の魔法は練習中ですが、ゴーレムだったらいつもの調子でやっちゃいます!」

「行きますよぉ! フィロ・ディオス神の刃!」
唱えるとロリが振る腕に合わせて光の衝撃波が現れ、あっさりと木のゴーレムは切り倒されていく。
だが流石に石のゴーレムは頑丈で腕や足を切断出来るが、動体のコア魔石や頭部の魔法陣の印は防御力が高く衝撃波は弾かれていた。

「やはり単体攻撃・小では石のゴーレムは倒せませんでした」
腕を振りロリが息を切らしながら話しかけてくる。
エルヴィーノが替わろうと言いかけた時、ロリは魔法を解いて別の呪文を唱え始めた。

エスパーダ・ディオス神の剣 !」
唱えると光り輝く剣がロリの右手に顕現しロリが無造作に剣を振ると、あっさりと石のゴーレムは切り倒されていく。

「流石は単体攻撃・中ね」
得意げなロリにエルヴィーノが「凄い凄い凄い」を連呼し、光り輝く剣を見ながら褒めちぎる。

「これがロリの神撃魔法か! 本当に凄いや!」
照れながら自慢げに胸を張るロリ。
普段は法衣の中に納められている究極兵器(対エルヴィーノ用の予定)がその巨大さを想像させるほどり出してくる。

普段ならこの場面で多少血液が逆流する所だが、エルヴィーノの思考は別の事で一杯だった。それは・・・

(ディオス・マヒア神撃の魔法・・・俺にも使えるかな)
 エルヴィーノの思考が瞬時にメリットとデメリットを出した。

サント・マヒア神聖の魔法系の中でも特別なディオス・マヒアは自分も使える可能性が高い。
扱える者は一部の聖魔法王国の者。
もしくはエルフでもサント・マヒアを使う高位の術者だ。
そんな希少な存在が、たまたまエルヴィーノの目の前に居る。


(ロリに教えて貰うのは可能だろうが、結婚が条件になるはず。教えて貰って結婚しないと、それはそれで後々面倒だ。最悪の場合は聖魔法王国と敵対か・・・エルフ国もあるし・・・じゃ、俺の欲しいディオス・マヒアが手に入り、ロリも俺と結婚でたら・・・当然ロザリーが暴れるだろう・・・いや、阻止してくる。いろんな手を使っても。当然俺にも説明を要求されるし・・・体罰の名目で当分の間、性奴隷に逆戻りだ。イヤでは無いが、1度自由を手に入れたら束縛されるのは嫌だな・・・だが、ディオス・マヒアは手に入れたい。どうしたものか?) 


様々な人物や、実行した場合の態度と言動を予測して行動を決める。

この間わずか3秒。
と思っているのは自分だけで、目の前で何と戦ったのかも記憶に残らず9階を通り過ぎた。
その間ずっと「そうなったらこうしよう。それはこれで。だったらこっちの方を・・・」など、独り言をロリに聞かれていたようだ。

「あのぉ、エルヴィーノさん?」
1度の問いかけに答えないので、ロリが目の前20cm位に立つ。

「うわっ! 何 ! どうした?」クスクス笑うロリ。
「あの時と逆になりましたね」
「あの時?」
何の事か分からなかったエルヴィーノは首を傾げた。

「ほら、初めて会った時」
「・・・あぁあの時な」
2人の邂逅かいこうを思い出したエルヴィーノはクスクスと笑った。

「本当だ」
考え事をしていたから周りが全く見えなくて、ロリの後ろ姿を見ながら歩いていたからだ。

「それで、ここは?」
「この階段を降りれば10階です」
「あれ? 9階の魔物は?」
「私が”1人で全部”倒しました。石のゴーレムだけだったので腕がダルイですけどね」

また、”凄い凄い凄い”を連呼しロリを褒め称える。
今度も同じポーズをとるロリ。
今度は普通に逆流する血液。
エルヴィーノは決めていた。
後の事は何とかなるだろうと・・・ディオス・マヒアを密かに手に入れると心に誓うのだった。


エルヴィーノ達は10階に降りる前に一緒に戦おうと話し合った。
当たり前の事だが、ここまでは出来ていなかった。
どちらかが一方的に魔物を倒していたからだ。
エルヴィーノが前衛で直接攻撃と攻撃補助魔法担当だ。
ロリは後衛で魔法攻撃と回復魔法担当し、盾は各自の魔法で顕現させる。

地下10階に降りたら又広い部屋だ。
だがゴーレムが50体? いや100は居るだろう。

「どこの冒険者だ。地下5階まで行ったが低レベル過ぎて攻略する気が無くなったとか抜かす奴は! 確かにそうだったが、このゴーレムの多さは無いぞ」

エルヴィーノはカパシダ・フィジィカ・メホラ身体能力向上魔法アタッケ・フィジィコ・デサティバド物理攻撃無効化ベロシダ・スビール速度上昇を自分達に唱え、更に自身にアウメンタール・ラ・フォルサ・ムスクラール筋力上昇を唱える。

ロリはエスクード・サガラド聖なる盾と、オルデン・ディオス神の秩序全体攻撃・小を準備している。
エルヴィーノは左腕にオスクロ・エスクード暗黒盾、右手にネグロ・ラミナ黒刃を顕現させて準備する。

まずは、ロリが全体攻撃を仕掛けエルヴィーノのネグロ・ラミナが通用するか試して見る。
その2つの魔法が有効ならば離れた場所からの攻撃を続ける。

効果が無い場合には、ロリは先ほどのエスパーダ・ディオスで戦う。
エルヴィーノはネグロ・ラミナが通用しないならばオスクロ・エスパーダ暗黒剣で戦うしかない。

「行きまぁす!」

ロリがオルデン・ディオス、全体攻撃・小を発動させる。
光り輝く無数のこぶしが周囲にいるゴーレムに向って放たれる。
腕や、足、頭部を破壊しながら一定の時間で終息した。
そして、エルヴィーノのネグロ・ラミナだ。
1000mm×200mm×5mmのネグロ・ラミナ黒刃を10枚出し、ロタシオン回転魔法20と唱えた。
(20とは20回ロタシオンを続けて掛けるの意)そして、高速回転するネグロ・ラミナを四方に飛ばす。

「凄ぉ―い!」

エルヴィーノは少し不安だった。
こんな沢山のゴーレムに自分のオスクロ・マヒア暗黒魔法が通じるのかと。
しかし、そんな不安はロリの一声で解消された。
あれだけ沢山居たのに、あっと言う間に胴体を真っ二つに切られたゴーレムで一杯になった。
だがエルヴィーノは残り10体ほどでネグロ・ラミナを霧散させた。
残りは別の魔法だとロリに告げる。
全ての魔法を使って攻撃をして経験を積む。
効果の有無も戦闘で体験しないと意味が無いからだ。

「じゃ、ロリは1体お願いできるかな?」
「えぇー1体だけ~?」

まだ使っていないアルコ・サント聖なる弓をベースのミスクラル・マヒア合成魔法だ。
「今度はグラキエース・マヒア氷の魔法も試したらどうだ?」
「やってみる」
アウクシリアル・デ・コンバッテ戦闘補助魔法を使っているから普段以上に動けるはずだ」

エルヴィーノはオスクロ・エスパーダを顕現させゴーレムに向かって走り出した。
接近戦は得意では無いが相手がゴーレムで、カパシダ・フィジィカ・メホラ身体能力向上魔法に、アタッケ・フィジィコ・デサティバド物理攻撃無効化と、ベロシダ・スビール速度上昇の3つのアウクシリアル・デ・コンバッテ戦闘補助魔法を使っているので2人は無敵状態だった。

ロリは走っていた・・・
そしてもの凄い速さで・・・引き返してきた。

「凄いです。こんなに早く走れるなんて思っていませんでした!」
驚き、嬉しそうなロリ。
「じゃ、走りながらアルコ・サント聖なる弓を試してみたらどう?」
「ハイ。やってみます」

流石に走りながら弓を放つのは難しいみたいだ。
でも、楽しそうな顔のロリ。
ベロシダ・スビール速度上昇が気に入ったみたいだ。

そしてエルヴィーノはオスクロ・エスパーダでは無く、ネグロ・グロボを出した。
20cmの大きさだ。それを飛ばす。
ネグロ・グロボがゴーレムに当たると粉々に砕ける。胴体もだ。

ロリはミスクラル・マヒアを使い、放たれたグラキエース・マヒアがゴーレムを氷で固めて一瞬で砕く。

確かに低級の迷宮だ。
ゴーレムは全て粉々になったが、まだロリは走り回っている。
楽しいのだろう・・・早く走る事が。
エルヴィーノは辺りを見回した。
ここが最下層か確かめるためだ。
これまでも宝箱など無かった。
小部屋は有ったが、罠は無い。

特に怪しい場所は無く「ロリ、 帰るぞ」と言った瞬間 !
入口の階段から一番奥の壁が、大きく両開きで開きだした。

扉が開き切り、中を見ると明るいが前方に壁が有って奥が見えない。
エルヴィーノは躊躇ちゅうちょした。
この迷宮の流れ、最下層の部屋を調べても不振な所が無かったにもかかわらず、壁が開いた。
何か、とんでもないモノが居そうな感じがしたからだ。

「エルヴィーノ、行きましょう!」
そう言ってエルヴィーノの手を引っ張り先頭を切って歩き出すロリ。
奥に進むと居間のような空間だった。

机が有り、椅子に腰かけ背を向けている者と、立ってこちらを見ている・・・女性が居た。

壁周りには大きなわくに別の場所が映っている。

笑顔で近づいて来る女性だが、エルヴィーノは身震いした・・・
(物凄い魔素だ)









あとがき
ちょっと、いやかなりビビるエルヴィーノ。
女性からは、それほどの魔素を感じていた。
2人の運命は・・・
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