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第2章 聖魔法王国編

第31話 旅の始まり

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大陸の港町ゴルフィーニョから次の町クラベルまで徒歩で10日。
途中いくつかの町を通過して目指すは獣王国バリエンテだ。
エルヴィーノは船で仮眠を取り、街を少し見て回り早目に宿を取った。
そして宿屋の親父からの提案を受けていた。

「この町にも娼館が有るけどな、裕福な家の有閑夫人も居るんだよ。どちらも別嬪でさ、暇な時に若い男の取り合いをしているのさ。それも旅の若い男を狙ってな。男にとって悪い奴らじゃ無い。金を取ったりはしないんだが・・・娼館の女も、裕福な家の女も結構な腕を持っているらしくてな・・・男が骨抜きになるらしい」

「へぇ・・・」

エルヴィーノは興味の無い返事をした。
なんとなく罠にハメられると読めたからだ。
一応話を聞いて確認する。

「親父さんそれじゃ俺が誰も選ばすに部屋に戻ったら、俺の勝ちって事?・・・・」
「・・・なんかバレてるか?」

エルヴィーノは笑いなから答えた。
「バレバレだよ・・・親父さんチョツト話があるけど俺の部屋まで来てくれる?」
「あぁ構わないぞ」

エルヴィーノは部屋で頭巾を取り親父さんと見つめ合う・・・

「何か質問はありますか? 」
「いや、特に無いがお客さん色男だねぇ・・・」
「そんな事は無いよ」

答えながらエルヴィーノは考えた。
(俺の素顔を見てこの人族は何も解らない・・・)

「親父さん何歳ですか?」
「オイラか? オイラは40歳だ」

エルヴィーノはニコッとしながら(そうか人族の寿命は短いんだ)と思い出した。
親父さんの三倍以上生きているエルヴィーノだが(もっと世の中を知らないといけない)と思った。
エルヴィーノが考えながら親父さんに提案した。

「若い男の上玉が見つかったと女たちに言って、男が欲しければ一番金を払った女に、男と一夜を共に出来ると言えばいいのでは?」
「面白れぇ。その考え乗ったぜ!」

「ただし、部屋に入る権利だからね。俺の身体を自由に出来るかは本人女性の腕次第だよ」
「クククククッそいつも面白い! 普段は女達が男どもに言うセリフだが、あの生意気な女達に言ったらどんな顔をするか想像しただけでも可笑しくて笑い転げそうだ・・・まぁそれもお客さんのような色男じゃ無いと話にならないがな」

「それでさ、親父さん。俺は訳あって獣王国バリエンテを目指しているんだ。出来れば獣人とかいないかな?」
「ん―っ、居る事は居るが・・・俺が予定していた女達以上にプライドが高いぞ」

「別にそいつらがダメなら現地に行っていろいろ聞くけどね」
「なるほど・・・情報を仕入れたいって訳か」

「その通り」
「良し、任せとけ。お前さんの事を売り込んできてやるよ」

「親父さん・・・俺は金が欲しい訳じゃ無いからさ、全部親父さんが取っていいよ」
「えっ! 本当か?」

「その代り宿代と食事代、タダでいいよね?」
「ハハハハハっ、参ったな・・・解った。さっきの宿代も後で返してやるよ」

「持ちつ持たれつだね」
「あぁそうだな」

「じゃ、しばらく待ってくれ食事の時間までには女たちを用意しよう」
「ちゃんと親父さんが仕切ってね。俺は部屋で待っていれば良いんだろ」

「あぁ楽しみにしていな。飛びっ切りの女を連れて来てやるよ」
「あぁ期待しないで待っているよ」
お互いに不敵な笑みを浮かべながら別れた。

1人になりグンデリックに書いてもらった地図を出して見ていた。
(港町ゴルフィーニョから次の街クラベルまで歩いて10日か・・・)

獣王国バリエンテには歩きだと最短で3か月。
ブエロ・マシルベーゴォ飛行魔導具だとあっと言う間だが、エルヴィーノは一人旅を満喫したいと思っていた。
過去全てにおいて束縛された日々・・・辛いと思った事は無かった。
むしろ気持ち良いと・・・だが束縛は束縛で、今の俺は自由だ。
制約があるけど、それでも満足だった。

毎日手紙を送る約束をしているロザリーに手紙を書く。
”街を少し散策したが、寝不足なので早目の夕食を取り、今日はもう寝る。”と。
皮製で作り直した自分専用のエマスコ通信魔道具に入れ「ロザリー」と唱えた。

自分専用のエマスコは大分改良してある。
発動は送りたい名前を唱えるか、無言で思念と魔素を送るか。
複数名に送る事も可能だ。
非常時は全員と唱えれば良い。
勿論、さっきロザリーに送ったのは一応、保身の為に今夜の身の潔白作りの工作だ。
そして時間が経って行く・・・



“コンコンッ”
扉が叩かれた。
「どうぞ」

扉が開き宿の主人と知らない男女が入ってきた。
「おぉ、こりゃ色男だ」
「あんた」
「あぁ凄い値が付きそうだ」

(まぁ確かに、2つの王家の血が入っているからなぁ)
だがエルヴィーノに自覚は無かった。
エルフはみんな均整のとれた顔立ちをしている。
その中で普通に暮らしていたので、人族の言う色男の意味が解らなかった。
人族にとっては色白が色男なのかな? 港町の男達は日焼けして茶褐色の顔ばかりだった。
エルヴィーノは買ったばかりの黒い布を額に当て耳を隠すように頭に巻いていたから人に見えたのか?

親父さんが説明してくれた。
「俺の知り合いの娼館の主と嫁さんだ」
「あのぉそれでどんな話になったのですか?」

「旅の色男が金に困って一夜の自由と引き換えに何でも言う事を聞いてくれるってよ」
「何か話が変わっているような・・・」
「そこはホラお前さんの腕だよ、腕!」

「じゃ決めて良いですか?」
「何を?」
「この町で人気の三人教えてください。その中に獣人はいますか?」

娼館の主が言うには、その三人の中に獣人は居る。
ただし自分が気に入った男しか相手にしないと。

「解りました。ではその三人には目印を付けてください。腕にハンカチを巻くとか」
「解ったわ」と娼館の主の妻が答えた。

妻がエルヴィーノをジロジロと見ていると娼館の主が注意する。
「おい」
「何よ」
「いつまでも見てんじゃねぇ」
「フンッ」と言いながら二人は出て行った。

「親父さん、彼らと山分けですか?」
「目ざといねぇお客さん」

「で、どの子がお勧めなの?」
「俺の情報によると技術は同様に凄いらしい。重要なのは好みと感だな・・・」
「それって参考にならないけど・・・」
「ハハハハハハっ大丈夫だ、みんな良い女だからよ」

こういう時は話半分、むしろ期待するなとグンデリックから聞いていたので(仕方ない、目つぶってしようかな・・・)と思っていた。
そして扉が叩かれた。
まず顔を見せたのは娼館の主の妻だった。

「じゃ、6人順番に来るからね。女達にはね、今回は男では無くて女が見て選ぶんだよって言ってあるから。欲しいと思ったら金額を提示するようにと伝えてあるわよぉ」
エルヴィーノが娼館の主の妻に尋ねる。

「じゃ全部脱いだ方がいいのか?」
「あんた解ってるねぇ・・・」
「じゃ毛布に包まって待っているよ。そして、入って来た人に脱がせてもらうからね?」
「あぁそれで良いよ」
「ただし、触らないように言ってね」
「フフフッ。じゃ呼ぶよ」

エルヴィーノはドキドキしながら毛布を巻いてロザリーの裸を思い出していた。
初めての体験で緊張しているので相棒にはあまり血液が流れていない。
半分って感じだ・・・

すると
「失礼しまぁす」
ドアが開いた。








あとがき
待たされるってドキドキしますよね?
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