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第1章 エルフ国編

第27話 エルフ王が語る真実

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戦争の原因。
これは戦争が終結した後のお話です。



これは古い書物に稀に出てくるのが数千年以上前の事件だ。

「ダークエルフの100歳前後の男児が相次いで誘拐にあい、暫くして無事に保護される」と言う事件である。
事件の真相は高度に隠蔽されていたが、時のダークエルフ王からエルフ王に依頼が有り、エルフ王が乗りだし究明にあたる。
厳密な調査の結果、ダークエルフの男児で初めて精通した魔精はエルフの女性に肌や身体に若返りの効果を出す薬になると。

これはダークエルフの男児からエルフの女性に対しての効果で、逆の効果は無い。
ダークエルフ同士も効果無い。
そして裕福なエルフの女性がこぞって大金を闇の業者に支払っていたのである。
この事が脈々と密かに行われていたのだった。
誰にも知られないように秘密結社を作ってである。

これは戦争後、第82代エルフ王ディーデリック・ファン・デ・ブリンクスの命令で密かに調べた王直属親衛隊隊長ジャックの報告だった。

大きな魔素を持つ第97代ダークエルフ王ディラン・デ・モンドリアンが戦争で負けた理由。
エルフ族に伝わるオスクロ・マヒア暗黒魔法の元である魔素を吸収する聖玉白く輝く玉がある。
これは代々エルフ王にしか扱えず、その魔素量によるが使用後の聖玉は普通の石になる。
吸収した暗黒魔素を少しずつ普通の魔素にする為だ。
それを使ってダークエルフ王を無力化したのだった。

エルフ王も困惑していた。
「あれほど仲良く友好を築いていたのにナゼだ!」っと。
「ワシの盟友であるディランに娘のカリンを嫁がせ、我らはこれから発展していくと考えていたのに!」
王の涙は止まらなかった。

「戦争が終結し時間はかかったが徹底的に調べた結果が・・・これかっ」

原因は愚かなエルフの欲望がこの顛末を引き起こしたのだと。
親衛隊隊長ジャックの報告書にはダークエルフの子供を拉致したエルフと闇の業者には様々な種族がいた。

「ジャックよ・・・」
「ハッ」
「間違いないのか?」
「ハッ」
「エルフ数名を捕まえ自白させました」
エルフ王は愕然とした。
止めどもなく流れる涙・・・声にならない嗚咽・・・部下の前でも気にせず。

「ワシは・・・ワシは何という事をしてしまったのか・・・」

そう言い自らの剣を咽喉に当てて自害しようとした。
ジャックはそれに気づきすかさず王の剣を奪い取る。

「ジャックよ。死なせてくれ・・・」
何百年も王の親衛隊として仕えていたが、このような事はジャックも初めてだった。

「なりません王よ。あなた様は生きねばなりません」
「エルフなど滅んでしまえば良いのじゃ・・・」
「滅多な事を言ってはなりません。どこに他のエルフの目があるかわかりません」

泣き止んだエルフ王ディーデリック・ファン・デ・ブリンクスは魂の抜け殻のようだった。
王の覚悟を知ったジャックは必死に王を守ろうとした。
ジャックは亡くなった者達を全員知っている。
"エルフ模様"も知っている。
ジャック自身もこの戦争の理由が知りたかったので懸命に調査していたのだ。


ブリンクス王は戦後に行った原因究明の経緯いきさつを話しロザリーを見ていた。
ロザリーは目が点になって聞き入っていたが思い当たる事が多過ぎて、すごすごと後ろへ下がっていた。


王の話は続いた。
「ワシが一度に無くした者は、盟友であるディラン。長女のカリン。長男のエヴァルド。次男のエミリアン。次女のエレオノーラ。数多くのエルフとダークエルフだった。そしてリーゼロッテが生きていたと報告を受けた時、ワシは救われた気分だった。ワシはリーゼロッテに詫びた。泣いて詫びた。何度もな。そして懇願した。ダークエルフの血を絶やしたくないと。ワシも歳じゃ今更子作りなど出来ん。だがワシには秘策があった。その秘策をリーゼロッテに説明した後に、お前を身籠みごもったのじゃ」

「えぇっと・・・全然わからないけど・・・」
エルヴィーノが素直に言う。

「仕方無いのぉ」
エルヴィーノは既にエスパシオ・ボルサ空間バックから茶道具とお菓子を出して親父の話を聞いていた。
親父と俺は牢部屋が寒いので茶をすすり聞いているとボソッと親父がつぶやいた。

「処女受胎じゃ」

ブゥ―――ッ! 
エルヴィーノは茶を噴出した。

「ハァ、なんだってぇ?」
「だから処女受胎じゃと言ったじゃろ」
「いや・・・どうやって?」

エルヴィーノは愛し合わずに子を成す意味が解らなかったが・・・何気にロザリーを見ると、物凄く食いついている。
目を輝かせながら・・・ちょっと怖い。

「ウム。ワシらエルフは長寿の為なかなか子が出来ぬな?」
頷くエルヴィーノ。
「先祖のエルフが考えた秘術でな、今は王家にしか伝承されておらん」
フムフム。
「まぁ簡単に言うと自分の精を女性の子宮に転移させるのじゃ」
「それだけ?」
「あぁ」
なんか、がっくりした。

「それでも中々受精しづらかったぞお前は」
「まぁいいけど、貴重なお話ありがとうございます」
「ウム。ワシは嬉しい。お前が成長して立派になった姿を”あやつら”に見せたかった・・・」
そう言ってす涙ぐむ親父にエルヴィーノは温かいお茶をそそいだ。

「さて、お前の処置じゃが・・・今王都に居る長く生きているエルフは、ダークエルフは悪で滅ぼす対象と言う認識がほとんどだ。若いエルフは知らんかもしれんが長く生きたエルフはまだ沢山いるからのぉ」

「さて、どうしたものか・・・」
エルヴィーノはエスパシオ・ボルサから紙とペンを出して自分の考えを書いた。
親父に見せる為だ。
これを言うとロザリーが反対すると思ったから、先に親父の許可を取って王から直接説明してもらった方が効果的だと考えたからだ。

書いた物を親父に見せる。
「フム。それで良いのか?」
続けて紙に書く。
それを見た親父がエルフの王として皆に話した。

「皆の者よ、今回エルヴィーノによって我らは救われた。だか、正体が露見したしまった。国内のエルフの思想は以前のままだ。これが大勢のエルフの耳に入るとどうなるか・・・解るな、ロザリーよ」
頷くロザリー。

「大義もあるが民意もある。よってエルヴィーノは国外追放とする。追放日は10日後である」
直ぐに声を発したのはロザリーだった。

「お待ちくださいブリンクス王。何故そんな重い罰を受けなければならないのですか?」
目的は言わないでくれと紙に書いてよかった・・・

「それはのぉ・・・こやつの宿命だ。ロザリーよ」
「嫌です。私も一緒に国を出ます」
グンデリックがすかさず横槍を入れる。
「それは流石にまずいぞロザリー・・・」

納得のいかないロザリーに、ブリンクス王が妥協案を出した。
「あぁ解った解った。では特例を出そう。10日に一度ブリンクス伯爵家に転移魔法陣で帰って来ても良い。ただし、1泊だけじゃ。1日だけの滞在は許そう。翌日にはまた旅に出てもらうぞ。それに、ブリンクス伯爵家の敷地内から出てはいかん。良いか? ロザリー」

するとロザリーが物申す。
「2日でお願いします」
良く見ると、うつむきながら泣いている。

「しょうがない。では、2日間許そう。くれぐれも外に出たり見られたりしないようにな」
エルヴィーノは頷いた。
「屋敷の警護と外観を考えてくれよグンデリック」
「ハッ。お任せを」

「良し。終わりじゃ。息子よ、達者で暮らせよ」
「あぁ親父もな」
「たまには孫の顔を見に伯爵家に顔を出すからその時に戻ってこい」
「あぁ解ったよ」
そして牢から出て解散し、エルヴィーノとロザリーにグンデリックは転移魔法で屋敷に戻った。








あとがき
当然この話は他言無用となっている。
もうすぐエルフ国編が終わります。
そして新しい出会いが待っています。
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