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第1章 エルフ国編
第12話 初めての暗殺
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その男、ヘンリー・オーウェン。
闇に葬る憎たらしい敵だ。
ムカムカして他の事も手に付かない状態の意識は殺意に満たされていた。
一般的に嫉妬とも言う。
エルヴィーノは大切な女を奪われないように対処するべき行動に出た。
事の始まりはグンデリックの何気ない小言だった。
ロザリーの執務室で同行した王宮の会議に出席したグンデリックがナタリーにもらしたグチだった。
「しかしオーウェン卿にも困ったものだ。事あるごとにロザリー様に突っかかってくる。今回の懸案もオーウェン卿は関係無いのに・・・しかも、あの目つき。ワシは気に入らん!」
ナタリーが宥める様に「顔は人それぞれですから」と言うが「イヤ、アレはロザリー様を自分の物にしたい目だ」
グンデリックとナタリーの会話が隣の部屋に居たエルヴィーノの耳に飛び込んできた。
一瞬で固まった。
(俺のロザリーを、自分のモノにしたいだと?)
エルヴイーノは思考が止まり何も考えられなくなった。
(コロス。ロザリーにチョッカイ出す奴は全て殺す)
と心に硬く誓うのだった。
ロザリーは王宮にて内政を補佐する要職だ。
オーウェン卿とは主に外交を補佐する要職についている。
「結構な年齢で、金にせこく、余り良い噂の無いヤツだ」とグンデリックがナタリーに教えていた。
今に始まった事では無いが、対外的にロザリーが未亡人となっているのが原因だ。
オーウェン卿だけでは無くいろんなエルフから再婚の申し出が屋敷に届いている。
中でもオーウェン卿は露骨な態度をとるらしく、少なからずロザリーはその事で政務に支障を感じていた。
グンデリックからすれば我が子同然のロザリーにイヤらしい目でロザリーをジロジロと見ているだけでも腹が立つらしい。
「いっその事、闇に葬り去るか・・・いけません!」
ロザリーがグンデリックを諌める。
「あれでもわが国の外交の要職を担う者、そのようなこと決してあってはなりません」
「ハッ申し訳ありません。口が過ぎました」
怒られたグンデリックはそれでも不満があるのかナタリーに問いかける。
「しかし、今日のヤツの態度は本当にブチキレそうだったぜ。ロザリー様も良く耐えられましたなぁ」
「何があったのですか?」
「どうでも良い些細な事を大げさに話して、最後はロザリー様を褒めるのだが去り際に握手を求めたり、なれなれしく肩を触ったりと」
クスクス・・・ロザリーが笑う。
「あの時のグンデリックの顔ときたら、それはもう笑うのをこらえるのが精一杯だったわ」
ロザリーの執務室と俺の部屋は扉一枚で、グンデリックの大きな声は普通に聞こえてくる。
エルヴィーノは自室にて魔導書を読んでいたが、既に頭の中はオーウェン卿の事で一杯だった。
この時初めて(俺はロザリーを愛していたんだ・・・)と自覚した。
エルヴィーノの心は愛情と憎しみと殺意で一杯だった。
それからしばらくは、どうやって殺すか考えた。
当然自分だと分かってはダメだ。
そう考えるうちに、アレもダメ。
この方法も目立つ。
どうやって息の根を止めてやるか。
「あっ!!そうだ、息の根を止めるんだ」
(俺とした事が自分の魔法を忘れていた)
頭の中ではどうやって苦痛を与え後悔させてやるかばかり考えていた。
炎で焼き殺すとか、手足を切り刻んでやるとか。
エルヴィーノは自身の魔法を忘れていた事に気づいた。
オーウェン卿の始末はロザリーが嫌な思いをせず政務をできるようにする事だ。
速やかに、殺人だと分からないようにするには「・・・あの魔法か・・・」では、どうやってヤツの屋敷に近づくか。
それともヤツの仕事中か? 方法は解決したが過程が問題だ。
だがそれは些細な問題だ。
(俺の痕跡を残さず、誰にも見られず、自然死のように殺してやる!)と誓ったのだ。
エルヴィーノは深夜、何度か部屋を抜け出しオーウェン卿の屋敷に偵察に行った。
オーウェン卿の屋敷の場所は事前にグンデリックから聞いていた通りの悪趣味な門や、訳の分からない像が置いてある、そこそこ大きな屋敷だったので直ぐにわかった。
下品な屋敷だとエルヴィーノは第一印象で思った。
屋敷の大きさ、警備の配置や見回りの回数など。
そして、オーウェン卿の主寝室とベッドの配置。
殺意を抑えて、ロザリーにも誰にも分からないように準備を進めた。
決行当日、エルヴィーノはいつもの様にロザリーを愛してあげて寝静まった頃、用意してあった黒尽くめの服に着替え、黒い毛布程度の布を取り出して夜空に飛んで行った。
黒い布にはインヒビション・レコノシメント、 ベロシダッド、アイレ・レシステンシア・インバリド 、グラビダッドが施してある空飛ぶ黒い布だ。
因みに黒い服にもインヒビション・レコノシメントを施してある。
オーウェン卿の屋敷の上空に着き主寝室の上に移動する。
カーテンが閉められて部屋が良く見えない為、部屋ごと真空にしてやる。
時間は10分。
それで十分だ。
過去の経験(魔物との対戦)で10分もあれば間違いない。
10分過ぎれば魔法の効果は無くなる。
エルヴィーノはバシーオの魔法を唱えロザリーの屋敷に戻った。
翌日の昼過ぎにロザリーとグンデリックが王宮から戻ってきた。
ナタリーが呼ばれ執務室でオーウェン卿が亡くなったと話しているのが、隣の部屋で読書をしているエルヴィーノの耳に飛び込んできた。
その報告を聞いて口元は緩み当然だと思っていた。
グンデリックが「しかし、あのスケベ野郎が突然死とはなぁ~」
ナタリーが「あなたも気を付けた方が良いのでは?」
「・・・」グンデリックは気まずそうに黙っている。
「もう少し野菜を食べてくださいね」
ロザリーがやさしく諌める。
オーウェン卿の死因は不明。
突然死とされていた。
これからもロザリーの色目を使うやつはコッソリと始末してやると誓ったエルヴィーノだった。
あとがき
闇から闇へと葬る暗殺者
後に同じような事を平気で考えるロザリーは似た者同士です。
闇に葬る憎たらしい敵だ。
ムカムカして他の事も手に付かない状態の意識は殺意に満たされていた。
一般的に嫉妬とも言う。
エルヴィーノは大切な女を奪われないように対処するべき行動に出た。
事の始まりはグンデリックの何気ない小言だった。
ロザリーの執務室で同行した王宮の会議に出席したグンデリックがナタリーにもらしたグチだった。
「しかしオーウェン卿にも困ったものだ。事あるごとにロザリー様に突っかかってくる。今回の懸案もオーウェン卿は関係無いのに・・・しかも、あの目つき。ワシは気に入らん!」
ナタリーが宥める様に「顔は人それぞれですから」と言うが「イヤ、アレはロザリー様を自分の物にしたい目だ」
グンデリックとナタリーの会話が隣の部屋に居たエルヴィーノの耳に飛び込んできた。
一瞬で固まった。
(俺のロザリーを、自分のモノにしたいだと?)
エルヴイーノは思考が止まり何も考えられなくなった。
(コロス。ロザリーにチョッカイ出す奴は全て殺す)
と心に硬く誓うのだった。
ロザリーは王宮にて内政を補佐する要職だ。
オーウェン卿とは主に外交を補佐する要職についている。
「結構な年齢で、金にせこく、余り良い噂の無いヤツだ」とグンデリックがナタリーに教えていた。
今に始まった事では無いが、対外的にロザリーが未亡人となっているのが原因だ。
オーウェン卿だけでは無くいろんなエルフから再婚の申し出が屋敷に届いている。
中でもオーウェン卿は露骨な態度をとるらしく、少なからずロザリーはその事で政務に支障を感じていた。
グンデリックからすれば我が子同然のロザリーにイヤらしい目でロザリーをジロジロと見ているだけでも腹が立つらしい。
「いっその事、闇に葬り去るか・・・いけません!」
ロザリーがグンデリックを諌める。
「あれでもわが国の外交の要職を担う者、そのようなこと決してあってはなりません」
「ハッ申し訳ありません。口が過ぎました」
怒られたグンデリックはそれでも不満があるのかナタリーに問いかける。
「しかし、今日のヤツの態度は本当にブチキレそうだったぜ。ロザリー様も良く耐えられましたなぁ」
「何があったのですか?」
「どうでも良い些細な事を大げさに話して、最後はロザリー様を褒めるのだが去り際に握手を求めたり、なれなれしく肩を触ったりと」
クスクス・・・ロザリーが笑う。
「あの時のグンデリックの顔ときたら、それはもう笑うのをこらえるのが精一杯だったわ」
ロザリーの執務室と俺の部屋は扉一枚で、グンデリックの大きな声は普通に聞こえてくる。
エルヴィーノは自室にて魔導書を読んでいたが、既に頭の中はオーウェン卿の事で一杯だった。
この時初めて(俺はロザリーを愛していたんだ・・・)と自覚した。
エルヴィーノの心は愛情と憎しみと殺意で一杯だった。
それからしばらくは、どうやって殺すか考えた。
当然自分だと分かってはダメだ。
そう考えるうちに、アレもダメ。
この方法も目立つ。
どうやって息の根を止めてやるか。
「あっ!!そうだ、息の根を止めるんだ」
(俺とした事が自分の魔法を忘れていた)
頭の中ではどうやって苦痛を与え後悔させてやるかばかり考えていた。
炎で焼き殺すとか、手足を切り刻んでやるとか。
エルヴィーノは自身の魔法を忘れていた事に気づいた。
オーウェン卿の始末はロザリーが嫌な思いをせず政務をできるようにする事だ。
速やかに、殺人だと分からないようにするには「・・・あの魔法か・・・」では、どうやってヤツの屋敷に近づくか。
それともヤツの仕事中か? 方法は解決したが過程が問題だ。
だがそれは些細な問題だ。
(俺の痕跡を残さず、誰にも見られず、自然死のように殺してやる!)と誓ったのだ。
エルヴィーノは深夜、何度か部屋を抜け出しオーウェン卿の屋敷に偵察に行った。
オーウェン卿の屋敷の場所は事前にグンデリックから聞いていた通りの悪趣味な門や、訳の分からない像が置いてある、そこそこ大きな屋敷だったので直ぐにわかった。
下品な屋敷だとエルヴィーノは第一印象で思った。
屋敷の大きさ、警備の配置や見回りの回数など。
そして、オーウェン卿の主寝室とベッドの配置。
殺意を抑えて、ロザリーにも誰にも分からないように準備を進めた。
決行当日、エルヴィーノはいつもの様にロザリーを愛してあげて寝静まった頃、用意してあった黒尽くめの服に着替え、黒い毛布程度の布を取り出して夜空に飛んで行った。
黒い布にはインヒビション・レコノシメント、 ベロシダッド、アイレ・レシステンシア・インバリド 、グラビダッドが施してある空飛ぶ黒い布だ。
因みに黒い服にもインヒビション・レコノシメントを施してある。
オーウェン卿の屋敷の上空に着き主寝室の上に移動する。
カーテンが閉められて部屋が良く見えない為、部屋ごと真空にしてやる。
時間は10分。
それで十分だ。
過去の経験(魔物との対戦)で10分もあれば間違いない。
10分過ぎれば魔法の効果は無くなる。
エルヴィーノはバシーオの魔法を唱えロザリーの屋敷に戻った。
翌日の昼過ぎにロザリーとグンデリックが王宮から戻ってきた。
ナタリーが呼ばれ執務室でオーウェン卿が亡くなったと話しているのが、隣の部屋で読書をしているエルヴィーノの耳に飛び込んできた。
その報告を聞いて口元は緩み当然だと思っていた。
グンデリックが「しかし、あのスケベ野郎が突然死とはなぁ~」
ナタリーが「あなたも気を付けた方が良いのでは?」
「・・・」グンデリックは気まずそうに黙っている。
「もう少し野菜を食べてくださいね」
ロザリーがやさしく諌める。
オーウェン卿の死因は不明。
突然死とされていた。
これからもロザリーの色目を使うやつはコッソリと始末してやると誓ったエルヴィーノだった。
あとがき
闇から闇へと葬る暗殺者
後に同じような事を平気で考えるロザリーは似た者同士です。
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