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第1章 エルフ国編

第9話 曲がり角でドン

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夫亡き後ロザリーは内政の為、王宮に月に数回顔を出す用が有り用事を済ませタマタマその道で帰る途中ふと別の用を思いだし振り返った時に、”ドンッ”とぶつかり「キャ!」とロザリーは悲鳴を上げ小さな子は尻餅をつく。


あわててロザリーは小さな子の手をとり「大丈夫ですか?」と声をかける。
すると小さな子は立ち上がり「申し訳ありません」と深々とお辞儀をした。
ロザリーが心配そうに問いかけた。
「私は大丈夫よ、あなは?」

その時エルヴィーノは目を合わせないように、関わりを持たないようにと思い直ぐに立ち去ろうとしたら、ロザリーが「目上の者には名乗って挨拶するものよ。あなたは誰の召し使いなの?」と聞かれ、ヤバイって思ったけど認識阻害の魔法もかけられた頭巾で隠された顔と厳重に隠された身元は解らないと思い答える事にした。

「ミシェル様の元で召使いをしているエルヴィーノと申します」
「そう・・・頭巾を取ってくださる?」

こんな場合に考えてある答を口にする。
「申し訳ありません、頭の半分が火傷の後があり、不快な思いをされるのでご勘弁を・・・」

手を握り締めながら、じっくりと頭の先から足の先まで頭巾と服で肌は口元と手しか見えないが、それでもなめまわす様にエルヴィーノを後ろに向かせたりして軽いボディタッチをしながら、その女神にも似た美しい女性は顔が少し頬を染めて多少鼻息が強くなっていた。


口元しか見えない頭巾に全身を隠す服。
自分の事は何も解らないはずなのにと思っていたエルヴィーノは、後日初めて出会った時の事を思い出しロザリーに聞いてみた。

実に呆気ない答えだった。
ロザリーは子供の頭巾と返事を怪しいと思い透視の魔法を使ったのだった。
エルヴィーノは目と髪の色を見られないように、その時はロザリーを見てなかったが、当のロザリーは物凄く驚いたと言う。
エルフの王宮に召し使いに紛れて、怪しい頭巾をした子供がまさかダークエルフの子供だったとは。
目の色が見えなくとも、同じ耳で黒髪の答えは1つだけなのだ。


先の戦争でダークエルフは滅んだと聞いていたロザリー。
自らの夫もその戦争で亡くし辛く悲しい時を過ごす原因のダークエルフの子供が目の前にいる。
ロザリーは高速思考の魔法を使い、”何故? どうして?”と召し使いである子供を触りながら考えた。


王宮。姿を隠す。ダークエルフ・・・ロザリーの口元が歪む。


「そう・・・何か困った事が有れば私を訪ねて来なさい」
ロザリーは自分がしていた指輪を差し出してきた。
「あ、ありがとうございます」
返そうと思ったがロザリーの満面の笑みを前に面倒くさいと思いエルヴィーノはお辞儀をして足早に去ったのである。
手にはしっかりと伯爵家の紋章が刻印された指輪を握り締めて。

ロザリーは小さな召し使いが去って行くのを見えなくなるまで、まるで目に焼き付けるように見ていた。
その指輪には目印の魔法がかけられており、地図で検索すると居場所を特定出来る魔導具だった。
ロザリーは満面の笑みで自宅に帰り、騎士隊長のグンデリックとメイド長のナタリーを自分の執務室へ呼んだ。

二人が執務室に入るとロザリーは満面の笑みで語りかける。
「とうとう見つけましたわ、理想の子が。グンデリック、貴方の部下は何をやっているのかしら?」
自慢げに問いただすロザリーに困り顔のグンデリックだった。

「私が見つけた子の名前はエルヴィーノ。王宮侍女ミシェルの召し使いとして働いているわ。大至急エルヴィーノの素性とミシェルがエルヴィーノと、どのような関係なのかを調べなさい‼ 私の指輪も渡してあるので何処に住んでいるかも検索すれば容易でしょう?」

グンデリックは「ハッ」と答え速やかに部屋を出ていった。

「そんなにその子が気に入ったのですか?」
ナタリーが問いただすと
「えぇ!何としてでも、どんな策を使ってもあの子を手に入れるわ‼」
ロザリーの決意の顔を見たナタリーはにこやかに答えた。
「畏まりました。屋敷にお越しの際には当家の指導をしないといけませね」
既に決定事項のような事をおっしゃるメイド長。
ロザリーが「えぇお願いしますね」と、こちらも当事者を無視するように決めつける二人であった。
ロザリーは二人にはエルヴィーノがダークエルフだった事は伏せておいた。

数日が経ち、グンデリックから直接報告を申し出て来た。
わかっているのはエルヴィーノと言う名前と上司のミシェル。
あの愛くるしい口元と、魂に響く甘い声。
白く透き通る手。
あの時の一瞬を頭の中で何度もリプレイして過大妄想を繰り広げるのが最近ロザリーのお気に入りだ。

意外に早く連絡があり報告書を読むと「・・・なんですって‼」
エルヴィーノの管理者はミシェルなのは本当で、ミシェルの管理者は親衛隊隊長のジャック。
隊長の管理者は・・・エルフ王。


(エルヴィーノはブリンクス王に連なる者なの・・・イヤッ考え過ぎか。だが可能性がゼロでは無い。そもそもダークエルフが王宮に居ること事態が異常よ!それをブリンクス王が知らない訳が無い。子供にあの頭巾は不自然過ぎるわ!王の隠し子かしら?) 
いきなり大きな壁にあたり意気消沈するロザリー。

「それで、解りましたか?」
ロザリーの質問にグンデリックが返答する。
「申し訳ございません。どうしても裏が取れないのです」
「そうですか・・・それはある程度想定していましたわ」
グンデリックはキョトンとした顔でロザリーの話しを聞く。
「王の親衛隊長と直属の部下。普通に如何なる事も隙がなく隠蔽しているでしょう?流石にグンデリックでも難しいですか・・・」

ロザリーの推理は的中しており、ダークエルフの生き残りが存在する事はエルフの国では秘中の秘であり、王と親衛隊関係の5人しか知らない事実である。

「どうしたものか・・・」
ロザリーはエルヴィーノを自分のモノにするために伯爵家専属の親衛隊であるグンデリックとメイド長のナタリーと計画を練る。
勿論グンデリックには、エルヴィーノが気にいったから自分の召し使いとして引き抜いて雇いたいと、胸の奥にあるドス黒い欲望のオーラを一切表には出さず美しい笑顔で2人に計画を考えさせた。

暫く考え込むロザリーが言い放つ。
「ナタリー、あの手で行きましょう‼」
「畏まりました」と答えるナタリー。
グンデリックが問う。
「あの手とは?」
ナタリーが説明する。
「ミシェル様と召し使いのエルヴィーノさんをお茶会に誘うのです‼」
グンデリックが「はぁ~そうですか・・・」と気の無い返事。

「調べて解らないなら、罠を仕掛けて誘き寄せるのです!」
ロザリーの言葉にグンデリックが何か言いたそうだったがロザリーとナタリーは無視して、どのような仕掛けをして、いつ呼ぶか?2人は真剣に話こんでいた。
暫く自分はもう用は無いと思い、グンデリックは「では何か御用が有ればお呼びください。失礼します」と告げ部屋を出て行った。

ロザリーはまず、ナタリーにまだ言って無い事と、自分の推理した事を説明する。
その召し使いは顔を覆う頭巾をしている事。
ナタリーは何故?と首を傾げ、ロザリーが説明する。
「これから非常に重要な事を話します。これは当家でもまだ私しか知りません!」

ナタリーが緊張に顔を強張らせるとロザリーが辺りに音声阻害の魔法を唱える。
広くない執務室でひそひそ話でも誰にも聞こえないのに、絶対に聞かれない様に音声阻害の魔法をかけられ、ナタリーが警戒する。

「其れほどまでの内容ですか!?」

魔法を掛け終わると二人はソファーに向き合って座り、ロザリーから爆弾発言をナタリーに投げてきた。










あとがき
次回、とうとう罠にかかります。
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