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第三章 闇の瞑想
第58話 束の間のひと時
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「私の欲望よ、お姉様を取り戻してぇぇ、リビドォォォ」
以前は欲望の玉などと呼んでいたが、リビドォに落ち着いた魔法名だ。
二足歩行型のアルブマが頭上に作りだした”それ”は、成龍体であるテネブリスの頭程の大きさだった。
山1つ離れた場所から魔法を放つアルブマと、それを全身で受け止めようとするテネブリス。
(お姉様、どうかこれで・・・)
(はぁはぁはぁ・・・あんな巨大な塊を受けたらどうなっちゃうんだろう・・・でも貴女の思い、受け止めるわ)
ゆっくりと巨大な龍の胸に吸い込まれていった光の玉。
直後、大きな咆哮が世界を覆った。
二足歩行型で有れば絶叫だろうか、翼を広げ、尾をピンと張るが手足はガクガクと震え口からは涎を垂らしている。
ドスン・・・ドスン・・・バタン、フサッ。
胴体、頭、尾、翼の順で大地に崩れていった”闇のテネブリス”だった。
光玉のテネブリスを抱いたまま、失神して崩れ落ちた本体の頭に転移したアルブマだ。
(お姉様、後はお願いします)
(ええ、任せて)
光玉のテネブリスを本体に接触させると、精神体の存在が戻って行った。
すると、どうだろう。
見る見るうちに小さくなり二足歩行型、元のテネブリスへと姿を変えていった。
「お姉様ぁぁぁ!!」
駆けだした抱き付くアルブマが、長い時を我慢していた最愛の唇を貪った。
(アルブマ、ありがとう。一度部屋に戻って休みたいわ)
(はい、お姉様)
念話で話しかけても貪り続けるアルブマだった。
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
自室に戻り安静にする事にしたテネブリスを見舞う為に駆けつけ同朋に眷族達。
心身の疲労回復を第一に考えアルブマがその後の事を仕切っていた。
テネブリスの世話はアルブマとベルム・プリムが交互に行なった。
アルブマは大神以下全ての龍族から感謝され、龍族最強説まで出るほどだった。
一応攻撃力では七天龍セプティモ・カエロが最大だと決めてあるが、その事を決めたのは他ならぬテネブリスで、セプティモ自身はテネブリスには叶わないと呟いているのだ。
そんなテネブリスを気絶させる程の”攻撃”したアルブマに話題は持ちきりだった。
「姉貴ぃ、アレは何て魔法だよぉ?」
「何度聞いても無駄よ。あれはお姉様が作られた物なのっ」
「じゃ私も気絶するのか?」
するに決まってるだろぅぅぅぅ!!
心で叫ぶアルブマだ。
「解らないわ・・・」
セプティモを適当に嗜めて弟達の相手をする。
「しかし姉上、我らが大神もご満悦の様子でしたねぇ」
「本当だよ、あんな笑顔久しぶりに見たよなぁ」
セプテムとスペロだ。
姉を心配しているのは理解しているが、アルブマには違う思いが燻ぶっていた。
最愛の姉が浮気した相手としてだ。
「あなた達、良く聞いて頂戴。お姉様が貴女達に行なった行為は一時的に錯乱していた為よ」
「解ってるよ、姉貴ぃ」
「勿論だとも。姉上を知ればあのような行為をする訳が無い」
「だよねぇ。でも久しぶりに優しくしてくれたから嬉しかったよ」
最後のスペロの発言に眉にシワを寄せるアルブマに気づくセプテムとセプティモは話題をそらすようにした。
「あ、姉貴ぃ、管轄の管理は大丈夫なの?」
「姉上不在でも管理は全体で協力しているとはいえ、維持が精いっぱいだからな」
そんな2人の話しに便乗するスペロだ。
「そうだよなぁ、やっぱり姉ちゃんが居ないと大きな発展は無いよなぁ」
テネブリスが不在の間、国内では大きな研究改革や変革よりも、魔法や生体の細部を見直し統合させ研究されていた。とはいえ、研究には生体実験が必要なので下界とのやり取りが必要なのだが、テネブリスの破壊でかなりの文明が滅んだ事も事実だ。
龍工の光が空から降り注ぎ、温かく過ごしやすい気温の龍国だ。
窓の外には木々が生い茂り色とりどりの花が咲いている。
耳を傾けると小鳥の囀りも心を癒してくれ、”あれ”以来穏やかな時を過ごしていたテネブリスだ。
大神である母スプレムスには事態の経緯を説明したが二重龍格は伏せて説明しなかった。
そして今のテネブリスは理性が主導権を持ち、本能である”闇のテネブリス”は黙って見ているだけだった。
「ねぇアルブマ」
「なぁにお姉様」
「そろそろ私も会議くらい出ようかしら」
「ダメよ!! まだ安静にしていないと・・・」
そう言って唇を押し付けられては、うやむやにされテネブリスは自室から出る事を許されなかった。
テネブリスは理解している。
眷族や同族もアルブマの意見に従った。
当のアルブマは・・・
「お姉様はずっと私の物なんだから・・・誰にも渡さないわ」
こんなやりとりが数百年続いたが、流石にテネブリスも自室だけでは窮屈なので外出と会議の参加を強くアルブマに求めた。
「だったらお姉様、条件が有りますわ」
心配してくれるのは理解するが流石に面倒だと思っている姉だった。
「今後、何処に行くにも私が同行します」
「・・・解かったわアルブマ」
(やれやれ心配性ねぇ)
Epílogo
嫉妬深い女は誰だ。
以前は欲望の玉などと呼んでいたが、リビドォに落ち着いた魔法名だ。
二足歩行型のアルブマが頭上に作りだした”それ”は、成龍体であるテネブリスの頭程の大きさだった。
山1つ離れた場所から魔法を放つアルブマと、それを全身で受け止めようとするテネブリス。
(お姉様、どうかこれで・・・)
(はぁはぁはぁ・・・あんな巨大な塊を受けたらどうなっちゃうんだろう・・・でも貴女の思い、受け止めるわ)
ゆっくりと巨大な龍の胸に吸い込まれていった光の玉。
直後、大きな咆哮が世界を覆った。
二足歩行型で有れば絶叫だろうか、翼を広げ、尾をピンと張るが手足はガクガクと震え口からは涎を垂らしている。
ドスン・・・ドスン・・・バタン、フサッ。
胴体、頭、尾、翼の順で大地に崩れていった”闇のテネブリス”だった。
光玉のテネブリスを抱いたまま、失神して崩れ落ちた本体の頭に転移したアルブマだ。
(お姉様、後はお願いします)
(ええ、任せて)
光玉のテネブリスを本体に接触させると、精神体の存在が戻って行った。
すると、どうだろう。
見る見るうちに小さくなり二足歩行型、元のテネブリスへと姿を変えていった。
「お姉様ぁぁぁ!!」
駆けだした抱き付くアルブマが、長い時を我慢していた最愛の唇を貪った。
(アルブマ、ありがとう。一度部屋に戻って休みたいわ)
(はい、お姉様)
念話で話しかけても貪り続けるアルブマだった。
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
自室に戻り安静にする事にしたテネブリスを見舞う為に駆けつけ同朋に眷族達。
心身の疲労回復を第一に考えアルブマがその後の事を仕切っていた。
テネブリスの世話はアルブマとベルム・プリムが交互に行なった。
アルブマは大神以下全ての龍族から感謝され、龍族最強説まで出るほどだった。
一応攻撃力では七天龍セプティモ・カエロが最大だと決めてあるが、その事を決めたのは他ならぬテネブリスで、セプティモ自身はテネブリスには叶わないと呟いているのだ。
そんなテネブリスを気絶させる程の”攻撃”したアルブマに話題は持ちきりだった。
「姉貴ぃ、アレは何て魔法だよぉ?」
「何度聞いても無駄よ。あれはお姉様が作られた物なのっ」
「じゃ私も気絶するのか?」
するに決まってるだろぅぅぅぅ!!
心で叫ぶアルブマだ。
「解らないわ・・・」
セプティモを適当に嗜めて弟達の相手をする。
「しかし姉上、我らが大神もご満悦の様子でしたねぇ」
「本当だよ、あんな笑顔久しぶりに見たよなぁ」
セプテムとスペロだ。
姉を心配しているのは理解しているが、アルブマには違う思いが燻ぶっていた。
最愛の姉が浮気した相手としてだ。
「あなた達、良く聞いて頂戴。お姉様が貴女達に行なった行為は一時的に錯乱していた為よ」
「解ってるよ、姉貴ぃ」
「勿論だとも。姉上を知ればあのような行為をする訳が無い」
「だよねぇ。でも久しぶりに優しくしてくれたから嬉しかったよ」
最後のスペロの発言に眉にシワを寄せるアルブマに気づくセプテムとセプティモは話題をそらすようにした。
「あ、姉貴ぃ、管轄の管理は大丈夫なの?」
「姉上不在でも管理は全体で協力しているとはいえ、維持が精いっぱいだからな」
そんな2人の話しに便乗するスペロだ。
「そうだよなぁ、やっぱり姉ちゃんが居ないと大きな発展は無いよなぁ」
テネブリスが不在の間、国内では大きな研究改革や変革よりも、魔法や生体の細部を見直し統合させ研究されていた。とはいえ、研究には生体実験が必要なので下界とのやり取りが必要なのだが、テネブリスの破壊でかなりの文明が滅んだ事も事実だ。
龍工の光が空から降り注ぎ、温かく過ごしやすい気温の龍国だ。
窓の外には木々が生い茂り色とりどりの花が咲いている。
耳を傾けると小鳥の囀りも心を癒してくれ、”あれ”以来穏やかな時を過ごしていたテネブリスだ。
大神である母スプレムスには事態の経緯を説明したが二重龍格は伏せて説明しなかった。
そして今のテネブリスは理性が主導権を持ち、本能である”闇のテネブリス”は黙って見ているだけだった。
「ねぇアルブマ」
「なぁにお姉様」
「そろそろ私も会議くらい出ようかしら」
「ダメよ!! まだ安静にしていないと・・・」
そう言って唇を押し付けられては、うやむやにされテネブリスは自室から出る事を許されなかった。
テネブリスは理解している。
眷族や同族もアルブマの意見に従った。
当のアルブマは・・・
「お姉様はずっと私の物なんだから・・・誰にも渡さないわ」
こんなやりとりが数百年続いたが、流石にテネブリスも自室だけでは窮屈なので外出と会議の参加を強くアルブマに求めた。
「だったらお姉様、条件が有りますわ」
心配してくれるのは理解するが流石に面倒だと思っている姉だった。
「今後、何処に行くにも私が同行します」
「・・・解かったわアルブマ」
(やれやれ心配性ねぇ)
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嫉妬深い女は誰だ。
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