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弁明 15(回想)

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冷えた手先を膝の裏側に挟み、タンクの下で蹲る。このまま永遠の眠りについてもいいのだが。そう思って少し笑った。

明日、2度目の地震が発生する。
倉庫の中はひんやりとした空気が覆い、時折布の擦れる音や咳が聞こえる。
初めの雰囲気とは一変していた。

思ったより過酷な状況、私はまだ未来がわかるから良いのだろうが、皆はいつ救助が来るかもわからず、こうして待っている。
その苦しみは私にはわからないんだ。

ーーーーー
いつもの病室、見慣れた白い壁とベッド。
横には大量の写真と両親がくれた本が置いてあった。

もう私に出来ることはないかな。
ただ待つだけ。未来が変わって、病室にみんなが来るのを。
ドアが開いて、まずカノが入ってくるんだ。それから感謝の言葉を貰いたいな、私のおかげで皆助かった。そう言って。

もし、助からなくてもまたやり直せる。
「やり直す…」
また、人を目の前で失うのだろうか。
そして私は何回悲しみを味わって、悲しみを見て。そして罪悪感に苦しまなくてはならないのか…。

窓を見る。
今の私が死んだら何か変わるかな、
きっと、何も変わらない。
いつもみたいに目が覚めて、あっちで瀕死になってまた病院、その繰り返し。

目を閉じて、ドアの向こうから誰かがかけてくるのをじっと待った。
ーーーーー


視界に白い光が入ってきた。
倉庫の中が照らし出され、私は横になりながらじっとその光を見つめた。

その光に影がさした。誰かが歩いてくる。
髪は解け、左側がくしゃくしゃになっていた。虚ろな目で私を見つめた。

「カノ…?」
口を小さく動かして聞く

カノは小さく頷いた。
私の前に座り込む。
私は痛む手をついて起き上がり、カノと向き合った。

「エミは…未来が見えてるんだよね」
弱々しい声が小さく開いたカノの口からこぼれる。

「…うん」
目を逸らして頷いた
信じられないだろうけど。

「私は信じてる…よ、こんな状況で嘘なんてつかないし、エミはそういう人じゃない」微かに口角が上がった
「それならエミは…」
「私達がどうなるかも、知ってるの…?」

思わずカノを見ると、虚ろな目の奥に真剣な光があった。
そうだ、その事については話してなかった。でも、それを言ったら…

「きっと知ってるんだよね、私達は…死んじゃうの?それとも、生きるの…?」
カノが私の手を握った

「それは…」
「生きる…よ」
目を逸らして答えた

「嘘つくの、下手」
「私達、死んじゃうんだ」
カノは微笑んでいた。

「死なないよ…」
なんで笑ってるんだ、カノは死んじゃうのに…!
「死なないよ、その為に私は未来を見たんだから」

「見た未来は、変わったの?」
「私達がここにいたら助かるんでしょ、それなら、エミが見た未来はなんなの?」

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