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弁明 3
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「…また同じ夢…」
目を開けるといつも通りの天井がベッドから見えた。
同じ夢を連続で見るとあまりいい事はないみたいだし…なにかの前兆かも。
目が覚めていたのでベッドから起き上がると、まだ外が暗いのに気が付いた。薄い光がカーテンを通して部屋を照らす。
時計を見ると、5時だった
早く起きすぎた、もう1度寝てもいいかな
ベッドに入るが、すっかり目は覚めていたのでボーッとしている。
いつの間にか寝ていたか、明るい陽の光がカーテンを通して入ってきた。
「いたた…」
壁に背中を当てて寝ていたせいで首が傾き、痛んだ。
授業中もボーッとしていた。どこか気だるさがあり、考えるのは夢の事だった。前見た怖い話を思い出し、それが私にも起きるかと思うと心配になる。
病院のベッドで眠る夢、いつもなら夢を思い出す時は濃い霧がかかっているようで、輪郭だけ覚えていてそしていつか全て忘れてしまうのだが、今回は実際の出来事のように頭にこびりつく。
リアルな風景に、私の感じた感情。
地震だと告げられ、私は生き残った。
もし2017年…起こったとしたら。
……そんなはずはないか。
私に予知能力なんてないし。
夜ベッドで横になりうとうとしていると、またゴーッという音がした。
耳が悪くなったか、今度病院に…
ーーーーー
カチ、カチと時計の音が聞こえる
眠りから覚めた様でもなく、考え事をしていた後急に現実に引き戻された様に周りの状況に気が付く。
白い壁、ベッドの上だ。
(また同じ夢…)
相変わらず声は出ないが、つっかえが少し抜けたような感触がした。
時計を見ると、前回の夢と時刻は変わっていない気がした。ほんとに同じ夢なのかな…不吉。
こうしてベッドに寝かせられ、厚い布団を被せられるが不思議と暑さは感じない。そう言えば私はこの夢で1度も自分の体を見ていない。
右手は動かない。
意識を傾けると、ヒリヒリとした痛みがあるだけだ。
左手は微かに動く。握る事は難しいだろうが、指の関節が第一関節以外問題なく曲がる。
足はほぼ感覚が無く、あるのかとさえ疑う程だ。ゴムが付いているみたい。
この夢は何を暗示しているのか…
周りを見ても、ただの病室で現実感しかなく、不思議な事は今の状況くらいだ。
医師はどれくらい話してくれるか。
地震が起こるのか、何を暗示しているのか。それの手がかりでも見つけられたらいいのだが、医師は私に負担をかけたくないようだ。
手元のスイッチを探すが、どうやら右側にあるみたいだ。右手は動かない。左手で取らないと…
体を捻ろうとするが、足が使えないとかなり難しい。それに、手はともかく腕が上手く曲がらない。右手はほんの少し上下に動かせるだけで、左手は90度が限界だった。
変に体力を使ってしまう。
左手を下ろすと、何かに触れた
ナースコールのようだ、こっちにもあるじゃないか…
軽く指先で触れると、数秒後医師と看護師が駆け付けてきた。
(そうか、どうやって伝えればいいんだっけ…)なんとか左手でできないかな、と思い、左腕を少し上げて指を動かす
すると察した医師が
「少し待ってて」
と言って病室を出ていった
何を持ってくるのかと思っていたら、あまり大きくないプラスチックの玩具の様なものだった。子供が言葉を学ぶ時に使う玩具がシンプルになったような。
それを私の左手に近づける
「言いたい事があったらここに並んでる文字を指さして。ゆっくりでいいよ」
実際言われると、何を聞けばいいのか戸惑ってしまう。とりあえず矛盾点でも見つけたい。
私の指の動きを医師が真剣に見つめる。
わ た し の ぐ あ い は ど う で す か
となぞった。
医師は怪我の状態だと気付き、手元の紙を見ながら私に説明した。
「あまりショックに感じて欲しくないけど…」「まず、脳に大きな損傷を受けてね、足がほぼ動かないと思うんだ。発見された時、まだ怪我してから少ししか経ってなかったから、更に大きな被害は免れたんだけど…」
「それと、左手と右手を怪我して筋肉が壊れちゃってる。どんな状態かは君しかわからないけど、辛かったら言ってね」
「ほかに何かある?」
傷に付いては細かいな…
やっぱり現実にしか思えない。私は未来にでも飛ばされたか。
もう1度指でなぞる
ほ か の ひ と は ど こ で す か
私がなぞっていくと、段々医師の顔が険しくなっているのが見えた。
医師が躊躇っていると、看護師が「隠しておくのも…」と言った
医師は黙った後意を決して口を開いた
「君と一緒に見つかったクラスメイト、教師はみんな…」
医師は気まずそうにこちらを見た
「亡くなっているよ、君だけ生き残ったんだ。」
そういう事か、私とクラスメイトが一緒に見つかったという事は授業中に…
夢の中だが少し悲しくなる。
これが予知夢だとしたら、現実は悲惨なものになるだろうな…。
目を開けるといつも通りの天井がベッドから見えた。
同じ夢を連続で見るとあまりいい事はないみたいだし…なにかの前兆かも。
目が覚めていたのでベッドから起き上がると、まだ外が暗いのに気が付いた。薄い光がカーテンを通して部屋を照らす。
時計を見ると、5時だった
早く起きすぎた、もう1度寝てもいいかな
ベッドに入るが、すっかり目は覚めていたのでボーッとしている。
いつの間にか寝ていたか、明るい陽の光がカーテンを通して入ってきた。
「いたた…」
壁に背中を当てて寝ていたせいで首が傾き、痛んだ。
授業中もボーッとしていた。どこか気だるさがあり、考えるのは夢の事だった。前見た怖い話を思い出し、それが私にも起きるかと思うと心配になる。
病院のベッドで眠る夢、いつもなら夢を思い出す時は濃い霧がかかっているようで、輪郭だけ覚えていてそしていつか全て忘れてしまうのだが、今回は実際の出来事のように頭にこびりつく。
リアルな風景に、私の感じた感情。
地震だと告げられ、私は生き残った。
もし2017年…起こったとしたら。
……そんなはずはないか。
私に予知能力なんてないし。
夜ベッドで横になりうとうとしていると、またゴーッという音がした。
耳が悪くなったか、今度病院に…
ーーーーー
カチ、カチと時計の音が聞こえる
眠りから覚めた様でもなく、考え事をしていた後急に現実に引き戻された様に周りの状況に気が付く。
白い壁、ベッドの上だ。
(また同じ夢…)
相変わらず声は出ないが、つっかえが少し抜けたような感触がした。
時計を見ると、前回の夢と時刻は変わっていない気がした。ほんとに同じ夢なのかな…不吉。
こうしてベッドに寝かせられ、厚い布団を被せられるが不思議と暑さは感じない。そう言えば私はこの夢で1度も自分の体を見ていない。
右手は動かない。
意識を傾けると、ヒリヒリとした痛みがあるだけだ。
左手は微かに動く。握る事は難しいだろうが、指の関節が第一関節以外問題なく曲がる。
足はほぼ感覚が無く、あるのかとさえ疑う程だ。ゴムが付いているみたい。
この夢は何を暗示しているのか…
周りを見ても、ただの病室で現実感しかなく、不思議な事は今の状況くらいだ。
医師はどれくらい話してくれるか。
地震が起こるのか、何を暗示しているのか。それの手がかりでも見つけられたらいいのだが、医師は私に負担をかけたくないようだ。
手元のスイッチを探すが、どうやら右側にあるみたいだ。右手は動かない。左手で取らないと…
体を捻ろうとするが、足が使えないとかなり難しい。それに、手はともかく腕が上手く曲がらない。右手はほんの少し上下に動かせるだけで、左手は90度が限界だった。
変に体力を使ってしまう。
左手を下ろすと、何かに触れた
ナースコールのようだ、こっちにもあるじゃないか…
軽く指先で触れると、数秒後医師と看護師が駆け付けてきた。
(そうか、どうやって伝えればいいんだっけ…)なんとか左手でできないかな、と思い、左腕を少し上げて指を動かす
すると察した医師が
「少し待ってて」
と言って病室を出ていった
何を持ってくるのかと思っていたら、あまり大きくないプラスチックの玩具の様なものだった。子供が言葉を学ぶ時に使う玩具がシンプルになったような。
それを私の左手に近づける
「言いたい事があったらここに並んでる文字を指さして。ゆっくりでいいよ」
実際言われると、何を聞けばいいのか戸惑ってしまう。とりあえず矛盾点でも見つけたい。
私の指の動きを医師が真剣に見つめる。
わ た し の ぐ あ い は ど う で す か
となぞった。
医師は怪我の状態だと気付き、手元の紙を見ながら私に説明した。
「あまりショックに感じて欲しくないけど…」「まず、脳に大きな損傷を受けてね、足がほぼ動かないと思うんだ。発見された時、まだ怪我してから少ししか経ってなかったから、更に大きな被害は免れたんだけど…」
「それと、左手と右手を怪我して筋肉が壊れちゃってる。どんな状態かは君しかわからないけど、辛かったら言ってね」
「ほかに何かある?」
傷に付いては細かいな…
やっぱり現実にしか思えない。私は未来にでも飛ばされたか。
もう1度指でなぞる
ほ か の ひ と は ど こ で す か
私がなぞっていくと、段々医師の顔が険しくなっているのが見えた。
医師が躊躇っていると、看護師が「隠しておくのも…」と言った
医師は黙った後意を決して口を開いた
「君と一緒に見つかったクラスメイト、教師はみんな…」
医師は気まずそうにこちらを見た
「亡くなっているよ、君だけ生き残ったんだ。」
そういう事か、私とクラスメイトが一緒に見つかったという事は授業中に…
夢の中だが少し悲しくなる。
これが予知夢だとしたら、現実は悲惨なものになるだろうな…。
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