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28話 初めての夜の様な
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うぅ、ダメだまだ感触が残ってる。
別に私はそこまで気にしては…いないけど、相当気にしているであろう布施さんの対応をするのは緊張する。
私は知らないふりをしなければならない。
何を言われてもいつも通り…と。
まだ横で寝ている布施さんを起こさないように布団から出て、隣室へ向かう。
「おいサビエル、なんで助けなかったのよ!」
声に怒りを混ぜて言う。布施さんに気付かれないように声を抑えた。
「はい、布施様に憑いていたモノは無害なものなので助ける必要はないですよね?」
パソコンを片付けながら、眠そうな声でサビエルはそう言った。寝てないのか。
「そうじゃないっ、それは安心したけどそれじゃない!」
サビエルに詰め寄って肘を叩く。
「じゃあ何ですか?」
そう言って助手は明らかにからかうような目つきをして笑う。
「は?」
「だから…見てたんでしょーが」
気にしてない…気にしてないけど言うのは躊躇われる。
「言わないとわかりません」
わざとらしくやれやれと首を振る。
コイツほんっとイラつく。
サビエルはそのまま機材をまとめ、部屋を出て行こうとする。
「待ちなさい!」
「だから!その…せ、せっ…」
ってなんで言わなきゃならないんだ、別に助けに来ても彼女に恥をかかせるだけ。まあいいか、そう思い言うのをやめた。
それを見て助手は不快そうに顔をしかめた。そして、
「姫は抵抗してませんでしたね」
そう最後に言って出て行く。
「ちょ!それは流石に聞き捨てならないわよ!あそこで抵抗したら色々とまずいでしょーが!」
言い終わる前に助手は部屋のドアを閉めた。
自室から衣類を取り出して、着替えてからベッドに寝ている布施さんの方へ向かう。
すーはー、と息をした。
大丈夫、何も無かったのよ…。
「布施さん?寝てる?」
ベッドに膝をつき、覗き込むと目をつぶってはいたが起きているようだった。
「起きてるのね、朝ご飯できたらまた呼びに来る」
「うん」
小さい声で布施さんはそう返事した。そして目を開け、
「あ、おはよう」
「うん、おはよ」
布施さんはこちらと目を合わせようとしない。顔を赤くしてもじもじしている。
まるで初めて一夜を共に過ごしたカップルの様に。
「布施さんの事だけど」
キッチンで料理をしている助手に言う。
「あの狐、ミルのよね」
助手は野菜を手際よく切りながら、
「そうですね、ミルが魔力を失った事で布施様に取り憑いた」
「あの狐自身も次に憑いた者が魔力を持ってない事に驚いたでしょうね」
「そうね」
「多分、あの夜魔力を布施さんが手に入れたから出てこれたんでしょ」
「魔力は少しずつ回復するし、彼女は魔力を使わない。害は無いはずね」
「ええ、魔力を手に入れたのでね」
そう言ってまた笑う。
「ほんと、布施さんには失礼ですが笑いを堪えきれなかった」
「もうコイツやだ、消えてしまえ」
そばにあった人参を助手の顔に向けて投げるがキャッチされ、洗われて元の場所に戻された。
別に私はそこまで気にしては…いないけど、相当気にしているであろう布施さんの対応をするのは緊張する。
私は知らないふりをしなければならない。
何を言われてもいつも通り…と。
まだ横で寝ている布施さんを起こさないように布団から出て、隣室へ向かう。
「おいサビエル、なんで助けなかったのよ!」
声に怒りを混ぜて言う。布施さんに気付かれないように声を抑えた。
「はい、布施様に憑いていたモノは無害なものなので助ける必要はないですよね?」
パソコンを片付けながら、眠そうな声でサビエルはそう言った。寝てないのか。
「そうじゃないっ、それは安心したけどそれじゃない!」
サビエルに詰め寄って肘を叩く。
「じゃあ何ですか?」
そう言って助手は明らかにからかうような目つきをして笑う。
「は?」
「だから…見てたんでしょーが」
気にしてない…気にしてないけど言うのは躊躇われる。
「言わないとわかりません」
わざとらしくやれやれと首を振る。
コイツほんっとイラつく。
サビエルはそのまま機材をまとめ、部屋を出て行こうとする。
「待ちなさい!」
「だから!その…せ、せっ…」
ってなんで言わなきゃならないんだ、別に助けに来ても彼女に恥をかかせるだけ。まあいいか、そう思い言うのをやめた。
それを見て助手は不快そうに顔をしかめた。そして、
「姫は抵抗してませんでしたね」
そう最後に言って出て行く。
「ちょ!それは流石に聞き捨てならないわよ!あそこで抵抗したら色々とまずいでしょーが!」
言い終わる前に助手は部屋のドアを閉めた。
自室から衣類を取り出して、着替えてからベッドに寝ている布施さんの方へ向かう。
すーはー、と息をした。
大丈夫、何も無かったのよ…。
「布施さん?寝てる?」
ベッドに膝をつき、覗き込むと目をつぶってはいたが起きているようだった。
「起きてるのね、朝ご飯できたらまた呼びに来る」
「うん」
小さい声で布施さんはそう返事した。そして目を開け、
「あ、おはよう」
「うん、おはよ」
布施さんはこちらと目を合わせようとしない。顔を赤くしてもじもじしている。
まるで初めて一夜を共に過ごしたカップルの様に。
「布施さんの事だけど」
キッチンで料理をしている助手に言う。
「あの狐、ミルのよね」
助手は野菜を手際よく切りながら、
「そうですね、ミルが魔力を失った事で布施様に取り憑いた」
「あの狐自身も次に憑いた者が魔力を持ってない事に驚いたでしょうね」
「そうね」
「多分、あの夜魔力を布施さんが手に入れたから出てこれたんでしょ」
「魔力は少しずつ回復するし、彼女は魔力を使わない。害は無いはずね」
「ええ、魔力を手に入れたのでね」
そう言ってまた笑う。
「ほんと、布施さんには失礼ですが笑いを堪えきれなかった」
「もうコイツやだ、消えてしまえ」
そばにあった人参を助手の顔に向けて投げるがキャッチされ、洗われて元の場所に戻された。
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