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2.最終決戦
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ここは剣と魔法の支配する異世界「テラ」。
この世界の人類は今、存亡の危機に瀕していた。封印されし闇の魔王リルリアが復活し、人間界を脅かしているのだ。
だが、人間もまだ絶望してはいなかった。勇者ボルグ率いるパーティが、魔王を討つべく冒険の旅に出た。数々の試練、強敵を相手に彼らは決して諦めなかった。
かつてこの世界を闇の竜が支配した時、席巻する竜族に住処を奪われ滅びの道を余儀なくされていた人間たちに、同情の念を抱いた創造神は、勇者アレンに自らの聖剣を授けたという伝説がある。
勇者ボルグはその伝説といわれた聖剣の封印を解き、戦士ライネル、大魔術師ゴットフリート、賢者の一人マリリンという仲間たちとともに世界を回り、魔王軍と戦う冒険の旅を続けた。
しかし、それでも魔王軍の猛攻を止めるのは容易なことではない。かつて神の聖剣によって封殺されし闇の竜を始祖と仰ぐ魔王リルリアは、その底なしの魔力によって新たな魔物を次々に生み出し、度々勇者一行を危機に陥れた。(地上の楽園を人間風情が我が物顔でのさばらせてなるものか。この世は、元々我ら闇の眷族のものだったのだ。)魔王リルリアの現世への怨念は海よりも深いものであった。
そんな数々の困難に対し、勇者ボルグは一歩も引くことなく真正面から突破し、魔王の軍勢を退けていった。そして多くのものが彼らに味方した。大地の精霊はガイアの鎧を、妖精族の女王はいかなる傷をもたちどころに癒す賢者の石を、伝説の錬金術師ヘパイストスはイージスの盾を勇者ボルグに託し、彼らを応援した。
そして遂に両雄(魔王は女だけど)の激突を見たのだった。
戦士ライネル。天隕石から削り出した己の身体よりも重量のある戦鎚、アビスハンマーを振り回す屈強の戦士。ボルグの幼馴染であり、最初から最後まで生死を共にしてきた戦友である。魔法を使えないながら、闇の眷属との極限の戦いにおいてもその屈強な肉体を武器に、物理攻撃のみであらゆる敵と互角に渡り合ってきた頼れる猛者だ。
大魔術師ゴットフリート。大魔術といわれた数々の魔導書をことごとく習得し、妖精族からも一目を置かれる魔術師。その明晰すぎる頭脳のため、新たな発見をすることもなくなった彼は、一度は生きる興味自体を失ったこともあった。しかし、いかなる苦境にも屈しないボルグの生きざまは、彼の心を動かした。勇者ボルグが人間には習得できないとされていた雷神の魔法を覚えた時、彼はボルグたちの仲間になっていた。
賢者マリリン。この世界には神に次ぐ英知を持つと呼ばれた賢者が三人いる。かれらは同時習得は不可能といわれた白魔法と黒魔法を使いこなす。三賢者は、人間界の要と呼ばれる結界石を魔物から守り、人知れずこの世界を支えてきた古代文明の末裔である。長きにわたって、この世を支えてきた彼らだったが、魔王リルリアによる世界の危機を受け、その一人マリリンが勇者ボルグに力を貸すこととなった。急げ、長い期間二人で要の結界石を守ることはできない。だが、魔王を倒せば、今度こそ彼らはその重責から解放される日が来るだろう。
「人の分際で我が魔王城まで生きてたどり着けたことだけは誉めてやろう。だが、ここがお前たちの墓場となるのだ。」
魔王城の最深部の間で、玉座に座した魔王は、乗り込んできた勇者たちを睨みつけた。その両翼には、眠りの神ヒュプノスと死の神タナトスが控えている。そして無尽蔵に生み出されるアークデーモンが勇者たちに襲い掛かった。
「くっ、さすがは最終決戦。きつい戦いだぜ。」
「この私の究極魔法を披露するいい機会だ。受けよ、シャイニングストーム!!」
「大丈夫よボルグ。私たちが力を合わせればきっと勝てる。サポートは任せて!」
アークデーモンの軍勢とヒュプノス、タナトスの闇魔法を仲間たちが凌ぎ、辛うじて開いた隙間をかいくぐり、勇者ボルグは魔王と対峙した。
「決着をつけようぜ!魔王リルリア!!」
「よかろう。来い、ボルグ。私が引導を渡してやる。」
両者の激突はすさまじかった。数々の冒険を潜り抜けた勇者ボルグの力は、自身も知らぬ間に神の領域にまで到達していた。だがそれは魔王リルリアにも言えることである。
物理攻撃と魔法攻撃の同時応酬が続く。あらゆる角度から、斬撃が打撃が衝撃波が大気を切り裂き大地を割る。地・水・火・風・聖・闇、全属性の魔法が一瞬のうちに何往復も攻防を繰り返す、麻痺、毒、石化、呪い、即死、あらゆる状態異常魔法が同時に連発され、翻ってそれぞれの耐性魔法が幾重にも重ね掛けされ、攻撃支援、防御阻害そしてその逆、補助系の魔法も多重に行き交う。
多重に重ねられたあらゆる攻防の交錯は、いつしか二人の周りに人知を超える竜巻を引き起こし、何人も立ち入ることのできな隔離された空間を作り出した。
ボルグの仲間たちも、ヒュプノス、タナトス率いる魔王軍も異変に気付いた。二人の戦いは、もはや誰の手にも届かないレベルに達していた。いつの間にか皆がその巨大な竜巻を固唾をのんで見守っていた。中でどのような攻防が繰り広げられているのか、誰もうかがい知ることはできない。
「よう、一旦休戦しねぇか?」
ライネルがタナトスに話しかけた。
「・・・」
「ここで俺たちのどちらが勝とうが、結局はあの竜巻の中の勝者が、この戦いの勝者になる。例え俺たちがお前らに勝ったとしても、あの竜巻から魔王が戻ってくるなら、結局俺たちは生きては帰れない。その逆も同じだ。」
「・・・よかろう。」
両陣営は、一旦矛を収め、魔王と勇者の戦いの成り行きを見届けることにした。
だが、なんという運命のいたずらだろうか。二人の戦いは互角を極め、竜巻の中に作られた結界の中で死闘の末相打ちとなったのだった。
実は運命のいたずらというのは、相打ちだったことを指すのではない。激しい攻防で生じた数々の衝撃波が、二人の耐久力を超え、彼らの魂は肉体から一気に引きはがされた。
「く、くそ。だが、俺の仲間がきっと、きっとこの世界を──」
「こ、この私が人間ごときに。ヒュプノス、タナトス必ず世界を闇に陥れるのだ──」
気づくと二人は、病院のベッドに横たわっていた。
ラブホテルで起きた火災事故で、死んだと思われた高校生のカップルは奇跡的に助け出され、救急搬送されていた。
(く、こ、ここは?やや!!右にいるのは魔王リルリア!あ、あれはポーション?消耗した魔力を回復させているのか?)
玲司の右隣のベッドには、やけどを負い点滴処置をされた愛梨が横たわっていた。緊急の処置のため同室で施術されたのだ。
(う、われは、我は生きているのか?ぐ、あれはボルグ。何だあの面は、また何かの精霊が奴に加護を与えているのか?)
玲司の顔には酸素マスクが取り付けられている。
残念ながらここから物語の舞台は、異世界テラの方で進められる。激闘を繰り広げた勇者と魔王はあろうことか、バスケ少年とちょっとオタクな女子高生に転生してしまったのだったが、彼らの苦労話はまた別の物語である。
────────────
久しぶりの創作は楽しいですが、茶番を書くのがしんどかったです(笑)
この世界の人類は今、存亡の危機に瀕していた。封印されし闇の魔王リルリアが復活し、人間界を脅かしているのだ。
だが、人間もまだ絶望してはいなかった。勇者ボルグ率いるパーティが、魔王を討つべく冒険の旅に出た。数々の試練、強敵を相手に彼らは決して諦めなかった。
かつてこの世界を闇の竜が支配した時、席巻する竜族に住処を奪われ滅びの道を余儀なくされていた人間たちに、同情の念を抱いた創造神は、勇者アレンに自らの聖剣を授けたという伝説がある。
勇者ボルグはその伝説といわれた聖剣の封印を解き、戦士ライネル、大魔術師ゴットフリート、賢者の一人マリリンという仲間たちとともに世界を回り、魔王軍と戦う冒険の旅を続けた。
しかし、それでも魔王軍の猛攻を止めるのは容易なことではない。かつて神の聖剣によって封殺されし闇の竜を始祖と仰ぐ魔王リルリアは、その底なしの魔力によって新たな魔物を次々に生み出し、度々勇者一行を危機に陥れた。(地上の楽園を人間風情が我が物顔でのさばらせてなるものか。この世は、元々我ら闇の眷族のものだったのだ。)魔王リルリアの現世への怨念は海よりも深いものであった。
そんな数々の困難に対し、勇者ボルグは一歩も引くことなく真正面から突破し、魔王の軍勢を退けていった。そして多くのものが彼らに味方した。大地の精霊はガイアの鎧を、妖精族の女王はいかなる傷をもたちどころに癒す賢者の石を、伝説の錬金術師ヘパイストスはイージスの盾を勇者ボルグに託し、彼らを応援した。
そして遂に両雄(魔王は女だけど)の激突を見たのだった。
戦士ライネル。天隕石から削り出した己の身体よりも重量のある戦鎚、アビスハンマーを振り回す屈強の戦士。ボルグの幼馴染であり、最初から最後まで生死を共にしてきた戦友である。魔法を使えないながら、闇の眷属との極限の戦いにおいてもその屈強な肉体を武器に、物理攻撃のみであらゆる敵と互角に渡り合ってきた頼れる猛者だ。
大魔術師ゴットフリート。大魔術といわれた数々の魔導書をことごとく習得し、妖精族からも一目を置かれる魔術師。その明晰すぎる頭脳のため、新たな発見をすることもなくなった彼は、一度は生きる興味自体を失ったこともあった。しかし、いかなる苦境にも屈しないボルグの生きざまは、彼の心を動かした。勇者ボルグが人間には習得できないとされていた雷神の魔法を覚えた時、彼はボルグたちの仲間になっていた。
賢者マリリン。この世界には神に次ぐ英知を持つと呼ばれた賢者が三人いる。かれらは同時習得は不可能といわれた白魔法と黒魔法を使いこなす。三賢者は、人間界の要と呼ばれる結界石を魔物から守り、人知れずこの世界を支えてきた古代文明の末裔である。長きにわたって、この世を支えてきた彼らだったが、魔王リルリアによる世界の危機を受け、その一人マリリンが勇者ボルグに力を貸すこととなった。急げ、長い期間二人で要の結界石を守ることはできない。だが、魔王を倒せば、今度こそ彼らはその重責から解放される日が来るだろう。
「人の分際で我が魔王城まで生きてたどり着けたことだけは誉めてやろう。だが、ここがお前たちの墓場となるのだ。」
魔王城の最深部の間で、玉座に座した魔王は、乗り込んできた勇者たちを睨みつけた。その両翼には、眠りの神ヒュプノスと死の神タナトスが控えている。そして無尽蔵に生み出されるアークデーモンが勇者たちに襲い掛かった。
「くっ、さすがは最終決戦。きつい戦いだぜ。」
「この私の究極魔法を披露するいい機会だ。受けよ、シャイニングストーム!!」
「大丈夫よボルグ。私たちが力を合わせればきっと勝てる。サポートは任せて!」
アークデーモンの軍勢とヒュプノス、タナトスの闇魔法を仲間たちが凌ぎ、辛うじて開いた隙間をかいくぐり、勇者ボルグは魔王と対峙した。
「決着をつけようぜ!魔王リルリア!!」
「よかろう。来い、ボルグ。私が引導を渡してやる。」
両者の激突はすさまじかった。数々の冒険を潜り抜けた勇者ボルグの力は、自身も知らぬ間に神の領域にまで到達していた。だがそれは魔王リルリアにも言えることである。
物理攻撃と魔法攻撃の同時応酬が続く。あらゆる角度から、斬撃が打撃が衝撃波が大気を切り裂き大地を割る。地・水・火・風・聖・闇、全属性の魔法が一瞬のうちに何往復も攻防を繰り返す、麻痺、毒、石化、呪い、即死、あらゆる状態異常魔法が同時に連発され、翻ってそれぞれの耐性魔法が幾重にも重ね掛けされ、攻撃支援、防御阻害そしてその逆、補助系の魔法も多重に行き交う。
多重に重ねられたあらゆる攻防の交錯は、いつしか二人の周りに人知を超える竜巻を引き起こし、何人も立ち入ることのできな隔離された空間を作り出した。
ボルグの仲間たちも、ヒュプノス、タナトス率いる魔王軍も異変に気付いた。二人の戦いは、もはや誰の手にも届かないレベルに達していた。いつの間にか皆がその巨大な竜巻を固唾をのんで見守っていた。中でどのような攻防が繰り広げられているのか、誰もうかがい知ることはできない。
「よう、一旦休戦しねぇか?」
ライネルがタナトスに話しかけた。
「・・・」
「ここで俺たちのどちらが勝とうが、結局はあの竜巻の中の勝者が、この戦いの勝者になる。例え俺たちがお前らに勝ったとしても、あの竜巻から魔王が戻ってくるなら、結局俺たちは生きては帰れない。その逆も同じだ。」
「・・・よかろう。」
両陣営は、一旦矛を収め、魔王と勇者の戦いの成り行きを見届けることにした。
だが、なんという運命のいたずらだろうか。二人の戦いは互角を極め、竜巻の中に作られた結界の中で死闘の末相打ちとなったのだった。
実は運命のいたずらというのは、相打ちだったことを指すのではない。激しい攻防で生じた数々の衝撃波が、二人の耐久力を超え、彼らの魂は肉体から一気に引きはがされた。
「く、くそ。だが、俺の仲間がきっと、きっとこの世界を──」
「こ、この私が人間ごときに。ヒュプノス、タナトス必ず世界を闇に陥れるのだ──」
気づくと二人は、病院のベッドに横たわっていた。
ラブホテルで起きた火災事故で、死んだと思われた高校生のカップルは奇跡的に助け出され、救急搬送されていた。
(く、こ、ここは?やや!!右にいるのは魔王リルリア!あ、あれはポーション?消耗した魔力を回復させているのか?)
玲司の右隣のベッドには、やけどを負い点滴処置をされた愛梨が横たわっていた。緊急の処置のため同室で施術されたのだ。
(う、われは、我は生きているのか?ぐ、あれはボルグ。何だあの面は、また何かの精霊が奴に加護を与えているのか?)
玲司の顔には酸素マスクが取り付けられている。
残念ながらここから物語の舞台は、異世界テラの方で進められる。激闘を繰り広げた勇者と魔王はあろうことか、バスケ少年とちょっとオタクな女子高生に転生してしまったのだったが、彼らの苦労話はまた別の物語である。
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久しぶりの創作は楽しいですが、茶番を書くのがしんどかったです(笑)
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