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第一章 ~『溺愛してくれた理由』~
しおりを挟む騒動の後も楽しいパーティの時間は続いた。秘密が解禁されたことで、クレアの周囲には人が集まり、好意的な笑みが向けられる。
短い人生で一番忙しいと思える時間だった。時は過ぎ、クレアが解放された頃を見計らって、ワイングラスを手にしたギルフォードが近づいてくる。
「疲れただろう。飲み物を持ってきたよ」
「葡萄酒はちょっと……」
「安心しなよ。ただのジュースさ」
「それなら……では頂きますね」
成人したとはいえ、アルコールに挑戦するのはまだ早い。クレアは葡萄ジュースを受け取ると、渇いた喉を潤した。
「このパーティを経て、クレアは王家の人間だと認められた。僕を超える権力者になった気分はどうかな?」
「なんとも思いません。生まれはどうあれ、アイスバーン公爵家の人間に変わりはないですから」
「僕にとってもクレアは自慢の妹のままさ。これからもずっと家族だ」
血は繋がっておらず、クレアが仕えるべき王族だったとしても、ギルフォードにとって彼女は大切な家族だ。秘密が明らかになっても関係性が変化することはない。
「折角の機会だから、教えてください。お兄様が私に親切にしてくれたのは王族の血を引いていたからですか?」
「まさか。君の出自と僕の心情は関係ないよ」
「なら妹だからですか?」
「それはあるね。でもすべてじゃないよ。サーシャのことは嫌っているからね」
「なら私のどころを気に入ったのですか?」
「それはもちろん…………誰よりも優しいところさ」
優しい人は幸せになれると、亡くなった母が残してくれた金言が頭を過る。それが真実だと、隣に立つギルフォードの柔和な笑みが証明していたのだった。
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