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エピローグ ~『闇の聖女』~
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ルカが心配だと、ティアラは一足先に屋上を後にする。残された二人はフェンスに体重を預けながら、空を見上げた。
「改めて聞いてもいいかしら」
「俺と貴様の仲だ。好きにしろ」
「じゃあ遠慮なく。婚約破棄したのは、ティアラの性格だけが原因なの?」
「本当に遠慮なしだな」
婚約破棄には事情があるとレインは語った。もしそれがティアラの本性が理由なのだとしたら、復縁させられないかと考えたのだ。
「ティアラは陰湿だけど、優しいところもあるわ。公爵令嬢で美人だし、それに何よりレインのことを愛している。婚約を再開してあげたら?」
「駄目だ」
「やっぱり性格が許せないの?」
「今回の出来事で、ティアラの内面を深く知れた。愛されていることも自覚している。嫁として不満はない」
「だったら……」
「問題は俺にあるのだ。結婚すれば不幸にすると分かっていながら、婚約することはできない」
苦々しい口調で語る。だが彼の抱える事情について、マリアには心当たりがあった。
「もしかしてレインが闇属性だから?」
「なぜ知っている⁉」
「ハクが見抜いてくれたの。おかげで私との婚約に執着していた理由にも納得がいったわ」
「……同じ闇属性なら、俺が原因で馬鹿にされることがないからな」
王室の情報網なら、マリアが闇属性だと知るのは容易い。彼にとって理想の相手とは、外見も性格も能力も関係ない。結婚しても自分が原因で傷つかない女性を探していたのだ。
「でも闇属性も役に立つのよ」
「馬鹿を言うな。基礎魔法が使えない劣等属性だぞ。俺は幸いにも固有魔法が使えたから試験に合格できたが、他の属性なら入学は三年早かった」
固有魔法とは、マリアの回復魔法のように特定の個人だけが扱える力だ。だが基礎魔法が使えないと、できることが制限されるし、一流の魔法使いとして評価されない。
王族はエリートの集まりだからこそ、優秀な兄弟たちと比較され、レインも苦労してきたのだ。今までの艱難辛苦を思い出すように、眉間に皺が寄る。
「闇属性でも基礎魔法は使えるわよ」
「馬鹿な。闇属性は基礎魔法の研究が進んでいない。扱える者など、この世にいない」
「人間の間ではね。だから私はハクに教わったの。こんな風にね」
これが証拠だと、闇潜の魔法で、右手を景色と同化させる。マリアの固有魔法は回復魔法だ。この能力が基礎魔法であることの証明だった。
「俺も基礎魔法が使えるようになるのか……」
「ハクが教えてくれるわ」
「そ、そうか……ははは、俺が……」
レインは目尻に浮かんだ涙を拭いながらも、口元に笑みを浮かべる。愛らしさの浮かぶ表情だった。
「すまない。劣等王子だと、王宮で馬鹿にされていた古傷を思い出した」
「レイン……」
「だがおかげで心の傷を癒すことができた。外傷だけでなく、内面の傷まで癒せるマリアこそ本物の聖女だ。本当にありがとう」
レインの感謝をマリアは受け入れる。闇の聖女だと追放された彼女は、彼を救えたことに幸せを実感するのだった。
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読んでくれた人はありがとうございました!これにて完結です!
これからも面白い作品を書いていきますので、是非、作者のお気に入り追加を宜しくお願い致します!
「改めて聞いてもいいかしら」
「俺と貴様の仲だ。好きにしろ」
「じゃあ遠慮なく。婚約破棄したのは、ティアラの性格だけが原因なの?」
「本当に遠慮なしだな」
婚約破棄には事情があるとレインは語った。もしそれがティアラの本性が理由なのだとしたら、復縁させられないかと考えたのだ。
「ティアラは陰湿だけど、優しいところもあるわ。公爵令嬢で美人だし、それに何よりレインのことを愛している。婚約を再開してあげたら?」
「駄目だ」
「やっぱり性格が許せないの?」
「今回の出来事で、ティアラの内面を深く知れた。愛されていることも自覚している。嫁として不満はない」
「だったら……」
「問題は俺にあるのだ。結婚すれば不幸にすると分かっていながら、婚約することはできない」
苦々しい口調で語る。だが彼の抱える事情について、マリアには心当たりがあった。
「もしかしてレインが闇属性だから?」
「なぜ知っている⁉」
「ハクが見抜いてくれたの。おかげで私との婚約に執着していた理由にも納得がいったわ」
「……同じ闇属性なら、俺が原因で馬鹿にされることがないからな」
王室の情報網なら、マリアが闇属性だと知るのは容易い。彼にとって理想の相手とは、外見も性格も能力も関係ない。結婚しても自分が原因で傷つかない女性を探していたのだ。
「でも闇属性も役に立つのよ」
「馬鹿を言うな。基礎魔法が使えない劣等属性だぞ。俺は幸いにも固有魔法が使えたから試験に合格できたが、他の属性なら入学は三年早かった」
固有魔法とは、マリアの回復魔法のように特定の個人だけが扱える力だ。だが基礎魔法が使えないと、できることが制限されるし、一流の魔法使いとして評価されない。
王族はエリートの集まりだからこそ、優秀な兄弟たちと比較され、レインも苦労してきたのだ。今までの艱難辛苦を思い出すように、眉間に皺が寄る。
「闇属性でも基礎魔法は使えるわよ」
「馬鹿な。闇属性は基礎魔法の研究が進んでいない。扱える者など、この世にいない」
「人間の間ではね。だから私はハクに教わったの。こんな風にね」
これが証拠だと、闇潜の魔法で、右手を景色と同化させる。マリアの固有魔法は回復魔法だ。この能力が基礎魔法であることの証明だった。
「俺も基礎魔法が使えるようになるのか……」
「ハクが教えてくれるわ」
「そ、そうか……ははは、俺が……」
レインは目尻に浮かんだ涙を拭いながらも、口元に笑みを浮かべる。愛らしさの浮かぶ表情だった。
「すまない。劣等王子だと、王宮で馬鹿にされていた古傷を思い出した」
「レイン……」
「だがおかげで心の傷を癒すことができた。外傷だけでなく、内面の傷まで癒せるマリアこそ本物の聖女だ。本当にありがとう」
レインの感謝をマリアは受け入れる。闇の聖女だと追放された彼女は、彼を救えたことに幸せを実感するのだった。
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読んでくれた人はありがとうございました!これにて完結です!
これからも面白い作品を書いていきますので、是非、作者のお気に入り追加を宜しくお願い致します!
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