10 / 11
トーマス編
2-6 諸悪の根源・アサセル
しおりを挟む
これは夢なのか現実か、灰色の空間には見覚えがある。
「坊ちゃん、諸悪の根源を連れて来たぞ」
ルシアンの隣には黒く見えて実は深紅の羽を生やした堕天使がいた。
「やぁ坊ちゃん、僕は深紅の堕天使アサセル。宜しくね!」
軽そうなヤツだ。
「諸悪の根源、彼が?」
「そうだ、アサセルはカストル公爵家の契約者だ。支配の指輪と隷属の指輪を管理する者だ」
契約した者は他にもいるのか・・・寄りによってカストル公爵家だなんて最悪だな。
「リアリスの指輪は隷属の指輪だったの?」
「うん、公爵が大切に管理していると思ったら、次女が持ち出したみたいなんだ」
「貴様が管理しておかないからだ!」
「ルシアンみたいに執事になって人間に仕えるなんて御免だね~」
「待って、ちゃんとわかるように説明してくれ!」
カストル公爵家には言い伝えがある。二つの指輪が幸運を運んでくれるのだ。
長女のミネルバはフランシェ国の王太子殿下に恋をしたが全く相手にされなかった。
王太子は悪評が高いカストル公爵家を嫌っていたのだ。
長女に泣きつかれて公爵は遂に指輪を使った。
<王太子を魅了してミネルバを王太子妃にするのだ>
支配の指輪を填めて公爵はアサセルに祈った。
「あ、僕はルシアンみたいに人前に姿を現さないからね。今だけは特別~」
頼まれたアサセルは隷属の指輪を王太子が眠っている間に填めて『アサセルの祝福』という名の呪いを掛けた。
翌朝目覚めた王太子はすっかりミネルバの虜になって求婚したのだった。
アサセルが祝福すれば隷属の指輪を回収しても王太子殿下の呪いは解けない。
王太子とミネルバは婚約を果たし2年後に結婚した。今でも王太子の寵愛は有名だ。
「ルシアン・・・あれって悪事に使ってもいいの?」
「それが侯爵家の発展の為なら構わない」
「ヘェ、ソウナンダ」
願いが叶って公爵は2つの指輪を元の保管場所に戻した。それを次女のエヴリンがこっそり見ていたのに気づかずに。
『お父様が指輪のおまじないを掛けてくれたのよ!』
口の軽いミネルバが妹に指輪の存在を喋って秘密を暴露していたのだ。
エヴリンは指輪を持ち出して悪友のファーレン殿下に秘密を話した。が、二人とも『おまじない』など半分も信じていなかったのだ。
『リアリスに試してみない?魅了出来たら面白そう!』
二人は成功したら残酷な遊びでリアリスを虐めようと話し合った。
どんなにリアリスがファーレンに恋焦がれても相手にしない。侯爵令嬢を奴隷の様に扱ってやるのは面白そうだ。
そうしてリアリスの指には隷属の指輪が填められた。
「でもそれだとアサセルの祝福は受けられないよね?」
「そうだよ~でも指輪には僕の力が宿ってる。ファーレン殿下がリアリス嬢を支配するのは可能だったんだ。でも僕の祝福は受けてないからね、<堕天使の魔道具>を長期間身に着けて彼女は狂っていったんだ」
「支配の指輪はファーレン殿下を狂わせなかったの?」
「彼には良心が無いから大丈夫だったみたい。でも不幸を呼んで最後は二人とも悲惨な結末を迎えた」
「指輪を持ち出したエヴリンは助かった。なるほど、諸悪の根源は間違いなくアサセルだ」
「勝手に指輪を使用した公爵は<誓い>を破ったから契約は解除。指輪も回収したからもうリアリスは大丈夫」
「魅了の影響は?」
「残さないようにしておいた。ルシアン様のご命令でね~」
「リアリス嬢を救うのは坊ちゃんの願いでもあるからな」
「でね、トーマス様に相談なんだけど僕と契約しない?そうすれば<指輪>はルシアン様が管理してくれそうだし、願い事が2つになってお得だよ?」
「坊ちゃん、そんな面倒なヤツを引き受けるなよ!不幸になるぞ」
「断ったら?」
「僕はどっちかというと、カストル公爵のような悪人が好きなんだよね~」
「っ!野放しに出来ないな・・願い事が2つ・・・いいよ契約しよう」
「あ゛後悔するぞ!」
「OK!これでまだまだ人間界で楽しめそうだ。トーマス様~愛してるよ~」
「早速だけどアサセルに頼みたい。リアリスの前回の記憶を消して欲しい。出来る?」
「出来ると思うよ。君が強く願えば・・・ね」
「アサセル・・・」
夜明け前に目が覚めるとボーゲン侯爵家の僕の部屋のベッドの上だった。
「夢?いや違う」
僕の指には深紅の指輪があった。
「<リアリスの前回の悪い記憶を消して欲しい。で、僕と結婚して欲しい>お願いだ!アサセルどうか叶えてくれ!」
朝にはいつの間にかアサセルの指輪は消えていた。回収されてルシアンの元で保管されるんだろう。
「トーマスおはよう!」
「おはようリア!」
リアリスがいつもより明るい。アサセルは成功したんだろうか。
学園に向かう馬車の中で思い切って尋ねてみた。
「リア、僕と結婚してくれる?」
「え!私は婚約を解消したばかりで・・・えっと・・なんで急に⁈」
「ごめん、今度もう1回やり直すよ」
「・・・いいけど、本当に私でいいの?」
真っ赤になっているリアが可愛い。アサセルは大成功だな!
「うん、リアがいい。リアが好きだ」
「私もね、ずっとトーマスが好きだったの。嬉しい!」
僕達はそっと触れるだけのキスを交わした。
この幸福の見返りで別の幸福が逃げるかもしれない。それでも僕はリアを愛し続ける。
不幸がやって来ても二人で乗り越えて見せるよ。
.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚..:。+゚.:。†゚.:。+゚
アサセル「なんで見返りに不幸になるのさ?」
ルシアン「手に入れた幸福だけで人間は満足しないからな<警告>だ」
アサセル「幸福を恐れろって事?幸福も不幸も人によって違うと思うけど」
ルシアン「そうだ他人から見ればコーネリアは不幸だが、あれで本人は幸せなんだ」
アサセル「トーマスの不幸は?」
ルシアン「間違いなく嫁の尻に敷かれる。コートバルを名乗る女性は強くなる」
アサセル「ぎゃはははは」
「坊ちゃん、諸悪の根源を連れて来たぞ」
ルシアンの隣には黒く見えて実は深紅の羽を生やした堕天使がいた。
「やぁ坊ちゃん、僕は深紅の堕天使アサセル。宜しくね!」
軽そうなヤツだ。
「諸悪の根源、彼が?」
「そうだ、アサセルはカストル公爵家の契約者だ。支配の指輪と隷属の指輪を管理する者だ」
契約した者は他にもいるのか・・・寄りによってカストル公爵家だなんて最悪だな。
「リアリスの指輪は隷属の指輪だったの?」
「うん、公爵が大切に管理していると思ったら、次女が持ち出したみたいなんだ」
「貴様が管理しておかないからだ!」
「ルシアンみたいに執事になって人間に仕えるなんて御免だね~」
「待って、ちゃんとわかるように説明してくれ!」
カストル公爵家には言い伝えがある。二つの指輪が幸運を運んでくれるのだ。
長女のミネルバはフランシェ国の王太子殿下に恋をしたが全く相手にされなかった。
王太子は悪評が高いカストル公爵家を嫌っていたのだ。
長女に泣きつかれて公爵は遂に指輪を使った。
<王太子を魅了してミネルバを王太子妃にするのだ>
支配の指輪を填めて公爵はアサセルに祈った。
「あ、僕はルシアンみたいに人前に姿を現さないからね。今だけは特別~」
頼まれたアサセルは隷属の指輪を王太子が眠っている間に填めて『アサセルの祝福』という名の呪いを掛けた。
翌朝目覚めた王太子はすっかりミネルバの虜になって求婚したのだった。
アサセルが祝福すれば隷属の指輪を回収しても王太子殿下の呪いは解けない。
王太子とミネルバは婚約を果たし2年後に結婚した。今でも王太子の寵愛は有名だ。
「ルシアン・・・あれって悪事に使ってもいいの?」
「それが侯爵家の発展の為なら構わない」
「ヘェ、ソウナンダ」
願いが叶って公爵は2つの指輪を元の保管場所に戻した。それを次女のエヴリンがこっそり見ていたのに気づかずに。
『お父様が指輪のおまじないを掛けてくれたのよ!』
口の軽いミネルバが妹に指輪の存在を喋って秘密を暴露していたのだ。
エヴリンは指輪を持ち出して悪友のファーレン殿下に秘密を話した。が、二人とも『おまじない』など半分も信じていなかったのだ。
『リアリスに試してみない?魅了出来たら面白そう!』
二人は成功したら残酷な遊びでリアリスを虐めようと話し合った。
どんなにリアリスがファーレンに恋焦がれても相手にしない。侯爵令嬢を奴隷の様に扱ってやるのは面白そうだ。
そうしてリアリスの指には隷属の指輪が填められた。
「でもそれだとアサセルの祝福は受けられないよね?」
「そうだよ~でも指輪には僕の力が宿ってる。ファーレン殿下がリアリス嬢を支配するのは可能だったんだ。でも僕の祝福は受けてないからね、<堕天使の魔道具>を長期間身に着けて彼女は狂っていったんだ」
「支配の指輪はファーレン殿下を狂わせなかったの?」
「彼には良心が無いから大丈夫だったみたい。でも不幸を呼んで最後は二人とも悲惨な結末を迎えた」
「指輪を持ち出したエヴリンは助かった。なるほど、諸悪の根源は間違いなくアサセルだ」
「勝手に指輪を使用した公爵は<誓い>を破ったから契約は解除。指輪も回収したからもうリアリスは大丈夫」
「魅了の影響は?」
「残さないようにしておいた。ルシアン様のご命令でね~」
「リアリス嬢を救うのは坊ちゃんの願いでもあるからな」
「でね、トーマス様に相談なんだけど僕と契約しない?そうすれば<指輪>はルシアン様が管理してくれそうだし、願い事が2つになってお得だよ?」
「坊ちゃん、そんな面倒なヤツを引き受けるなよ!不幸になるぞ」
「断ったら?」
「僕はどっちかというと、カストル公爵のような悪人が好きなんだよね~」
「っ!野放しに出来ないな・・願い事が2つ・・・いいよ契約しよう」
「あ゛後悔するぞ!」
「OK!これでまだまだ人間界で楽しめそうだ。トーマス様~愛してるよ~」
「早速だけどアサセルに頼みたい。リアリスの前回の記憶を消して欲しい。出来る?」
「出来ると思うよ。君が強く願えば・・・ね」
「アサセル・・・」
夜明け前に目が覚めるとボーゲン侯爵家の僕の部屋のベッドの上だった。
「夢?いや違う」
僕の指には深紅の指輪があった。
「<リアリスの前回の悪い記憶を消して欲しい。で、僕と結婚して欲しい>お願いだ!アサセルどうか叶えてくれ!」
朝にはいつの間にかアサセルの指輪は消えていた。回収されてルシアンの元で保管されるんだろう。
「トーマスおはよう!」
「おはようリア!」
リアリスがいつもより明るい。アサセルは成功したんだろうか。
学園に向かう馬車の中で思い切って尋ねてみた。
「リア、僕と結婚してくれる?」
「え!私は婚約を解消したばかりで・・・えっと・・なんで急に⁈」
「ごめん、今度もう1回やり直すよ」
「・・・いいけど、本当に私でいいの?」
真っ赤になっているリアが可愛い。アサセルは大成功だな!
「うん、リアがいい。リアが好きだ」
「私もね、ずっとトーマスが好きだったの。嬉しい!」
僕達はそっと触れるだけのキスを交わした。
この幸福の見返りで別の幸福が逃げるかもしれない。それでも僕はリアを愛し続ける。
不幸がやって来ても二人で乗り越えて見せるよ。
.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚..:。+゚.:。†゚.:。+゚
アサセル「なんで見返りに不幸になるのさ?」
ルシアン「手に入れた幸福だけで人間は満足しないからな<警告>だ」
アサセル「幸福を恐れろって事?幸福も不幸も人によって違うと思うけど」
ルシアン「そうだ他人から見ればコーネリアは不幸だが、あれで本人は幸せなんだ」
アサセル「トーマスの不幸は?」
ルシアン「間違いなく嫁の尻に敷かれる。コートバルを名乗る女性は強くなる」
アサセル「ぎゃはははは」
31
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
👨一人用声劇台本「告白」
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼氏が3年付き合っている彼女を喫茶店へ呼び出す。
所要時間:5分以内
男一人
◆こちらは声劇用台本になります。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。


さようなら、あなたとはもうお別れです
四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。
幸せになれると思っていた。
そう夢みていたのだ。
しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

死に戻るなら一時間前に
みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」
階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。
「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」
ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。
ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。
「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」
一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる