上 下
36 / 57

36)レンとタツキ

しおりを挟む
♠♠♠他者視点

 ドワーフの町にレンとタツキは保護されていた。
異世界に召喚されたのはキャンプ場の設置カマド付近にいた12人。

レンとタツキは出来上がったカレーと飯盒を食事テーブルに運ぼうとした時、突然足元が光り眩暈がして気が付けばなぜか鉱山の中にいた。

レンはカレー鍋をタツキは飯盒を2つ持ったまま召喚されていた。

突然現れた緑のジャージにエプロン姿の奇妙な2人を掘削中のドワーフ達は恐れ逃げ出した。
戸惑う2人を保護してくれたのは、様子を見に洞窟に戻ってきたロック青年だった。

言葉も解らない2人を親切なロックは町の自宅に連れて帰ってくれた。
鍛冶師の親父ドンは2人を追い出すように言ったが息子のロックは断固拒否した。

そんなピンチを救ったのがカレーだった。

腹を空かせた2人が飯盒の蓋にライスとカレーを乗せて、ドンの家のスプーンを借りて食べた。
中辛の旨いカレーを夢中で食べている2人を見ていたドンとロックも食べたくなったのだ。

カレーと引き換えに2人はドンの家に居候する事になった。
それからレンとタツキは呑気なドワーフの町で祝福を受けることも無く、不安な気持ちで3か月頑張っていた。

レン 〔言葉も何となくわかってきたな。〕

タツキ 〔いつ戻れんだろう。家で心配してるだろうなぁ。〕

レン 〔かえりたいな。スマホもテレビもカラオケも漫画も無い。つまらない世界だ。〕キャンプ時に生徒はスマホを担任に一時預かりさせられたのだ。

タツキ 〔食わしてもらえるのは有難いけど、毎日雑用ってのもなぁ。〕
ロックの指示で毎日2人は雑用、主に薪割りをやっていた。

レン 〔これはもうボランティアだよな。〕

タツキ 〔文句は言えないけど、だよなぁ。〕

レン 〔異世界召喚って勇者になれないのな。最近のラノベはそういう流れか?〕

〔いいじゃん、魔王と戦うなんてナシナシ。〕
そう言いながら熱心に薪割りをするタツキ。レンは割った薪を縛っていた。

タツキ 〔俺はもう薪割りの達人だぜ! へへ。〕
レンはつくづくタツキと一緒で良かったと思った。一人だと頭がおかしくなっていただろうと。
この日そんな2人に突然不幸が襲った。
後頭部に衝撃を受けて意識を失ったのだった。




         ***




 気が付くとどこかの牢屋の中だった。牢屋番を見てレンとタツキは驚いた。

 〔〔おお、獣人だ。 すげー〕〕 

レン 〔ここどこだ?なんで牢屋にいるんだ?〕

タツキ 〔頭が痛い。げっ、マジか・・・血が出てるぞ。〕

レン 〔お~い 助けて! ヘルプ ヘルプ ミー!〕

2人の叫びに応える者はおらず、獣人に拉致されたと知った。

ただ牢屋の中で大人しくするしか無かった。





         ***




 獣人皇帝はグランダ王国に不満を抱いていた。ドラゴン討伐に協力をした。
世界最強と言われるテスランを向かわせたと言うのに、わずかな報酬を与えて帰らせた。

 ドラゴンは消えたという。本当なのか? ドラゴンは倒れる寸前だったと聞く。 
ドラゴンの遺体を隠して、奇跡を起こすという【クリスタルハート】をグランダ王国が手に入れたのではないか。

 エリクサーの分配も、うやむやになった。たった3本だ。
不可侵条約を結んでいるだけの獣人帝国への分配に変わりは無いという事だ。

 不透明な結果に皇帝は納得がいかない。そんな時ギザが謁見を申し出た。

ギザは『ドワーフの町に渡り人が保護されている。』という情報をもたらした。
そして彼らを捕獲すればエリクサーが手に入るかもしれないと進言したのだ。
皇帝は渡り人を捕縛するよう命令を出した。

 皇帝はエリクサーをどうしても手に入れたかった。

 獣人国には奇病が存在する。体に赤黒のカサブタが現れ周りの毛がごっそり抜けたり、高熱を出し命を落とす者もある。治癒でも治らずエリクサーでしか治せない。
2年前には王都で奇病が流行り、もうエリクサーは手元に1個も無い。

渡り人を捕縛したと報告が入り、牢屋にでも入れておけと皇帝は命令した。



         ****************







 渡り人について魔界情報があるとコアから聞いたのは2日前。
俺はニトに変貌して獣人国を目指していた。

◇◆◇2日前◇◆◇

 
「エリクサー 至急 渡り人 重症。」
「ドワーフの町の? 重症?」

「獣人帝国で保護。」 
「帝国で? また テスランかな。」

「エリクサー 取引 OK?] 
「そうだな、何個必要?」 
「100個」

「はぁ? 渡り人が100人? 前に2人って情報なかったか?」
「需要 100個」

「おかしいぞ。その情報正しいのか?」 
「100個以外 取引不可。」

「それって渡り人が人質ってことで100個渡さないと命が無いという事か?」

「魔界ギルドニ 問い合わせ中。」


 早くドワーフの町に向かうべきだった。
サラ達のようにドワーフ達と上手く暮らしていると思い込んでいた。
様子を見に行くつもりではあったのだけど何が起こっているのか。
ただ俺のコピーエリクサーが原因だという事はわかる。

「依頼却下 フェイクの可能性有。」

「でも 何か起こってるみたいだな。」
「否めませン。」

「獣人国に行ってくる。」
「了解! 気を付けテ。」


 ダニーに頼んで瞬間移動装置を使いヤマト国のナザルの港町に向かった。

「今度は何をするつもりだ? 危ないことはやめとけよ。」
「ちょっとね、獣人国に用があるんだ。」


ダニーと別れ乗船の予約を取り出航を待つばかりだったが、運悪く時化で船は出ておらず、二日待たされていた。
(早く獣人国に行きたいのに。)風で荒れる海を見つめていると肩をポンと叩かれた。

 振り向いて言葉も出なかった。
「久しぶりであるな。息災であるか?」
リオンがなぜかいた。

「・・・姫様がなぜこんな所に?」

「ダニーを見張っておれば 貴様に会えると思っておったわ。」
姫様はストーカー気質のようだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

朝起きたら、ギルドが崩壊してたんですけど?――捨てられギルドの再建物語

六倍酢
ファンタジー
ある朝、ギルドが崩壊していた。 ギルド戦での敗北から3日、アドラーの所属するギルドは崩壊した。 ごたごたの中で団長に就任したアドラーは、ギルドの再建を団の守り神から頼まれる。 団長になったアドラーは自分の力に気付く。 彼のスキルの本質は『指揮下の者だけ能力を倍増させる』ものだった。 守り神の猫娘、居場所のない混血エルフ、引きこもりの魔女、生まれたての竜姫、加勢するかつての仲間。 変わり者ばかりが集まるギルドは、何時しか大陸最強の戦闘集団になる。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...