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36)レンとタツキ

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♠♠♠他者視点

 ドワーフの町にレンとタツキは保護されていた。
異世界に召喚されたのはキャンプ場の設置カマド付近にいた12人。

レンとタツキは出来上がったカレーと飯盒を食事テーブルに運ぼうとした時、突然足元が光り眩暈がして気が付けばなぜか鉱山の中にいた。

レンはカレー鍋をタツキは飯盒を2つ持ったまま召喚されていた。

突然現れた緑のジャージにエプロン姿の奇妙な2人を掘削中のドワーフ達は恐れ逃げ出した。
戸惑う2人を保護してくれたのは、様子を見に洞窟に戻ってきたロック青年だった。

言葉も解らない2人を親切なロックは町の自宅に連れて帰ってくれた。
鍛冶師の親父ドンは2人を追い出すように言ったが息子のロックは断固拒否した。

そんなピンチを救ったのがカレーだった。

腹を空かせた2人が飯盒の蓋にライスとカレーを乗せて、ドンの家のスプーンを借りて食べた。
中辛の旨いカレーを夢中で食べている2人を見ていたドンとロックも食べたくなったのだ。

カレーと引き換えに2人はドンの家に居候する事になった。
それからレンとタツキは呑気なドワーフの町で祝福を受けることも無く、不安な気持ちで3か月頑張っていた。

レン 〔言葉も何となくわかってきたな。〕

タツキ 〔いつ戻れんだろう。家で心配してるだろうなぁ。〕

レン 〔かえりたいな。スマホもテレビもカラオケも漫画も無い。つまらない世界だ。〕キャンプ時に生徒はスマホを担任に一時預かりさせられたのだ。

タツキ 〔食わしてもらえるのは有難いけど、毎日雑用ってのもなぁ。〕
ロックの指示で毎日2人は雑用、主に薪割りをやっていた。

レン 〔これはもうボランティアだよな。〕

タツキ 〔文句は言えないけど、だよなぁ。〕

レン 〔異世界召喚って勇者になれないのな。最近のラノベはそういう流れか?〕

〔いいじゃん、魔王と戦うなんてナシナシ。〕
そう言いながら熱心に薪割りをするタツキ。レンは割った薪を縛っていた。

タツキ 〔俺はもう薪割りの達人だぜ! へへ。〕
レンはつくづくタツキと一緒で良かったと思った。一人だと頭がおかしくなっていただろうと。
この日そんな2人に突然不幸が襲った。
後頭部に衝撃を受けて意識を失ったのだった。




         ***




 気が付くとどこかの牢屋の中だった。牢屋番を見てレンとタツキは驚いた。

 〔〔おお、獣人だ。 すげー〕〕 

レン 〔ここどこだ?なんで牢屋にいるんだ?〕

タツキ 〔頭が痛い。げっ、マジか・・・血が出てるぞ。〕

レン 〔お~い 助けて! ヘルプ ヘルプ ミー!〕

2人の叫びに応える者はおらず、獣人に拉致されたと知った。

ただ牢屋の中で大人しくするしか無かった。





         ***




 獣人皇帝はグランダ王国に不満を抱いていた。ドラゴン討伐に協力をした。
世界最強と言われるテスランを向かわせたと言うのに、わずかな報酬を与えて帰らせた。

 ドラゴンは消えたという。本当なのか? ドラゴンは倒れる寸前だったと聞く。 
ドラゴンの遺体を隠して、奇跡を起こすという【クリスタルハート】をグランダ王国が手に入れたのではないか。

 エリクサーの分配も、うやむやになった。たった3本だ。
不可侵条約を結んでいるだけの獣人帝国への分配に変わりは無いという事だ。

 不透明な結果に皇帝は納得がいかない。そんな時ギザが謁見を申し出た。

ギザは『ドワーフの町に渡り人が保護されている。』という情報をもたらした。
そして彼らを捕獲すればエリクサーが手に入るかもしれないと進言したのだ。
皇帝は渡り人を捕縛するよう命令を出した。

 皇帝はエリクサーをどうしても手に入れたかった。

 獣人国には奇病が存在する。体に赤黒のカサブタが現れ周りの毛がごっそり抜けたり、高熱を出し命を落とす者もある。治癒でも治らずエリクサーでしか治せない。
2年前には王都で奇病が流行り、もうエリクサーは手元に1個も無い。

渡り人を捕縛したと報告が入り、牢屋にでも入れておけと皇帝は命令した。



         ****************







 渡り人について魔界情報があるとコアから聞いたのは2日前。
俺はニトに変貌して獣人国を目指していた。

◇◆◇2日前◇◆◇

 
「エリクサー 至急 渡り人 重症。」
「ドワーフの町の? 重症?」

「獣人帝国で保護。」 
「帝国で? また テスランかな。」

「エリクサー 取引 OK?] 
「そうだな、何個必要?」 
「100個」

「はぁ? 渡り人が100人? 前に2人って情報なかったか?」
「需要 100個」

「おかしいぞ。その情報正しいのか?」 
「100個以外 取引不可。」

「それって渡り人が人質ってことで100個渡さないと命が無いという事か?」

「魔界ギルドニ 問い合わせ中。」


 早くドワーフの町に向かうべきだった。
サラ達のようにドワーフ達と上手く暮らしていると思い込んでいた。
様子を見に行くつもりではあったのだけど何が起こっているのか。
ただ俺のコピーエリクサーが原因だという事はわかる。

「依頼却下 フェイクの可能性有。」

「でも 何か起こってるみたいだな。」
「否めませン。」

「獣人国に行ってくる。」
「了解! 気を付けテ。」


 ダニーに頼んで瞬間移動装置を使いヤマト国のナザルの港町に向かった。

「今度は何をするつもりだ? 危ないことはやめとけよ。」
「ちょっとね、獣人国に用があるんだ。」


ダニーと別れ乗船の予約を取り出航を待つばかりだったが、運悪く時化で船は出ておらず、二日待たされていた。
(早く獣人国に行きたいのに。)風で荒れる海を見つめていると肩をポンと叩かれた。

 振り向いて言葉も出なかった。
「久しぶりであるな。息災であるか?」
リオンがなぜかいた。

「・・・姫様がなぜこんな所に?」

「ダニーを見張っておれば 貴様に会えると思っておったわ。」
姫様はストーカー気質のようだ。

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