今世も私は幸せです

４

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　───長い１年でした。

　メイビルは慰謝料が欲しい父のハニートラップを掻い潜り、多くの美女の誘惑を振り切って私が卒業するのを待ってくれました。

　
　ゴシップ好きな方々の期待を裏切って、私とメイビルは結婚しました。
　破局に賭けた人が多数でしたがメイビルの愛は本物でした。

　同じくロビンとパウロも結婚、アーティ様はビッチと決別して新たな婚約者を迎えてやり直しています。

　学園でアーティ様とは一度も視線が交わることが有りませんでした。
　思い返せばターニアを気に入ってくれたのは義母で、恋愛結婚では無かったのです。義母がいなければ今世のように夫の目に、私は留まらなかったかもしれません。


「俺はどこにいてもお前を見つけたけどな」
「今更なんとでも言えるわよ。でも過去はもう良いの。大好きよメイビル」
　
　真っ新な気持ちで今は蜜月を過ごしています。

「シンディの愛がもっと欲しい」
「もう十分だと思うけど。外が明るくなったわよ」

「もう１回だけ！」
「しつこい！もう寝なさい！」

　メイビルに愛されて今世も私は幸せな人生を送れると思います。多分。



　　　　　＊＊＊



「はぁ？離婚するの？結婚してまだ１年も経ってないのに？」
「そうよアイツ浮気してたのよ。許せないわ！」

　他人の愚痴を聞き続けるのはストレスになります。

　結婚後も空気を読まないロビンが度々やって来ます。最近はパウロの浮気疑惑の話ばかりでしたが遂に離婚するみたいです。

　ロビンとは親同士の仕事の付き合いと腐れ縁、世間の情報も教えてくれるので何となくまだ付き合いがあります。

「浮気者はまた浮気するのよ。病気みたいなものかしら」

「あら、メイビルだって浮気してるに違いないわ！シンディも言ってたじゃないの、彼は女たらしで幸せになれないって」

「今は私一筋で重いくらい愛されてるわよ。毎日毎日」

「シンディったら強がらなくてもいいわよ？わかってるから～」

　未だに私達夫婦の離婚を勘ぐる人がいます。私はロビンがヘンな噂を流しているんじゃないかと疑っています。

「パウロなんか捨てて次に最高に良い男を見つけるわよ」
　私達は微笑み合って、メイビルが探して買って来てくれたハーブティを飲み干しました。


「奥様、ご主人様が戻られました」
　メイドの声にロビンが立ち上がりました。やっと帰ってくれそう。

「シンディ！ただいま。いらっしゃいご夫人・・・」
　本日も夫の美貌は輝いています。

「メイビルったら元婚約者ですもの～ロビンって呼んで」

　まぁ、ロビンは私の夫に狙いをつけたのかしら！パウロの事も有って、私から男を奪うのは簡単だと思っていそうよね。

「お断りだ。俺の妻は妊娠初期でデリケートな時期なんだよ。何度も何度もやって来てストレス貯めるんじゃねーよ。二度と来るんじゃねーぞ！」

「メイビル、言い過ぎ」
「こいつはこれくらい言わないと分かんねーんだよクソが！はよ帰れ！」

　ロビンは青い顔でアワアワしながら帰って行きました。
　怒った時だけメイビルは傭兵口調に戻るので困ります。

　来年は第一子が生まれます。守銭奴の父も今ではメイビルを認めて孫の誕生を楽しみにしています。

「パウロと離婚するんですって」
「はっ！知った事か。ああ、シンディお帰りのキスがまだだよ」

　メイビルは優しくそっと抱き締めてキスしてくれます。

「俺の奥さんは今日も可愛いな。悪阻はどう、大丈夫か？」

　来年は第一子が生まれる予定で、守銭奴の父も今ではメイビルを認めて孫の誕生を楽しみにしています。


「ええ、最高に素敵な気分よ」


　今世も私は幸せです。





　終わり。最後まで読んで下さって有難うございました。