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完結
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★ルクス視点★
私、ルクスは侯爵家から実家ファーレン伯爵家に戻された。
違約金を請求すると義母は言ったが、フィーナに相応しいノアールが婚約者になったのでもう良いと、請求はされなかった。
「馬鹿者が!侯爵家にあんなに大切にされて、お前の未来は明るいものだった、どうしてこんな事に」
父は激怒し、母は泣き崩れたが今となってはどうしようもない。
私はミモザを心から愛していた、後悔は無い。
無いはずだった・・・・・
学園で1年後輩のミモザ。会った瞬間に私達は惹かれあった。
もちろん私は己の立場は理解していた。フィーナと婚姻を結び二人で侯爵家を守っていく。
だが、ミモザへの恋心を捨てられなかった。
同じ年のセルリアン王太子殿下の側近だった私は、卒業後は執務補佐になった。
殿下にはフィーナを含め、数人の高位貴族の婚約者候補がおられたが、反対を押し切って幼馴染の伯爵令嬢を婚約者に選ばれたのだった。
『愛する人を諦めるなんてできないよ、生涯を共にするんだ、私は諦めない』
セルリアン殿下の決意は固く、私は羨ましく思った。
私もミモザを諦めたくない!───そんな強い想いに捕らわれた。
フィーナは美しく貴族らしい令嬢だった。私を慕ってくれる可愛い妹で、養父母だって私を実子のように愛してくれた。
私はそれに甘えてしまったのだ。
フィーナが殿下の婚約者候補から外れたと知った令息達からは次々と釣書が送られて、私が辞退しても婚約相手には困らないだろう、きっと私の気持ちを認めてくれると、愚かにも思い込んだのだ。
養父母も初めは『その子爵令嬢と会ってから相談しよう』と言ってくれ、やはり私の味方だと安堵した。
だがフィーナは私に失望した。
私を冷たい目で非難した。
そうして、まさかフィーナが婚約者にノアール・エイデンを選ぶだなんて。
優秀だ、天才だ、などと誉めそやされて育った私の心を折ったのがノアールだった。
何をやっても彼には勝てず、悔しい思いをした。
なぜ同年にノアールがいるのか、いつも2番手に甘んじ、しかも彼は私のことなど歯牙にもかけていなかった。
すました顔で当たり前のように1番に収まっているノアールが憎かった。
彼はフィーナを幼少から慕っていたのか。それなら私を長年羨んでいただろう。
だがその立場すら奪われてしまった・・・いや、渡してしまった。
ミモザの実家からは婿入りの話を断られ、ファーレン伯爵からは、他国に婿養子に出すと言われ、私は八方ふさがりとなっている。
フィーナを嫌っていたわけではない、ただミモザを愛してしまった。
今はフィーナが憎い。
ノアールを選ぶなら、私は兄のままでも良いじゃないか。
ただノアールを主と認め侯爵家の補佐など私にできただろうか。
後悔しても、思い返しても、もうどうにもならない。
私は愛するミモザと駆け落ちして、王都を出た。
せめて後悔は無い、間違ってはいなかったと示したい、私の細やかな矜持だ
過酷な生活が待っていようとも、愛するミモザと生きていく。
***
「駆け落ちですか」
「フィーナの耳には入れない方が良かったわね」
「お母様・・・いずれ噂で知ることになるわ」
両親はあの後もルクスの身を案じていたようだ。
10年溺愛してきた彼への愛情は簡単に冷めなかった。
落ち着かない、居たたまれない気持ちになる。
そんな私にノアールは寄り添ってくれる。
「フィーナ、拒んだのは彼です。貴方は気にする必要はありません」
「ノアール、巻き込んで御免なさい」
「貴方が私を頼って下さって、嬉しかったのですよ。ルクスは愛する人と幸せになるでしょう。転んでもただで起き上がる人物ではありませんから」
「そうかしら」
「ええ、私のライバルでしたから。うかうかしていると、いつか私も追い越されてしまいます」
私を支えてくれる優しい言葉に彼の愛情の深さを感じる。
ルクスは最後までミモザ様の手を離さなかった。それは彼女にとって、何事にも代え難い幸福だろう。
でもノアールとならミモザ様に負けないくらい、私も幸せになれると思えた。
きっと私の心がノアールに満たされるのはそう遠くはない。
ここまで読んで下さって本当に有難うございました。
続く閑話も読んで頂けると嬉しいです!
私、ルクスは侯爵家から実家ファーレン伯爵家に戻された。
違約金を請求すると義母は言ったが、フィーナに相応しいノアールが婚約者になったのでもう良いと、請求はされなかった。
「馬鹿者が!侯爵家にあんなに大切にされて、お前の未来は明るいものだった、どうしてこんな事に」
父は激怒し、母は泣き崩れたが今となってはどうしようもない。
私はミモザを心から愛していた、後悔は無い。
無いはずだった・・・・・
学園で1年後輩のミモザ。会った瞬間に私達は惹かれあった。
もちろん私は己の立場は理解していた。フィーナと婚姻を結び二人で侯爵家を守っていく。
だが、ミモザへの恋心を捨てられなかった。
同じ年のセルリアン王太子殿下の側近だった私は、卒業後は執務補佐になった。
殿下にはフィーナを含め、数人の高位貴族の婚約者候補がおられたが、反対を押し切って幼馴染の伯爵令嬢を婚約者に選ばれたのだった。
『愛する人を諦めるなんてできないよ、生涯を共にするんだ、私は諦めない』
セルリアン殿下の決意は固く、私は羨ましく思った。
私もミモザを諦めたくない!───そんな強い想いに捕らわれた。
フィーナは美しく貴族らしい令嬢だった。私を慕ってくれる可愛い妹で、養父母だって私を実子のように愛してくれた。
私はそれに甘えてしまったのだ。
フィーナが殿下の婚約者候補から外れたと知った令息達からは次々と釣書が送られて、私が辞退しても婚約相手には困らないだろう、きっと私の気持ちを認めてくれると、愚かにも思い込んだのだ。
養父母も初めは『その子爵令嬢と会ってから相談しよう』と言ってくれ、やはり私の味方だと安堵した。
だがフィーナは私に失望した。
私を冷たい目で非難した。
そうして、まさかフィーナが婚約者にノアール・エイデンを選ぶだなんて。
優秀だ、天才だ、などと誉めそやされて育った私の心を折ったのがノアールだった。
何をやっても彼には勝てず、悔しい思いをした。
なぜ同年にノアールがいるのか、いつも2番手に甘んじ、しかも彼は私のことなど歯牙にもかけていなかった。
すました顔で当たり前のように1番に収まっているノアールが憎かった。
彼はフィーナを幼少から慕っていたのか。それなら私を長年羨んでいただろう。
だがその立場すら奪われてしまった・・・いや、渡してしまった。
ミモザの実家からは婿入りの話を断られ、ファーレン伯爵からは、他国に婿養子に出すと言われ、私は八方ふさがりとなっている。
フィーナを嫌っていたわけではない、ただミモザを愛してしまった。
今はフィーナが憎い。
ノアールを選ぶなら、私は兄のままでも良いじゃないか。
ただノアールを主と認め侯爵家の補佐など私にできただろうか。
後悔しても、思い返しても、もうどうにもならない。
私は愛するミモザと駆け落ちして、王都を出た。
せめて後悔は無い、間違ってはいなかったと示したい、私の細やかな矜持だ
過酷な生活が待っていようとも、愛するミモザと生きていく。
***
「駆け落ちですか」
「フィーナの耳には入れない方が良かったわね」
「お母様・・・いずれ噂で知ることになるわ」
両親はあの後もルクスの身を案じていたようだ。
10年溺愛してきた彼への愛情は簡単に冷めなかった。
落ち着かない、居たたまれない気持ちになる。
そんな私にノアールは寄り添ってくれる。
「フィーナ、拒んだのは彼です。貴方は気にする必要はありません」
「ノアール、巻き込んで御免なさい」
「貴方が私を頼って下さって、嬉しかったのですよ。ルクスは愛する人と幸せになるでしょう。転んでもただで起き上がる人物ではありませんから」
「そうかしら」
「ええ、私のライバルでしたから。うかうかしていると、いつか私も追い越されてしまいます」
私を支えてくれる優しい言葉に彼の愛情の深さを感じる。
ルクスは最後までミモザ様の手を離さなかった。それは彼女にとって、何事にも代え難い幸福だろう。
でもノアールとならミモザ様に負けないくらい、私も幸せになれると思えた。
きっと私の心がノアールに満たされるのはそう遠くはない。
ここまで読んで下さって本当に有難うございました。
続く閑話も読んで頂けると嬉しいです!
応援ありがとうございます!
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