39 / 42
39 全ては元通り
しおりを挟む
私をミリアンに引き渡すとアーヴィング殿下はお父様と少し内緒話をして「ユナをもうしばらく預かって欲しい。ユナ、すぐに迎えに来るからね」
そう告げて慌ただしく城に戻って行った。
「何の話だったんですか?」
ミリアンが訪ねてもお父様は黙って首を振った。
気になりますが、さてさて私はバレンシアと再会した。
彼女は怯えたように「ごめんなさい」を泣いて繰り返す。
ミリアンには私の偽物だと直ぐに見破られたと聞いて、ちょっと溜飲が下がった。
泣いて謝られても、許せない。
ミリアンの後ろに隠れ、ミリアンもバレンシアを庇っている。その姿にちょっぴり傷つく。
「僕だって許した訳じゃないですよ。ただこの子は幼い子供と変わり無いみたいで」
だから大目に見ろと言うのか、ミリアンは相変わらず優しくて甘い。
「ユナ、その姿は偽りでしょう?早く元の姿に戻りませんか?」
私だって早く元の姿に戻りたい、戻りたいけど────
「あの時と同じ方法でいいのかな?バレンシアこっちに来てくれる?」
私達が手を合わせると二人の体が重なり私はバレンシアを通り抜けた。
「ほぉ・・」
「別人ですね・・・」
魔法は解けた。鏡を見ると見慣れたバレンシアでは無く、加賀美由奈でもない。
日本人の面影はあった。黒い髪に・・・茶色と金色の瞳、バレンシアとはまた違う美しさがある。
「でも目が、・・・オッドアイは私だったの?」
「いいえ、私の左目が金色だったの、でも今は消えているわ。もう私は忌み子じゃないのね!」
バレンシアが手をたたいて喜んでいる。
「ふぁあ~、バレンシアは女神の祝福が消えたのね。魔女に加担したんだもの仕方ないわね」
欠伸しながらミリアンによく似たゴージャスな美女が階段を下りてきた。
「ユナ、紹介するよ。僕の母さんのオフィーリアだよ」
ミリアンのお母様?私がいない間にいろいろあったようだ。
オフィーリア様が私の瞳を覗き込んで「おめでとう」と言った。
女神の祝福が私に移ったの?なんでだろう?
「でも・・・神様有難う。今世は美人だ」
「当たり前でしょう、妖精は美女って相場が決まっているのよ」
「オフィーリア様、私は妖精の記憶が無いんです。どうしてこうなったのか分からなくて」
「ふーん、女神様に聞けばいいわ。祝福も頂いたんだし、春の妖精の国に里帰りしましょうか」
女神様に会える。オフィーリア様と一緒に妖精の国に戻ることにした。
「すぐに帰ってきますよね?」
不安そうなミリアンに「2~3日は戻れないわ。あっちとは時間の流れが違うから」と言って私を外に連れ出し、庭に咲く赤い薔薇の花に手を翳すと私達は花の中に吸い込まれていった。
「赤い花が妖精国の入口ってのも忘れてるのね?」
「全然記憶が無いんです」
花が咲き誇る妖精の国に戻ると白い神殿の中に、女神フローリス様は私達を迎えてくれた。
「ご苦労様でしたユナリス。予想外の出来事も多くありましたが、魔女から妖精を救ってくれてありがとう」
「勿体ないお言葉です。私はユナリスという名前なのですね。それであの・・・」
「ユナリスの記憶を戻しましょう」
女神様がそう言うと、ここで暮らしていた記憶が蘇ってきた。
「私は・・・そうだ春祭りの日に王都に行ったんだ!」
そして、広場で踊るルナシアとアーヴィング殿下を見かけたんだった。
「一目惚れだった。殿下と踊りたいと思って、でも警護が厳しくて殿下に近づけなかった。妖精の国に戻って女神様に『どうすればアーヴィング殿下に愛されますか?』と質問したんだわ」
すると『バレンシアを救ってあげて欲しい』と女神様にお願いされた。
バレンシアは前世で善行を重ねた女性だった。
生まれ変わって幸福になる筈だったのに、輪廻の神様は転生先を誤ったのだと言う。
『バレンシアなんてどうでもいいです。私はアーヴィング殿下に会いたいの』
気まぐれな妖精の私はそう答えた。
『バレンシアを幸福に導けば、愛の神アンテローシュに、貴方とアーヴィングの運命の糸を結ぶように頼んであげましょう』
『それならやります!なんでもやります!』
そして気が付くと妖精の記憶が消えて、生真面目な前世の加賀美由奈の記憶が蘇り、屋根裏部屋での出来事は起こった。
私のスキルは【変貌】と【鏡の中への出入り】
チートなバレンシアのスキルが【スキルの移行】
バレンシアは鏡越しだったせいで私の能力を半分だけ奪い取った。それで日中は自由に鏡を出入り出来るようになり、お陰で私にもスキルは半分残されたのだ。全部奪われていたらどうなった事やら。
互いの魔法は解除され私のスキルは元に戻り、バレンシアは女神の加護を失いチートスキルは消えてしまった。
「ユナリスの気まぐれな性格では上手くいくと思えなかった。それで前世の記憶に頼りました」
「ということは、殿下は私と無理やり運命の糸を結ばされたの?」
「ああ、まだ結んでいませんよ?貴方がここに戻ったらアンテローシュにお願いしようと思ったの」
「はぁあ良かった!」
「どうかしら。まだ結ばれていないから他者からの糸がアーヴィングに忍び寄っています」
女神様の不吉な言葉に「アンテローシュ様に早く結んでもらって下さい!」と私は叫んだのだった。
そう告げて慌ただしく城に戻って行った。
「何の話だったんですか?」
ミリアンが訪ねてもお父様は黙って首を振った。
気になりますが、さてさて私はバレンシアと再会した。
彼女は怯えたように「ごめんなさい」を泣いて繰り返す。
ミリアンには私の偽物だと直ぐに見破られたと聞いて、ちょっと溜飲が下がった。
泣いて謝られても、許せない。
ミリアンの後ろに隠れ、ミリアンもバレンシアを庇っている。その姿にちょっぴり傷つく。
「僕だって許した訳じゃないですよ。ただこの子は幼い子供と変わり無いみたいで」
だから大目に見ろと言うのか、ミリアンは相変わらず優しくて甘い。
「ユナ、その姿は偽りでしょう?早く元の姿に戻りませんか?」
私だって早く元の姿に戻りたい、戻りたいけど────
「あの時と同じ方法でいいのかな?バレンシアこっちに来てくれる?」
私達が手を合わせると二人の体が重なり私はバレンシアを通り抜けた。
「ほぉ・・」
「別人ですね・・・」
魔法は解けた。鏡を見ると見慣れたバレンシアでは無く、加賀美由奈でもない。
日本人の面影はあった。黒い髪に・・・茶色と金色の瞳、バレンシアとはまた違う美しさがある。
「でも目が、・・・オッドアイは私だったの?」
「いいえ、私の左目が金色だったの、でも今は消えているわ。もう私は忌み子じゃないのね!」
バレンシアが手をたたいて喜んでいる。
「ふぁあ~、バレンシアは女神の祝福が消えたのね。魔女に加担したんだもの仕方ないわね」
欠伸しながらミリアンによく似たゴージャスな美女が階段を下りてきた。
「ユナ、紹介するよ。僕の母さんのオフィーリアだよ」
ミリアンのお母様?私がいない間にいろいろあったようだ。
オフィーリア様が私の瞳を覗き込んで「おめでとう」と言った。
女神の祝福が私に移ったの?なんでだろう?
「でも・・・神様有難う。今世は美人だ」
「当たり前でしょう、妖精は美女って相場が決まっているのよ」
「オフィーリア様、私は妖精の記憶が無いんです。どうしてこうなったのか分からなくて」
「ふーん、女神様に聞けばいいわ。祝福も頂いたんだし、春の妖精の国に里帰りしましょうか」
女神様に会える。オフィーリア様と一緒に妖精の国に戻ることにした。
「すぐに帰ってきますよね?」
不安そうなミリアンに「2~3日は戻れないわ。あっちとは時間の流れが違うから」と言って私を外に連れ出し、庭に咲く赤い薔薇の花に手を翳すと私達は花の中に吸い込まれていった。
「赤い花が妖精国の入口ってのも忘れてるのね?」
「全然記憶が無いんです」
花が咲き誇る妖精の国に戻ると白い神殿の中に、女神フローリス様は私達を迎えてくれた。
「ご苦労様でしたユナリス。予想外の出来事も多くありましたが、魔女から妖精を救ってくれてありがとう」
「勿体ないお言葉です。私はユナリスという名前なのですね。それであの・・・」
「ユナリスの記憶を戻しましょう」
女神様がそう言うと、ここで暮らしていた記憶が蘇ってきた。
「私は・・・そうだ春祭りの日に王都に行ったんだ!」
そして、広場で踊るルナシアとアーヴィング殿下を見かけたんだった。
「一目惚れだった。殿下と踊りたいと思って、でも警護が厳しくて殿下に近づけなかった。妖精の国に戻って女神様に『どうすればアーヴィング殿下に愛されますか?』と質問したんだわ」
すると『バレンシアを救ってあげて欲しい』と女神様にお願いされた。
バレンシアは前世で善行を重ねた女性だった。
生まれ変わって幸福になる筈だったのに、輪廻の神様は転生先を誤ったのだと言う。
『バレンシアなんてどうでもいいです。私はアーヴィング殿下に会いたいの』
気まぐれな妖精の私はそう答えた。
『バレンシアを幸福に導けば、愛の神アンテローシュに、貴方とアーヴィングの運命の糸を結ぶように頼んであげましょう』
『それならやります!なんでもやります!』
そして気が付くと妖精の記憶が消えて、生真面目な前世の加賀美由奈の記憶が蘇り、屋根裏部屋での出来事は起こった。
私のスキルは【変貌】と【鏡の中への出入り】
チートなバレンシアのスキルが【スキルの移行】
バレンシアは鏡越しだったせいで私の能力を半分だけ奪い取った。それで日中は自由に鏡を出入り出来るようになり、お陰で私にもスキルは半分残されたのだ。全部奪われていたらどうなった事やら。
互いの魔法は解除され私のスキルは元に戻り、バレンシアは女神の加護を失いチートスキルは消えてしまった。
「ユナリスの気まぐれな性格では上手くいくと思えなかった。それで前世の記憶に頼りました」
「ということは、殿下は私と無理やり運命の糸を結ばされたの?」
「ああ、まだ結んでいませんよ?貴方がここに戻ったらアンテローシュにお願いしようと思ったの」
「はぁあ良かった!」
「どうかしら。まだ結ばれていないから他者からの糸がアーヴィングに忍び寄っています」
女神様の不吉な言葉に「アンテローシュ様に早く結んでもらって下さい!」と私は叫んだのだった。
10
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
竜の契約者
ホワイトエンド
ファンタジー
一人の青年は魂の半分を失った------
1体の竜は肉体を失った--------
二つの魂は混ざり合い生まれ変わった-----
あの日、全てを失った彼はその身に宿した力を振るう
悪を裁くために
正義をまっとうするために
例え、歪んでいようとも
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから
真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」
期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。
※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。
※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。
※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。
※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる