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38 シアが戻ってきた!ミリアン視点
しおりを挟む☆〈ミリアン視点〉☆
シアの居場所が分かったとアーヴィング殿下の部下から報告があって、僕達はシアの救出を祈っていた。
殿下は情報を聞くなり飛び出していったそうだ。バレンシアもいるから僕達は待つしかなかった。
法律上シアではなく、今ここにいるバレンシアが正式な養女で僕の妹だ。
生まれ育った悪環境で性格は流されやすく、シアとは正反対の依存心の強いバレンシア。
バレンシアが見つかれば4人で暮らしても良いと思っていたのにバレンシアはシアを裏切った。
許せない気持ちと同情心が半々で、バレンシアとはお互いに気まずい思いを抱えて一緒にいる。
僕の愛情を独り占めしたくてシアを裏切ったそうだ。精神年齢も幼い。
そういえばシアはどこか大人びていた。妖精だから僕のように年齢は高いのだろうか。
シアが妖精なら長い時をずっと一緒に過ごしていける。
妹のようなシアと二人で・・・それはとても魅力的で楽しい未来に思えた。
ダメだ、アーヴィング殿下がいる。殿下は決してシアを離さない。でも番はどっちなんだ?バレンシアなのかシアなのか?
多分シアだろう。
殿下も人間より遥かに寿命が長い。妖精が番なんて殿下は運がいい。
獣人国の獣王はもう200年以上生存する。彼は番を見つけた事はない。数回正妃を娶り今も強力な力で獣人国を守護している。
王国もアーヴィング殿下を魔族襲来に備え、最終兵器として臣下に置くつもりだ。
殿下がシアを探しに獣人国に向かった翌日、朝から塔を訪れる者がいた。
ドンドンドンドンと煩く扉を叩く。
バレンシアは怯えてテーブルの陰に隠れて、何事かと師匠と顔を見合わせた途端、バーンッ!と扉が吹き飛ばされた。
「なんだ!」
師匠と敵襲に備えると─────
「帰ったわよ!薄情な夫と息子の元にね!」
40年ぶりに母親が戻って来た。なぜ今更?その姿は消えた時と変わらず、若い娘のようだ。
「母さんですか? 薄情なのはそっちでしょう、気まぐれで出て行ったじゃないですか」
師匠はあんぐりと口を開けて、母を凝視している。
「私はね、魔女に捕まっていたのよ!なんで助けに来ないのよ!」
「オフィーリア・・・妖精の国に戻りたいって言ってたから・・・」
「ロビン・オーハン?あらあら、すっかりお爺さんになったわね。ところでなんであの子がここにいるの?」
母はバレンシアを指さした。
「母さん詳しく話してくれませんか?何があったんです」
「ミリアン、先にコーヒーを入れて。ロビン、貴方も座ったら?」
母さんはコーヒーを飲みながら、魔女にうっかり囚われた経緯から、獣人国で魔女の店を瓦礫にしてここまで逃げて来たところまで話した。
「驚いたわ、突然鳥籠の扉が勝手に開いたのよ。それで皆逃げて、ついでに怒りを爆発させてやったわ」
シアは隻眼の男が連れて行った。殿下が無事助け出してくれるといいけど。
「ところでミリアン」
「はい」
「私に似て美形に育ったわね!」
母はぎゅうぎゅう僕を抱き締めた。もっとシアの話など聞きたいことがいっぱいあるのに、母は疲れたと言ってソファーに横になった。
「お爺さんになったと言われたよ・・・・」
「人間ですから年を取るのは仕方ないですよ。でも母さんが解放されて良かった。40年も囚われていたなんて」
「ああ、胸が痛む」
「魔女は逃げたのか、この手で捕まえたいですね」
「うむ、許せない。失った40年を返して欲しい!」
そう言いながら師匠は眠ってしまった母を抱き上げると階段を上がっていった。
思いがけず母と再会できた、嘘みたいだ。
壊れた扉を直していると「お兄様!」と声がして、無事にシアが戻って来た!
「お帰りシア」両手を差し出すとシアは殿下から離れて、僕の胸に飛び込んできた。
きつく抱きしめてシアの無事を女神に感謝した。
「殿下、可愛い妹を取り戻して下さって有難うございました」
「私にとってもユナは大切な存在だからね」
「まだお兄様って呼んでいい?」
「当たり前じゃないか」
殿下はユナと呼んでいるのか。あとはユナが元の姿を取り戻すだけだ。
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