異世界転生先は鏡の妖精だった⁉ちょっぴりハードモードです

ミカン♬

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33 脱出成功

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 籠の扉が開いた時が勝負。飛び出して人の姿に戻ってやる。
 籠の中から私は睨むようにボスを見つめた。

「片方が金色なんて変わってて可愛いな。大人しくしているんだぞ、ピーコ」

 男たちは全員どこかに移動して、誰も居なくなるとワンコが帰ってきた。

 ワンコは小さなガラスコップにエサを入れて、籠の扉を開けようとした。
 飛び出そうと構えていたがワンコも逃がせば殺されると思って慎重だ。

「あ、カギが掛かっている」
 ああ、もう絶望的だ。

「カギを開けるのは得意だから大丈夫、エサをあげるからね」
 ワンコに開錠スキルがあるのか!なんてラッキー。


 キィーと籠の扉が上に開いた瞬間私は隙間に頭を突っ込んだ。「あっ!」ワンコは扉を離すと私の首はギロチンのように挟まれた。

 鳥が羽をバタつかせジタバタしているように見えるんだろう。
「ギャァギャァギャァ!!!(痛い、死ぬ死ぬ死ぬ)」

 私は扉に手をかけて押し上げようと奮闘していた。

「あ、あ、ああ死んじゃうよ」
 慌ててワンコは扉を押し上げたので私は籠から彼に向かってジャンプした。

「ええっ!!!」
 驚くワンコを押し倒しその上に、元に戻った私は乗っかっていた。

 ワンコは直ぐに私の手を捕まえ叫んだ。

「小鳥に戻って下さい!すぐにボスは戻ってきます!」
「ここから逃げたいの!」
「無理です、即捕まるよ」

 確かに今はあの魔女も恐れるボスから逃げ切れる気がしない。
 やはり逃げるなら、夜の鏡の中が安全。
 ポケットにはバレンシアのコンパクトミラーも残ったままだ。

「そうだ、、トイレ! トイレ!どこ~ 漏れちゃう~~」
「え?こ、こっちです」

 トイレに案内されて私は飛び込んでネーロを呼んだ。

「ネ~ロ~会いたかった」
「あるじ~心配した!」

 しばしネーロと抱擁。

「獣人国に来たみたいなの」
 簡単にネーロに説明して指示を与えると影に潜ませる──とドアがノックされた。

「ピーコさん戻って下さい。ボスたちが戻ってきます!僕殺されます!」

 ワンコが死んだら寝覚めが悪いわね。
「いいけど、ボスには内緒よ。鳥のエサじゃなくてパン頂戴」

「ピーコさんこれからどうするんですか?」
 ドアを開けると鳥籠を手に恐々ワンコは訪ねてくる。

「夜までには逃げ出すわ。私は魔女に捕まって籠に監禁されていたの。逃げるのを手伝ってくれない?」

「僕なんかには無理です!」

「それじゃ黙って知らんぷりしておいて!」

 鳥籠に手を当てると私は小さくなって籠の中に入り込んだ。

「え⁈小鳥になった・・・僕は何も見てないです!知りません」

「ピピピピーピピー(それでいいのよ)」


 部屋に戻るとワンコが言った通り直ぐにボスは帰ってきた。

「おう、ピーコにエサやったか?」
「はい!パンが欲しいそうです」
「パン屑が良いのか」

「ピーコちゃん可愛いっすね」

 ピーピー(早くどっかに行け!)と囀れば、殺伐とした男たちのマスコットになっていた。
 とにかく油断させて夜に鏡に逃げ込まなければ。

 窓の外が薄暗くなってきて私は焦っていた、ネーロが鏡に戻ってしまう。

 時間との勝負だ!

 ネーロは落ち着きなく、影からヒョッコリ顔を出してヒヤヒヤさせる。
「ピーピー・・ピィピィ(ネーロ頑張ってくれ!)」

 部屋にはボスを含め屈強な男が2人とワンコ。ドアの外には見張りが2人。

 夜が来る、緊張しているとワンコが「夕飯はどうしますか?」とボスに声を掛けた。

「いつもの店に行くか? 少しまだ早いな」

 二人の男は机上を片付け、外に出る準備を始めている。
 ボスはタバコに火をつけた。くっそ~まだ出ていく気はなさそうだ。

「あ、タバコの煙はピーコさんの体に悪いですよ」
「む、そうだな」

 ボスが立ち上がって移動すると、ワンコが窓を開けて空気喚起した。すると風で机上の書類が数枚床に落ちた。
「何やってんだよ!」

 部下達が床にしゃがむとすかさずネーロは影の中から姿を現し、鳥籠を掴んで部屋の隅のソファーの後ろに飛び込み、籠の扉を開けて私を逃がした。

「あ⁈なんだお前は!」
 ネーロは鳥籠を掴んで、ボスに向かって投げつけた。

 ガシャーーーン!!! ガランガラガラ・・・

「ピーコォオオオオオオ!!!」
 ボスの叫びと共にネーロが消え、日没が訪れた。

「あ⁈消えたのか?クソッ!ババアの手下かよ!」
「女がいるぞ!」
「捕まえろ!」

 コンパクトミラーを開くと中に吸い込まれて、ギリギリ脱出に成功!

「危なかった!ネーロ、ありがとう頑張ってくれたね」
 ネーロを思いっきり抱きしめた。

「ニャア~、ニャニャニャニャン」
「私も焦ったよ~」

「酷い目に遭ったわ。できれば捕らわれた妖精たちを解放してあげたい」
「フシャァァアア!!!」

「危険なら籠の扉の蓋を開けておくだけでもいいと思わない?」
「フニャァ・・・」
「危険だったらやめるから」

 私は記憶を辿って獣人国のスラム街にある魔女の店に向かった。



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