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32 隻眼のボスとワンコ
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私の鳥籠の他に、数個の鳥籠が置いてあり外からは全て中身は小鳥に見えて、時々囀りが聞こえる。
あれもみんな妖精なんだろうか。
籠は全部で5個。黒と赤と緑と青、私は紫色だ。
黒い籠にカラスみたいに真っ黒な小鳥がいる。後は籠の色と同じで美しい色合いの小鳥ばかり。私は紫色の小鳥に見えるんだろうな。
今はミリアンに残してきた手紙だけが望みの綱だ。
他国に行く前に見つけてくれますように、殿下の指輪を握って私はずっと祈り続けていた。
休んでるはずの魔女が、急に奥から現れて引っ越しの支度を始めだす。
「なんだか胸騒ぎがするんだよ。急いで店を畳んだ方が良さそうだ」
大きな木箱に鳥籠を次々と入れてゆく。
最後に私も籠ごと入れられて蓋を絞められ真っ暗になった。
次に箱のふたが開くと引っ越しは済んでいた。
「痕跡は消してきたからね。捕まらないよ」
あちこちに店やアジトを持っていて、ここもその一つで寂れた店のようだ。
魔法で店内を綺麗に掃除し5個の鳥籠を好きな場所に設置すると魔女は満足してお茶の用意を始めた。
黒い小鳥が時々こっちをジッ見てくるのが気になった。
「魔女のお婆さん、あの黒い鳥なんだけど、カラスなの?」
「ああ、あれは魔族さ、火傷して瀕死になっていたので捕まえて手当てしてやったんだ」
「ええ!カラス王子、こんな所にいたの?」
「覗き見の鏡でシアがアレに襲われているのを見つけてね、慌てて向かったらアレが転がってたんだ。逃げても標的にされると言って籠に住み着いてるんだ」
「そうなんだ。あのカラスはフールって呼んでやって」
魔女がそう呼ぶとカラスはギャァギャァ騒いだ。『フール』と言うのは本当に屈辱的な名前みたい。
引っ越して1週間が経った。魔女はこまめに私や小鳥達の世話をしている。小鳥達は捕まえた妖精だそうだ。
憎い魔女だが無言でいると不安で気が狂いそうになり、つい何度も話しかけてしまう。
「お婆さん、バレンシアは鏡を出入り出来るスキルを持っていたの?それとも成り代わりのスキル?」
「スキル?どっちもお前さんの能力みたいだね」
「どっちも私?じゃぁバレンシアの能力って・・・・?」
「あの子には加護があった、その印が金色の目だ」
「かごって何?魔力が強いと目が金色だって聞いたわ」
「片方だけなんて不思議じゃないか。ふつうは両方に現れる。それにあの子の瞳の真ん中には小さな星が輝いていた。お前さんにはそれが無い」
「星・・・ふーん、そこまで完コピは出来なかったのか」
加護は女神の祝福だそうだ。なのに12年以上バレンシアは不幸だった。だから救いの手が差し伸べられた。
救いの手────何かが心に引っかかった。ただ女神様に利用されただけじゃない気がする。それが何なのか、考えても分かんないけどね。
それから、何日過ぎたか分からない。助けは訪れず、絶望的な気持ちになっていた。
ここは獣人国だ。時々お店に怪しげなお客が尋ねて来るが耳や尻尾が生えている。
────この日は怖そうな男がやって来た。
「ババア、戻ってたのか!よくも騙してくれたな」
隻眼のガラの悪い男が魔女の胸倉を掴んで揺すっていた。
二人で喧嘩を始めたがどうやら男に以前売った薬がインチキだったらしい。
「インチキなもんか扱いを間違ったのさ!言い掛かりだよ」
「恥かかせやがって!死にたいんだよな?くそババア!あ⁈」
『あ⁈』と男が言ったところでバッチリ目が合ってしまった。
「あ⁈ なんだこれ目の色が変わってるな」
「見るんじゃないよ!アタシの可愛い小鳥だよ」
「んじゃ、これ貰っとく、代金の返済と慰謝料だ」
男は私が入った鳥籠を持って帰ろうとした。
「ふざけんじゃないよ!金なら払うから戻しとくれ!」
「いや、気に入った。これで勘弁してやるよ。ババアだって今後、裏社会で取引できなきゃ困るだろう?」
私は得体のしれない隻眼の男に気に入られて、封印の籠ごと店から連れ去られてしまった。
男は獣人国の裏ギルドのボスだった。
ボスはアジトに戻ると机の上にあった書類をバサバサッーーと片手で床に落とした。すると手下たちが直ぐに拾って別の机上に書類を置く。
鳥籠を机上にトンッ!と置き「小鳥のエサを買ってこい!」と1番下っ端の気弱そうなワンコ青年に銀貨を投げつけた。
「ボ・・ボス、その鳥はなんですか?」
「ババアが大事にしていたんだ値打ちもんに違いない。ちゃんと世話して逃がすなよ!殺すぞ!」
「は、はい!」
「名前は・・・・ピーコだ」
「ありふれたネーミングセンス!私はユナよ」
「可愛い声で囀るんだなピーコは」
・・・・・ピーピーとしか聞こえていないようだ。
あれもみんな妖精なんだろうか。
籠は全部で5個。黒と赤と緑と青、私は紫色だ。
黒い籠にカラスみたいに真っ黒な小鳥がいる。後は籠の色と同じで美しい色合いの小鳥ばかり。私は紫色の小鳥に見えるんだろうな。
今はミリアンに残してきた手紙だけが望みの綱だ。
他国に行く前に見つけてくれますように、殿下の指輪を握って私はずっと祈り続けていた。
休んでるはずの魔女が、急に奥から現れて引っ越しの支度を始めだす。
「なんだか胸騒ぎがするんだよ。急いで店を畳んだ方が良さそうだ」
大きな木箱に鳥籠を次々と入れてゆく。
最後に私も籠ごと入れられて蓋を絞められ真っ暗になった。
次に箱のふたが開くと引っ越しは済んでいた。
「痕跡は消してきたからね。捕まらないよ」
あちこちに店やアジトを持っていて、ここもその一つで寂れた店のようだ。
魔法で店内を綺麗に掃除し5個の鳥籠を好きな場所に設置すると魔女は満足してお茶の用意を始めた。
黒い小鳥が時々こっちをジッ見てくるのが気になった。
「魔女のお婆さん、あの黒い鳥なんだけど、カラスなの?」
「ああ、あれは魔族さ、火傷して瀕死になっていたので捕まえて手当てしてやったんだ」
「ええ!カラス王子、こんな所にいたの?」
「覗き見の鏡でシアがアレに襲われているのを見つけてね、慌てて向かったらアレが転がってたんだ。逃げても標的にされると言って籠に住み着いてるんだ」
「そうなんだ。あのカラスはフールって呼んでやって」
魔女がそう呼ぶとカラスはギャァギャァ騒いだ。『フール』と言うのは本当に屈辱的な名前みたい。
引っ越して1週間が経った。魔女はこまめに私や小鳥達の世話をしている。小鳥達は捕まえた妖精だそうだ。
憎い魔女だが無言でいると不安で気が狂いそうになり、つい何度も話しかけてしまう。
「お婆さん、バレンシアは鏡を出入り出来るスキルを持っていたの?それとも成り代わりのスキル?」
「スキル?どっちもお前さんの能力みたいだね」
「どっちも私?じゃぁバレンシアの能力って・・・・?」
「あの子には加護があった、その印が金色の目だ」
「かごって何?魔力が強いと目が金色だって聞いたわ」
「片方だけなんて不思議じゃないか。ふつうは両方に現れる。それにあの子の瞳の真ん中には小さな星が輝いていた。お前さんにはそれが無い」
「星・・・ふーん、そこまで完コピは出来なかったのか」
加護は女神の祝福だそうだ。なのに12年以上バレンシアは不幸だった。だから救いの手が差し伸べられた。
救いの手────何かが心に引っかかった。ただ女神様に利用されただけじゃない気がする。それが何なのか、考えても分かんないけどね。
それから、何日過ぎたか分からない。助けは訪れず、絶望的な気持ちになっていた。
ここは獣人国だ。時々お店に怪しげなお客が尋ねて来るが耳や尻尾が生えている。
────この日は怖そうな男がやって来た。
「ババア、戻ってたのか!よくも騙してくれたな」
隻眼のガラの悪い男が魔女の胸倉を掴んで揺すっていた。
二人で喧嘩を始めたがどうやら男に以前売った薬がインチキだったらしい。
「インチキなもんか扱いを間違ったのさ!言い掛かりだよ」
「恥かかせやがって!死にたいんだよな?くそババア!あ⁈」
『あ⁈』と男が言ったところでバッチリ目が合ってしまった。
「あ⁈ なんだこれ目の色が変わってるな」
「見るんじゃないよ!アタシの可愛い小鳥だよ」
「んじゃ、これ貰っとく、代金の返済と慰謝料だ」
男は私が入った鳥籠を持って帰ろうとした。
「ふざけんじゃないよ!金なら払うから戻しとくれ!」
「いや、気に入った。これで勘弁してやるよ。ババアだって今後、裏社会で取引できなきゃ困るだろう?」
私は得体のしれない隻眼の男に気に入られて、封印の籠ごと店から連れ去られてしまった。
男は獣人国の裏ギルドのボスだった。
ボスはアジトに戻ると机の上にあった書類をバサバサッーーと片手で床に落とした。すると手下たちが直ぐに拾って別の机上に書類を置く。
鳥籠を机上にトンッ!と置き「小鳥のエサを買ってこい!」と1番下っ端の気弱そうなワンコ青年に銀貨を投げつけた。
「ボ・・ボス、その鳥はなんですか?」
「ババアが大事にしていたんだ値打ちもんに違いない。ちゃんと世話して逃がすなよ!殺すぞ!」
「は、はい!」
「名前は・・・・ピーコだ」
「ありふれたネーミングセンス!私はユナよ」
「可愛い声で囀るんだなピーコは」
・・・・・ピーピーとしか聞こえていないようだ。
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