異世界転生先は鏡の妖精だった⁉ちょっぴりハードモードです

ミカン♬

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30 裏切者

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「ああ、これでミリアンと暮らせるのね。優しいお兄さまとお父様。学校では素敵な仲間のサイラスにロアン。アーヴィング殿下はルナシアに譲ってあげるわ。私はミリアンとずっと一緒に暮らすの」

「私の偽物だって直ぐにバレるわよ。それよりも私と一緒に行こうよ。そうすれば仲良くなって皆、貴方を受け入れてくれるわ」

「嫌よ!ルナシアみたいに、妖精さんだけ大切にされるんだわ。私は私だけを愛して欲しいの。大丈夫よ、シアの様子はずっと見ていたから上手にマネが出来るわ」

「他人のマネなんかしても虚しいだけよ!」

「貴方は私の成り代わりだったのよ?もう契約は終了よ、ご苦労様でした」

 全て奪われる。私が努力して築いたものを全てバレンシアに奪われる。
「お願いよバレンシア!ここから出して!」

「それはダメだね、やっと手に入れた可愛い妖精だ」
 冗談じゃない!魔女のペットなんて気持ち悪い。

 私とバレンシアの服も交換させられた。

「殿下のネックレスも渡してもらうわ」
「これだけは嫌よ!」
「仕方ないわね、紛失した事にするわ。さようなら妖精さん、ミリアンが待ってるから行くわね!」

「待ってぇえーーーーーーバレンシアの恩知らず!裏切りもの!」

 金網にしがみ付いて叫んだ。────酷い、悔しい!





 四角の鳥籠の中はドールハウスのようだ。ベッドにトイレ、ソファーに机、バスタブもある。
 どうにかして逃げ出せないか、ソファーに座って魔女に話しかけた。

「魔女のお婆さん、私はもう元の大きさに戻れないの?」
「いや、そこから出れば元通りだよ」

「バレンシアはここに戻ってくる?」
「もうあの小娘には用はないね」

「でもこのままだと私はずっとバレンシアの成り代わりよね」
「珍しい目だからそのままでいいさ。妖精には変わりないからね」

「バレンシアとどんな取引をしたの?教えて」
「ああいいとも。可愛い妖精シアの頼みなら」

 魔女は椅子に腰かけるとゆっくりと話し出した。


 バレンシアは当てもなく鏡のトンネルを使い魔女を探し始めた。

 長い時間を経て見つけ出し、最初は『ヘレン叔母様をを消して欲しいの!妖精さんを助けてあげて、私の代わりに虐められているの!』と頼んだそうだ。

 話を聞いた魔女はバレンシアに【覗き見の鏡】を渡した。
 そこに映ったのは既にヘレンを排除し、オーハン先生の塔で暮らしている私の姿。

 やがてオーハン先生の養女となり、家族3人で幸せに暮らす私をバレンシアは羨ましく思うようになった。
 魔女は妖精を、バレンシアは私が持つ全てが欲しくなり、お互いを利用して手に入れる取引をした。

「毎日食い入るようにシアの生活を見つめていたよ。もし交代しなければ全て自分の物だった、と」

「私だって、ただ幸福だったわけじゃない。ヘレンの苛めは辛かったし、学校でも嫌な目にあった。勉強も魔法の訓練も頑張ったのに。バレンシアは大丈夫なの?マネできると言ってたけど、ここで努力していたの?」

「さぁね。アタシも魔法の練習は手伝ってやった」

 あの日私とバレンシアは鏡越しに出会った。屋根裏部屋の鏡は【妖精の潜む鏡】だったのだ。

 鈍い私は魔女の存在に一向に気付かなかった。悔しくも今日気づいたばっかりに魔女に囚われてしまった。
「私が魔女の店に来なかったらどうしたの?」

「バレンシアはいずれ訪れると信じていたね。それまで熱心にシアを観察していたよ」

「会いに来て欲しかった。話し合えば、仲良くなれたと思うのに」

「押し付けた罪悪感もあっただろうね。最後には好きな男が出来て欲が出た。まぁアタシもいつまでも待つ気は無かった。魔女の存在を知らせて、そのうち捕まえるつもりだったさ」

「冷遇されてきたから優しいミリアンに惹かれたのね、もしかして寮の脅迫文はお婆さんの仕業?」

「ひっひっひ、さぁね」

「きっとお父様とミリアンが助けに来てくれるわ」

「フン、お前さんを捕まえたから直ぐに他国に移る予定だ。見つけるのは不可能さ。ああ、夜が明けたね、すこし休むとしようか」

 魔女の姿は奥へと消えた。籠の中で一切魔法は使えない、一生鳥籠の中で暮らすなんて御免だ。

 ミリアンとオーハン先生は塔で四人で暮らそうって言ってくれたのに。
 ずっとバレンシアを幸せにしてあげたいと思っていたのに、彼女は私の不幸を願った。
 全て奪って、アーヴィング殿下はルナシアに譲ると言った。許せない。

「アーヴィング殿下」
 私はネックレスの指輪を握りしめて、助けが来るのを祈った。



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