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26 ルナシアの敗北
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「殿下、お気持ちは嬉しいです。私もお慕いしています」
「なら、どうか婚約を受け入れて欲しい」
殿下の提案は私との婚約だった。
嫉妬と羨望で私は酷い目に遭う、そう考えて父は怒ったのだ。
殿下は婚約者として守る気でいたのだろう、どちらも私を想っての事。
「でも、それはまだお返事できません」
「そうか、今は私の気持ちを知ってくれればそれでいい」
もしも、私自身が殿下の唯一無二だったら──
うぐぐ、私は妖精の自分の素顔を知らない。
そのまま加賀美由奈27歳の顔だったらどうしよう。
「殿下、私がのっぺりした顔のブサイク眼鏡に変貌したらどうしますか?」
「私の気持ちは永遠に変わらない」
私の髪を手に取り殿下は2度目の口付けを落とした。ルナシアが敗北した瞬間だ。
殿下の番がバレンシアなら仕方ない。でもルナシアには譲れない。ううん、本心は誰にも譲りたくない。平静を装っているが、私の心の中は葛藤が渦巻いている。
「シア、これだけは受け取って欲しい」
渡されたのはネックレスで、細い金のチェーンの先にはシルバーのリングが輝いている。
「お守りだと思って身に付けて欲しい」
「お守り?・・・有難うございます」
素直に嬉しかった。持っているアクセサリーは髪飾りぐらいだ。
ネックレスと指輪が傷つかないようにアイテムを使って工夫も凝らしてあり、殿下の細やかな愛情も感じる。
「綺麗。大切にします」
「貸して、つけてあげるよ」
殿下に渡そうとすると護衛から声を掛けられた
「殿下、そろそろお時間です」
無粋な声に促されて、学校ではお互いに無関心を装うと約束して私達は別れた。
二人だけの秘密がまた増え、殿下がより身近になった気がする。浮き立つ恋心を抑えきれない。
寮の部屋に戻れば机上にまた警告文が置いてある。
『お前の正体を知っている』
だからどうした。学校から出て行けと?こんな脅しには絶対に屈しない!
いつも塔に戻った時を狙っている。
バレンシアじゃないよね。こんな事する意味ないもの。これはもうミリアンに相談しよう。
アーヴィング殿下も、あの重い告白は嘘だったように私を無視した。
望んだことだけど、悲しいくらい無視された。
新たに側近を三名置いて厳しくルナシアを遠ざけ、それでも殿下に縋っているルナシアの姿は気の毒に見える。
父には『バレンシア本人が見つかるまでは殿下との婚約は認めない』と言われた。
当然だ、だってどっちが本命か、まだ分からないもの。
お守りのネックレスを見せると父とミリアンは嫌な顔をした。
「そんな執着物、捨ててしまいなさい!」
父になんと言われても、無理。だってこれは大事な宝物だから。
不気味な警告文をミリアンに見せると、対策用の呪文を教えてくれた。
管理人にも許可を得て、ドアに魔法を掛けることになった。
私以外の人物がドアを開けようとすると、手が凍り付いてドアノブから離れないと言うモノだ。
それ以降は警告文は来なくなった。
***
《水色リボン=平民》が常識な中、バレンシアがオーハン特級魔法伯の養女であると広く周知され、生徒達の私への関心は薄れていった。
平民だとやりたい放題だったのに、他愛もない人たちだ。
学園生活に集中できてダンジョンも9階まで進み、間もなく前期試験が始まろうとしていた。
ロアンがグレンから前期の過去問題を借りてきたので、仲良くメンバー4人で試験勉強を頑張った。
試験勉強に励む中、癒しはネーロだ。
ネーロはもう探す場所が無いと言ってバレンシア捜索は投げている。
「きっと遠くにいるんだ」
「そうかもね。ネーロはずっと王都に居たんだよね。どうやって過ごしてたの?」
「別になにも。見つけてくれるのを待ってた」
「お父さんのところに戻りたい?」
「ううん、兄弟に殺されるだけ。あるじの傍がいい」
「カラスにフールの名前をあげたから、今頃は逃げ回ってるかもね」
「あはははは」
初めてネーロが笑った。
「名前を付けたけど、私とカラスは契約してないよね?」
「お互い受け入れないと無効」
良かった。
***
前期試験が終わっていそいそと帰宅準備を始める。
郵便受けにグレンから連絡が入っていた。
公爵が留守になる日を知らせてくれ、鏡も塔まで運んでくれると書いてあったので助かる。大きな鏡をどうやって運ぼうか困っていたのだ。
支度が終わって部屋を出ようとすると、また視線を感じた。不安にさせる視線だ。
管理人さんに挨拶を済ませて急いでミリアンが待つ塔に戻った。
「なら、どうか婚約を受け入れて欲しい」
殿下の提案は私との婚約だった。
嫉妬と羨望で私は酷い目に遭う、そう考えて父は怒ったのだ。
殿下は婚約者として守る気でいたのだろう、どちらも私を想っての事。
「でも、それはまだお返事できません」
「そうか、今は私の気持ちを知ってくれればそれでいい」
もしも、私自身が殿下の唯一無二だったら──
うぐぐ、私は妖精の自分の素顔を知らない。
そのまま加賀美由奈27歳の顔だったらどうしよう。
「殿下、私がのっぺりした顔のブサイク眼鏡に変貌したらどうしますか?」
「私の気持ちは永遠に変わらない」
私の髪を手に取り殿下は2度目の口付けを落とした。ルナシアが敗北した瞬間だ。
殿下の番がバレンシアなら仕方ない。でもルナシアには譲れない。ううん、本心は誰にも譲りたくない。平静を装っているが、私の心の中は葛藤が渦巻いている。
「シア、これだけは受け取って欲しい」
渡されたのはネックレスで、細い金のチェーンの先にはシルバーのリングが輝いている。
「お守りだと思って身に付けて欲しい」
「お守り?・・・有難うございます」
素直に嬉しかった。持っているアクセサリーは髪飾りぐらいだ。
ネックレスと指輪が傷つかないようにアイテムを使って工夫も凝らしてあり、殿下の細やかな愛情も感じる。
「綺麗。大切にします」
「貸して、つけてあげるよ」
殿下に渡そうとすると護衛から声を掛けられた
「殿下、そろそろお時間です」
無粋な声に促されて、学校ではお互いに無関心を装うと約束して私達は別れた。
二人だけの秘密がまた増え、殿下がより身近になった気がする。浮き立つ恋心を抑えきれない。
寮の部屋に戻れば机上にまた警告文が置いてある。
『お前の正体を知っている』
だからどうした。学校から出て行けと?こんな脅しには絶対に屈しない!
いつも塔に戻った時を狙っている。
バレンシアじゃないよね。こんな事する意味ないもの。これはもうミリアンに相談しよう。
アーヴィング殿下も、あの重い告白は嘘だったように私を無視した。
望んだことだけど、悲しいくらい無視された。
新たに側近を三名置いて厳しくルナシアを遠ざけ、それでも殿下に縋っているルナシアの姿は気の毒に見える。
父には『バレンシア本人が見つかるまでは殿下との婚約は認めない』と言われた。
当然だ、だってどっちが本命か、まだ分からないもの。
お守りのネックレスを見せると父とミリアンは嫌な顔をした。
「そんな執着物、捨ててしまいなさい!」
父になんと言われても、無理。だってこれは大事な宝物だから。
不気味な警告文をミリアンに見せると、対策用の呪文を教えてくれた。
管理人にも許可を得て、ドアに魔法を掛けることになった。
私以外の人物がドアを開けようとすると、手が凍り付いてドアノブから離れないと言うモノだ。
それ以降は警告文は来なくなった。
***
《水色リボン=平民》が常識な中、バレンシアがオーハン特級魔法伯の養女であると広く周知され、生徒達の私への関心は薄れていった。
平民だとやりたい放題だったのに、他愛もない人たちだ。
学園生活に集中できてダンジョンも9階まで進み、間もなく前期試験が始まろうとしていた。
ロアンがグレンから前期の過去問題を借りてきたので、仲良くメンバー4人で試験勉強を頑張った。
試験勉強に励む中、癒しはネーロだ。
ネーロはもう探す場所が無いと言ってバレンシア捜索は投げている。
「きっと遠くにいるんだ」
「そうかもね。ネーロはずっと王都に居たんだよね。どうやって過ごしてたの?」
「別になにも。見つけてくれるのを待ってた」
「お父さんのところに戻りたい?」
「ううん、兄弟に殺されるだけ。あるじの傍がいい」
「カラスにフールの名前をあげたから、今頃は逃げ回ってるかもね」
「あはははは」
初めてネーロが笑った。
「名前を付けたけど、私とカラスは契約してないよね?」
「お互い受け入れないと無効」
良かった。
***
前期試験が終わっていそいそと帰宅準備を始める。
郵便受けにグレンから連絡が入っていた。
公爵が留守になる日を知らせてくれ、鏡も塔まで運んでくれると書いてあったので助かる。大きな鏡をどうやって運ぼうか困っていたのだ。
支度が終わって部屋を出ようとすると、また視線を感じた。不安にさせる視線だ。
管理人さんに挨拶を済ませて急いでミリアンが待つ塔に戻った。
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