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25 どっちなの?
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「ネーロとやら、シアから離れなさい」
ネーロは、黒猫に戻ると私の膝で丸くなった。
「この子は害はありません。ただの猫です」
「魔力は低いみたいですね。カラス王子よりは遥かに弱そうだ」
「私はバレンシア本人じゃありません。養女の件は・・その・・白紙ですよね」
「どうしてそうなるんですか。私達が迎え入れたのはシア、貴方本人ですよ。それにしても問題が多いね。バレンシアの行方、魔族との関わり、今後の行動、アーヴィング殿下の要望」
「殿下の要望は?」
「厄介な事です。シアは気にしなくていいよ、師匠が話をつけるので、それよりバレンシアですね」
グレンに頼んだ件も話すと、離れ屋敷にはミリアンも同伴して鏡の保護を手伝うと言ってくれた。
「師匠には私から話しておきます。みんなで相談して解決していきましょう」
ミリアンに打ち明けて気持ちが軽くなった、嬉しい。
「お願いします。私一人だと迷ってしまって」
重い悩みをミリアンが半分引き受けてくれて、肩の力が抜けた。
*
翌日は父もミリアンも特に変わった様子も無く私に接してくれた。寮に帰る間際「シア、バレンシアが見つかったら4人で暮らせば良い。私が死んでもミリアンがいるからな、ほっほっほ」と笑った。
父を抱きしめて「長生きして下さいねお父様」と言えば「まだまだ死なんよ」と、戸惑うようにそっと抱きしめてくれる。
嬉しい。異世界に転生して初めて心から嬉しいと思えた。
夕刻、寮に着くとアーヴィング殿下の護衛騎士が立っており「こちらに」と寮の裏手に案内され、そこにはアーヴィング殿下が待っていた。
大木の陰から現れた殿下は肩まで伸びた髪を後ろに括って、惚れ惚れするほど完璧なイケメンだ。
「シア、腕を怪我したのか?」
「捻挫しただけで直ぐに治ります。なにか御用ですか?」
「シア、オーハン卿から話を聞いただろうか?」
「話?」
「そうだ。シアを守ると約束したよね」
「はい、警告して下さって。有難うございました」
「それだけでは守り切れないと思いオーハン卿に提案したのだが、怒らせてしまった」
「お父様が怒ったのですか?」
「オーハン卿にシアには二度と近づかないようにと言われたんだ」
でも殿下は会いに来た。よほど重要な話のようだ。
「殿下・・・また生徒に誤解されたら困るし、ルナシア様の事もありますから、距離を取るのは当然かと」
「当然なのか?シアは私が近づくと迷惑だろうか」
「はい!」
殿下は傷ついた顔をされたが私の本心だ。絶対に距離を取った方がいい。
「そうだな今は距離を取るべきだな」
「はい・・・」
「だが私の気持ちを分かって欲しい。私はシアが好きだ。君が他の誰かに心を奪われたら、きっと生きていけない」
「えっ!」
「私はシア以外の女性を愛せない」
すごく重い愛を告白された。私だって恋に憧れる女性だもの、嬉しくて胸が弾んだ。
今の学生生活があるのは殿下がヘレンを断罪してくれたからだ。その感謝の気持ちもある。
グレンの言葉が蘇った。
『君が平穏な学校生活を望むのは難しいかもしれないぞ』
殿下は始祖返り、つまり────
「バレンシアは私の唯一無二だ」
番と言う事か、まてよ、喜べないぞ。だって私はコピーだもの。
本物の番は鏡の中だ。
「殿下は私の正体をご存じですよね?」
「ハサウェイ公爵の実子で今はオーハン卿の養女だな」
「もっと重大な秘密です」
声を潜めて周りを窺う、護衛は離れているし誰もいない。
「秘密?・・・君が鏡の中に入ったこと?」
「そうです・・・妖精の件です」
「ようせい?どういう意味だろうか?」
殿下は気づいていない?
「私を2度<鑑定>しましたよね。何を調べたんですか?」
「私が見たのは名前と年齢だけだ。一瞬だったので詳しくは見ていない、2度目は弾かれたからね」
────殿下に妖精だとバレていなかった!
ブス眼鏡を外してオッドアイを殿下に見せた。
「瞳のせいで忌み子と言われます、殿下は平気ですか?」
「公爵はどうかしている。魔力が高いと瞳が黄金に輝く、バレンシアは片方にだけそれが現れたんだろう。その瞳を誇ればいい」
私の頬を指で触れて、殿下のお顔が近い。
「あ、あ・・あの殿下、嬉しいですけど・・近いです」
一方後ろに距離を取って、私は眼鏡をかけた。
殿下の言葉をバレンシアに届けてあげたい。
さてここで問題だ、殿下の番はバレンシアなのか、私自身なのか。
どっちなの?
ネーロは、黒猫に戻ると私の膝で丸くなった。
「この子は害はありません。ただの猫です」
「魔力は低いみたいですね。カラス王子よりは遥かに弱そうだ」
「私はバレンシア本人じゃありません。養女の件は・・その・・白紙ですよね」
「どうしてそうなるんですか。私達が迎え入れたのはシア、貴方本人ですよ。それにしても問題が多いね。バレンシアの行方、魔族との関わり、今後の行動、アーヴィング殿下の要望」
「殿下の要望は?」
「厄介な事です。シアは気にしなくていいよ、師匠が話をつけるので、それよりバレンシアですね」
グレンに頼んだ件も話すと、離れ屋敷にはミリアンも同伴して鏡の保護を手伝うと言ってくれた。
「師匠には私から話しておきます。みんなで相談して解決していきましょう」
ミリアンに打ち明けて気持ちが軽くなった、嬉しい。
「お願いします。私一人だと迷ってしまって」
重い悩みをミリアンが半分引き受けてくれて、肩の力が抜けた。
*
翌日は父もミリアンも特に変わった様子も無く私に接してくれた。寮に帰る間際「シア、バレンシアが見つかったら4人で暮らせば良い。私が死んでもミリアンがいるからな、ほっほっほ」と笑った。
父を抱きしめて「長生きして下さいねお父様」と言えば「まだまだ死なんよ」と、戸惑うようにそっと抱きしめてくれる。
嬉しい。異世界に転生して初めて心から嬉しいと思えた。
夕刻、寮に着くとアーヴィング殿下の護衛騎士が立っており「こちらに」と寮の裏手に案内され、そこにはアーヴィング殿下が待っていた。
大木の陰から現れた殿下は肩まで伸びた髪を後ろに括って、惚れ惚れするほど完璧なイケメンだ。
「シア、腕を怪我したのか?」
「捻挫しただけで直ぐに治ります。なにか御用ですか?」
「シア、オーハン卿から話を聞いただろうか?」
「話?」
「そうだ。シアを守ると約束したよね」
「はい、警告して下さって。有難うございました」
「それだけでは守り切れないと思いオーハン卿に提案したのだが、怒らせてしまった」
「お父様が怒ったのですか?」
「オーハン卿にシアには二度と近づかないようにと言われたんだ」
でも殿下は会いに来た。よほど重要な話のようだ。
「殿下・・・また生徒に誤解されたら困るし、ルナシア様の事もありますから、距離を取るのは当然かと」
「当然なのか?シアは私が近づくと迷惑だろうか」
「はい!」
殿下は傷ついた顔をされたが私の本心だ。絶対に距離を取った方がいい。
「そうだな今は距離を取るべきだな」
「はい・・・」
「だが私の気持ちを分かって欲しい。私はシアが好きだ。君が他の誰かに心を奪われたら、きっと生きていけない」
「えっ!」
「私はシア以外の女性を愛せない」
すごく重い愛を告白された。私だって恋に憧れる女性だもの、嬉しくて胸が弾んだ。
今の学生生活があるのは殿下がヘレンを断罪してくれたからだ。その感謝の気持ちもある。
グレンの言葉が蘇った。
『君が平穏な学校生活を望むのは難しいかもしれないぞ』
殿下は始祖返り、つまり────
「バレンシアは私の唯一無二だ」
番と言う事か、まてよ、喜べないぞ。だって私はコピーだもの。
本物の番は鏡の中だ。
「殿下は私の正体をご存じですよね?」
「ハサウェイ公爵の実子で今はオーハン卿の養女だな」
「もっと重大な秘密です」
声を潜めて周りを窺う、護衛は離れているし誰もいない。
「秘密?・・・君が鏡の中に入ったこと?」
「そうです・・・妖精の件です」
「ようせい?どういう意味だろうか?」
殿下は気づいていない?
「私を2度<鑑定>しましたよね。何を調べたんですか?」
「私が見たのは名前と年齢だけだ。一瞬だったので詳しくは見ていない、2度目は弾かれたからね」
────殿下に妖精だとバレていなかった!
ブス眼鏡を外してオッドアイを殿下に見せた。
「瞳のせいで忌み子と言われます、殿下は平気ですか?」
「公爵はどうかしている。魔力が高いと瞳が黄金に輝く、バレンシアは片方にだけそれが現れたんだろう。その瞳を誇ればいい」
私の頬を指で触れて、殿下のお顔が近い。
「あ、あ・・あの殿下、嬉しいですけど・・近いです」
一方後ろに距離を取って、私は眼鏡をかけた。
殿下の言葉をバレンシアに届けてあげたい。
さてここで問題だ、殿下の番はバレンシアなのか、私自身なのか。
どっちなの?
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