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24 告白
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走りながら恐竜ティラノサウルスのゴーレムを作り「倒せ!」と命令し、私は風魔法で城壁に向かった。
ゴーレムは恐らく盾にしかならない。
男が練りだした黒い魔力がティラノサウルスを直撃し、木っ端みじんに砕けるのがみえた。
「全然勝てる気がしない、いやだ、怖い!」
王都に逃げ込もうと考えたが、街道を行く人達が危険に晒されたら?
一瞬のためらいが私のスピードを緩め、すかさずカラスに変貌した男は直ぐに追いつき、私の前に立ち塞がった。
「くっそ!気配が完全に消えた。フールはどこだ、ここで失敗する訳にはいかないんだ!」
「し…知らない」
私がネーロを鏡の中に逃がしたのにまだ気づいていない。
「フール、出てこい!女を殺すぞ!」
男の腕が伸びて私に触れようとしている──まだ陽は高い・・・
────怖い!助けて!ミリアン!
恐怖で魔法が解け、体が空中から墜落し男の手から偶然逃れた──と同時に火の玉が男を包み、浮いていた男の体は地面に落下していった。
「早く、こちらに!」
「ミリアン」
九死に一生を得て私はミリアンの後ろに逃げ込みバクバクする心臓を押さえた。
「クッ・・・貴様!ただでは済まないぞ!!!」
男の黒い服が焼け焦げて、所々に褐色の肌が見えている。
「ファイヤーボール!」
男はミリアンの火魔法をボスボスと受けてノックバックした。
「なっ!!」
「ファイヤーボール!」
「ぎゃっ!!やめろ、お、俺は魔族の王子だぞ」
「ファイヤーボール!」
「ぐわぁぁあーーー」
初級火魔法に翻弄されるコイツはもしかして弱いのか?
違う、ミリアンの魔力が桁違いなのだ。さすが特級魔法師と妖精のハーフ。
「ぐっ!!!」
耐え切れず自称王子はカラスに変貌して飛んで逃げようと羽を広げた。
「フレイムボム!」
「カハッ!」
炎に包まれたカラスは焦げて煙をあげ、動かなくなった。
「まだ生きていますね」
足でカラスを踏みつけ、ミリアンは私を見た。
「怖かった・・・・」
もう少しで私もネーロも殺される所だった。
グッタリしているカラスはネーロの兄弟だろう。
「失敗したわよね!今日から貴方がフールよ!弱い貴方も今日から標的ね!」
するとカラスは渾身の力で暴れてミリアンの踏み付けから逃げ出し、ズブズブと木の影に溶けていった。
「あ、逃げた・・・」
「報復で何体も襲って来るより、逃がした方が良いでしょう。大した相手ではないですから」
「カラス王子は凄く強かったですよ?」
「落ち着いて対処すれば戦えない敵では無かったはずです。シアはもう一度鍛え直しですね」
「恐怖心に負けてしまいました」
「対人戦の経験が無いから仕方ないけど・・・・シア!」
「ひゃい!」「怪我は?」
「落下した時に腕を捻挫しただけです」
「はぁ~」と一度ミリアンは溜息をつき、私に真剣な顔を向けた。
「約束を破りましたね。危険な事はしないようにと、僕は言いましたよね」
「ごめんなさい」
ミリアンの低い声が魔族並みに怖い。
「ギルドに行くなんて言うから心配で見に来たんですよ」
「うぅ・・ぅ・・有難うございました、お兄様。ぐすっ・・・」
いつものミリアンならここで許してくれるが、今回は甘くなかった。
「戻って詳しく話しを聞きましょう。魔族に襲われるなんて、金輪際もう隠し事はナシですからね!」
「うぅぅ分かりました」
塔に戻るとミリアンから放たれる冷気に耐えられず、腕の手当てを受けながら真実を全て告白した。妖精であることもネーロと主従関係にあることも。
「妖精に転生して鏡に入れる、バレンシアに成り代わった・・・透明人間は嘘ですね」
「はい、ごめんなさい」
「魔族の王子がシアの使い魔?召喚できますか?」
「はい、ネーロ!」
「ニャン!!!」
ネーロを召喚すると私に飛びついてきた。
「怖かったね、もう大丈夫これからは王都の外には出さないからね」
ネーロをヨシヨシしていると人型に変貌して私をぎゅっと抱き締めた。
「あるじ、弱くてごめん。守れなかった。きっと僕は忘れられて、兄弟に狙われるなんて思わなくて」
「ううん、守ってくれたよ、ありがとう」
「兄はどうなったの?」
「ミリアンが追っ払ってくれたの、逃げたよ」
「よかった」
私達はしばし抱き合って、安堵するネーロの背中を無心で撫でてやった。
ゴーレムは恐らく盾にしかならない。
男が練りだした黒い魔力がティラノサウルスを直撃し、木っ端みじんに砕けるのがみえた。
「全然勝てる気がしない、いやだ、怖い!」
王都に逃げ込もうと考えたが、街道を行く人達が危険に晒されたら?
一瞬のためらいが私のスピードを緩め、すかさずカラスに変貌した男は直ぐに追いつき、私の前に立ち塞がった。
「くっそ!気配が完全に消えた。フールはどこだ、ここで失敗する訳にはいかないんだ!」
「し…知らない」
私がネーロを鏡の中に逃がしたのにまだ気づいていない。
「フール、出てこい!女を殺すぞ!」
男の腕が伸びて私に触れようとしている──まだ陽は高い・・・
────怖い!助けて!ミリアン!
恐怖で魔法が解け、体が空中から墜落し男の手から偶然逃れた──と同時に火の玉が男を包み、浮いていた男の体は地面に落下していった。
「早く、こちらに!」
「ミリアン」
九死に一生を得て私はミリアンの後ろに逃げ込みバクバクする心臓を押さえた。
「クッ・・・貴様!ただでは済まないぞ!!!」
男の黒い服が焼け焦げて、所々に褐色の肌が見えている。
「ファイヤーボール!」
男はミリアンの火魔法をボスボスと受けてノックバックした。
「なっ!!」
「ファイヤーボール!」
「ぎゃっ!!やめろ、お、俺は魔族の王子だぞ」
「ファイヤーボール!」
「ぐわぁぁあーーー」
初級火魔法に翻弄されるコイツはもしかして弱いのか?
違う、ミリアンの魔力が桁違いなのだ。さすが特級魔法師と妖精のハーフ。
「ぐっ!!!」
耐え切れず自称王子はカラスに変貌して飛んで逃げようと羽を広げた。
「フレイムボム!」
「カハッ!」
炎に包まれたカラスは焦げて煙をあげ、動かなくなった。
「まだ生きていますね」
足でカラスを踏みつけ、ミリアンは私を見た。
「怖かった・・・・」
もう少しで私もネーロも殺される所だった。
グッタリしているカラスはネーロの兄弟だろう。
「失敗したわよね!今日から貴方がフールよ!弱い貴方も今日から標的ね!」
するとカラスは渾身の力で暴れてミリアンの踏み付けから逃げ出し、ズブズブと木の影に溶けていった。
「あ、逃げた・・・」
「報復で何体も襲って来るより、逃がした方が良いでしょう。大した相手ではないですから」
「カラス王子は凄く強かったですよ?」
「落ち着いて対処すれば戦えない敵では無かったはずです。シアはもう一度鍛え直しですね」
「恐怖心に負けてしまいました」
「対人戦の経験が無いから仕方ないけど・・・・シア!」
「ひゃい!」「怪我は?」
「落下した時に腕を捻挫しただけです」
「はぁ~」と一度ミリアンは溜息をつき、私に真剣な顔を向けた。
「約束を破りましたね。危険な事はしないようにと、僕は言いましたよね」
「ごめんなさい」
ミリアンの低い声が魔族並みに怖い。
「ギルドに行くなんて言うから心配で見に来たんですよ」
「うぅ・・ぅ・・有難うございました、お兄様。ぐすっ・・・」
いつものミリアンならここで許してくれるが、今回は甘くなかった。
「戻って詳しく話しを聞きましょう。魔族に襲われるなんて、金輪際もう隠し事はナシですからね!」
「うぅぅ分かりました」
塔に戻るとミリアンから放たれる冷気に耐えられず、腕の手当てを受けながら真実を全て告白した。妖精であることもネーロと主従関係にあることも。
「妖精に転生して鏡に入れる、バレンシアに成り代わった・・・透明人間は嘘ですね」
「はい、ごめんなさい」
「魔族の王子がシアの使い魔?召喚できますか?」
「はい、ネーロ!」
「ニャン!!!」
ネーロを召喚すると私に飛びついてきた。
「怖かったね、もう大丈夫これからは王都の外には出さないからね」
ネーロをヨシヨシしていると人型に変貌して私をぎゅっと抱き締めた。
「あるじ、弱くてごめん。守れなかった。きっと僕は忘れられて、兄弟に狙われるなんて思わなくて」
「ううん、守ってくれたよ、ありがとう」
「兄はどうなったの?」
「ミリアンが追っ払ってくれたの、逃げたよ」
「よかった」
私達はしばし抱き合って、安堵するネーロの背中を無心で撫でてやった。
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