異世界転生先は鏡の妖精だった⁉ちょっぴりハードモードです

ミカン♬

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23 カラスの襲撃

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「ギルドって、シアは冒険者になるつもりですか?」

 塔に戻り、明日はギルドに行くとミリアンに告げると歓迎されない返事。

「ギルドカードを作るだけです」
「危険な事はしないですよね?」

 絶対に危険な事はしないと約束してミリアンは許可してくれた。

「お父様は?また出張ですか」
「あ・・・ちょっと王宮に行ってます」
「王宮ですか」

「ところで学校で、殿下はシアを守ってくれましたか?」
「ええ、きちんと対処してくれて噂も嫌がらせも減りました」

 寮の食堂では時々『ブサイク眼鏡』と囁きが聞こえるが、実際ブス眼鏡着用だもの。
 眼鏡を外すわけにはいかない。外せば『忌み子』って言うに決まっている。

「なら良かった。でも共通語はしっかりマスターして下さいね」
「はい、大丈夫です」

     *


 翌日、王都の中心広場に行くとロアンが待ってて、サイラスとポールも直ぐにやって来た。
 ギルドの受付で手続き終えて私達は冒険者カードを手に入れた。

 それから初めて王都の外に出た。城壁に囲まれて女神フローリスの加護を受けたこの国の王都は平和で安全な場所だ。王都の外は街道となり郊外に続く。東西南北を屈強な辺境伯の騎士団に守られている。


「初心者用の安全なダンジョンに行ってみるか?」
 ロアンに誘われて近くのダンジョンに潜ってみた。

 1階がスライムだけの誰もいないダンジョンだった。

「本当に初心者用だね、魔法の練習でもしていこうか?」
 サイラスの提案で魔法の訓練がてらスライムを倒し、王都の街に戻ると私達は解散した。


 解散後、急いでスライムダンジョンに戻りネーロを召喚。
 王都の外に出られたのをネーロはとても驚いた。

「王都の外に出られるとは思わなかった。裏の世界でも王都の外には出られなかったんだ」
「私が召喚すれば王都から出られるのね。ネーロの魔法を見せて」

「僕は闇魔法」
 土を捏ねるようにネーロは影を自在に操れた。
 影は矢に形を変えてスライムにポスポスと刺さっていく。

「この魔法で私をガードしてくれてたのね」
「うん」

 黒い影に身を置けばネーロの姿は消えた。
「影に潜むこともできるんだ。他には?」

「今はこれだけ、前は王都を消滅出来る力があった」
「なんで王都を狙ったの?」

「お父さんに名前を返してもらうため」
「フールじゃないの?何て名前だったの?」
「忘れた」

 ネーロは都合が悪いと何でも忘れるのだ。
 お父さんを怒らせて名前をフールに変更された。そこまでは分かった。

「なんでお父さんは怒ったの?」

「倒せると思った。挑んだら半殺しにされた」

 魔王に挑んだのか、うわぁ・・・フールだな。
 でも結構な実力者だったようだ。女神に封印されて良かったのか?

「そっか、魔法も見せてもらったし、帰ろうか」

 二人でダンジョンを出た所で、視線を感じた。
 辺りを見回すと大きなカラスが一匹、低空を旋回している。


「あるじ、逃げろ!」
 急にネーロが私を突き飛ばして走り出し、尻餅をついて私は唖然としていた。

「ネーロ?」「逃げろ!」

 何が起こったのか分からず立ち上がると、ネーロに無数の黒い矢が落とされ、ネーロの姿は消えた。

「攻撃されたの?」


「おい、お前!フールの仲間か?」

 いきなり男が現れて乱暴に私の髪を掴んだ。顔を近づけて私の顔を覗き込む男はネーロに似ていた。

「そ、そっちが仲間じゃないの?」
「フールは俺達の標的だ、ずっと探していた。どこに潜伏していたんだ」

「標的?」
「生き残った者だけが継承者に選ばれる、グッ!!」

 男は私を地面に叩きつけると振り返った。その背には数本の黒矢が刺さっている。
「フールのくせに生意気な、次は確実に殺す!」

 男は大きな黒い魔力を練り始め、どんどん膨れ上がっていく。

「あるじ、逃げろ!・・・さらばだ」
 ネーロは覚悟を決めたように動かない。

 私は急いでポケットから手鏡を出した。
「ネーロ帰れ!」

 ネーロは猫に戻ると地面に吸い込まれるように消えていった。

「はっ⁉・・・お前は何をした⁉」

 ネーロが消えて男の標的がこっちに変更された。とにかく逃げないと殺されそうだ。

「よ、弱い者いじめは最低です!」
「弱い奴から消されていく、それが暗黙のルールだ!」

 切羽詰まって、脳をフル回転させた結果────

「だめ!フール!逃げて!」
 大声で叫んで、男が振り返った隙に私は走り出した...



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