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22 始祖返り
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教室に向かうとロアンが駆け寄ってきた。
「生徒会長と仲良く登校か、驚いたぞ」
「根も葉もない噂を対処すると言ってくれたの」
「そうか!良かったな。まぁ・・・あんな噂信じる馬鹿もいないよな」
大きな声でロアンは1-Aの噂好きの令嬢たちを牽制した。
担任の教師が朝から注意事項を伝えた。
「最近悪質な根も葉もない噂が蔓延しています。
王族のアーヴィング第二王子殿下は学友となられて、挨拶は簡素化して良いと仰せになりましたが、不敬な態度や不用意にお名前を口に出すことは決して許されません。
また人を貶める行為も決して許されません。
今後警告に反する場合は相当な処分を受けるので心得ておくように。悪意ある噂を口にした場合も処罰───」
これが殿下の対処方法のようだ。地味だけど、一応抑制にはなるだろう。
生徒会からの掲示板にも同じ警告文が書かれた紙が貼られた。
お陰で私は以前のような嫌がらせは無くなり、クラスメートから遠巻きにされて、腫れもの扱いとなった。
無理に仲良くしてくれ無くて構わない。前世からそういう性格だ。
「ロアン達がいるから女友達が出来なくたって平気だもん」
「まぁ、高位貴族に妬まれているシアに近づく猛者令嬢はいないよな」
「なんで妬まれるのよ」
「水色リボンの宿命だ。俺だっていい顔されないぞ。ここだけの話1-Sの奴らより俺は優秀だ」
「リボンの弊害は考えてなかったわ」
「それしかないだろう?他に何があるんだよ」
「ん・・・」
昼休みに図書室で獣人について調べてみた。
『始祖返り』 帰先遺伝。
何代も前の先祖がもっていた遺伝上の形質が、突然その子孫のある個体に現れる。
王家の獣人の血は婚姻を繰り返し薄められてきた、しかしアーヴィング殿下は獣人が持っていた遺伝上の形質を色濃く持って生まれたようだ。
これが私の学生生活にどんな悪影響があると言うのか。
「モフモフ尻尾とケモノ耳、触ってみたい・・・」
頭の中は可愛い犬や猫、ウサギの獣人が浮かんでいた。
生粋の人間の王族はその血統を重んじるあまり近親婚が重ねられてきた。
結果、今は王位継承権を持つ男性は王太子殿下を含めて三名だ。
生命力の強い獣人血筋の王族は多数存在するがアーヴィング殿下同様、王位継承権は無い。
アーヴィング殿下の母親は獣人の血を引く第二側妃である。美しいお方としか知られていない。
今年で22歳の王太子殿下は他国との王女の婚姻が決定しているが、王太子殿下の病弱が懸念され遅延している。
早く婚姻を果たし跡継ぎが生まれるといいのにと他人事のように考えていた。
教室に戻るとロアンとサイラス、ポールが待っていた。
「シア、次はダンジョンだぞ、準備して早く行こう」
「今日は6階だね。我々が1番進んでいるみたいだね」
ロアンとサイラスはすっかり仲良くなって、無口なポールが二人の後を付いてゆく。
6階はオークやコボルト、ゴブリンなど人型の魔物が出てくる。甘く見ると痛い目に合うので皆真剣だ。
「防御魔法も使った方がいいな。前衛に騎士の盾役がいればもっと楽なんだけど」
「防御魔法は得意なんだよ、任せて」
ポールがサイラスに告げると、私にペンとレポート用紙を渡した。
できれば最後までこのメンバーで最終階までクリアーしたい。
5階層を突破すると無条件にギルドでE判定を貰える。
次の休みにはロアン達とギルドに行く約束をしたので楽しみだ。
外のダンジョンにも行ってみたい。
「ネーロ!」
「ニャン」
「外のダンジョンに行けるようになったら魔法を見せてね」
「王都の外?」
「そうよ?」
「女神の罰を受けてから鏡の中でも王都の外に出られない。シアは僕を外に出せる?」
「そうなんだ、試してみないと分かんないけど、出られるといいね」
「うん・・・」
余り嬉しくは無さそうなネーロ。
でも私はロアンと出かける週末休みが楽しみだ。
学校内でルナシアがアーヴィング殿下を執拗に追いかける姿を見かけるようになった。
グレンがルナシアを諫める現場も見かける。
殿下はルナシアが友人達を利用したのに対し怒っている。
それをルナシアは理解したのか、私への攻撃は一時停止されている。
痴態を晒すルナシアの評判は、相変わらず殿下とのロミジュリ説が根強く蔓延り、彼女の悪評は決して流れない。
「生徒会長と仲良く登校か、驚いたぞ」
「根も葉もない噂を対処すると言ってくれたの」
「そうか!良かったな。まぁ・・・あんな噂信じる馬鹿もいないよな」
大きな声でロアンは1-Aの噂好きの令嬢たちを牽制した。
担任の教師が朝から注意事項を伝えた。
「最近悪質な根も葉もない噂が蔓延しています。
王族のアーヴィング第二王子殿下は学友となられて、挨拶は簡素化して良いと仰せになりましたが、不敬な態度や不用意にお名前を口に出すことは決して許されません。
また人を貶める行為も決して許されません。
今後警告に反する場合は相当な処分を受けるので心得ておくように。悪意ある噂を口にした場合も処罰───」
これが殿下の対処方法のようだ。地味だけど、一応抑制にはなるだろう。
生徒会からの掲示板にも同じ警告文が書かれた紙が貼られた。
お陰で私は以前のような嫌がらせは無くなり、クラスメートから遠巻きにされて、腫れもの扱いとなった。
無理に仲良くしてくれ無くて構わない。前世からそういう性格だ。
「ロアン達がいるから女友達が出来なくたって平気だもん」
「まぁ、高位貴族に妬まれているシアに近づく猛者令嬢はいないよな」
「なんで妬まれるのよ」
「水色リボンの宿命だ。俺だっていい顔されないぞ。ここだけの話1-Sの奴らより俺は優秀だ」
「リボンの弊害は考えてなかったわ」
「それしかないだろう?他に何があるんだよ」
「ん・・・」
昼休みに図書室で獣人について調べてみた。
『始祖返り』 帰先遺伝。
何代も前の先祖がもっていた遺伝上の形質が、突然その子孫のある個体に現れる。
王家の獣人の血は婚姻を繰り返し薄められてきた、しかしアーヴィング殿下は獣人が持っていた遺伝上の形質を色濃く持って生まれたようだ。
これが私の学生生活にどんな悪影響があると言うのか。
「モフモフ尻尾とケモノ耳、触ってみたい・・・」
頭の中は可愛い犬や猫、ウサギの獣人が浮かんでいた。
生粋の人間の王族はその血統を重んじるあまり近親婚が重ねられてきた。
結果、今は王位継承権を持つ男性は王太子殿下を含めて三名だ。
生命力の強い獣人血筋の王族は多数存在するがアーヴィング殿下同様、王位継承権は無い。
アーヴィング殿下の母親は獣人の血を引く第二側妃である。美しいお方としか知られていない。
今年で22歳の王太子殿下は他国との王女の婚姻が決定しているが、王太子殿下の病弱が懸念され遅延している。
早く婚姻を果たし跡継ぎが生まれるといいのにと他人事のように考えていた。
教室に戻るとロアンとサイラス、ポールが待っていた。
「シア、次はダンジョンだぞ、準備して早く行こう」
「今日は6階だね。我々が1番進んでいるみたいだね」
ロアンとサイラスはすっかり仲良くなって、無口なポールが二人の後を付いてゆく。
6階はオークやコボルト、ゴブリンなど人型の魔物が出てくる。甘く見ると痛い目に合うので皆真剣だ。
「防御魔法も使った方がいいな。前衛に騎士の盾役がいればもっと楽なんだけど」
「防御魔法は得意なんだよ、任せて」
ポールがサイラスに告げると、私にペンとレポート用紙を渡した。
できれば最後までこのメンバーで最終階までクリアーしたい。
5階層を突破すると無条件にギルドでE判定を貰える。
次の休みにはロアン達とギルドに行く約束をしたので楽しみだ。
外のダンジョンにも行ってみたい。
「ネーロ!」
「ニャン」
「外のダンジョンに行けるようになったら魔法を見せてね」
「王都の外?」
「そうよ?」
「女神の罰を受けてから鏡の中でも王都の外に出られない。シアは僕を外に出せる?」
「そうなんだ、試してみないと分かんないけど、出られるといいね」
「うん・・・」
余り嬉しくは無さそうなネーロ。
でも私はロアンと出かける週末休みが楽しみだ。
学校内でルナシアがアーヴィング殿下を執拗に追いかける姿を見かけるようになった。
グレンがルナシアを諫める現場も見かける。
殿下はルナシアが友人達を利用したのに対し怒っている。
それをルナシアは理解したのか、私への攻撃は一時停止されている。
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