異世界転生先は鏡の妖精だった⁉ちょっぴりハードモードです

ミカン♬

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19 ルナシアの悪意

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 今日はダンジョンの5階層を攻略調査だ。ここの乾燥した砂上は靴の中に砂が入って不快なので豹型ゴーレムを4頭出して、皆を乗せた。

「ここは毒サソリがいるから気を付けてね」
「薬は完備してる。シアの苦手なヘビもいるから気を付けろよ」

「早く終わらせようぜ、ウィンドウカッター!」
「アイスニードル!」

 ロアンとサイラスがモンスターを倒し、私は豹型ゴーレムを操作、ポールは記録係。
 連携してサクサク進み、うちのチームが最も早くダンジョンを攻略している。実力不足な生徒は今頃はドームで訓練中、この程度攻略できないと卒業すら危うい。

「さっさとレポート出して次に行こう。10階までは小手調べだからな」
「ああ、このメンバーだと早そうだね」

「モンスター5種類調査完了。お疲れ様でした」
 ポールの終了宣言で【帰還の魔石】を使って入り口まで戻ったのだった。


 1-Sの教室は隣にある。広々とした部屋に15名の高位貴族の生徒を集めた特別教室で、幼少から英才教育を受けてきた者ばかり。中にはオーハン先生の教えを受けた者もいるそうだ。

 中心にはルナシアがいる。コロコロと可愛らしい声が廊下に響いていた。
 私の姿を認めるとピタリと話声が止まって、露骨に冷たい視線が向けられた。

「嫌ですわ、グレン様に振られて逆切れを・・・まぁ・・・殿下まで・・・・ですわ」
「恥知らず・・・サイラス様・・・・・調子にのって・・・まぁ・・・」

「皆様、誤解されているのですわ。お止めになって」
「ルナシア様はお優しい。・・・・・・は追放されるべきだ・・・全く」

 途切れ途切れではあるが悪口が聞こえる。廊下で聞こえよがしに井戸端会議、趣味が悪い。

 医務室前でグレンと強い口調で話し合っていたので誤解を生んだようだ。
 なんで私がグレンにフラれて逆恨みするのよ。

 私はアーヴィング殿下やサイラスにも言い寄る恥知らずらしい。

 ルナシアと目が合うと、上目遣いに微笑まれた。火元はお前だな。

 そんなに殿下が私をサロンに誘ったのが許せないのか。
 バレンシアといい、この双子姉妹は私を困らせてくれる。

 高位貴族の生徒たちは寮には居ない。お仕置きが出来なくて残念だ。
 だがこれ以上目に余るとお屋敷まで出張しても構わない、悪意には悪意だ。


 時間が経つと再び寮の扉の前に生ごみを撒かれるようになった。寮だと生徒会は介入しないと思っているようだ。
 以前のような過激な物理的攻撃は無いが、ある日部屋の机上に『偽物はここから出て行け!』と書いた紙が置いてあった。
 まさかバレンシアの成り代わりとバレている?誰なんだ?本当に気持ちが悪い。

 苦労して手に入れた安寧の城を壊される・・・不安とストレスが蓄積してゆく。


     ***


 やっと待ちに待った週末休暇になり、風魔法で私は急いで塔に戻った。

「はぁ~~やっぱり家は最高です~」
「学校は大変ですか?」
 エプロン姿のミリアンに癒され、キッチンからは良い匂いが漂う。

「結構大変だけど、楽しいですよ。仲間にも恵まれたし・・・」
「疲れているようなのでスタミナ料理を用意しました」

「楽しみです!・・・ところでお父様は?」
「郊外に強力な魔物が出たので出動要請が来ました」

「・・・大丈夫かな」
「師匠が倒されるほどの魔物が出たらこの国は終わりですよ。いや最終兵器の出番かな」

 女神の守りがあるのは王都だけだものね。一歩外に出ると何が起こるか分からない。

「最終兵器って?」

「いえ、気にしないで。少し早いけど先に夕飯を食べましょう。どうせ師匠は戻ればお酒が先ですから」
「はい、美味しそう!いただきます」

 美味しそうなコロコロステーキにカリカリのにんにくが乗っている。
 デザートにはレモンのゼリーで後口がサッパリする。
 学校の様子などをお喋りしながら、ミリアンとゆっくり食事を楽しんだ。

 その夜遅くにお父様が無事に戻ったので安心してベッドに向かう。

 明日はいつも通りミリアンに水魔法を習って、課題のレポートをまとめて…と考えているうちに眠ってしまった。



 バレンシアと会って魔法を解除している夢を見た。

 私の生活はバレンシアのモノとなり、彼女はアーヴィング殿下に寄り添っていた。加賀美由奈に戻った私はその様子を、鏡の中から見つめるだけという悪夢だった。


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