19 / 42
19 ルナシアの悪意
しおりを挟む
今日はダンジョンの5階層を攻略調査だ。ここの乾燥した砂上は靴の中に砂が入って不快なので豹型ゴーレムを4頭出して、皆を乗せた。
「ここは毒サソリがいるから気を付けてね」
「薬は完備してる。シアの苦手なヘビもいるから気を付けろよ」
「早く終わらせようぜ、ウィンドウカッター!」
「アイスニードル!」
ロアンとサイラスがモンスターを倒し、私は豹型ゴーレムを操作、ポールは記録係。
連携してサクサク進み、うちのチームが最も早くダンジョンを攻略している。実力不足な生徒は今頃はドームで訓練中、この程度攻略できないと卒業すら危うい。
「さっさとレポート出して次に行こう。10階までは小手調べだからな」
「ああ、このメンバーだと早そうだね」
「モンスター5種類調査完了。お疲れ様でした」
ポールの終了宣言で【帰還の魔石】を使って入り口まで戻ったのだった。
1-Sの教室は隣にある。広々とした部屋に15名の高位貴族の生徒を集めた特別教室で、幼少から英才教育を受けてきた者ばかり。中にはオーハン先生の教えを受けた者もいるそうだ。
中心にはルナシアがいる。コロコロと可愛らしい声が廊下に響いていた。
私の姿を認めるとピタリと話声が止まって、露骨に冷たい視線が向けられた。
「嫌ですわ、グレン様に振られて逆切れを・・・まぁ・・・殿下まで・・・・ですわ」
「恥知らず・・・サイラス様・・・・・調子にのって・・・まぁ・・・」
「皆様、誤解されているのですわ。お止めになって」
「ルナシア様はお優しい。・・・・・・は追放されるべきだ・・・全く」
途切れ途切れではあるが悪口が聞こえる。廊下で聞こえよがしに井戸端会議、趣味が悪い。
医務室前でグレンと強い口調で話し合っていたので誤解を生んだようだ。
なんで私がグレンにフラれて逆恨みするのよ。
私はアーヴィング殿下やサイラスにも言い寄る恥知らずらしい。
ルナシアと目が合うと、上目遣いに微笑まれた。火元はお前だな。
そんなに殿下が私をサロンに誘ったのが許せないのか。
バレンシアといい、この双子姉妹は私を困らせてくれる。
高位貴族の生徒たちは寮には居ない。お仕置きが出来なくて残念だ。
だがこれ以上目に余るとお屋敷まで出張しても構わない、悪意には悪意だ。
時間が経つと再び寮の扉の前に生ごみを撒かれるようになった。寮だと生徒会は介入しないと思っているようだ。
以前のような過激な物理的攻撃は無いが、ある日部屋の机上に『偽物はここから出て行け!』と書いた紙が置いてあった。
まさかバレンシアの成り代わりとバレている?誰なんだ?本当に気持ちが悪い。
苦労して手に入れた安寧の城を壊される・・・不安とストレスが蓄積してゆく。
***
やっと待ちに待った週末休暇になり、風魔法で私は急いで塔に戻った。
「はぁ~~やっぱり家は最高です~」
「学校は大変ですか?」
エプロン姿のミリアンに癒され、キッチンからは良い匂いが漂う。
「結構大変だけど、楽しいですよ。仲間にも恵まれたし・・・」
「疲れているようなのでスタミナ料理を用意しました」
「楽しみです!・・・ところでお父様は?」
「郊外に強力な魔物が出たので出動要請が来ました」
「・・・大丈夫かな」
「師匠が倒されるほどの魔物が出たらこの国は終わりですよ。いや最終兵器の出番かな」
女神の守りがあるのは王都だけだものね。一歩外に出ると何が起こるか分からない。
「最終兵器って?」
「いえ、気にしないで。少し早いけど先に夕飯を食べましょう。どうせ師匠は戻ればお酒が先ですから」
「はい、美味しそう!いただきます」
美味しそうなコロコロステーキにカリカリのにんにくが乗っている。
デザートにはレモンのゼリーで後口がサッパリする。
学校の様子などをお喋りしながら、ミリアンとゆっくり食事を楽しんだ。
その夜遅くにお父様が無事に戻ったので安心してベッドに向かう。
明日はいつも通りミリアンに水魔法を習って、課題のレポートをまとめて…と考えているうちに眠ってしまった。
バレンシアと会って魔法を解除している夢を見た。
私の生活はバレンシアのモノとなり、彼女はアーヴィング殿下に寄り添っていた。加賀美由奈に戻った私はその様子を、鏡の中から見つめるだけという悪夢だった。
「ここは毒サソリがいるから気を付けてね」
「薬は完備してる。シアの苦手なヘビもいるから気を付けろよ」
「早く終わらせようぜ、ウィンドウカッター!」
「アイスニードル!」
ロアンとサイラスがモンスターを倒し、私は豹型ゴーレムを操作、ポールは記録係。
連携してサクサク進み、うちのチームが最も早くダンジョンを攻略している。実力不足な生徒は今頃はドームで訓練中、この程度攻略できないと卒業すら危うい。
「さっさとレポート出して次に行こう。10階までは小手調べだからな」
「ああ、このメンバーだと早そうだね」
「モンスター5種類調査完了。お疲れ様でした」
ポールの終了宣言で【帰還の魔石】を使って入り口まで戻ったのだった。
1-Sの教室は隣にある。広々とした部屋に15名の高位貴族の生徒を集めた特別教室で、幼少から英才教育を受けてきた者ばかり。中にはオーハン先生の教えを受けた者もいるそうだ。
中心にはルナシアがいる。コロコロと可愛らしい声が廊下に響いていた。
私の姿を認めるとピタリと話声が止まって、露骨に冷たい視線が向けられた。
「嫌ですわ、グレン様に振られて逆切れを・・・まぁ・・・殿下まで・・・・ですわ」
「恥知らず・・・サイラス様・・・・・調子にのって・・・まぁ・・・」
「皆様、誤解されているのですわ。お止めになって」
「ルナシア様はお優しい。・・・・・・は追放されるべきだ・・・全く」
途切れ途切れではあるが悪口が聞こえる。廊下で聞こえよがしに井戸端会議、趣味が悪い。
医務室前でグレンと強い口調で話し合っていたので誤解を生んだようだ。
なんで私がグレンにフラれて逆恨みするのよ。
私はアーヴィング殿下やサイラスにも言い寄る恥知らずらしい。
ルナシアと目が合うと、上目遣いに微笑まれた。火元はお前だな。
そんなに殿下が私をサロンに誘ったのが許せないのか。
バレンシアといい、この双子姉妹は私を困らせてくれる。
高位貴族の生徒たちは寮には居ない。お仕置きが出来なくて残念だ。
だがこれ以上目に余るとお屋敷まで出張しても構わない、悪意には悪意だ。
時間が経つと再び寮の扉の前に生ごみを撒かれるようになった。寮だと生徒会は介入しないと思っているようだ。
以前のような過激な物理的攻撃は無いが、ある日部屋の机上に『偽物はここから出て行け!』と書いた紙が置いてあった。
まさかバレンシアの成り代わりとバレている?誰なんだ?本当に気持ちが悪い。
苦労して手に入れた安寧の城を壊される・・・不安とストレスが蓄積してゆく。
***
やっと待ちに待った週末休暇になり、風魔法で私は急いで塔に戻った。
「はぁ~~やっぱり家は最高です~」
「学校は大変ですか?」
エプロン姿のミリアンに癒され、キッチンからは良い匂いが漂う。
「結構大変だけど、楽しいですよ。仲間にも恵まれたし・・・」
「疲れているようなのでスタミナ料理を用意しました」
「楽しみです!・・・ところでお父様は?」
「郊外に強力な魔物が出たので出動要請が来ました」
「・・・大丈夫かな」
「師匠が倒されるほどの魔物が出たらこの国は終わりですよ。いや最終兵器の出番かな」
女神の守りがあるのは王都だけだものね。一歩外に出ると何が起こるか分からない。
「最終兵器って?」
「いえ、気にしないで。少し早いけど先に夕飯を食べましょう。どうせ師匠は戻ればお酒が先ですから」
「はい、美味しそう!いただきます」
美味しそうなコロコロステーキにカリカリのにんにくが乗っている。
デザートにはレモンのゼリーで後口がサッパリする。
学校の様子などをお喋りしながら、ミリアンとゆっくり食事を楽しんだ。
その夜遅くにお父様が無事に戻ったので安心してベッドに向かう。
明日はいつも通りミリアンに水魔法を習って、課題のレポートをまとめて…と考えているうちに眠ってしまった。
バレンシアと会って魔法を解除している夢を見た。
私の生活はバレンシアのモノとなり、彼女はアーヴィング殿下に寄り添っていた。加賀美由奈に戻った私はその様子を、鏡の中から見つめるだけという悪夢だった。
1
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる