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17 癪に障る
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グレンはルナシアを男にしたような美形だ。グレンフアンに目をつけられたら困ると思いながら、ぎこちなく歩いているとグレンが話しかけてきた。
「バレンシア、公爵から特待生の件は聞いている」
「そうですか。ハサウェイ様、名前をシアと呼んで下さい」
「公爵は罰金を払って君をハサウェイ公爵家の娘と認め、オーハン特級魔法伯の養女とする予定だ」
「バレンシアは娘と認めないと仰っていましたが」
「君は生まれて直ぐに攫われて9歳で発見され保護した。しかし到底ハサウェイ公爵家の令嬢としての資質も品格も備えていない為に届け出なかった。叔母のヘレンに教育させていずれは養女に出すつもりだった。公爵はそう説明している」
攫われたんだったらすぐに捜索願を出せよ!って話。誰が信じるんだアホくさ。
淡々と説明するグレンからもバレンシアを想う気持ちは感じられない。
「よくもそんな最低な作り話を考えたわね。バレンシアはずっと離れ屋敷にいて家族からは放置され、ヘレンから虐待を受けていたわ!」
だけど『教育させていずれは養女に出すつもりだった』という部分だけは否定できない。
「ルナシアはこの事実を知っているの?」
「ルナは何も知らない。私は叔母のヘレンが来てからバレンシアの存在を知った。まさか虐待されているなどとは夢にも思わなかった」
という事はこの兄はバレンシアの存在を知っていて、その事実をルナシアと話し合うことも無かった。
「貴方は会いに来てくれましたか?妹の様子を見に一度でも」
「いや、公爵から離れ屋には接近を禁止されていた」
「貴方も公爵と同じですね。離れ屋で死ぬ程辛い生活をしていたのに助けてくれなかった」
「私が家督を継げばきっと償いをする。出来ることがあれば言って欲しい」
私はバレンシア本人ではないから返事が出来ない。
この兄は公爵よりはマシかもしれない。だがバレンシアを妹と認めるでもなく、ルナシアにバレンシアの存在を教えるとは一言も言わない。それが癪に障った。
気まずい気持ちで歩いていると医務室に到着した。
「送って頂いて有難うございました。嫌がらせの件は生徒会に相談するつもりでした。穏便に宜しくお願いしますね。告げ口すると平民は立場が弱いので、後々かえって恨まれてしまいますので」
「善処する」
「ルナシア様には近づかないのでご安心を」
「殿下にも近づかないでくれ、サロンに誘われただろう? それでルナシアは塞ぎ込んでいる」
「サロン?・・・そんなことで?」
「そうだ、ルナはずっと殿下を慕ってきたんだ。殿下に近づくと君の為にならない」
これは脅しよね。ますます癪に障る。熱愛中の二人を邪魔する気は無いですけど?
「では殿下からお近づき頂いた場合はどうしましょうか?」
「殿下が現れそうな場所は避けて欲しい」
「善処致します!」
深々と礼をして私は医務室のドアを開けた。かすり傷だったので医者に簡単に処置されてドームに向かった。
*
放課後、寮の自室に戻りいつも通り私は椅子に、ネーロはベッドに座っている。
「ネーロ、犯人の顔は見た?」
「うん。殺す?」
「人を殺してはダメ!怪我させてもだめよ!」
「わかった。男爵令嬢殺さない」
ウィローか・・・下っ端なので、仲間にこき使われてストレスが溜まっているのだろう。
苛めを指示しているのは伯爵令嬢のコーデリアだがウィローは容赦なく私を狙ってくる。つまり嬉々としてやっているのだ。
私に八つ当たりしてストレス解消なんて────同情の余地はない。
「あるじは優しすぎる」
「そうでもないわよ?ちょっとお仕置きしてやろうかな~と思ってる」
「いいね、賛成」
グレンと話し合った余波なのか、必要以上に私を悩ませる令嬢達を許せなかった。平民だと思って馬鹿にして、私がどんだけ苦労してここまで来たか、知りもしないで。
どうしようもなくムシャクシャした。
この先バレンシアが見つかった時の為にも、嫌がらせには厳しく対処して置かないとね。
ご令嬢達は調子に乗り過ぎた。今夜、罰を受けて頂こう。
「バレンシア、公爵から特待生の件は聞いている」
「そうですか。ハサウェイ様、名前をシアと呼んで下さい」
「公爵は罰金を払って君をハサウェイ公爵家の娘と認め、オーハン特級魔法伯の養女とする予定だ」
「バレンシアは娘と認めないと仰っていましたが」
「君は生まれて直ぐに攫われて9歳で発見され保護した。しかし到底ハサウェイ公爵家の令嬢としての資質も品格も備えていない為に届け出なかった。叔母のヘレンに教育させていずれは養女に出すつもりだった。公爵はそう説明している」
攫われたんだったらすぐに捜索願を出せよ!って話。誰が信じるんだアホくさ。
淡々と説明するグレンからもバレンシアを想う気持ちは感じられない。
「よくもそんな最低な作り話を考えたわね。バレンシアはずっと離れ屋敷にいて家族からは放置され、ヘレンから虐待を受けていたわ!」
だけど『教育させていずれは養女に出すつもりだった』という部分だけは否定できない。
「ルナシアはこの事実を知っているの?」
「ルナは何も知らない。私は叔母のヘレンが来てからバレンシアの存在を知った。まさか虐待されているなどとは夢にも思わなかった」
という事はこの兄はバレンシアの存在を知っていて、その事実をルナシアと話し合うことも無かった。
「貴方は会いに来てくれましたか?妹の様子を見に一度でも」
「いや、公爵から離れ屋には接近を禁止されていた」
「貴方も公爵と同じですね。離れ屋で死ぬ程辛い生活をしていたのに助けてくれなかった」
「私が家督を継げばきっと償いをする。出来ることがあれば言って欲しい」
私はバレンシア本人ではないから返事が出来ない。
この兄は公爵よりはマシかもしれない。だがバレンシアを妹と認めるでもなく、ルナシアにバレンシアの存在を教えるとは一言も言わない。それが癪に障った。
気まずい気持ちで歩いていると医務室に到着した。
「送って頂いて有難うございました。嫌がらせの件は生徒会に相談するつもりでした。穏便に宜しくお願いしますね。告げ口すると平民は立場が弱いので、後々かえって恨まれてしまいますので」
「善処する」
「ルナシア様には近づかないのでご安心を」
「殿下にも近づかないでくれ、サロンに誘われただろう? それでルナシアは塞ぎ込んでいる」
「サロン?・・・そんなことで?」
「そうだ、ルナはずっと殿下を慕ってきたんだ。殿下に近づくと君の為にならない」
これは脅しよね。ますます癪に障る。熱愛中の二人を邪魔する気は無いですけど?
「では殿下からお近づき頂いた場合はどうしましょうか?」
「殿下が現れそうな場所は避けて欲しい」
「善処致します!」
深々と礼をして私は医務室のドアを開けた。かすり傷だったので医者に簡単に処置されてドームに向かった。
*
放課後、寮の自室に戻りいつも通り私は椅子に、ネーロはベッドに座っている。
「ネーロ、犯人の顔は見た?」
「うん。殺す?」
「人を殺してはダメ!怪我させてもだめよ!」
「わかった。男爵令嬢殺さない」
ウィローか・・・下っ端なので、仲間にこき使われてストレスが溜まっているのだろう。
苛めを指示しているのは伯爵令嬢のコーデリアだがウィローは容赦なく私を狙ってくる。つまり嬉々としてやっているのだ。
私に八つ当たりしてストレス解消なんて────同情の余地はない。
「あるじは優しすぎる」
「そうでもないわよ?ちょっとお仕置きしてやろうかな~と思ってる」
「いいね、賛成」
グレンと話し合った余波なのか、必要以上に私を悩ませる令嬢達を許せなかった。平民だと思って馬鹿にして、私がどんだけ苦労してここまで来たか、知りもしないで。
どうしようもなくムシャクシャした。
この先バレンシアが見つかった時の為にも、嫌がらせには厳しく対処して置かないとね。
ご令嬢達は調子に乗り過ぎた。今夜、罰を受けて頂こう。
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