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11 妖精の花まつり
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知らない間に公爵は居なくなり、ヘレンは子ども虐待の罪で連行され、最後までは無実だと叫んでいた。
オーハン先生は保護者になってくれて入学手続き書類にサイン中である。
「アーヴィング第二王子殿下、有難うございました。心から感謝致します」
「役に立って良かった。学校で待っているよ」
殿下は私の髪を一房救うと口づけて「何かあったら相談するんだよ」と甘い声で私の心臓を射抜いた。
「あ、有難うございます」
こんなブサイク眼鏡の髪にキスなんて、物好きな。
はっ!もしかして、殿下は<鑑定>で私が妖精だと気づいた?
殿下の赤い瞳がジッと私を見つめている。熱を帯びていると感じるのは気のせいだろうか。
「公爵家で会ったよね。夜の階段で」
「あの時の少年……あの時に?」ほんの数秒だったと思うけど。
「ごめんね、あの時も<鑑定>した。金色の瞳のバレンシア」
「内緒でお願いします」
やはりバレている。
「誰にも言わないよ。二人だけの秘密だね」
殿下にに耳元で囁かれて頭がクラクラする。
「シアお嬢さん戻りましょうか。殿下も有難うございました。お陰でこの子は学校に入れました」
「先生、シアって呼んで下さい」
「オーハン卿に卒業まではシアを預けておくよ。ではまた」
預けておく?意味深な発言を残して殿下は去った。
その夜はミリアンさんが私の合格祝いのご馳走を用意してくれた。
二人はワインを私は葡萄ジュースで乾杯!
「シアさん、おめでとうございます!」
「有難うございます!」
「アーヴィング殿下はシアを相当気にかけているようだな」
妖精の秘密を共有してるとは・・・まだ言えない。
「ゴーレムの魔法に興味があったみたいです」
「細部まで精巧に作れるからねシアさんは。動きも滑らかで、アレは芸術です」
「それだけでは無さそうだが、殿下が味方になってくれて良かった」
「本当に助かりました。お二人にも力になって頂いて本当に有難うございました。このご恩は一生忘れません」
先生の養女にして下さるのだが、公爵の隠し子だった事もあり手続きに時間がかかると説明された。
「お礼など水臭い。親子になるんだ、何でも相談しておくれ」
「おや、師匠は可愛い女の子には優しいですね?」
「ミリアンも私を父と呼んでくれていいのだよ?」
「ははは、今更ですよ。お互いいい年ですから」
「???お二人は親子なんですか?」
「うん、言ってなかったですか?」
「えええ」
お酒でお口が滑らかになったミリアンさんはオーハン先生と妖精のハーフだと教えてくれた。
「その、お母さまの妖精は?」
「妖精は気まぐれで、ある日消えてしまいました。今頃はどうしているのか」
「消えたって・・・淋しくなかったの?」
「平気だったな。僕も気まぐれなんですよ。師匠がポックリ逝ったら、またどこかに旅に出ようかな」
「まだ死なんよ。いつでもミリアンの好きにすればいい」
気まぐれな妖精・・・私はバレンシアの為に一生懸命だけどな。放棄しようとも思わないけど、いつか自分の為に生きていくんだ。
***
魔法学校が始まる前にナミピアナ王国の建国祭がある。
別名「妖精の花まつり」と呼ばれ今年は1000年祭で大々的にお祝いするそうだ。
お城では3日間舞踏会が開かれ、王都の街は祭り一色になる。
「街の広場でダンスが行われますが、その時だけマスクをつけるんです」
「へぇ~どうして?」
「妖精が紛れ込んでくるからだと言われます」
「じゃぁ、先生はマスクをつけて妖精さんと踊ったの?」
「ええ、そうして魅入られた。魅了は解けず師匠は妖精を愛し続け、再婚もしなかった」
「魅了ですか・・・妖精さんって羽が生えてる?」
「いいえ、人とそう変わらないですよ。ただとても美しく、軽やかに踊るそうです」
ミリアンさんとダンス出来たら楽しそう。
「わたし、マスクを作るのでミリアンさん一緒にダンスして下さい」
「いいですよ、一緒に参加しましょう」
その夜、マスクを作ろうと思ったが────
「マスクってどういうの?明日ミリアンさんにどんなデザインか聞いてみよう」
そうして布団を被ると、キャビネットの上の卓上鏡が薄く光っているのに気づいた。
塔に来てから先生との約束で透明人間になっていない。バレンシもだけど、黒猫も気になっていた。
オーハン先生は保護者になってくれて入学手続き書類にサイン中である。
「アーヴィング第二王子殿下、有難うございました。心から感謝致します」
「役に立って良かった。学校で待っているよ」
殿下は私の髪を一房救うと口づけて「何かあったら相談するんだよ」と甘い声で私の心臓を射抜いた。
「あ、有難うございます」
こんなブサイク眼鏡の髪にキスなんて、物好きな。
はっ!もしかして、殿下は<鑑定>で私が妖精だと気づいた?
殿下の赤い瞳がジッと私を見つめている。熱を帯びていると感じるのは気のせいだろうか。
「公爵家で会ったよね。夜の階段で」
「あの時の少年……あの時に?」ほんの数秒だったと思うけど。
「ごめんね、あの時も<鑑定>した。金色の瞳のバレンシア」
「内緒でお願いします」
やはりバレている。
「誰にも言わないよ。二人だけの秘密だね」
殿下にに耳元で囁かれて頭がクラクラする。
「シアお嬢さん戻りましょうか。殿下も有難うございました。お陰でこの子は学校に入れました」
「先生、シアって呼んで下さい」
「オーハン卿に卒業まではシアを預けておくよ。ではまた」
預けておく?意味深な発言を残して殿下は去った。
その夜はミリアンさんが私の合格祝いのご馳走を用意してくれた。
二人はワインを私は葡萄ジュースで乾杯!
「シアさん、おめでとうございます!」
「有難うございます!」
「アーヴィング殿下はシアを相当気にかけているようだな」
妖精の秘密を共有してるとは・・・まだ言えない。
「ゴーレムの魔法に興味があったみたいです」
「細部まで精巧に作れるからねシアさんは。動きも滑らかで、アレは芸術です」
「それだけでは無さそうだが、殿下が味方になってくれて良かった」
「本当に助かりました。お二人にも力になって頂いて本当に有難うございました。このご恩は一生忘れません」
先生の養女にして下さるのだが、公爵の隠し子だった事もあり手続きに時間がかかると説明された。
「お礼など水臭い。親子になるんだ、何でも相談しておくれ」
「おや、師匠は可愛い女の子には優しいですね?」
「ミリアンも私を父と呼んでくれていいのだよ?」
「ははは、今更ですよ。お互いいい年ですから」
「???お二人は親子なんですか?」
「うん、言ってなかったですか?」
「えええ」
お酒でお口が滑らかになったミリアンさんはオーハン先生と妖精のハーフだと教えてくれた。
「その、お母さまの妖精は?」
「妖精は気まぐれで、ある日消えてしまいました。今頃はどうしているのか」
「消えたって・・・淋しくなかったの?」
「平気だったな。僕も気まぐれなんですよ。師匠がポックリ逝ったら、またどこかに旅に出ようかな」
「まだ死なんよ。いつでもミリアンの好きにすればいい」
気まぐれな妖精・・・私はバレンシアの為に一生懸命だけどな。放棄しようとも思わないけど、いつか自分の為に生きていくんだ。
***
魔法学校が始まる前にナミピアナ王国の建国祭がある。
別名「妖精の花まつり」と呼ばれ今年は1000年祭で大々的にお祝いするそうだ。
お城では3日間舞踏会が開かれ、王都の街は祭り一色になる。
「街の広場でダンスが行われますが、その時だけマスクをつけるんです」
「へぇ~どうして?」
「妖精が紛れ込んでくるからだと言われます」
「じゃぁ、先生はマスクをつけて妖精さんと踊ったの?」
「ええ、そうして魅入られた。魅了は解けず師匠は妖精を愛し続け、再婚もしなかった」
「魅了ですか・・・妖精さんって羽が生えてる?」
「いいえ、人とそう変わらないですよ。ただとても美しく、軽やかに踊るそうです」
ミリアンさんとダンス出来たら楽しそう。
「わたし、マスクを作るのでミリアンさん一緒にダンスして下さい」
「いいですよ、一緒に参加しましょう」
その夜、マスクを作ろうと思ったが────
「マスクってどういうの?明日ミリアンさんにどんなデザインか聞いてみよう」
そうして布団を被ると、キャビネットの上の卓上鏡が薄く光っているのに気づいた。
塔に来てから先生との約束で透明人間になっていない。バレンシもだけど、黒猫も気になっていた。
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