7 / 42
7 ヘレンと再会
しおりを挟む
宿に移ると言っても先生とミリアンさんは、女の子の一人暮らしは心配だから塔で暮らせばいいと言ってくれた。
正直、宿暮らしは不安だったので非常にありがたい。生活費を受け取ってもらうのを条件に滞在させて貰うことにした。
翌日、ミリアンさんに塔の3階に連れて行かれた。不思議な空間で空中庭園といった場所。
「ここは魔法の障壁が張られているので、自由に魔法訓練が出来ます。師匠に代わって僕が指導しますね」
「宜しくお願いします」
「得意なのは土魔法ですか。特待生なるには巨大ゴーレムでも作りましょうか」
「はい、ゴーレムは人型から恐竜まで作れます!」
「人型?それを作ってみて下さい」
私はミリアンさんに似たゴーレムを作り出してみせた。
「面白いですね!いろいろ作ってみましょうか」
「はい!」
恐竜ティラノサウルスはミリアンさんが大喜びしてくれた。その後は更に上級の土魔法や初球の風魔法を教わった。オーハン先生のように丁寧に教えてくれて、私は直ぐに風魔法を習得していった。
*
オーハン先生の塔に居候しながら、図書館に通って過去問題を閲覧しながら猛勉強を始めた。一番苦労するのが常識問題で、この異世界では前世の常識を覆して覚えないといけなかった。
塔に来て1週間ほど経つと突然ヘレンが塔を訪ねて来て、私を連れ戻すと喚き散らした。
バレンシアが消えて自分の居場所が無くなるのを懸念したのだろう。
「家出なんて、よくも私に恥をかかせてくれたわね!屋敷に戻して躾をし直してやるわ!」
「また鞭で殴ったり針で刺しますか?虐待は犯罪ですよ?」
「な、なんて生意気な。お前が魔法学校など入れるはずないでしょう!戻って大人しく教育を受けなさい」
「ヘレン叔母様、私はもう馬鹿のふりをするのはウンザリです。二度と私の前に現れないで!」
ヘレンの体が怒りで熱くなり、体から魔力が溢れた。
これはいけない焼き殺されるなと思ったら────
ザザーッ────! 私の隣でミリアンさんが魔法を放った。
ヘレンは頭から水を被ってキョトンとしている。
その顔がバレンシアに似ている気がして悲しい。
「な!な!何を!」
「お帰り下さい。シアさんはこちらで大切にお預かりします」
「このままでは済まさないわ!バレンシア、試験に落ちて惨めな姿で戻ってくるといい。楽しみだわ!」
キーキー言いながら水浸しのままヘレンは帰って行った。
「助けて頂いて有難うございました」
「いえ、火山のような人ですね。水をかけちゃって、危険でしたか?」
「水蒸気爆発を起こしたら塔が吹っ飛んだかも」
「あはは、あの人はシアさんには全く必要ない。反面教師です」
ミリアンさんが居てくれたのもあるが、もうヘレンは怖くなかった。
「絶対に特待生になります。努力だけは自信あるんです」
「その意気です。頑張って下さい」
***
雪が舞い始めて、図書館に来る人も少なくなってきた。間もなく図書館は春まで冬期休暇に入り閉館だ。
同じく魔法学校も冬期休暇に入り、特待生試験が始まる。過去問題を見る限り落ちる気はしない。けれど運のバロメータが低い私には、何が起こるか分からず不安だ。
なんせ前世はめっちゃ貧乏な家に生まれ、6人きょうだいの4番目で自分の居場所を獲得するのに必死だった。高校を卒業後就職して直ぐに倒産。次はブラック企業で過労死(多分)。
そもそも、バレンシアの為に今は頑張っている。その結果、私には何が残るのか。
消えてしまったバレンシア。
面倒くさがり屋のお姫様の絵本を思い出す。
魔女に鏡を割られて、あのお姫様はどうなったんだろう。
「特待生の試験を受けるのか?」
虚空を見つめていると、いきなり後ろから声が聞こえた。
「はい」
「今年は志願者が多いようだ。頑張ってね」
聞いた覚えのある声だった。
その人は鏡のように光沢のある銀の髪にルビー色の目をした美しい男性で、服装からして高貴な方に違いない。
離れた場所には護衛、従者も控えている。
「有難うございます。頑張ります」
「・・・君、名前は?」
「・・・シアと申します」
「シア?」
何だろう、背筋がゾクゾクして既視感が・・・この人は私を<鑑定>している?
「あ、あの・・・」
「失礼した。また魔法学校で会おうね、シア」
<鑑定>で乙女の秘密を覗くなんて失礼なイケメン!誰だか知らないが要注意だ。
正直、宿暮らしは不安だったので非常にありがたい。生活費を受け取ってもらうのを条件に滞在させて貰うことにした。
翌日、ミリアンさんに塔の3階に連れて行かれた。不思議な空間で空中庭園といった場所。
「ここは魔法の障壁が張られているので、自由に魔法訓練が出来ます。師匠に代わって僕が指導しますね」
「宜しくお願いします」
「得意なのは土魔法ですか。特待生なるには巨大ゴーレムでも作りましょうか」
「はい、ゴーレムは人型から恐竜まで作れます!」
「人型?それを作ってみて下さい」
私はミリアンさんに似たゴーレムを作り出してみせた。
「面白いですね!いろいろ作ってみましょうか」
「はい!」
恐竜ティラノサウルスはミリアンさんが大喜びしてくれた。その後は更に上級の土魔法や初球の風魔法を教わった。オーハン先生のように丁寧に教えてくれて、私は直ぐに風魔法を習得していった。
*
オーハン先生の塔に居候しながら、図書館に通って過去問題を閲覧しながら猛勉強を始めた。一番苦労するのが常識問題で、この異世界では前世の常識を覆して覚えないといけなかった。
塔に来て1週間ほど経つと突然ヘレンが塔を訪ねて来て、私を連れ戻すと喚き散らした。
バレンシアが消えて自分の居場所が無くなるのを懸念したのだろう。
「家出なんて、よくも私に恥をかかせてくれたわね!屋敷に戻して躾をし直してやるわ!」
「また鞭で殴ったり針で刺しますか?虐待は犯罪ですよ?」
「な、なんて生意気な。お前が魔法学校など入れるはずないでしょう!戻って大人しく教育を受けなさい」
「ヘレン叔母様、私はもう馬鹿のふりをするのはウンザリです。二度と私の前に現れないで!」
ヘレンの体が怒りで熱くなり、体から魔力が溢れた。
これはいけない焼き殺されるなと思ったら────
ザザーッ────! 私の隣でミリアンさんが魔法を放った。
ヘレンは頭から水を被ってキョトンとしている。
その顔がバレンシアに似ている気がして悲しい。
「な!な!何を!」
「お帰り下さい。シアさんはこちらで大切にお預かりします」
「このままでは済まさないわ!バレンシア、試験に落ちて惨めな姿で戻ってくるといい。楽しみだわ!」
キーキー言いながら水浸しのままヘレンは帰って行った。
「助けて頂いて有難うございました」
「いえ、火山のような人ですね。水をかけちゃって、危険でしたか?」
「水蒸気爆発を起こしたら塔が吹っ飛んだかも」
「あはは、あの人はシアさんには全く必要ない。反面教師です」
ミリアンさんが居てくれたのもあるが、もうヘレンは怖くなかった。
「絶対に特待生になります。努力だけは自信あるんです」
「その意気です。頑張って下さい」
***
雪が舞い始めて、図書館に来る人も少なくなってきた。間もなく図書館は春まで冬期休暇に入り閉館だ。
同じく魔法学校も冬期休暇に入り、特待生試験が始まる。過去問題を見る限り落ちる気はしない。けれど運のバロメータが低い私には、何が起こるか分からず不安だ。
なんせ前世はめっちゃ貧乏な家に生まれ、6人きょうだいの4番目で自分の居場所を獲得するのに必死だった。高校を卒業後就職して直ぐに倒産。次はブラック企業で過労死(多分)。
そもそも、バレンシアの為に今は頑張っている。その結果、私には何が残るのか。
消えてしまったバレンシア。
面倒くさがり屋のお姫様の絵本を思い出す。
魔女に鏡を割られて、あのお姫様はどうなったんだろう。
「特待生の試験を受けるのか?」
虚空を見つめていると、いきなり後ろから声が聞こえた。
「はい」
「今年は志願者が多いようだ。頑張ってね」
聞いた覚えのある声だった。
その人は鏡のように光沢のある銀の髪にルビー色の目をした美しい男性で、服装からして高貴な方に違いない。
離れた場所には護衛、従者も控えている。
「有難うございます。頑張ります」
「・・・君、名前は?」
「・・・シアと申します」
「シア?」
何だろう、背筋がゾクゾクして既視感が・・・この人は私を<鑑定>している?
「あ、あの・・・」
「失礼した。また魔法学校で会おうね、シア」
<鑑定>で乙女の秘密を覗くなんて失礼なイケメン!誰だか知らないが要注意だ。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる