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5 オーハン先生
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「おい、お嬢さん。風邪をひくよ?」
うっかり寝込んで、広場で屋台を開く犬獣人のおじさんに起こされた。
「おじさん有難う。果物のお店ね?リンゴを一つ下さい」
買ったリンゴをかじっていると郵便局が営業を始め、私は封筒を窓口に提出することが出来た。
用事は済んだが行く宛てなど無い。
「入学の準備をしないといけないのよね。でも・・・」
1番の問題は入学費用だ。公爵が拒否すれば取り消されてしまう。3年間の費用は莫大な金額だった。
私は迷っていた。思い切って公爵に頼んでみようか、それとも双子のルナシアに縋ってみようか。
ただ特待生になれば入学料は無料。これは平民や貧乏貴族が受けられる制度だ。
「ここまで来たんだ、魔法学校に行って特待生の事を相談してみよう」
ヘレンの部屋から拝借したお金があるので、当分は困らない。
今日は宿を取って休もうか。いや鏡の中の宿で夜を過ごそうか。
広場で考え込んでいると「お嬢さんどうしたの?」と綺麗なお姉さんが話しかけてきた。
「少し考え事を・・・大丈夫です」
「そう、良かったらうちに来ない?温かなお茶をごちそうするわよ」
「温かなお茶・・・」
秋の終わりは少し肌寒く、ヘレンのコートを着ていたが温かなお茶が恋しい。
「すぐそこなの、行きましょう」
優しい声に私は差し出された手を取ると、お姉さんの唇が弧を描いた。
「おい!何をしている!」
大声で怒鳴られて私の肩がビクッ!と跳ねる。
「チッ!」
舌打ちして、お茶のお姉さんが逃げていく。
「何をしているんだ、攫われてしまうぞ!」
強面の警備兵のお兄さんに叱られて、保護された。
「珍しい目だな。狙われて目玉をえぐられるぞ」
「え?」
そうだ私はバレンシアだった。オッドアイは珍しいけど、えぐられるってどうなの?
「家まで送ろう。どこだ?」
「あの」
「早く言え。俺も忙しいんだ」
「お爺ちゃんの・・・オーハン先生の家を探しています」
咄嗟に浮かんだのはオーハン先生だった。
推薦の欄にも勝手に名前を書いた。会いたい。
「オーハン先生?」
「魔法使いのオーハン先生です!」
警備隊の詰め所で昼過ぎまで待っていると、警備隊員のお兄さんはオーハン先生を連れてきてくれた。
「これはバレンシアお嬢さん。どうしてここに?」
「先生お願いします力を貸して下さい」
私は深々と先生に頭を下げた。
バレンシアの悲惨な待遇や、魔法学校への入学の話をすると「ふぅむ」と先生は髭を引っ張った。
「勝手に推薦者にしてごめんなさい。先生しか思い浮かばなくて」
「お嬢さんの話を鵜呑みには出来ない、けど魔法学校に入るのは賛成ではある」
「協力して頂けませんか?私は特待生になりたいんです」
「さて、どうしたものか・・・」
「先生も私を忌み子だと思いますか? 目が人と違うだけで」
「災いを招きやすいという点ではそうかもしれんな」
「災い?」
「お嬢さんは狙われやすい。家族を危険に晒して攫われたり、誘拐して金銭を要求される場合もある。公爵家で守られてきたから無事だが、平民であればとっくに攫われていただろうな。または親に高値で売られる場合もある。特にその金色の目は珍しいですからな」
この目はトラブルの元になるという事か。
「しかし目は魔道具で隠すことは出来る。お嬢さんに特待生になれるだけの実力があれば良いが、そうでない場合は公爵に頼むしかない」
「父には会ったこともありません。家族には誰も。もうあの家には帰れません。お願いします。きっとご恩はお返しします」
「ふぅむ・・・特待生の試験は来月、まずは公爵に伺いを立てなければ」
「公爵は反対すると思います」
「取り合えず、公爵に連絡を飛ばしますか」
公爵に連絡・・・胸がドキドキした。勝手に印を押した、全て否定されたら終わりだ。
「公爵に反対されたら、一般人として特待生の申し込みをすれば良い」
「その方が良いです。ヘレン叔母様の元には絶対に戻りたくないです」
「特待生には簡単にはなれませんよ?侯爵に頼むのが望ましいのですが、さてさて」
拒否されても諦めるもんか。もうヘレンがいるあの離れには絶対に戻りたくない。
うっかり寝込んで、広場で屋台を開く犬獣人のおじさんに起こされた。
「おじさん有難う。果物のお店ね?リンゴを一つ下さい」
買ったリンゴをかじっていると郵便局が営業を始め、私は封筒を窓口に提出することが出来た。
用事は済んだが行く宛てなど無い。
「入学の準備をしないといけないのよね。でも・・・」
1番の問題は入学費用だ。公爵が拒否すれば取り消されてしまう。3年間の費用は莫大な金額だった。
私は迷っていた。思い切って公爵に頼んでみようか、それとも双子のルナシアに縋ってみようか。
ただ特待生になれば入学料は無料。これは平民や貧乏貴族が受けられる制度だ。
「ここまで来たんだ、魔法学校に行って特待生の事を相談してみよう」
ヘレンの部屋から拝借したお金があるので、当分は困らない。
今日は宿を取って休もうか。いや鏡の中の宿で夜を過ごそうか。
広場で考え込んでいると「お嬢さんどうしたの?」と綺麗なお姉さんが話しかけてきた。
「少し考え事を・・・大丈夫です」
「そう、良かったらうちに来ない?温かなお茶をごちそうするわよ」
「温かなお茶・・・」
秋の終わりは少し肌寒く、ヘレンのコートを着ていたが温かなお茶が恋しい。
「すぐそこなの、行きましょう」
優しい声に私は差し出された手を取ると、お姉さんの唇が弧を描いた。
「おい!何をしている!」
大声で怒鳴られて私の肩がビクッ!と跳ねる。
「チッ!」
舌打ちして、お茶のお姉さんが逃げていく。
「何をしているんだ、攫われてしまうぞ!」
強面の警備兵のお兄さんに叱られて、保護された。
「珍しい目だな。狙われて目玉をえぐられるぞ」
「え?」
そうだ私はバレンシアだった。オッドアイは珍しいけど、えぐられるってどうなの?
「家まで送ろう。どこだ?」
「あの」
「早く言え。俺も忙しいんだ」
「お爺ちゃんの・・・オーハン先生の家を探しています」
咄嗟に浮かんだのはオーハン先生だった。
推薦の欄にも勝手に名前を書いた。会いたい。
「オーハン先生?」
「魔法使いのオーハン先生です!」
警備隊の詰め所で昼過ぎまで待っていると、警備隊員のお兄さんはオーハン先生を連れてきてくれた。
「これはバレンシアお嬢さん。どうしてここに?」
「先生お願いします力を貸して下さい」
私は深々と先生に頭を下げた。
バレンシアの悲惨な待遇や、魔法学校への入学の話をすると「ふぅむ」と先生は髭を引っ張った。
「勝手に推薦者にしてごめんなさい。先生しか思い浮かばなくて」
「お嬢さんの話を鵜呑みには出来ない、けど魔法学校に入るのは賛成ではある」
「協力して頂けませんか?私は特待生になりたいんです」
「さて、どうしたものか・・・」
「先生も私を忌み子だと思いますか? 目が人と違うだけで」
「災いを招きやすいという点ではそうかもしれんな」
「災い?」
「お嬢さんは狙われやすい。家族を危険に晒して攫われたり、誘拐して金銭を要求される場合もある。公爵家で守られてきたから無事だが、平民であればとっくに攫われていただろうな。または親に高値で売られる場合もある。特にその金色の目は珍しいですからな」
この目はトラブルの元になるという事か。
「しかし目は魔道具で隠すことは出来る。お嬢さんに特待生になれるだけの実力があれば良いが、そうでない場合は公爵に頼むしかない」
「父には会ったこともありません。家族には誰も。もうあの家には帰れません。お願いします。きっとご恩はお返しします」
「ふぅむ・・・特待生の試験は来月、まずは公爵に伺いを立てなければ」
「公爵は反対すると思います」
「取り合えず、公爵に連絡を飛ばしますか」
公爵に連絡・・・胸がドキドキした。勝手に印を押した、全て否定されたら終わりだ。
「公爵に反対されたら、一般人として特待生の申し込みをすれば良い」
「その方が良いです。ヘレン叔母様の元には絶対に戻りたくないです」
「特待生には簡単にはなれませんよ?侯爵に頼むのが望ましいのですが、さてさて」
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