最後に愛してくれる人を探したいの

ミカン♬

文字の大きさ
上 下
19 / 34

19 夏の長期休暇の予定

しおりを挟む
 あの夜からディーン様であるノエル様は私に懐いてしまった。
「クレアってなんか安心感があるな」

 目立って仲良くはしなかったが二人っきりになるとノエル様はよく喋った。
「俺は王宮騎士になって母さんを楽させたいんだ」

「王立学園で騎士科に入るのですね」
「そうだ、週末に帰宅したら剣の訓練もやっているんだ」
 嬉しそうに話すノエル様がまるで孫のようで可愛いわ。

 騎士という言葉にクロードを思い浮かべた。
 彼は今年卒業だ、王宮騎士になれるように朝の礼拝、祈りの時間に毎日祈っている。
 彼もバーンズの店の犠牲者だった。今回は幸せになって欲しい。


 もう一人の孫みたいなカイトはたまに手紙をくれた。
 ミハイルがまるで跡取り気取りだとか、どうでもいい事を書いている。

 父はミハイルを養子ではなく婿にしたいと何度も手紙を寄こしたが無視した。
 だが夏を迎える頃には諦めてミハイルを養子にした。
 彼の商才にも期待して、父は誰かに頼らないと生きていけない人だ。

 さて、私は夏の長期休暇をどうするか悩んでいた。
 2か月も休みがあって、家に戻ると厄介ごとが待ってそうな気がする。
 旅をしてみたいけど女性の一人旅は危険よね。

 放課後、図書室にいると珍しくナタリーが会いに来た。
 私が除籍されてから会っていない、利用価値が無くなると手の平返しだ。

「ねぇ、夏の休暇はどうするの? 予定ある?」

「今はまだ無いわ」

「じゃぁ うちの別荘に行きましょうよ。招待するわ」

 前回も誘ってもらったが、ヘンリー様のご友人達もいて感じが悪かった。
 男爵令嬢だからってさげすまれているのが不快で嫌だったわ。

「ナタリー私はもう平民だからお断りするわ」

「大丈夫、クロードは誘って無いわよ」
「そうじゃなくて、貴族の皆様と一緒には過ごせないわ」

「ああ、そうねクレアはもう平民よね。私のいう事を聞くわよね」
「ナタリー・・・」それがあなたの本性ね。


「クレアは私と過ごします。公爵家に招くので諦めなさい」

 離れて座っていたノエル様が立ち上がって助けてくれた。

「え?ノエル様は除籍されたのではなかったのですか」
「また戻る予定です。下がりなさい」

「くっ! 失礼致しました」ナタリーは私を睨んで出て行った。なんでよ?


「ノエル様助かりました」
「平民のクレアを誘って貴族のクズ共の餌食にしようと企んでいるんだ」

「まさか そこまでは」
「甘いな!飢えた狼共に喰われるぞ。俺の母さんみたいになりたいか?」

 2歳も年下のディーン様に説教されたわ。

「気を付けます。ノエル様・・・あんな嘘を言ってバレたらどうするんです」
「うちに来ればいい。公爵家じゃないけどな。母さんにも紹介する」

「ノエル様の事ですよ。ナタリーは勘が鋭いのです」
「バレたら彼女が消されるだけだ。クレアが一緒だって母さんに連絡しておくよ」

 さらっと怖いことを仰ったわ。私は消されないでしょうね?

「クレアは俺の協力者と言っておく。大丈夫だ俺が守るから」

 私の不安そうな顔をみてそう言ってくれたけど、まだ不安だわ。
 でも「ノエル様を信用しますわ」────こう言うしかないわね。

 お誘いは有難くお受けすることにした。2か月もお邪魔する気はない。
 少しの間滞在させて頂こう。

 後はセキュリティーがしっかりしたホテルに宿泊してもいいわね。
 こういう時にお金を使わなきゃ。


 休暇が迫って手紙が殺到していた。
 カイトにお父様。ミハイルにマックスさん。アスラン様?

 嬉しい、アスラン様が手紙を下さった。

 自宅周辺を怪しい男達がうろついているという内容だった。
 長期休暇で帰宅するのなら男爵の元に帰るほうが良い、離れで独り住まいは危険すぎるとあった。
 警護を雇うのもいいが、その時は相談に乗ると。

 空き家を見てくれていたのね。ぶっきら棒に見えるけど親切だわ。
 私が寮に入るまで夜は何度も巡回してくれて、私って結構面倒な住人だわね。
 将来を考えると護衛を雇った方がいいかもしれない。

 でもいつまでこの世界に居られるのかしら?
 死神に『愛してくれる人を探せ』って言われたけど、見つけたらどうなるんだろう。

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

処理中です...