最後に愛してくれる人を探したいの

ミカン♬

文字の大きさ
上 下
17 / 34

17 ミハイルとの再会 

しおりを挟む
 寮の門を出るとマックスさんと、なんと!彼の長男のミハイルが一緒にいた。
 彼は王立学園を卒業後、父が出資して隣国に商売の修行に出ていた。

 前回はバーンズの店が傾き、ミハイルはそのまま隣国の店で働き続けたが、23歳の若さで船の事故で亡くなっている。
 今回は早くこっちに戻るよう私からも相談する予定の矢先だった。

「クレア、3年ぶりだ、綺麗になったね。僕のお姫様」

「ミル兄さんも素敵よ。私の王子様」

 幼い頃、私のお姫様ごっこに付き合ってくれた優しいお兄さんだ。
 現在21歳、金髪を短く刈り上げたイケメンだ。きっと素敵な恋人もいるわね。


「ゲイリーの希望でミルが戻ってバーンズ商店で働くことになったんだよ」
 親子で働けるからか、マックスさんが嬉しそうだ。

「嬉しいわ。お店の事をよろしくお願いします」

「クレアも戻って来るよね? 一緒にお店を盛り立てよう」

「私は戻らないわ。もうお店とは関係ないのよ」

「クレアは頑固な所があったよね。でもきっと戻してみせるよ」

 私は力なく笑顔を返して、ミハイルの熱い視線に戸惑っていた。


「ゲイリーはミルとお嬢さんが一緒になって店を継いで欲しいと思っているんだよ。お嬢さんどうだろう、考えてみてくれないだろうか」

「父さん、いきなりそんな話はクレアも困るよ」

「お前だってお嬢さんをずっと慕っていただろう?」

「そんなんじゃない、妹みたいに思っていたんだ」

「恋人はいないの?学園時代に付き合ってた人がいなかったかしら?」

「隣国に行ったので恋人とは別れたんだ。それからは一人だよ」

「そうだったの・・・ごめんなさい。父はいつも人を困らせるわね」

「いや、修行は僕の希望でもあったんだ。人脈も広がったし、行かせてもらって感謝してるよ」

 マックスさんは前回もミハイルを婿にと希望していた。でも私はクロードを選んだ。
 心が揺れる、前回、目の前の二人を不幸にしてしまった。償うべきなのか。

「そんな困った顔しないで。今日は帰るよ、また会おうねクレア」



 二人と別れて寮の部屋に戻ると男がいた。

「店に戻りますか?」

「前回マックスさん親子は不幸だったわ。今回幸せになって欲しい」

「また自分を犠牲にするのですか?」

「ミル兄さんはいい人よ」

「誰でも裏の顔がありますからね」

「やめて! 聞きたくないわ」

「毒」

「え?・・・毒?」

「ご主人と結婚してからも盛られていたんですよ」

「まさか、離れに二人で住んでいたのよ?」

「ええ、メイドも信頼できる人物でしたね」

「家じゃない、お店?」

「貴方の幸せが許せない人物がいたのですよ」


 死神は腕を伸ばすと私の顔を両手で挟み込んだ。
 その手は凍ったように冷たい。

「お・・・思いつかないわ」

「いいえ、認めたくないだけだ。黒い糸はまだ絡まっています」

「もう消えて! さっさとあの世に送ってよ!」

 私の額にキスをして憐れむような眼差しを注ぎつつ死神は消えた。

 私の予想通りなら、絶対にミハイルとは結婚できない。

「知りたくなかったのに」

 父に手紙を書いた。
 ミハイルを養子にして彼の望む女性と結婚させてあげて欲しいと。
 私には好きな人がいるからミハイルとは結婚しない。
 私は絶対に家にも店にも戻るつもりは無いと 認めしたためて寮内のポストに投函した。


 部屋で横になっていると食事の時間になっていた。
 休日の夕飯は食堂で自由に食事ができる。
 平日は食前に揃って長いお祈りタイムがあるのだ。

「カフェでお見合いしていたの?」昼間の再会をスーザンに見られていた。
「ううん、そんなんじゃないわ」
「元気ないね。そろそろ緊張も解けて疲れが出る時期よね」

「なんだか張り詰めていた気持ちが崩れたの。夕飯はパスするわ」
「少しでも食べた方がいいわ。クレア、食堂に行こう!」

 背を押されて食堂にいくと隅でノエル様がボソボソと食事をしていた。
 1か月彼女をみつめ続けているが時々違和感を感じる。
 私と目が合うと、サッと食事を切り上げて逃げるように食堂を出て行った。

「人見知りが激しいからね。1年の時からあの調子よ」
「声も最近は聞いたことないわね」
「クレアは知らないのか・・・」とスーザンが頭を寄せて来た。

 ノエル様は婚約破棄のショックで記憶を失くして1年間寝込んで治療したが記憶は戻らなかった。
 それで公爵令嬢として生きていけないから除籍されてこの学園寮に放り込まれたと話してくれた

「まぁ お気の毒に知らなかったわ」
「みんな知ってるよ? 除籍と言ってもサウザー公爵家には面倒見て貰ってるんだもん幸せだわ」

 幸せには見えないが、生活には困らない・・・私と同じ。
 寮という檻の中に自身を閉じ込め、外敵から身を守っているのね。

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

初恋の結末

夕鈴
恋愛
幼い頃から婚約していたアリストアとエドウィン。アリストアは最愛の婚約者と深い絆で結ばれ同じ道を歩くと信じていた。アリストアの描く未来が崩れ……。それぞれの初恋の結末を描く物語。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 双子として生まれたエレナとエレン。 かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。 だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。 エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。 両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。 そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。 療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。 エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。 だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。 自分がニセモノだと知っている。 だから、この1年限りの恋をしよう。 そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。 ※※※※※※※※※※※※※ 異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。 現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦) ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

政略結婚の指南書

編端みどり
恋愛
【完結しました。ありがとうございました】 貴族なのだから、政略結婚は当たり前。両親のように愛がなくても仕方ないと諦めて結婚式に臨んだマリア。母が持たせてくれたのは、政略結婚の指南書。夫に愛されなかった母は、指南書を頼りに自分の役目を果たし、マリア達を立派に育ててくれた。 母の背中を見て育ったマリアは、愛されなくても自分の役目を果たそうと覚悟を決めて嫁いだ。お相手は、女嫌いで有名な辺境伯。 愛されなくても良いと思っていたのに、マリアは結婚式で初めて会った夫に一目惚れしてしまう。 屈強な見た目で女性に怖がられる辺境伯も、小動物のようなマリアに一目惚れ。 惹かれ合うふたりを引き裂くように、結婚式直後に辺境伯は出陣する事になってしまう。 戻ってきた辺境伯は、上手く妻と距離を縮められない。みかねた使用人達の手配で、ふたりは視察という名のデートに赴く事に。そこで、事件に巻き込まれてしまい…… ※R15は保険です ※別サイトにも掲載しています

処理中です...