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5 完結
しおりを挟む父とトレバー伯爵家に向かった。
屋敷に足を踏み入れると、昨日の事のように思い出す。父親同士の親交で私とキリアン様は知り合い、私は彼に一目惚れしたんだった。
先ぶれを出していたので直ぐにサロンに招かれ、キリアン様のご両親は既に待ってくれていた。
「キリアンから話は聞いている。申し訳ない」とご両親は謝罪し、父が婚約の解消を申し出ると受け入れられた。
キリアン様と話したいと願い出て彼の部屋に案内された。
彼の部屋に入るのは初めてだった。ベッドで横になり美しい顔は紫色に腫れて別人のようだ。
こちらに顔を向けて「ごめん、体中痛くて起き上がれない」と弱弱しく言った。
「婚約は解消になったの。それを伝えようと思って」
「そうか。傷つけて悪かった。本当にすまない」
「いいえ、婚約を強請ったのは私よ。ごめんなさい」
「決まった時は嬉しかった。・・・今更だけど」
「今頃そんな事、遅いわよ」
私は泣いていた。キリアン様も腫れた目から涙がこぼれていた。
なんで貴方が泣くのよ私のことなんて好きじゃなかったくせに。
「リアンって呼びたかったわ」
「うちでは『リアン』と呼ばれるのは長兄のジュリアンなんだ。ディアナには俺の名前を呼んで欲しかった」
「お姉様が一番好きって言ったわ」
「うちは男兄弟ばかりだから優しいお姉さんに憧れた。ディアナに好きだって言ったら言い触らしただろう?」
「・・そうね、キリアン様は私が好きなの~って自慢したわね」
「兄貴達にからかわれるのが嫌だった」
「腕を組むなって言ったわ」
「ディアナに触れられると俺も触れたくなるから」
「私は・・・」触れて欲しかったわ。抱きしめてキスだって。
「嘘だったんだ。今までの俺は全部嘘だ。俺は嘘つきだ。ごめん」
「私の気持ちに嘘は一つも無かったわ。貴方が大好きだった」
「俺もディアナが大好きだった。今でも好きだ。大好きだ」
「うぅぅ、もう遅いわ。婚約は解消しちゃったんだから」
「俺は救いようのない馬鹿だ」
続く言葉もなく私達は見つめ合って泣いていた。
「ディアナ、帰るよ」父に声を掛けられて私は部屋を出た。
「なんだまた泣かされたのか?」父が私の頭を胸に抱き寄せて「いいのか?本当にこれでいいのか?」と何度も頭を撫でた。
「お父様・・・私・・」
「ディアナ! 待って」
振り返ると扉にもたれてキリアン様が立っていた。
「今度は俺から婚約を申し込む。断られても何度でも申し込む」
「そんなのは受け入れないぞ。大事な娘をお前なんかに渡せるか」
「それでも俺は諦めません」
「まぁ口では何とでも言えるな。行動で示せ」
「はい!」
***
結局私達の婚約は解消されて、時は流れ私は3年生になった。
同じ教室に留年したキリアンがいる。もう様はつけなくていいそうだ。
「再婚約はいつなの~」とガーネットが冷やかしてくる。
「卒業するまで婚約者は決めなくていいって言われてるわ」
「釣書もいっぱい来てるんでしょう?」
「お父様が全部断ってる」
「まぁ こっちに回してよ」
彼女にも素敵な婚約者がいるのに何を言ってるんだか。
「ディアナ、補習に行こう」
自然に手を繋いでくるキリアン。悪い気はしないけど家族からは簡単に許すなと言われている。
婚約を解消してからお互いに素直な気持ちで接することができるようになった。
トーマス様も留年したけどクラスは別になりキリアンとは仲が良かったのに、お互い挨拶もしなくなってしまった。留年して、年上の婚約者と上手くいってないと噂になっている。
あんな酷いこと言ったんだもの罰が当たったのかも。
頷いたキリアンだってまだちょっと許せないわ。
今やフリーになったキリアンに擦り寄って来るご令嬢が後を絶たない。
そんな女性達に囲まれている元婚約者の姿を見るとイラッとする。
でも私を見つけると、ご令嬢達を振り切って駆けて来るキリアンの姿にドキドキして嬉しい私がいる。
「卒業パーティのドレスは贈るからね」
彼と踊るシーンを想像すると顔が緩んでしまうわ。
私はやっぱりキリアンには甘い、甘すぎる。
「お父様が送り返すかもよ?」
「行動で示せって言われたんだ、負けないよ」そう言ってキリアンは私の手を取るとキスを落とした。
卒業パーティでキリアンに婚約を申し込まれる予感。
私はきっと受け入れるんだろうな。
父の渋い顔が浮かんだ。
────終わり。
最後まで読んで頂いて本当に有難うございました。
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ご感想ありがとうございます。
大事な部分が駆け足でしたね、申し訳ないです。
読んでいただいて有難うございました。
ご感想有難うございます。
破局を迎えた二人ですが、反省して一からやり直して幸福を掴もうとしています。
ディアナの家族はまだキリアンを許していない感じですが、愛し合う二人はきっと乗り越えると思われます。
甘ちゃんだったキリアンの覚悟がこの先で試されますね^^