4度婚約解消されました。でも私は図太く生きていきます!

ミカン♬

文字の大きさ
上 下
21 / 21

21 完結

しおりを挟む
★《オスカー視点・続き》★


俺は枕を抱えて、毒薬を吸わないようにしようと構えていた。
ベニーが近づけば傍らの松葉杖で応戦だ。

ジリジリとベニーが近づいてくる。

「俺を人形にするのか?何が楽しいんだ」
「楽しいわ、傍に置いて可愛がってあげる、叔母様と二人で、ふふふ」

こういう所が嫌いだった、ベニーの本性は恐ろしく残酷だ。



「ベニー・ネイラム!そこまでだ!」


王太子殿下の声が響いてベニーはドアを振り返った。

「手に持っている物を下に置いて下さい、ベニー姉さま」
殿下め、俺を囮にしたな。

もっと早く来て欲しかった。ポンプを一押しで、俺は壊されるというのに。
掛布団を頭から被った。


「これはただの香水よ、甘い香りでオスカーを誘惑しに来ただけよ」

「なら下に置いて、こちらにどうぞ」

「分かったわよ、ほら」


ベニーは諦めたようだ。ホッとして、これでリアナの元に帰れると思った。

「がぁあああぁぁぁぁあああああ!!!」

だが凄まじい声が聞こえて、布団をめくると・・・ベニーが床を転げ回り、香水瓶を手にした王太子殿下が冷たい目で見下ろしていた。


「甘い香水だと言うので、かけてあげたら狂いだしたよ。どういう事だろうね」

のたうち回るベニーは涎を垂らして、目を血走らせ危険な状態に陥っている。


「殿下・・・・なんて危険なことを、ご自分が毒を吸ったらどうするんですか!」」

「危険だから侯爵は動かないで。そろそろ罪人を取り押さえて連れて行こうか」

タオルを口元に巻いた騎士が暴れるベニーを抱えて連れて出た。


「ぎゃぁぁぁああああ!がぁぁぁぁぁあああ!!」

ベニーの叫び声が廊下に響いていたが、気を失ったのか静かになった。


「部屋を変えようか侯爵。私の母と従姉が・・・酷いことをしたね」
「いえ・・」としか言えなかった。

温厚で正義感の強い王太子殿下の・・・知らなかった一面を見た。
部屋を移されても俺の耳にはベニーの断末魔の叫びが、いつまでも消えなかった。


『私に免じて母上の処分は任せてもらえないだろうか。恐らく、証拠は無いが、侯爵の両親の死も王妃が関わっている。この件が知られると隣国との関係も悪くなる、必ず侯爵には償う、目を瞑って欲しい』

王太子殿下の告白、これは誰にも聞かせられない。

念願の隣国との縁を結ぶことが出来たのだ。ヴィケット姫との婚約解消は殿下も避けたいところだろう。
両親の死・・・思う所はあるが俺は黙ってうなずいた。




     ***




「それでベニー様はどうなったのですか?」

「精神が壊れてしまったが、解毒薬で徐々に回復する。過去の例だと後遺症に悩まされるようだ。不安症や自己同一性の障害など」


「自業自得だよ、仕方ないさ」

カヌレを食べながらクラリス様は素っ気ない。


昨日オスカー様は侯爵家に戻ってこられた。私は泣いて今朝まで目がパンパンに腫れていたがやっと元に戻り、庭のテラスでお茶をしながら、オスカー様から王宮での出来事を話してもらっている。

「毒薬を持ち出した医療従事者も多数処分されて一件落着でいいのかな?」

「ああ、陛下と殿下に懇願されて貸しを作った。王妃は病気で1年の寿命だそうだ」

「甘いね。オスカーが良いなら問題ないけど」
「俺が甘いと思うか?」

まだ足が治っていないのに私を膝に乗せてオスカー様は次々チョコレートを私の口に放り込んでいる。

「甘いでしょうが。リアナが真っ赤だよ」
「夫婦だからいいんだよ」

王命により、オスカー様が戻るなり私は王家推薦の子爵家の養女になって、セルマー家との縁も切れ、正式にオスカー様の妻となった。
王命って凄い。これで王家との貸し借りはないそうだ。

「また俺から逃げようとしたよね?リアナ」
「それは修道院で一生オスカー様を想って強く生きていこうと思って」

「オスカーに婚約解消されてかなーり怒って開き直っていたよね。儚そうに見えてリアナは案外強いから、監禁生活も全然平気そうだったよ」


「リアナが強くて良かった。また傷つけて、壊してしまわないか不安だった」

「大丈夫です。私は結構図太い性格なので簡単には壊れません。惨めな負け犬なんかじゃないですからね?クラリス様」

「はいはい、悪かったごめんね。オスカーの執着地獄の牢獄に一生閉じ込められて幸せにね。さて、仕事してくるか」
クラリス様の計らいで、王太子殿下の前でキスをしちゃった私とオスカー様はラヴラヴだと世間に認定された。

結婚式も来月に迫っている。もう誰にも邪魔されない。
侯爵夫人という身分違いな立場になる。でも、私だって出来ることがあるはずだ。私だからこそ出来る事が、きっと。
オスカー様を支えながら精一杯やっていこう。


婚約者達と計4回婚約解消にサインした。

記憶喪失のアランとの婚約解消がオスカー様と結ばれるきっかけになった。
アランと幸せそうに笑っていたダイアナはもういない。

「リアナ、腕は完治した。足は来月には完治するだろう」
「はい、良かったですね」

「で、腕は治ったんだ、問題ない。俺たち正式に夫婦になったよな?」
なんだかオスカー様の手つきが怪しい。私の腕をサスサスしている。


「もう鳥肌は立たないな。大丈夫だな」
「そうですね、でも足を痛めて結婚式が中止になると困るので、式まで我慢して下さい」
「今から三日で完治してみせる・・・」


今度こそフワーロンのウェディングドレスを着るんだ。
赤い目の悪魔のオスカー様は、あまーい私の旦那様になった。
もしもまた記憶を失うことがあっても、きっとまた私達はお互いを1番に思い出す。

「仕事に戻るか・・・」
「もう少しだけこのまま」
離れがたくて、私達はまた長いキスを交わした。






──────完結。

最後まで読んで下さって、本当に有難うございました。



しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

ポテトラテ
2023.08.05 ポテトラテ
ネタバレ含む
ミカン♬
2023.08.05 ミカン♬

ご感想有難うございます。嬉しくて感謝感激です!

私もクラリスがお気に入りキャラです^^

解除
Yuu
2023.08.02 Yuu
ネタバレ含む
ミカン♬
2023.08.02 ミカン♬

ご感想有難うございます!

もう1回出てきます、待ってて下さいね。

解除

あなたにおすすめの小説

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

その後2人を待っていたのは、正反対の人生でした

柚木ゆず
恋愛
 一目惚れをした令嬢・エルザを手に入れるため、エルザの最愛の人であり婚約者のユーゴに大けがを負わせて記憶喪失にさせ、『逆らうと更に酷い目に遭わせる』とエルザを脅迫して自らと婚約させた侯爵家の令息・ウィリアム。  しかし、その僅か9か月後。そのショックによって笑顔を作れなくなってしまったエルザに飽き、彼は一方的に婚約破棄をしてしまいます。  エルザとユーゴの心身を傷つけ、理不尽な振る舞いをしたウィリアム。  やがてそんな彼の心身に、異変が起き始めるのでした――。  ※こちらは以前投稿していたお話のリメイク(いただいたご意見とご指摘をもとに文章を書き直し、キャラクターの性格やストーリーを数か所変更したもの)となっておいます。  ※8月3日。体調の影響でお返事(お礼)を行う余裕がなく、現在感想欄を閉じさせていただいております。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?

恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ! ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。 エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。 ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。 しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。 「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」 するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。