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★《オスカー視点》★
腕の中で泣きじゃくるリアナを決して離すまいと思った。
好きで愛おしくて、やっと手の中に閉じ込めたはずのリアナ。
結婚式を待つばかりの幸福な時間は、ダイアナによって奪われた。
ダイアナだけじゃなかった。
あの日、意識が戻ると俺は耳に集中した────
声が聞こえる・・・
ベニーと王妃の声?
ここはどこだ・・・・なんで怪我をしてる?
「リアナはクラリスが引き取ったなんて、愚図ねハワードは」
「ベニー、二人は本当に愛し合っていたのではなくて?」
「いいえ!リアナはただの当て馬なの、私を愛しているはずよ」
「大丈夫よ、リアナは消せばいいの。手に入らないなら、オスカーを壊してしまえばいいわ」
「叔母様、そこまでは・・・」
「お人形のようにして、美しい姿を一生愛でるの、素敵じゃなくて?」
なんだこの会話は、現実なのか?
「目覚めればわかるわ。記憶障害で・・・オスカーは私との愛し合った日々を思い出すはずよ。解毒薬を飲ませなければいいのよ」
「そうね、オスカーの記憶次第ね」
俺を壊す?リアナを消すだって?
昨夜リアナから「愛していると」告白され俺は有頂天になっていた。
それから・・・何があったんだ。
愛し合った日々なんて無かったのに、記憶障害はベニーの方だろう。
冷静になるんだ。まずは状況を把握しないと俺とリアナが危ない。
俺は怪我で体が動かせない!頭に裂傷、手足の骨にヒビ?肋骨は折れているのか呼吸も苦しい。
俺の様子を見に来たベニーに声を掛けた。
「ここはどこだ?」
「オスカー、王妃様の宮よ。私達襲撃されたの、貴方が私を庇ってくれて、私は無傷よ」
「・・・そうか。君が無傷で嬉しいよ」
「オスカー、リアナを覚えてる?」
「は?・・・・あのつまらない女か」
ベニーは喜色の笑みだが、俺はリアナにすまない気持ちでいっぱいだ。
「ふふ、あの子の義姉が私達を襲ったの。姉妹で頭が可笑しいのよ」
「そうか、ベニー詳しく説明してくれるかな?」
ベニーは嘘を交えながら俺に説明してくれた。
それで俺は、記憶が18歳に遡っていると信じさせた。
ベニーは大丈夫、恐ろしいのは王妃だ。
俺に意味ありげな視線を絡ませるのも気持ち悪い。
ベニーも俺から離れずに王妃を牽制していた。
ベニーの監視の中で執事のテリーに会うことが出来た。
「坊ちゃん心配致しました」
涙ぐむテリーに俺は訴えた。
「愛するベニーが看護してくれるから鳥肌が立つくらい嬉しいよ」
「?・・坊ちゃんそれは・・よう御座いました。安心致しました!」
「もういいでしょう! オスカーは絶対安静なの、帰りなさい」
数分で追い返されたがテリーは俺が記憶を失っていないと分かってくれた。
俺がベニーを愛したことが無いのは知っているし、リアナに鳥肌が立つくらい嫌われていると相談したこともある。
この状況をクラリスは打開してくれるはずだ。
体が重く時々頭痛も起こるがベニーと王妃は俺に解毒薬を与えなかった。
リアナとの婚約も解消を迫られ、断腸の思いでサインした。
挙式もキャンセル。俺は殺したいほどベニーと王妃を憎み、精神的に限界が近づいていた。
リアナを失うことがあれば俺は悪魔、いや、魔王になってこの国を滅ぼしてやる。
徐々に怪我は回復し動けるようになると、待ち望んだ救世主が現れた。
「ワイゼン侯爵、お加減はいかがですか?」
王太子殿下と婚約者のヴィケット様が見舞いに来てくれた。
「悪い噂が立っています。王妃が貴方を監禁していると」
「それは申し訳ないですね。体は動かせます、帰宅させて下さい」
「いいえ!まだ動かしてはなりません。治りかけた傷が悪化するわ。王宮医師の手当てを受け続けるのがオスカーには最善よ」
「母上、では私の宮に侯爵を迎えます」
「私が看護にお供するわ、婚約者ですもの!」
「はぁ・・・ベニー姉様はもう婚約者でも妻でもありません。看護はこちらで致します。まさかまだ解毒薬を侯爵は飲まれて無いのですか?」
「まだ、飲ませない方が良いって、ねぇ、叔母様?」
「え、ええ」
「医師を変える必要がありますね。侯爵をお連れする、用意しろ!」
俺は王太子殿下の宮殿に移され、解毒薬を飲むことが出来た。
クラリスにも会えて、安全な場所でリアナを絶対に守って欲しいと頼んだ。
俺とベニーは王太子殿下によって引き裂かれたなどと噂が立てられ、人の出入りが無くなる夜間は寝ないで警戒していた。
すると予想通り、俺の部屋に侍女を懐柔したベニーが忍び込んできた。
これは警護も使用人も殿下は見直す必要があると思いつつ灯りを点けると、眩しそうに顔を歪めたベニーの顔が見える。
「オスカー、全て思い出したのよね?」
「ああ、今更なんでベニーは俺に執着するんだ?別の方法で幸せになればいいだろう」
「リアナを選んだからよ!」
「つまらないプライドか」
ベニーの手に香水瓶が見える。
俺はまだ素早く動けない、絶体絶命だった。
腕の中で泣きじゃくるリアナを決して離すまいと思った。
好きで愛おしくて、やっと手の中に閉じ込めたはずのリアナ。
結婚式を待つばかりの幸福な時間は、ダイアナによって奪われた。
ダイアナだけじゃなかった。
あの日、意識が戻ると俺は耳に集中した────
声が聞こえる・・・
ベニーと王妃の声?
ここはどこだ・・・・なんで怪我をしてる?
「リアナはクラリスが引き取ったなんて、愚図ねハワードは」
「ベニー、二人は本当に愛し合っていたのではなくて?」
「いいえ!リアナはただの当て馬なの、私を愛しているはずよ」
「大丈夫よ、リアナは消せばいいの。手に入らないなら、オスカーを壊してしまえばいいわ」
「叔母様、そこまでは・・・」
「お人形のようにして、美しい姿を一生愛でるの、素敵じゃなくて?」
なんだこの会話は、現実なのか?
「目覚めればわかるわ。記憶障害で・・・オスカーは私との愛し合った日々を思い出すはずよ。解毒薬を飲ませなければいいのよ」
「そうね、オスカーの記憶次第ね」
俺を壊す?リアナを消すだって?
昨夜リアナから「愛していると」告白され俺は有頂天になっていた。
それから・・・何があったんだ。
愛し合った日々なんて無かったのに、記憶障害はベニーの方だろう。
冷静になるんだ。まずは状況を把握しないと俺とリアナが危ない。
俺は怪我で体が動かせない!頭に裂傷、手足の骨にヒビ?肋骨は折れているのか呼吸も苦しい。
俺の様子を見に来たベニーに声を掛けた。
「ここはどこだ?」
「オスカー、王妃様の宮よ。私達襲撃されたの、貴方が私を庇ってくれて、私は無傷よ」
「・・・そうか。君が無傷で嬉しいよ」
「オスカー、リアナを覚えてる?」
「は?・・・・あのつまらない女か」
ベニーは喜色の笑みだが、俺はリアナにすまない気持ちでいっぱいだ。
「ふふ、あの子の義姉が私達を襲ったの。姉妹で頭が可笑しいのよ」
「そうか、ベニー詳しく説明してくれるかな?」
ベニーは嘘を交えながら俺に説明してくれた。
それで俺は、記憶が18歳に遡っていると信じさせた。
ベニーは大丈夫、恐ろしいのは王妃だ。
俺に意味ありげな視線を絡ませるのも気持ち悪い。
ベニーも俺から離れずに王妃を牽制していた。
ベニーの監視の中で執事のテリーに会うことが出来た。
「坊ちゃん心配致しました」
涙ぐむテリーに俺は訴えた。
「愛するベニーが看護してくれるから鳥肌が立つくらい嬉しいよ」
「?・・坊ちゃんそれは・・よう御座いました。安心致しました!」
「もういいでしょう! オスカーは絶対安静なの、帰りなさい」
数分で追い返されたがテリーは俺が記憶を失っていないと分かってくれた。
俺がベニーを愛したことが無いのは知っているし、リアナに鳥肌が立つくらい嫌われていると相談したこともある。
この状況をクラリスは打開してくれるはずだ。
体が重く時々頭痛も起こるがベニーと王妃は俺に解毒薬を与えなかった。
リアナとの婚約も解消を迫られ、断腸の思いでサインした。
挙式もキャンセル。俺は殺したいほどベニーと王妃を憎み、精神的に限界が近づいていた。
リアナを失うことがあれば俺は悪魔、いや、魔王になってこの国を滅ぼしてやる。
徐々に怪我は回復し動けるようになると、待ち望んだ救世主が現れた。
「ワイゼン侯爵、お加減はいかがですか?」
王太子殿下と婚約者のヴィケット様が見舞いに来てくれた。
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「それは申し訳ないですね。体は動かせます、帰宅させて下さい」
「いいえ!まだ動かしてはなりません。治りかけた傷が悪化するわ。王宮医師の手当てを受け続けるのがオスカーには最善よ」
「母上、では私の宮に侯爵を迎えます」
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「はぁ・・・ベニー姉様はもう婚約者でも妻でもありません。看護はこちらで致します。まさかまだ解毒薬を侯爵は飲まれて無いのですか?」
「まだ、飲ませない方が良いって、ねぇ、叔母様?」
「え、ええ」
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「オスカー、全て思い出したのよね?」
「ああ、今更なんでベニーは俺に執着するんだ?別の方法で幸せになればいいだろう」
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