4度婚約解消されました。でも私は図太く生きていきます!

ミカン♬

文字の大きさ
上 下
20 / 21

20

しおりを挟む
★《オスカー視点》★

腕の中で泣きじゃくるリアナを決して離すまいと思った。
好きで愛おしくて、やっと手の中に閉じ込めたはずのリアナ。
結婚式を待つばかりの幸福な時間は、ダイアナによって奪われた。


ダイアナだけじゃなかった。




あの日、意識が戻ると俺は耳に集中した────




声が聞こえる・・・

ベニーと王妃の声?


ここはどこだ・・・・なんで怪我をしてる?



「リアナはクラリスが引き取ったなんて、愚図ねハワードは」
「ベニー、二人は本当に愛し合っていたのではなくて?」
「いいえ!リアナはただの当て馬なの、私を愛しているはずよ」

「大丈夫よ、リアナは消せばいいの。手に入らないなら、オスカーを壊してしまえばいいわ」
「叔母様、そこまでは・・・」

「お人形のようにして、美しい姿を一生愛でるの、素敵じゃなくて?」


なんだこの会話は、現実なのか?


「目覚めればわかるわ。記憶障害で・・・オスカーは私との愛し合った日々を思い出すはずよ。解毒薬を飲ませなければいいのよ」

「そうね、オスカーの記憶次第ね」

俺を壊す?リアナを消すだって? 

昨夜リアナから「愛していると」告白され俺は有頂天になっていた。
それから・・・何があったんだ。

愛し合った日々なんて無かったのに、記憶障害はベニーの方だろう。

冷静になるんだ。まずは状況を把握しないと俺とリアナが危ない。

俺は怪我で体が動かせない!頭に裂傷、手足の骨にヒビ?肋骨は折れているのか呼吸も苦しい。



俺の様子を見に来たベニーに声を掛けた。

「ここはどこだ?」
「オスカー、王妃様の宮よ。私達襲撃されたの、貴方が私を庇ってくれて、私は無傷よ」
「・・・そうか。君が無傷で嬉しいよ」

「オスカー、リアナを覚えてる?」
「は?・・・・あのつまらない女か」
ベニーは喜色の笑みだが、俺はリアナにすまない気持ちでいっぱいだ。

「ふふ、あの子の義姉が私達を襲ったの。姉妹で頭が可笑しいのよ」
「そうか、ベニー詳しく説明してくれるかな?」

ベニーは嘘を交えながら俺に説明してくれた。
それで俺は、記憶が18歳に遡っていると信じさせた。

ベニーは大丈夫、恐ろしいのは王妃だ。
俺に意味ありげな視線を絡ませるのも気持ち悪い。
ベニーも俺から離れずに王妃を牽制していた。


ベニーの監視の中で執事のテリーに会うことが出来た。

「坊ちゃん心配致しました」
涙ぐむテリーに俺は訴えた。
ベニーが看護してくれるから嬉しいよ」

「?・・坊ちゃんそれは・・よう御座いました。安心致しました!」

「もういいでしょう! オスカーは絶対安静なの、帰りなさい」



数分で追い返されたがテリーは俺が記憶を失っていないと分かってくれた。
俺がベニーを愛したことが無いのは知っているし、リアナに鳥肌が立つくらい嫌われていると相談したこともある。
この状況をクラリスは打開してくれるはずだ。


体が重く時々頭痛も起こるがベニーと王妃は俺に解毒薬を与えなかった。
リアナとの婚約も解消を迫られ、断腸の思いでサインした。
挙式もキャンセル。俺は殺したいほどベニーと王妃を憎み、精神的に限界が近づいていた。

リアナを失うことがあれば俺は悪魔、いや、魔王になってこの国を滅ぼしてやる。


徐々に怪我は回復し動けるようになると、待ち望んだ救世主が現れた。

「ワイゼン侯爵、お加減はいかがですか?」

王太子殿下と婚約者のヴィケット様が見舞いに来てくれた。

「悪い噂が立っています。王妃が貴方を監禁していると」
「それは申し訳ないですね。体は動かせます、帰宅させて下さい」

「いいえ!まだ動かしてはなりません。治りかけた傷が悪化するわ。王宮医師の手当てを受け続けるのがオスカーには最善よ」

「母上、では私の宮に侯爵を迎えます」


「私が看護にお供するわ、婚約者ですもの!」
「はぁ・・・ベニー姉様はもう婚約者でも妻でもありません。看護はこちらで致します。まさかまだ解毒薬を侯爵は飲まれて無いのですか?」

「まだ、飲ませない方が良いって、ねぇ、叔母様?」
「え、ええ」
「医師を変える必要がありますね。侯爵をお連れする、用意しろ!」


俺は王太子殿下の宮殿に移され、解毒薬を飲むことが出来た。
クラリスにも会えて、安全な場所でリアナを絶対に守って欲しいと頼んだ。


俺とベニーは王太子殿下によって引き裂かれたなどと噂が立てられ、人の出入りが無くなる夜間は寝ないで警戒していた。
すると予想通り、俺の部屋に侍女を懐柔したベニーが忍び込んできた。
これは警護も使用人も殿下は見直す必要があると思いつつ灯りを点けると、眩しそうに顔を歪めたベニーの顔が見える。

「オスカー、全て思い出したのよね?」
「ああ、今更なんでベニーは俺に執着するんだ?別の方法で幸せになればいいだろう」

「リアナを選んだからよ!」
「つまらないプライドか」

ベニーの手に香水瓶が見える。
俺はまだ素早く動けない、絶体絶命だった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

その後2人を待っていたのは、正反対の人生でした

柚木ゆず
恋愛
 一目惚れをした令嬢・エルザを手に入れるため、エルザの最愛の人であり婚約者のユーゴに大けがを負わせて記憶喪失にさせ、『逆らうと更に酷い目に遭わせる』とエルザを脅迫して自らと婚約させた侯爵家の令息・ウィリアム。  しかし、その僅か9か月後。そのショックによって笑顔を作れなくなってしまったエルザに飽き、彼は一方的に婚約破棄をしてしまいます。  エルザとユーゴの心身を傷つけ、理不尽な振る舞いをしたウィリアム。  やがてそんな彼の心身に、異変が起き始めるのでした――。  ※こちらは以前投稿していたお話のリメイク(いただいたご意見とご指摘をもとに文章を書き直し、キャラクターの性格やストーリーを数か所変更したもの)となっておいます。  ※8月3日。体調の影響でお返事(お礼)を行う余裕がなく、現在感想欄を閉じさせていただいております。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?

恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ! ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。 エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。 ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。 しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。 「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」 するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...