4度婚約解消されました。でも私は図太く生きていきます!

ミカン♬

文字の大きさ
上 下
18 / 21

18

しおりを挟む
「リアナ、気が付いた?」

知らない部屋でベッドに横になっていた。体中が痛い、どうしたんだろう?

「ここはどこ?」

なぜか脇にはクラリス様がいて、泣きそうな顔をしている。

「王宮の医務室だよ。ごめん、こんなことになるなんて。許してリアナ」

頭が重くて、混乱している。私に何が起こったの?



「王宮?どうして・・・」

「リアナ、年はいくつ?」

「19歳です・・・」

「良かった!ハワードと婚約していた時期に遡るかと心配したよ」

「ハワード?・・・オスカー様はどこ?」

「彼は重傷でね、別室で手当てを受けている、何があったのか今から説明するよ」

クラリス様から事件のあらましを聞いて驚いた。まさかダイアナが王宮で事件を起こすなんて。


私は舞踏会の記憶は無く、数日前に記憶は遡っていた。

「一歩間違えればオスカーもリアナも命を失ったかもしれない」

「どうしたのですか?優しいですねクラリス様」

「うん、本当はリアナが大好きなの。幼い頃は大嫌いだった。私の母を奪われたみたいで」

「クラリス様のお母さまですか」


「リアナ『お兄さま』は本当は私なの。返事を書いていたのはオスカーだけどね」

「シスター・マーベルの手紙ですか?でも息子って・・・」

「私はね中身が『男性』なの。性同一性って障害なんだ」

「あ、それで・・・」

「体が弱かった母は父に再婚を勧めシスターになった。捨てられたと思って母を恨んでいたよ。そんな母から手紙を送られて、私は自分の悩みを打ち明けた。貴方が私を男に産んでくれていれば良かったのに!ってね。」

「それでシスターは『私の息子』と仰っていたんですね」

「文通をしているとリアナからの手紙が同封され、私は母との時間を邪魔されているような気持ちになった」

「ごめんなさい」

「お節介なオスカーが『可哀そうだ』って、君に返事を書き出した」

筆跡が違っているのでシスターは気づいていたのね。だから最後までご子息の名前を教えてくれなかったんだ。


「この話は終わり。待ってて、医者を呼んでくる」



クラリス様が出ていくと、待っていたようにハワードが部屋に入ってきた。

「リアナ、ベニー様がリアナは僕に返してくれるって。僕の家に行こう」
「へ?」


「侯爵はリアナを忘れてベニー様とやり直すんだって。僕たちもやり直そう」
「・・・うそ」

アランのようにオスカー様も私を忘れてしまったのだろうか。

「本当だよ、今はベニー様に手厚く看護してもらっているそうだよ」

私を愛しているのは嘘だったの?ベニー様の嫉妬を煽る為の・・・当て馬?


「あぁぁ、いやだ、もう何も信じられない・・・・」
「リアナ、泣かないで、リアナ・・・」



その後、クラリス様が戻り私は解毒薬を与えられ、正常に記憶が戻った。

戻ってもただ、悲しいだけだった。


     ***


クラリス様に引き取られて私は再びワイゼン侯爵の屋敷に戻って来た。

オスカー様との婚約はすぐに解消された。
彼に思い出してもらえなかった。私は忘れなかったのに、信じていたのに。

「私はここにいてもいいのかしら?」
「リアナは私の客人だ。遠慮はいらないよ」


連日ハワードと義兄が私を迎えに来るのを、クラリス様は追い返してくれる。
ベストスーツに髪を後ろで括りつけているクラリス様の姿は凛々しい男性のようだ。


オスカー様が今どうしているのか情報が入ってこなくて、重傷で完治に時間がかかるとしか分からない。
王妃様の宮で手当て受け、ベニー様が泊まり込んで面倒を見ているそうだ。



ダイアナが服毒自殺したと知らせがあった。

あのダイアナが?

「多分消されたんだ。罪を全て着せられて」

「セルマー家はどうなりますか?」

「一応、首の皮は繋がったみたいだよ。男爵に格下げ、領地も大部分没収だ」


現実味が全くなかった。
改めてあの人達を家族だと意識していなかったと感じる。涙も出ない。

「私は冷たいですね」
「向こうも冷たいからいいじゃないか。他人だったんだ」

そうか、私には家族なんていなかったんだ、どこにも。



     ***



数日すると朝からアランが書類を持って訪ねてきた。
私はまだ打撲痛で寝込んでおり、対応はクラリス様がしてくれた。


「婚約解消が無効?」


記憶喪失中に婚約を解消したので無効だとアラン・スコットが教会に訴えたのだ。
審議のうえ訴えは認められ、私とアランは再婚約となった。


「でも安心して、これはハワードとセルマー家を牽制するためだから」

「アランが私の為にそんなことを」

「しつこいハワードをこれで堂々と追い返せる。もちろんリアナは私が面倒みるからね」

侍女たちが今も変わらず世話してくれる。
クラリス様の中が男性だと聞いて、世話をして頂くのはちょっと恥ずかしい。


「オスカーがいないと執務が滞っている。それを理由に会ってくるよ。面会謝絶とかほざいて会わせないんだよね。ベニーは私が嫌いだからな。執事のテリーも連れて行く」

もう解毒薬でオスカー様の記憶も戻っているはずだ。それでもここに戻らないのは、やはり私は当て馬だったのだ。

「会えるといいですね」

「会えないと困るよ」
クラリス様は厳しい顔をして王宮に出かけて行った。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

婚約破棄されましたが、むしろ幸せですの! ―偽りの婚約から始まる、真実の愛―

ゆる
恋愛
公爵令嬢セリカ・ラピッドは、婚約破棄という屈辱を乗り越え、自らの力で未来を切り開く決意をする。貴族社会に渦巻く陰謀と偏見の中、彼女は国の貿易体制を改革する提案を掲げ、困難な道を進む。支援者と敵対者が入り乱れる中、セリカは果たして自らの信念を貫き、国の未来を変えることができるのか――令嬢の成長と挑戦を描く物語。

その後2人を待っていたのは、正反対の人生でした

柚木ゆず
恋愛
 一目惚れをした令嬢・エルザを手に入れるため、エルザの最愛の人であり婚約者のユーゴに大けがを負わせて記憶喪失にさせ、『逆らうと更に酷い目に遭わせる』とエルザを脅迫して自らと婚約させた侯爵家の令息・ウィリアム。  しかし、その僅か9か月後。そのショックによって笑顔を作れなくなってしまったエルザに飽き、彼は一方的に婚約破棄をしてしまいます。  エルザとユーゴの心身を傷つけ、理不尽な振る舞いをしたウィリアム。  やがてそんな彼の心身に、異変が起き始めるのでした――。  ※こちらは以前投稿していたお話のリメイク(いただいたご意見とご指摘をもとに文章を書き直し、キャラクターの性格やストーリーを数か所変更したもの)となっておいます。  ※8月3日。体調の影響でお返事(お礼)を行う余裕がなく、現在感想欄を閉じさせていただいております。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?

恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ! ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。 エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。 ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。 しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。 「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」 するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...