4度婚約解消されました。でも私は図太く生きていきます!

ミカン♬

文字の大きさ
上 下
19 / 21

19

しおりを挟む
その夜遅くに戻って来たクラリス様はオスカー様は回復していると話してくれた。

「良かった、私はオスカー様がお屋敷に戻る前に出ていきますね」

「リアナ・・・」

仲睦まじいベニー様とオスカー様の姿を見たのだろうか。
クラリス様はそれ以上は教えてくれなかった。

結婚式もキャンセルとなり、フワーロンのウェディングドレスも完成したけど着ることは出来ない。



私の心は決まっていた。

女性の駆け込み寺と名高い、山の上に建つ修道院。
これは足掛かりだ、逃げるんじゃない!
戒律の厳しいそこに行って、完全にセルマー家とは縁を切る。

アランと正式に婚約を解消して、一人で生きていこう。
シスター・マーベルのようになって、傷ついた子ども達に寄り添ってあげたい。
一人前になって社会にも貢献できる強い女性になるんだ。

クラリス様に話すと「分かった、リアナが望むならそうしよう」と言ってくれた。


私は数週間で元気になりアランと再び婚約を解消した。

短い間だったけど、侯爵家の生活は心地良くて・・・夢のようで。
オスカー様を愛したことは嘘偽りない気持ちだ、後悔は無い。


4度も婚約解消された私。でも決して負け犬なんかじゃない!
私利私欲の為に利用されるのはもう真っ平。
自分が選んだ場所で自分の為に、私は図太く生きていく!




───修道院に向かう日になった。

「行かせる訳ないでしょう?リアナは一生ここにいるんだよ」

私はクラリス様に屋敷の隠れ部屋に監禁されてしまった。
書斎のキャビネットの裏に作られた小部屋だ。


「冗談ですよね?私を殺すの?」
「死なせない。これはオスカーとリアナの為なんだ。時期が来たら出してあげるから我慢してよ」
敵か味方か・・・クラリス様って本当に分からない変人だ!

オスカー様の為だというなら監禁も我慢してあげようじゃないの。
修道院行きを阻止したのは何か理由があるのだろう。わかんないけど。
大嫌いだった赤い目の悪魔。
最後にあの悪魔に会うことが出来れば、一発殴らないと気が済まない。


世間では私は修道院に向かったと思われている。
ハワードは私を追いかけて、修道院で門前払いされているらしい。
過去にしがみ付く弱くて可哀そうな人。甥には強く育ってほしい。


監禁生活が、数週間経ったある日、いつも通り部屋の扉が開いた。

「食事ですか?食欲ないですけど」
「いや、出るよリアナ!急いで用意するんだ!」

簡単に湯あみをして侍女達が手早くドレスアップしてくれる。
まさか、ハワードに引き渡されるんじゃないでしょうね?

「クラリス様、説明して!どこに行くの?」
「ふふん、内緒。サプライズは派手にやらないとね」

「サプライズってなんですか!」
「可哀そうなリアナ、覚悟しておいてよね」
「か、覚悟って」

馬車に押し込められて、逃げないようにしっかりクラリス様に捕まっている。
「あ、紐で縛っておけば良かったかな。くくく」

窓から城が見えてくる、セルマー家の娘である私も罰を受けるのだろうか。

「ろ、牢獄に入れられるんでしょうか」
「ああそうだね。牢獄だ」
私の一生はなんだったんだろう。ダイアナのように消されるのか。

城の中に馬車を乗り入れると、私はクラリス様にお姫様抱っこされて宮殿に向かった。

「歩けます!」
「早く行かないと、間に合わなければフィナーレを飾れない」

「はぁぁ~~」
大きくため息をつくと宮殿への階段を上り、怖くて思わずクラリス様にしがみついた。


宮殿の広いエントランス、そこに赤い目の悪魔と王太子殿下が立っておられる。

「間に合った。すれ違ったらアウトだった」
クラリス様は私をそっと下した。


「リアナ!」

私達を見つけたオスカー様がこちらに向かってくる。まだ杖を突いて、お顔には傷が残っていた。

やつれた表情にアランが戻って来た日が重なって、切なくなる。

「オスカー様・・・」
吸い寄せられるように足が勝手に、オスカー様に向かって・・・近づいてゆく。


「会いたかったよリアナ、もう絶対離さない」
「会いたかった?私に?」

杖を手放してオスカー様は私を抱き締めた。

「あ・・え・・んん?」

人がいっぱい居るにも関わらず、オスカー様は私の頭を抱えると思いっきり口づけた。
歯がぶつかって、それでもオスカー様は深く口づけてくる。
ああ、私はオスカー様に愛されていた。当て馬なんかじゃなかった。


「はい、もうお終い。王太子殿下が驚いておられるよ」
クラリス様に顔を引き離されたが、私達は抱き合っていた。

「リアナ、心配させたな」
「あ・・あ・・オスカー様・・会いたかったですぅぅうう・・・う・ぅう・・・」


一発殴ってやろうと思っていたのに。
王太子殿下の御前、オスカー様の腕の中で・・・私は泣きじゃくっていた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」

ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」 美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。 夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。 さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。 政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。 「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」 果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜

凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】  公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。  だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。  ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。  嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。  ──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。  王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。  カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。 (記憶を取り戻したい) (どうかこのままで……)  だが、それも長くは続かず──。 【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】 ※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。 ※中編版、短編版はpixivに移動させています。 ※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。 ※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

殿下の婚約者は、記憶喪失です。

有沢真尋
恋愛
 王太子の婚約者である公爵令嬢アメリアは、いつも微笑みの影に疲労を蓄えているように見えた。  王太子リチャードは、アメリアがその献身を止めたら烈火の如く怒り狂うのは想像に難くない。自分の行動にアメリアが口を出すのも絶対に許さない。たとえば結婚前に派手な女遊びはやめて欲しい、という願いでさえも。  たとえ王太子妃になれるとしても、幸せとは無縁そうに見えたアメリア。  彼女は高熱にうなされた後、すべてを忘れてしまっていた。 ※ざまあ要素はありません。 ※表紙はかんたん表紙メーカーさま

「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」

ゆる
恋愛
平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる 婚約者を平民との恋のために捨てた王子が見た、輝く未来。 それは、自分を裏切ったはずの侯爵令嬢の背中だった――。 グランシェル侯爵令嬢マイラは、次期国王の弟であるラウル王子の婚約者。 将来を約束された華やかな日々が待っている――はずだった。 しかしある日、ラウルは「愛する平民の女性」と結婚するため、婚約破棄を一方的に宣言する。 婚約破棄の衝撃、社交界での嘲笑、周囲からの冷たい視線……。 一時は心が折れそうになったマイラだが、父である侯爵や信頼できる仲間たちとともに、自らの人生を切り拓いていく決意をする。 一方、ラウルは平民女性リリアとの恋を選ぶものの、周囲からの反発や王家からの追放に直面。 「息苦しい」と捨てた婚約者が、王都で輝かしい成功を収めていく様子を知り、彼が抱えるのは後悔と挫折だった。

処理中です...