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その夜遅くに戻って来たクラリス様はオスカー様は回復していると話してくれた。
「良かった、私はオスカー様がお屋敷に戻る前に出ていきますね」
「リアナ・・・」
仲睦まじいベニー様とオスカー様の姿を見たのだろうか。
クラリス様はそれ以上は教えてくれなかった。
結婚式もキャンセルとなり、フワーロンのウェディングドレスも完成したけど着ることは出来ない。
私の心は決まっていた。
女性の駆け込み寺と名高い、山の上に建つ修道院。
これは足掛かりだ、逃げるんじゃない!
戒律の厳しいそこに行って、完全にセルマー家とは縁を切る。
アランと正式に婚約を解消して、一人で生きていこう。
シスター・マーベルのようになって、傷ついた子ども達に寄り添ってあげたい。
一人前になって社会にも貢献できる強い女性になるんだ。
クラリス様に話すと「分かった、リアナが望むならそうしよう」と言ってくれた。
私は数週間で元気になりアランと再び婚約を解消した。
短い間だったけど、侯爵家の生活は心地良くて・・・夢のようで。
オスカー様を愛したことは嘘偽りない気持ちだ、後悔は無い。
4度も婚約解消された私。でも決して負け犬なんかじゃない!
私利私欲の為に利用されるのはもう真っ平。
自分が選んだ場所で自分の為に、私は図太く生きていく!
───修道院に向かう日になった。
「行かせる訳ないでしょう?リアナは一生ここにいるんだよ」
私はクラリス様に屋敷の隠れ部屋に監禁されてしまった。
書斎のキャビネットの裏に作られた小部屋だ。
「冗談ですよね?私を殺すの?」
「死なせない。これはオスカーとリアナの為なんだ。時期が来たら出してあげるから我慢してよ」
敵か味方か・・・クラリス様って本当に分からない変人だ!
オスカー様の為だというなら監禁も我慢してあげようじゃないの。
修道院行きを阻止したのは何か理由があるのだろう。わかんないけど。
大嫌いだった赤い目の悪魔。
最後にあの悪魔に会うことが出来れば、一発殴らないと気が済まない。
世間では私は修道院に向かったと思われている。
ハワードは私を追いかけて、修道院で門前払いされているらしい。
過去にしがみ付く弱くて可哀そうな人。甥には強く育ってほしい。
監禁生活が、数週間経ったある日、いつも通り部屋の扉が開いた。
「食事ですか?食欲ないですけど」
「いや、出るよリアナ!急いで用意するんだ!」
簡単に湯あみをして侍女達が手早くドレスアップしてくれる。
まさか、ハワードに引き渡されるんじゃないでしょうね?
「クラリス様、説明して!どこに行くの?」
「ふふん、内緒。サプライズは派手にやらないとね」
「サプライズってなんですか!」
「可哀そうなリアナ、覚悟しておいてよね」
「か、覚悟って」
馬車に押し込められて、逃げないようにしっかりクラリス様に捕まっている。
「あ、紐で縛っておけば良かったかな。くくく」
窓から城が見えてくる、セルマー家の娘である私も罰を受けるのだろうか。
「ろ、牢獄に入れられるんでしょうか」
「ああそうだね。牢獄だ」
私の一生はなんだったんだろう。ダイアナのように消されるのか。
城の中に馬車を乗り入れると、私はクラリス様にお姫様抱っこされて宮殿に向かった。
「歩けます!」
「早く行かないと、間に合わなければフィナーレを飾れない」
「はぁぁ~~」
大きくため息をつくと宮殿への階段を上り、怖くて思わずクラリス様にしがみついた。
宮殿の広いエントランス、そこに赤い目の悪魔と王太子殿下が立っておられる。
「間に合った。すれ違ったらアウトだった」
クラリス様は私をそっと下した。
「リアナ!」
私達を見つけたオスカー様がこちらに向かってくる。まだ杖を突いて、お顔には傷が残っていた。
やつれた表情にアランが戻って来た日が重なって、切なくなる。
「オスカー様・・・」
吸い寄せられるように足が勝手に、オスカー様に向かって・・・近づいてゆく。
「会いたかったよリアナ、もう絶対離さない」
「会いたかった?私に?」
杖を手放してオスカー様は私を抱き締めた。
「あ・・え・・んん?」
人がいっぱい居るにも関わらず、オスカー様は私の頭を抱えると思いっきり口づけた。
歯がぶつかって、それでもオスカー様は深く口づけてくる。
ああ、私はオスカー様に愛されていた。当て馬なんかじゃなかった。
「はい、もうお終い。王太子殿下が驚いておられるよ」
クラリス様に顔を引き離されたが、私達は抱き合っていた。
「リアナ、心配させたな」
「あ・・あ・・オスカー様・・会いたかったですぅぅうう・・・う・ぅう・・・」
一発殴ってやろうと思っていたのに。
王太子殿下の御前、オスカー様の腕の中で・・・私は泣きじゃくっていた。
「良かった、私はオスカー様がお屋敷に戻る前に出ていきますね」
「リアナ・・・」
仲睦まじいベニー様とオスカー様の姿を見たのだろうか。
クラリス様はそれ以上は教えてくれなかった。
結婚式もキャンセルとなり、フワーロンのウェディングドレスも完成したけど着ることは出来ない。
私の心は決まっていた。
女性の駆け込み寺と名高い、山の上に建つ修道院。
これは足掛かりだ、逃げるんじゃない!
戒律の厳しいそこに行って、完全にセルマー家とは縁を切る。
アランと正式に婚約を解消して、一人で生きていこう。
シスター・マーベルのようになって、傷ついた子ども達に寄り添ってあげたい。
一人前になって社会にも貢献できる強い女性になるんだ。
クラリス様に話すと「分かった、リアナが望むならそうしよう」と言ってくれた。
私は数週間で元気になりアランと再び婚約を解消した。
短い間だったけど、侯爵家の生活は心地良くて・・・夢のようで。
オスカー様を愛したことは嘘偽りない気持ちだ、後悔は無い。
4度も婚約解消された私。でも決して負け犬なんかじゃない!
私利私欲の為に利用されるのはもう真っ平。
自分が選んだ場所で自分の為に、私は図太く生きていく!
───修道院に向かう日になった。
「行かせる訳ないでしょう?リアナは一生ここにいるんだよ」
私はクラリス様に屋敷の隠れ部屋に監禁されてしまった。
書斎のキャビネットの裏に作られた小部屋だ。
「冗談ですよね?私を殺すの?」
「死なせない。これはオスカーとリアナの為なんだ。時期が来たら出してあげるから我慢してよ」
敵か味方か・・・クラリス様って本当に分からない変人だ!
オスカー様の為だというなら監禁も我慢してあげようじゃないの。
修道院行きを阻止したのは何か理由があるのだろう。わかんないけど。
大嫌いだった赤い目の悪魔。
最後にあの悪魔に会うことが出来れば、一発殴らないと気が済まない。
世間では私は修道院に向かったと思われている。
ハワードは私を追いかけて、修道院で門前払いされているらしい。
過去にしがみ付く弱くて可哀そうな人。甥には強く育ってほしい。
監禁生活が、数週間経ったある日、いつも通り部屋の扉が開いた。
「食事ですか?食欲ないですけど」
「いや、出るよリアナ!急いで用意するんだ!」
簡単に湯あみをして侍女達が手早くドレスアップしてくれる。
まさか、ハワードに引き渡されるんじゃないでしょうね?
「クラリス様、説明して!どこに行くの?」
「ふふん、内緒。サプライズは派手にやらないとね」
「サプライズってなんですか!」
「可哀そうなリアナ、覚悟しておいてよね」
「か、覚悟って」
馬車に押し込められて、逃げないようにしっかりクラリス様に捕まっている。
「あ、紐で縛っておけば良かったかな。くくく」
窓から城が見えてくる、セルマー家の娘である私も罰を受けるのだろうか。
「ろ、牢獄に入れられるんでしょうか」
「ああそうだね。牢獄だ」
私の一生はなんだったんだろう。ダイアナのように消されるのか。
城の中に馬車を乗り入れると、私はクラリス様にお姫様抱っこされて宮殿に向かった。
「歩けます!」
「早く行かないと、間に合わなければフィナーレを飾れない」
「はぁぁ~~」
大きくため息をつくと宮殿への階段を上り、怖くて思わずクラリス様にしがみついた。
宮殿の広いエントランス、そこに赤い目の悪魔と王太子殿下が立っておられる。
「間に合った。すれ違ったらアウトだった」
クラリス様は私をそっと下した。
「リアナ!」
私達を見つけたオスカー様がこちらに向かってくる。まだ杖を突いて、お顔には傷が残っていた。
やつれた表情にアランが戻って来た日が重なって、切なくなる。
「オスカー様・・・」
吸い寄せられるように足が勝手に、オスカー様に向かって・・・近づいてゆく。
「会いたかったよリアナ、もう絶対離さない」
「会いたかった?私に?」
杖を手放してオスカー様は私を抱き締めた。
「あ・・え・・んん?」
人がいっぱい居るにも関わらず、オスカー様は私の頭を抱えると思いっきり口づけた。
歯がぶつかって、それでもオスカー様は深く口づけてくる。
ああ、私はオスカー様に愛されていた。当て馬なんかじゃなかった。
「はい、もうお終い。王太子殿下が驚いておられるよ」
クラリス様に顔を引き離されたが、私達は抱き合っていた。
「リアナ、心配させたな」
「あ・・あ・・オスカー様・・会いたかったですぅぅうう・・・う・ぅう・・・」
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王太子殿下の御前、オスカー様の腕の中で・・・私は泣きじゃくっていた。
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