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オスカー様が領地に行かれた五日間、何度もクラリス様とお婆様は押しかけてきたが、護衛によって追い返された。

私は部屋に缶詰状態で庭の散歩にも出られない。


ウンザリしていると、やっとオスカー様が戻って来た!

待ちわびていた自分に驚いてしまう。

そう言えば、ベニー様が嫌がらせに現れた時、早くオスカー様が来ればいいのに、早く暴言吐いてベニー様を連れ去ってくれれば良いと思っていた。
嫌いだったけど、あの時も、私はオスカー様を待っていた。



廊下で言い争う声が聞こえて、扉が開くと五日ぶりのオスカー様とご対面。

「リアナ大丈夫か。遅くなってすまない」

「いいえ、お帰りなさいオスカー様。お待ちしていました」

「待っててくれたのか・・・リアナ」


オスカー様に抱き締められて心から安堵した。
領地でベニー様の妹とお見合いして断り切れず、3度目の婚約解消もあると思っていた。

護衛を押しのけお婆様が入ってきて、私を抱き締めるオスカー様の腕を引いた。

「オスカー!お見合いはどうなりましたか」

「断って会わずに戻ってきました。どんな重大な問題が起こったのかと思えば、騙すような事を。俺はお婆様に従ってベニーと結婚しました!もう言いなりにはならない、俺は好きな人と結婚します」

「こんな娘は認めませんよ」

「貴方が選んだベニーが何をしたか忘れたのですか!自分の相手は自分が決める。二度と口出ししないで下さい」

これは・・・ベニー様は相当な事をやらかしたようだ。お婆様が怯んでいる。


「それは・・・お前が優しくしてやらなかったからでしょう」

「確かに俺も悪かった。でも長年ベニーと過ごした日々は地獄だった。結婚後も修復の余地はなく、護衛の子を身籠った。リアナは俺を裏切らない。絶対に!」

「信用できるものですか。2度も婚約を解消された娘なんて」

「相手の男に見る目が無かったんだ。俺は絶対リアナを妻にする。気に入らないのなら貴方を挙式には呼ばない。理解したなら領地に戻って下さい。それとも遠くの北の別荘に行きたいですか?」


お婆様はまだオスカー様に抗議したが、翌日馬車に押し込められて領地に戻っていった。


「嫌な思いをさせたな、もうあの人には何も言わせない、すまなかった」

「大丈夫です。護衛やテリーさん達が守ってくれましたから」


クラリス様は、次こそ問題を起こせば「クビだ!」と宣言を受けた。

お婆様に手紙を出したのには悪意は無かったと言い張るので、執行猶予がついた。


シスター・マーベルとオスカー様の関係を聞いたら、叔母だったと話してくれた。
自分の事は息子のように思ってくれていたと説明されて私も追及しなかった。
彼が『お兄さま』なのに変わりはない。


私の中でオスカー様に嫁ぐ決心がついていた。

彼ならダイアナに煩わされる事なく幸せにしてくれそうだし、フワーロンのウェディングドレスにも袖を通したい。

挙式の準備も順調に進み、不本意だった結婚を私は指折り数えて待っている。



このまま問題なく結婚まで待つだけと思っていたが、とんでもないイベントが控えていた。


それを聞かされたのは午後にテラスでお茶をしていた時だった。

「王宮の舞踏会ですか?」

「王太子殿下15歳の誕生祭だ。成人されて、殿下の婚約者の披露もあるようだ」

「それはご挨拶に伺わないと」

「王妃直々の招待で、断れない。俺は毒を飲んで高熱を出そうかと思ってる」

「毒なんて・・・止めて下さい!」

「しかし、リアナを外に出したくないんだ。危険すぎる」

「危険なんてあるんですか?」

「ある!だから俺は毒を飲む、寝込んでしまえば不参加だ」

私の為に毒を飲むなんてオスカー様の愛が重くて・・・嬉しい。


でもそんな危険はやめて欲しい。説得しても聞き入れないオスカー様に困っていたが。

参加して挨拶に来ないと婚姻を認めないと通達が来て参加せざるを得なくなった。


「くそっ!こんな横暴、しかしなんで服毒予定がバレたんだ?」

会話を聞いて情報を漏らした使用人がいるようだ。

「舞踏会では護衛を大勢付けて見張らせる、何者もリアナには指一本触れさせない」


王宮での舞踏会には義姉とアラン、ハワードも参加するだろう。

侯爵家で生活を始めて1か月、もう過去の辛い思い出は忘れよう。

過去よりもオスカー様と結婚を出来なくなる方が辛い。

何というチョロイン。


大嫌いだった赤い目の悪魔は私の大切な婚約者となっていた。

私に起こりそうな危険、やはりワイゼン侯爵家の婚約者の立場を良く思わない人々だろう。


今までのように孤軍奮闘ではない。

オスカー様が心強い味方だ、きっと私は大丈夫だ。



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